「ブラック鎮守府に961社長が着任したら」どうなるのっと。 作:続空秋堵
タユタマ2afterの予約してない!
今日も作者は幸せです。
この鎮守府には悪魔が住む。怖ろしい悪魔が。
その悪魔はひとたび艦娘たちが飯を抜けば、
「朝食を………抜いた?ノンノン!それじゃあいつまでも三流ポンコツ艦だ。フルコースは覚悟をしておけ?」
と脅し執務室に強制的に運び人が食えた量じゃない食料を食べさせる。
なら残せばいいじゃないかと思うだろう。ここの提督は悪魔なのだ。その悪魔が言う鎮守府でのルールの一つ、
「残すことは許さない。VIPな私が用意したのだ、もし残すようなら……わかっているな?」
である。しっかり脅しまで添えてだ。
怖ろしい。それに好き嫌いも許されないのだ。もし残してしまったらどうなるかって?誰もが怖くて残したことがない。後がどうなるか見当もつかないからだ。
もしかしたら次の晩の夕飯に自分がなっているかもしれないし、豚の餌になっているかもしれない。そんな恐怖を誰もが抱えた。
元々、このブラック鎮守府に勤める艦娘たちに食事という概念がなかったのだ。だからこそ彼女たちが普通の女の子が食べる量という食事を出されたところで食べきれない。それに食事を今までしてこなかったので食道が、胃が物を通すことを許さない。すぐに戻してしまいそうになる。それをあの悪魔は知っているのだろう。だからこそ残すことは許さないと言うのだ。
腹が減って本当に死にそうになった時は遠征中に見つけた食べられそうな葉を口に入れて過ごしたのだ。新鮮な野菜に特上な肉など彼女たちには毒でしかない。
そんなこんなの理由があり、食事の時間は艦娘たちの間でこう呼ばれるようになった。
『拷問の時間』
さぁ彼女たちの明日はどっちだ。
【加賀の場合】
ここの提督はどこかおかしい。
そう思えて仕方がありません。まず全身が真っ黒で顔すら碌に見えない、この前提督が広間に置いた152インチ?の『てれび』?なる物に流れていた映像の探偵物のメガネの少年の作品に出てくる全身タイツの人より黒いです。
その彼の黒さの通り心まで真っ黒なのでしょう。そう思うと流石に気分が沈静します。
この鎮守府の朝は早い。多分。今までが今までだったので一般的な時間感覚はわかりませんが。まず、
朝はマルナナマルマルには起床。マルナナサンマルには食堂に集合。マルハチマルマルには全員で食事を開始します。
出てくる食事はどれも美味しい。昔から食事らしい食事をした事がない私達はなにを食べても美味しいと言うでしょう。まともな物である限り。はっきり言うなら高級な物を食べても腐った物を食べても違いがわからない。でも私達のような艦娘に高価な物を食べさせるとは思えません。きっとその辺の在庫処分の物などを与えられている。 まぁ、食べさせてもらえるだけ恵まれてるのでしょう。
ちなみに今日の朝食は
松坂という場所に生息するらしい牛のお肉を赤いお酒で煮込んだ物と栗のスープ。ご飯は黒とりゅふ?なる物をバターで炒めたもの。他にもてりーぬ?やらしゅみぜ?にしゃんてぃのしゅーだとか。
はて、全く何を言ってるのかわからないわ。
取り敢えずお腹に入れれるものは入れるわ。前じゃ考えられなかったから。
マルキュウマルマル。食事が終わると一部の艦娘が一斉に出て行きます。行き先はお手洗い。
食べた物を全部吐いてしまうみたいなの。何故だか私や赤城さんはある程度食べても拒絶反応がないけれど他の子は違うみたい。体が食事を、物が中に入る事を拒み全て吐き捨ててしまう。
可哀想に、もしかしたら提督はこれが狙いなのかしら。やっと食事にありつけた子達に吐かせてぬか喜びさせるとか。
……そうに違いないわ。本当に黒い人。
その三日後、唐突に提督からの怖ろしい宣言があった。
「ウィ、三流ポンコツ艦たちよ。今日からローテーションで私と夕食を食べてもらう。ワンオンワンでな。ノンノン、拒否権はない。では今日のポンコツ艦は……加賀、お前だ。嬉しいだろう?では今日もそれぞれ有意義な一日にするんだな。アデュー!」
それは死刑宣告だった。
