Jack the Ripper ~解体聖母~   作:-Msk-

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どうにかサボらずに二話目を投稿できました。


GGO:02

 結局、ジャック、シノン、キリトの三人は無事に本戦へ駒を進めた。

 

 キリトの予選の戦いっぷりを見たジャックの感想は、「相変わらずだな」といった簡素なもの。

 

 彼の戦い方は基本的にはフォトンソードを使った白兵戦。GGOの世界ではまず見ないプレイスタイルだが、ほかのVRMMOではそう珍しいものではない。

 

 いい例がALOだろう。あの世界は近接武器が主流の妖精の世界だ。……だからと言って、別にジャックがALOをプレイしていたわけでもないのだが。

 

 ならなぜジャックはキリトのプレイを「相変わらず」と思ったのか?

 

 それはもちろん――。

 

 

 

✝ ✝ ✝

 

 

 

 本戦について呆れながらもしっかりとキリトに説明したシノンは、立ち上がって席を離れようとした。だが、慌てたキリトに引き留められてしまう。

 

 キリトはテーブルに置いたジュースを零したのもお構いなく声をかけてくるが、正直うっとおしくなってきたシノンは手首についている腕時計を一瞥した。

 

 

「まだ何かあるの?」

「――っ!」

 

 

 キリトはうんうん、と懸命に首を縦に振る。

 

 

「ここからが本番なんだよ」

「はぁ……」

 

 

 本戦が始まる前に一度、ジャックに会っておきたかったシノンだが、仕方ないと諦めて再び席に座る。そして「うん」と頷きキリトに先を促す。

 

 

「えっと、変なこと聞くようだけど――」

 

 

 そう言って見せられたモニタには、第三回BoB本戦参加者全員の名前が映し出されていた。

 

 

「BoB初参加の連中に、シノンが知らない名前はいくつある?」

「はぁ? 何それ」

「頼む、教えてくれ……。重要なことなんだ」

「まぁ名前だけなら別にいいけど……」

 

 

 キリトがあまりにも真剣な表情をしているので、流石のシノンも即座に「嫌だ」とは答えられなかった。

 

 

「初めてなのは……。どっかのムカつく光剣使いを除くと――四人だけ」

 

 

 モニタのスクロールを止めたシノンがキリトと目を合わせる。

 

 

「四人!? 何て名前だ?」

 

 

 ずずい、と近づいてくるキリトに若干苦い顔をしながらも、シノンは直ぐに言葉を返した。

 

 

「まず初めに私の知り合いの〈Jack〉。あとは〈銃士X〉と〈Pale Rider〉。これは……〈Sterben(スティーブン)〉かな?」

 

 

 名前を聞いたキリトはシノンをほったらかしにして一人で考え込んでしまった。そんな様子にむっとしたシノンは、少し怒り気味に尋ねる。

 

 

「一体何なのよ、いきなり説明もなしで」

「あ……うぅん……」

 

 

 弱弱しく吐き出されたその言葉にまたイラついたシノンは、左手で頬杖を突き、右手の人差し指でトントンとテーブルをリズムよく叩き、「如何にもイラついてます」という雰囲気を醸し出した。

 

 

「そろそろ本気で怒るわよ」

「いやっ……そのぉ……」

 

 

 ジト目で睨まれたキリトは一瞬怯む。そんなキリトにさらにイラついたシノンは、ドンとテーブルを左手で叩いて声を荒げた。

 

 

「何!? 私をイラつかせて、本戦でミスさせようって作戦なの?」

「違う……違うんだ! ……そうじゃなくて」

 

 

 ぐっ、と左右両方の手をそれぞれ握りこんだキリトにシノンは声を静かにして声をかける。

 

 

「昨日の予選で、あんたの様子が急におかしくなったことと、何か関係あるの?」

「えっ……?」

 

 

 じーっとシノンに見つめられ、耐えきれなくなったキリトは視線をずらして語り始めた。

 

 どうやらキリトは昨日の予選でGGOの前にプレイしていたVRMMOの知り合いに出会ってしまったらしい。「出会った」のではなく、「出会ってしまった」。

 

 できれば会いたくないその相手は、かつて本気で殺しあった相手。それなのにキリトは相手の当時の名前すら思い出すことができない。

 

 ここまで聞いたシノンは、ある一つの可能性を導き出す。

 

 ――もしかして、キリトはSAOをプレイしていたんじゃないか。

 

