「ブラック鎮守府に961社長が着任したら」どうなるのっと。 作:続空秋堵
私は昔偉大なる戦艦だった。名は長門。誇り高き日の本の艦。
それがどうして今私はこんな生活をしているのだろうかとふと思ってしまう。
『さぁ働け。喉が渇いた?泥水をすすってろ。腹が減った?自分にも肉はあるだろう?
睡眠をとりたい?仕事が終わったらいいぞ』
私たちの提督は決まってこう言った。
駆逐艦は泣き、軽巡は唇を噛み締め、重巡は精神が狂い、戦艦は無気力に、空母は祈った。
そう
この鎮守府はブラック鎮守府と呼ばれる真っ黒な社会世界。弱音を吐けば暴力を振るわれ、泣けば五月蝿いと密室に閉じ込められた。
仕事が終わったら寝ていい?ここの勤務時間は一日四十八時間じゃないか!?
もう一日が何時間だったのかも皆忘れようとしていた時だ。
だがそれは変わった。
我々のクソみたいな提督が唐突な三階級昇進。理由は不明だ。彼が何をして上に評価されたのかなんて知りたくもない。さも最低で低俗な行為に手を染めたのだろう。
あの豚は笑いながら私達に「じゃあなゴミ共め」と言ってこの鎮守府を捨てた。本営から直接な呼び出しがあったらしい。
そんな物語があって、皆は泣きながら抱きしめ合った。助かったのだと、解放されたのだと。
もう何年も見ていない笑顔が浮かんで私は思わず泣きそうになったことだ。これからは平和な生活を送るのだ。これからは幸せな日々を歩むのだと皆で語った。
だがそれは夢物語だった。
今日、ついにこの鎮守府に新たなる提督がやって来るらしい。それもとびっきり黒い奴が。
そう、これは真っ黒な元ブラック鎮守府が961鎮守府に変わる物語である。
【艦娘たちの場合】
あの黒い男が提督になって私達は恐怖に震えた。
「これ、どうしたらいいと思う?」
誰だったか、ふと声を漏らした。
「………わからないわよ」
それに陸奥が疲れた顔をしながらも返事をする。
私達の手に今持っているのは小さな四角の箱。提督は「すまーとふぉん」と語った。よく分からないこの箱を全員分与えられた私達は捨てることも出来ずに肌身離さず持ち歩いている。何があるのか分からないからだ。
もしかしたら仲間たちに危害を与えるかもしれない。もしかしたら爆発するかもしれない。そんな未知なる恐怖。せめて自分の「すまーとふぉん」に異変が起こったら自分を盾にするために皆持ち歩いているのだ。
「青葉、あなたこう言うの詳しいんじゃない?」
陸奥は思い当たる節に聞いてみるが当の青葉はひよこのように泣きわめく。
「し、知らないですよぉ……。こことは違うホワイトな鎮守府の青葉なら色んな電子機器与えられているでしょうけど私達はこんなとこでしたし……」
それもそうかと誰もが顔を俯かせる。
ますますこの箱、すまーとふぉんが何なのか分からない。
「そ、そう言えば『じーぴーえす』機能がどうとか言ってませんでしたっけ?」
「ああ、言ってたな」
慌てて青葉が思い出してそれを口にし木曾はそうだったと頷いた。
「しかし、『じーぴーえす』とはなんなんだ?」
『・・・』
誰も知らないその言葉に皆が困惑する。
その中で一人、反応する者がいた。
「G P S ?」
「知っているのか、ビスマルク!」
「聞いたことがある・・・」
ドイツ艦ビスマルクが冷や汗を流しながら口を開けた。
「
ごくりんこ。
誰もが息を飲み込んだ。つまりGPSとは
「私達は常に……監視されている……?」
監視塔。そういう事だろう。歯向かう者、逃げ出そうとする者。全て有罪だと判決された者は酷く哀れな程に苦しむ思いをさせるぞとこの箱が物語っているのだ。
「すまーと………ふぉん………ッ!」
龍田が歯をギリッと鳴らした。力が入りすぎて高い音がなったのだ。それ程までに彼女は怒りで力を込める。
「で、でもでも!門は開いてるっぽい!?」
夕立が大きな声をあげる。そうだ。門が開いてるじゃないか。唯一ここから外へ出られる出入り口の扉は開いていたのだ。
前提督の時は完全に閉ざされて出撃と遠征の時にしか外に出してもらえなかったというのに。
「待って、夕立!なにかおかしいよ。この箱の中にある正方形の中に同じくGPSと書かれた箱を見つけたんだ。それを触ってみると…みんな、これを見て!」
時雨は冷静にそれを上に掲げた。
「貴女、何があるかわからないのよ!?その箱にあるシステムを起動するなんて自殺行為だわ!」