こんな黒い人と二人きりで食事をするなんて。怖ろしい。おそらく、今日私はこの鎮守府から姿を消してしまうのでしょう。お世話になった赤城さん。それに本当は伝えるつもりもない五航戦の子達にも。今までありがとうと手紙を書いて部屋の何処かに置いておきます。恥ずかしいので隠すように。
今思えば五航戦の子達も嫌いじゃなかったかもしれないわ。
……私らしくもない。やはり最後だと分かっていると意識が変わるのね。普段じゃ言わないような事を手紙にスラスラと書けていく。
さぁ今日のヒトキュウマルマル。それが私の最後の時間。ずっと提督には悪い感情ばかり抱いていたけど、最後くらい。いいかもしれないわね。良く考えてみても。
「ようやく来たか、待ちわびたぞ高揚空母娘」
「本日はこのようなお食事のお呼ばれ、恐縮致します」
「ウィ。なに、そこにかけるといい。立っていても辛いであろう?」
「失礼します」
それは豪華な机に椅子。座ったと同時に押し戻されそうな程ふかふかな椅子でした。
机の上には既に現実離れしたほどの美しい料理の数々。なるほど、最後の晩餐と言うことでしょうか。
「ではいただくとしよう」
提督が料理に手をつける。それを確認してから私も手をつけようとする。流石に提督より先に物を食べるなど恐れ多い。
そうして口に運んだ料理は絶品でした。いつもと違いがわかりませんでしたが。
「最近はどうだ。不満や困ったことはなかったか」
それはなんだか娘に喋り掛ける父親のような話題。こんな黒い人にもこう言った人間らしい話題も出来るものなのね。
「特には。提督のお心遣いには頭も上がりません」
「よせ、ViPな私は寛大で偉大だ。光栄だろう?」
「はい」
本来なら味もわからない程緊張し警戒する場所ですが最後だと分かっていると安心して味を楽しめる。
こんな違いがあったのかとか。コクがあるないが分かった………気がします。
さて、私はやらねばならない事があります。
最後の晩餐とは、最後に食べるご飯の事ではありません。偉大なる神の弟子たちへの慈悲のこと。神が賛美を祈りパンと葡萄酒をそれぞれ自分の体と血として与えたことを指すのです。
私もみんなに。与えなければいけないのです。
「提督。食事の後、たくさんの子たちがお手洗いに向かうことは知っていますか?」
「・・・なに?」
やはり知らなかった。
それだけで少し安心できる。
「私達は普段まともな食事をしてきませんでした。だからこそ。今の食事は余りにも辛すぎる」
ナイフとフォークを離し膝を組む。そしてこちらの話に耳を傾ける。
「だから、少なめに。もしくは消化に良い食べ物に変えてはくれないでしょうか」
せっかく食べた物を。やっと食べられた食事を出してしまうのは余りにも可哀想だと思っていた。だからこれは勝手なこと。頼まれてないこと。でも私がどうにかしてあげたいと思ったこと。
もし、提督がこのことを聞いてくださるなら、きっとみんなに何かを与えれた。そう思えます。
「………ふん。それを聞いて気を使えと?三流ポンコツ艦たちのことを考えろ。そう言いたいのだな?」
「はい」
一拍空いた。
「知らん。なぜ私がそんなことをしなければならん。………だがまぁ考えてやってもいい、感謝しろ?私は寛容で偉大だからな」
「………感謝致します」
そのまま食事は何事もなく終わり、部屋から退出しようとした時だ。
「待て。まさか何事もなく帰れると思っていたのか?」
やはり、今日が最後。
「こちらに来い」
その後、加賀の姿を見たものはいない。
【赤城の場合】
最近、加賀さんの姿を見てません。最後に言葉を交わした時、ちょっとお仕事に行ってくると言ったきりなのだ。心配で仕方がない。よく考えたら提督と二人で食事をした次の日から姿を見せないのだ。きっと何かされたに違いない。もし、加賀さんが酷いことされていればその時は。
「最近、妙に消化のいい食事ですね」
ふと呟く。私はそのことに気づいているが周りはどうだろうか。
前に比べてみればお手洗いに向かう子達もめっきり減ったものだ。今ではごく少数。量も減った気がするから完食は難しくなくなった。お金がなくなったのかしら?