 だがそれを口に出すということはしなかった。キリトの話をしている姿を見れば苦悩しているのが見て取れたし、それを踏まえてしっかりと前に進もうとしているのも見て取れた。

 

 その姿はかつての自分のようで――。

 

 

「そろそろ待機ドームに移動しないと。装備の点検や精神集中の時間がなくなっちゃう」

 

 

 これ以上は踏み込むべきじゃないと判断したシノンは、席を立ち上がった。

 

 

 

✝ ✝ ✝

 

 

 

 本戦のフィールドは直径10kmの広大なフィールドで行われる。

 

 これがGGOではなく、現実(リアル)での戦争だったらものすごく狭いのだが、生憎とこれはGGOというゲームだ。戦車、ヘリコプター、戦闘機などの搭乗兵器は一切なく、プレイヤーが自らの足と抱えられる武器のみで戦い抜く戦場。この程度の戦いなら直径10kmもあれば十分なのだ。

 

 本戦は各予選ブロックから勝ち残った計三〇人で行われる遭遇戦。予選の時とは違い、ランダムに転送されたプレイヤーは必ず1000m以上離れて開始される。故に予選の時のような「開始数秒背後から奇襲」なんてことも不可能に近い。

 

 直径10kmの円形から成るフィールドは『都市廃墟』を中心とし、北を『砂漠』とすると、東に『田園』、南東に『森林』があり、そこから『山岳』へ向かうための『鉄橋』がある。そして南に『山岳』、西に『草原』がある。

 

 複合ステージ、時間帯は午後の設定にすることによって、装備やステータスタイプでの一方的な有利不利は無くなっている。

 

 フィールドが直径10kmもあると、他プレイヤーと遭遇するので一苦労――かと思いきやそうでもない。

 

 本戦参加者には『サテライト・スキャン端末』というものが支給される。この端末は十五分に一度、上空をスパイ衛星が通過し、全プレイヤーに互いの位置情報を端末に表示するのだ。しかも光点に触れればそのプレイヤーが誰なのかわかるという仕様である。

 

 ただし、表示されるのはスパイ衛星がいるのはたったの十五分間だけ。十五分経てば消えてしまうため、奇襲をかけるのならばこの十五分間がチャンスとなる。

 

 

「――まぁボクには関係ないけど」

 

 

 そう、ジャックにはどれもこれも関係のないことだった。

 

 プレイヤー同士の距離が1000m以上離れてのスタート? 様々な複合ステージ? 十五分に一度のサテライト・スキャンで自分の位置を他プレイヤーに知られる? 

 

 ――それがどうしたというのだ。

 

 彼はジャック。切り裂きジャックと同じ名を冠するプレイヤー。相手を殺すのに場所も時間も距離も選ばなない。

 

 本戦開始まで残り五秒。

 

 閉じていた目をゆっくりと開き、深紅の瞳の瞳孔が細長く引き締まる。

 

 

「さぁ――殺るか」

 

 

 

✝ ✝ ✝

 

 

 

 本戦が始まるのと同時に、ジャックは腰からナイフを二本抜いて左右それぞれの手で逆手に握り締めた。そしてAGI極振りのステータスにものを言わせた超高速移動を開始した。

 

 もちろん、AGIが最大値まで振られているだけではこの動きができるわけではない。アクロバットスキルを最大まで上げた上に、このゲームがVRという特殊な空間だからこそできる超高速移動だ。

 

 シノンに誘われてGGOを始めたばかりの頃、ジャックはリアルとの微妙な差異に()()()()()()

 

 全ては「0」と「1」で構築されている仮想の電子世界なのにも関わらず、五感を刺激してくるこのありとあらゆるものは現実と遜色のないレベルに達していた。だがそれでもリアルとは微かに違うナニカに本来の力が出せなかった。

 

 しかし。

 

 シノンにレクチャーを受けている時に、それを気づいてしまった。

 

 ――現実でできることを、この世界でも頑張ればできる。

 

 簡単なようで難しいそれに気づいたジャックは、現実世界でのノウハウをGGOで応用して戦闘に役立てた。

 

 その一つがジャック最大の武器である超高速移動だ。

 

 音を立てず、空気をゆがませず、気配の一切を消して近づき首を狩り取る。このスタイルを完成させたのだ。

 

 さて。

 

 そんなジャックは今、二人目の首を狩り取ることに成功していた。

 

 彼が転送されたのは山岳だった。そこからは森林の様子をよく見ることができたのだ。

 

 森林で撃ち合いを岩山を駆け下りながら確認したジャックは、鉄橋の下を流れる川を走り渡り、そのまま森林へ突っ込んでいった。

 