「だからと言っていつまでも黙ってる訳にはいかないじゃないか!」
陸奥の言う事もその通りだが、時雨の言う事も筋が通る。
このままパンドラの箱を開けず恐怖に震えるより、開けて中身を確認したほうが安心できる。それがどんな危険があろうとしても、誰かが犠牲になれば誰かを救える。それを時雨はやってみせたのだ。
「夕立、動いてみて」
「ぽい?」
時雨に言われたままに夕立は部屋の扉辺りまで歩いていく。
そして、その動きと同じように小さな点滅が移動した。
『………!?』
「確定……だね……」
皆が目を見開く。そう、この瞬間我々が常に見張られているのだと確認してしまったのだ。
その恐怖で那珂がもう嫌だと泣き始め、それを神通が胸に抱き川内が壁に拳を打った。
「あんたが、あんたがこんなことをするから!?」
「や、止めてよ曙!」
曙が時雨に襲いかかった。自分たちが常に監視されていることを知って不安が大きくなり、やり場のなくなった怒りを時雨にぶつけてしまったのだ。確かに、時雨がこんな実験をしなければ監視されている恐怖に縛られずに済んだのだ。
誰も悪くない。そうわかっていても曙は怒りをぶつける。みんなの代弁者となるために。
「きゅっ………」
「あ、曙?曙!?」
時雨に飛びかかった瞬間だ。曙は地面に倒れ伏した。
「……… 死んではないわ。ただ、気絶させられてる」
「そんな……」
一体なぜ?誰しもが疑問を抱き陸奥が曙の首元に小さな針が刺さっていることに気づく。
まさかこれで気絶してしまった?
「みんな、見て。僕の『すまーとふぉん』を………」
【防衛システム発動完了】
『・・・!?』
つまり、これは襲いかかった者に気絶させる効果を持ち合わせている。
だとしたらこれは。
「反逆した者には誰だろうと構わず眠らせる……」
そう言うことだろう。
提督は人間だ。だからこそ艦娘に襲われた時のために防衛手段を作っていたのだ。艦娘である曙が一撃で眠りについてしまう程の代物。人間なら病院送りだろう。
「ね、ねぇみなさん。このStoreってなんでしょう?」
その一部始終があり一息ついた時だ。漣がふと呟いた。
「Store……店、デスか?」
金剛が警戒をしたまま声を漏らす。
店、この意味がわからない。どうしてGPSを持つ『すまーとふぉん』に商店の機能が付いているのだろうか。
「まったく、訳がわからないよ……」
時雨も不安で涙が出始めそうになりながらも負けまいと必死に声をだす。これが唯一抵抗している気がして何かを喋っていたくなるのだ。
「い、いやぁぁぁぁあ!?」
「どうしたの?!大井っち!?」
急に血相変えて叫びだした大井を落ち着かせるように抱きつく北上。
こ、これ……。と大井が見せるのは先ほどのStoreの項目の一番下にある数字。
クレジット…………100000
「クレジット十万円?」
そして画面が変わる。
『961提督からギフトが送られてきました』
『………!?』
すべての艦娘のStoreのクレジットにさらに一万円分追加された。
「聞いたことがあるで。金を持ってる悪どい大人たちは色んな物にお金を入れるらしいんや」
「どういうことだ?」
龍驤の言葉がまるでわからないと長門は首をかしげる。
だが龍驤は覚悟しいやと残して続きを話した。
「オークション。どうしても欲しい物があった金持ちは値段を釣り上げていくんやで。一万だったものが二万に二万だったものは三万に。そうして互いに金を釣り上げていって誰もこれ以上払えないと言う金額になると落札されるんや」
「だ、だからどうしたと言うのだ!?ハッキリ言え、龍驤!?」
彼女は汗を垂らして苦しそうにそれをもらす。
「オークション、国によっては人ですら適用されるらしいんや」
『・・・ッッッ!?』
つまり、つまり私達は。
「金持ちたちの商品とされている………?」
その長門の言葉と同時にたくさんの艦娘達が意識を失った。
「提督………あなたという人はッ!?」
そう、これは黒い物語。真っ黒で961と誰もが言ってしまう物語。
艦娘たちよ、恐怖に震えるのだ。
「ウィ………。なんだか三流ポンコツ艦たちがとんでもない勘違いをしている気がするが………。エリートな私が三流を気にしていられない。笑止!さて。君ィ、ゴージャスなコーヒーを淹れてくるのだ」
「じぶんでいれろです」
なんかすみません。ほんとすみません。
一発ネタなんで勘弁してくだちぃ。なんでもしますから!