今日は日曜日。提督と二人きりで食事する日です。
一体誰が今日選ばれるのか。朝の集会までは不明でみんな気が気でないようで胸をバクバクと音立てた。
「ウィ、今日は赤城。貴様だ」
名を呼ばれて一斉に向けられる同情の視線。
耳を澄ませば可哀想だとか御愁傷様と聞こえてきた。呼ばれたからには無視できない。私ははいと頷くとその日の夜。執務室へと向かう。
「失礼します」
返事を待ってから入ったその部屋は仕事をする部屋とは思えないほど美しい食卓へ変わっていました。
椅子に腰をかけるとそのまま跳ねてしまう。どれだけお高いやつなのかしら。
「あら、これ美味しい」
「そうだろう?高級な肉だ」
私が口へ運んだお肉は柔らかくて大変美味しい。今まで食べたことがない。幸福感で満たされて頰が落ちそうになる。
「一体なんのお肉かしら?米沢牛?」
「違うな」
「じゃあ飛騨牛、神戸牛?もしかしたら松坂牛かしら?」
「ノンノン、もっと凄いものだよ」
「凄いもの………ハァッ!?」
私は気づいてしまった。
この違和感に。この胸騒ぎに。
私は一通り高級な牛肉を言ったはずだ。だがどれも違うと彼はいった。
他になんのお肉があったか。それを考えて気づいてしまったのだ。
加賀さんが提督と二人で食事してそれから彼女の姿が見えなくなったと。
もし、もし高級なお肉とは値段が高いという訳ではなく、手に入らないと言う意味だったら。加賀さんが居なくなった理由。それは、それはもしかして………!
「提督、加賀さん。最近姿を見ないんですがどうしたんですか?」
「なんだ、今でも一緒にいるじゃないか」
ああ、認めたくない。認めれない。でも、でももしこのお肉が……加賀さんだったなら……。
「提督、もう一度聞きます。加賀さんは今、どこにいますか?………ここに居るんですか?」
お願い、お願い提督。どうかどうか違うと言ってください……!
「ウィ」
「………ッ!?」
私は慌てて部屋から飛び出た。ああ、嫌だ嫌だ。認めたくない。知りたくない。いやぁぁぁぁあ!
だって食べてしまったのだ。私はあのお肉を食べてしまったのだ。美味しいあのお肉を。
走った。走った。どこまでもどこまでも。
途中で誰かに声をかけられた気がしたが知らない。今どうでもいいこと。どこか行き先がある訳じゃない。このまま鎮守府から逃げ出してしまってもいいだろう。
そう思って鎮守府を出ようとした時だ。
「赤城さん?」
「加賀………さん………?」
そこに加賀さんがいた。
首を傾げて私の手を握ってくれる。
「どうかしたの?」
「嘘、嘘、だって私が加賀さんを食べて……」
「なにを言ってるのかしら?」
ジト目になりながら私の顔を見つめた。
でも、もし彼女が生きていたなら、こんなに嬉しいことはない。
「加賀ざぁぁぁん!!怖かった、寂しかったですぅぅぅ!!」
「ちょっと、苦しいわ。抱きしめるのは良いけど力を弱めてくれないかしら」
そんな言葉の制止も聞かず抱きしめた。ずっとずっと強く離さないように。
「そうね、寂しい思いをさせたわね。でも一応ちゃんといつも部屋に帰っていたのよ?夜遅くて赤城さんも寝ているから起こさないようにしていたけど」
「いっだい、いっだいどごに行ってだんでずかぁぁあ!」
「提督が鎮守府の地下に広場があるのを発見して練習場にならないか話し合っていたのよ。それから私がなにが必要かだとか面積測っていたりしたから。長い間姿を見せなくて心配かけたわね」
そう、加賀はずっと鎮守府に居たのだ。どこにも行かず、ただ知られてない地下に。
加賀は微笑みながら赤城を抱いて泣き止むまで泣かせたそうです。
今日もまた961鎮守府に恐怖を生んでしまった。絶望と悲しみの傷跡を残した。
これまでも、そしてこれからも。961鎮守府の絶望はまだまだこれからである。
この二次創作者はゲーマーでごぜーます。
投稿ペースは仕事の休憩時間や気まぐれで書いた場合のみでありいついつには投稿できる。というのはありません。人生の6割をゲームに当てている二次創作者なので遅すぎたりしますがご理解ください。