 あとは互いに夢中になっているプレイヤーを背後から殺す簡単な仕事だ。

 

 無事に二人の首を狩り終えたジャックは、すぐさま森林から離脱しようと走り出す。敵がいないのにいつまでもいるわけにはいかなし、何より一つの場所にいつまでもとどまることに抵抗を覚えた。

 

 木々の隙間を縫うように駆けるその姿は誰の目にも映ることはない。辛うじてドローンが彼の通った後のわずかに跳ね上がる砂を捉えるだけ。

 

 一人、木の上からこちらを狙う者を見つける。

 

 ジャックはそれをいち早く察知し、対処方法をコンマ数秒で導き出す。

 

 無視――リスク高。

 

 真っ向勝負――リスク中。

 

 いつも通り――リスク小、これだ。

 

 木の上にいる敵の獲物はスナイパーライフル。こちらが気づいたことに気づいている様子はない。ニヤリと口角を上げているのがいい証拠だ。

 

 跳躍し、木の上に飛び乗ったジャックは跳躍を繰り返して敵へ接近する。

 

 徐々に近づくジャックに焦りを見せた敵は、一心不乱に引き金を引き絞る。

 

 一発、二発、三発、四発、そして五発。

 

 弾が空になったのだろう、リロードの作業に入った。

 

 そしてその隙を逃すジャックではない。 

 

 やられた本人からすれば何が起きたかわからないだろう。リロードの作業に入って、いつの間にか頭と胴体が泣き別れしているのだから。

 

 ジャックが行ったことは、傍から見れば普通に近づいて首を狩り取ったように見えるだろう。だがその技術――タイミングが絶妙に良い。

 

 彼が首を狩り取りに敵に一気に近づいたのは、敵がリロードに入って弾を再装填したときに瞬きをしたほんの一瞬だ。

 

 所説あるが、人間の瞬きの速度は100ミリ秒から150ミリ秒だとされている。即ち一〇〇〇分の一秒から一五〇〇分の一秒。そのわずかな時間で敵に近づき首を狩り取ったのだ。

 

 これはもはや人間の技ではない。

 

 いくらゲームの中だからとはいえ、こんなことを淡々とこなす化物がいるのだろうか。

 

 ――いるじゃないか、今、目の前に。

 

 あたかもそう言うかのようにジャックは大胆不敵に、堂々とその身をGGOという世界に見せつけていた。

 

 

 

✝ ✝ ✝

 

 

 

 ジャックが着々とプレイヤーを殺して回る一方で、シノンはマイペースに敵を狙撃していた。

 

 狙撃してはその場を離れ、狙撃してはその場を離れる。実にシンプルだが、これ以上にないぐらい確かな作戦だ。

 

 スナイパーであるシノンがソロで生き残るにはこれが一番最適な作戦だと本人は導き出したのだ。

 

 そんな彼女のもとに、一つ人影が存在している。キリトである。

 

 二人は岩の後ろから橋の様子をうかがっていた。

 

 地面に倒れ伏せているペイルライダー。そしてそれを狙うガスマスクをつけ、スナイパーライフルを肩に下げる男。

 

 その男は、身動きの取れないペイルライダーを殺すためにわざわざ威力の弱いハンドガンに持ち替えた。そして銃を持っていない左手で顔の前でまるで祈る様に十字を切った。

 

 

「シノン……撃て……」

「どっちを?」

「あのボロマントだ! 頼む、撃ってくれ! 早く! あいつが撃つ前に!」

 

 

 キリトの尋常じゃない様子にシノンも事の重大さを僅かながら察する。

 

 数秒で狙いをつけ――引き金を引き絞る。

 

 銃声とともに銃口から吐き出される銃弾。弾道予測線(バレット・ライン)がないそれは一直線にボロマントへ向かって進んでいく。

 

 ――当たる!

 

 二人はそう確信した。だが現実はそれを否定した。

 

 スッと軽くボロマントは身を半歩引いた。たったそれだけだが、銃弾を躱すのには十分すぎる距離だった。

 

 地面に着弾し、爆音と砂煙が巻きあがる。

 

 

「な――っ!?」

 

 

 思わず声を漏らしてスコープから目を離すが、直ぐに目をスコープに近づける。

 

 視界を砂煙が覆いつくす中、シノンはどうにかボロマントの影を捉える。

 

 

「は――っ!?」

 

 

 目が、赤く不気味に輝く機械的な目と目が合った。

 

 ゆえに理解する。あいつは――

 

 

「あいつ、私に気づいてた」

 

 

 そう言いながらも、シノンは手早くリロードをして薬莢を吐き出させる。再びスコープを覗き、ボロマントの影を追う。

 

 

「えっ……? まさか……」

「どこかで私を目視して、システムに認識されてたのよ」

 

 

 ボロマントを補足したときには既に遅かった。

 

 目に映るのはハンドガンから吐き出された弾丸に胸を貫かれたペイルライダー。HPはゼロになってはいない。

 

 もうダメかと思ったその矢先にペイルライダーが突如起き上がる。そして愛用のライフルをボロマントに突き付け――膝から崩れ落ちた。

 

 苦しそうに胸の辺りを握り締め、天に向かって腕を伸ばしたところでポリゴンとなって消えていった。

 

 

「なに……? 今の……」

 

 

 シノンはキリトに問うが彼からの反応は一切ない。

 

 わかるのはペイルライダーが存在していた空間に表示されているウィンドウの文字――「DISCONNECTION」の文字のみ。つまりは「切断」、ペイルライダーがGGOから落ちたのだ。

 

 

「間違いない……。あいつが、死銃(デス・ガン)だ……」

 

 

 ようやく再起動したキリトがそう呟いた。

 

 

死銃(デス・ガン)? それって、あの撃たれたプレイヤーは二度とログインしてこないって妙な噂の?」

「そうだ。あいつは何等かの方法でプレイヤーを本当に殺せるんだ」

「まさか――」

「すでに現実世界では二人死んでいる」

「え……」

 

 

 呆然とキリトの言葉を受け入れる。

 

 彼の普通ではない、少し説破の詰まった感じを見ればそんなことはすぐにわかった。

 

 シノンは橋の柱の影に隠れた死銃(デス・ガン)の行方をスコープで覗いて確認するが、どうも見つけることができない。

 

 

「出てこないな……」

 

 

 キリトがそうつぶやいた直後、キンキンキンキンキンと電子音が鳴る。

 

 スコープから目を離し、ヘカートⅡを岩に立てかける。

 

 

「キリト、あなたは橋を監視してて。私はこれであいつの名前を確認する」

「わかった」

 

 

 キリトから少し離れたところでサテライト・スキャン端末を起動させ、プレイヤーの位置と名前を確認する。

 

 橋の近くにある二つのマークをタップし、キリトとシノンの文字が出る。そして橋の柱の近くのマークをタップするのだが――

 

 

「え……? ない……?」

 

 

 こんな短時間で移動するはずがない、そう結論付けたシノンはキリトの下へ戻る。

 

 

「チャンスだわ」

「チャンス?」

「あのボロマントは端末に映ってない。あんたみたいに川に潜ってるのよ。だとすれば、今は武装を全解除しているはず」

「拳銃一丁くらいは装備したままでも水中を移動できるんじゃないか?」

「例えそうでも、ハンドガン一つくらい楽々押しき――」

「駄目だ!」

 

 

 シノンの言葉を遮って、キリトは声を荒げる。ついでに彼女の腕をつかんだ。

 

 

「キミも見ただろ? あいつの黒い拳銃がペイルライダーを殺したのを。一発でも撃たれたら、それで本当に死ぬかもしれないんだぞ!」

「……私は、認めたくない。PKじゃなくて、本当に人を殺しているプレイヤーがいるなんて……」

「それでもいるんだ。あのボロマント、死銃(デス・ガン)は昔俺がいたバーチャルMMOの中で多くの人を殺した。相手が本当に死ぬのをわかっていて剣を振り下ろしたんだ。そして……俺も……」

 

 

 キリトのあまりにも切羽詰まった言葉にシノンは考え直す。

 

 

「ホントに……そんな奴が……GGOに……」

 

 

 シノンの脳裏に思い浮かぶ。あの忌々しい過去が。「彼」のおかげで乗り越えられた過去が。

 

 拳銃を握り締め、そして男に向け――。

 

 

「シノン……シノン!」

「は――っ!?」

 

 

 キリトの呼びかけによって意識を引き戻したシノンは自分の肩に置かれた彼の腕をひきはがしながら言う。

 

 

「大丈夫、ちょっと驚いただけ」

 

 

 ふぅ、と一息。呼吸を整える。

 

 

「正直、あんたの話をすぐには信じられないけど……。でも、全部が嘘や作り話だとは思わない」

「ありがとう……。それで充分だ」

「とりあえず、私たちもすぐにここから動かないと」

 

 

 そういいながらシノンはサテライト・スキャン端末が展開したマップを閉じた。

 

 

「あんたと私が戦闘中だと思ったプレイヤーが漁夫の利を狙って近づいてくる」

「そうだな。じゃあここで別れよう」

 

 

 あっさりとそう言い放ち、離脱しようとするキリトにシノンは少し戸惑う。そして思わず声をかけてしまった。

 

 

「あんたはどうするのよ」

「俺は死銃(デス・ガン)を追う。シノン、キミは極力奴には近づかないでくれ。キミの知り合いのジャックにもこのことを伝えてくれると助かる」

「でも……」

「約束は守る。次に会ったときは全力でキミと戦う。さっきは俺を撃たず話を聞いてくれてありがとう」

 

 

 それを最後にキリトはぴょんぴょん跳躍を繰り返して崖を下って行った。だがシノンはそれをよしとしなかった。

 

 すぐさまキリトを追いかけ、追いつく。

 

 

「待ちなさいよ!」

「ん……?」

 

 

 シノンに声を掛けられたキリトは走るのをやめて立ち止まった。

 

 

「私も行くわ」

「え?」

死銃(デス・ガン)って奴、相当強いよ。アンタがあいつに負けたら、私と戦えないじゃない」

「それは……」

「あんまり気が乗らないけど、一時共闘して、先にあいつを本戦からたたき出した方が確実だわ」

 

 

 シノンからしてみれば死銃(デス・ガン)の存在は到底信じられるものではない。だがキリトがこれだけ躍起になっているのだ。ほんの少しは気になる。

 

 何よりも、キリトが死銃(デス・ガン)に撃たれたら彼と戦うことができなくなる。それだけはどうしても避けたいのだ。

 

 

「いや、あいつは本当に危険なんだ」

死銃(デス・ガン)がどこに行ったか分からないんだから、一緒にいようがいまいが、危険度は同じでしょ?」

 

 

 一瞬あっけにとられるキリトだが、すぐに顔つきを変えて頷いた。

 

 それを確認したシノンも、ほんの少しだが表情が緩んだ。

 

 ――そんな緩んだ空気もすぐにぶち壊れる。

 

 キリトが突如フォトンソードの刃を展開して振り返ったのだ。

 

 直後に現れる無数の弾道予測線(バレット・ライン)。その先には一人の男がアサルトライフルを構えて二人を狙っていた。

 

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

 

 気合と共にキリトは中央無尽にフォトンソードを振り回して放たれた銃弾を次々に切り裂いていく。

 

 敵がリロードに入ったのか、銃弾の雨が止む。

 

 

「まずは俺が突っ込むから、バックアップよろしく」

 

 

 ニヒルと言われたその言葉に反応したシノンは、直ぐに膝から崩れ落ちて倒れ伏す。

 

 愛用のヘカートⅡを構え、スコープを覗き込んで射撃体勢を取った。

 

 

「――了解」

 

 

 放った言葉と同時に、再び銃弾の雨が降り注ぐ。だがその銃弾は全てキリトによって切り捨てられていく。

 

 上下左右、キリトを、シノンを、バラバラに狙った銃弾を一つも逃さずに切り捨てる。これにはさすがのシノンもあっけにとられる。

 

 ――ジャック以外にもこんなことできる奴がいるんだ。

 

 そんなことを考えてしまっていた。

 

 

「今だ! シノン!」

「――ッ!」

 

 

 キリトの声で意識をスコープに戻し――引き金を引き絞る。

 

 ドン、と言う腹の底に響く低音と共に放たれた銃弾は真っすぐ敵に向かっていき、敵を貫く。

 

 赤いポップに「DEAD」の文字が浮かんだのを確認して、シノンは立ち上がった。

 

 

「はぁ……」

 

 

 一安心したシノンは溜息を一つ。そしてフォトンソードをしまうキリトに視線を固定した。

 

 ――こいつ、本当に何者かしら……。

 

 シノンはそう思わずにはいられなかった。

 




ちなみにこの作品、本編は現在絶賛公開中のオーディナルスケールです。
話の流れは、GGO→SAO→ALOEE→OS→UWかな。
SAOは話の構成上、なかなか執筆が進まないので後回しにして先にALOEE→OS→UWを上げるかも。

あとFGOやってます。
ツイッターを見てくれればサポートも覗けると思うので、まぁFGO関係でも気軽に絡んでくれると嬉しいです。
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