『いいかアドリスクこのペンダントはずっとつけているんだよ片時も外さぬようにな』
『外したらどうなるの?』
『お前の周りにいるものが傷ついてしまう。そしてお前自身も……だがな』
アドリスクは極大氷結呪文マヒャデドスを唱え魔物を掃討した。後始末として、ソルクトルム=ウエンディは三日かけてサラス大森林にすべての呪文の基礎と言われるメラを中心とした火炎呪文を唱え続け氷を溶かした。
それから一週間寝込んでいたアドリスクの元へウエンディが、盾の形をした赤い宝玉を持ってきたのだ。
『お前がもし、勇者に会うことがあればそれを外して会いなさい』
『勇者って、ヘクトル様のこと?』
『いや、あやつではない。とにかく勇者に会うまでは絶対に外すでないぞ』
『うん分かった!』
『よしいいこじゃ』
ウエンディは孫の頭をなでると扉に手をかけた。
『おじいちゃんどこ行くの?』
『わしは、旅に出る。お前のためにのう』
『僕のため?』
『そうじゃ。お前が……』
――なんて言ってたっけな? 忘れちまった。
――なんか眠いな
眼を少しだけ開くとマルカがランドン相手に立ちまわっているのが見えた。彼女は攻撃を避けつつも何かを叫んでいた。
――ああ俺を呼んでいるのか
頭から血が出ているようでうまく頭が回らない。壁に寄りかかる形で座っている。たった一撃で盾は壊され、衝撃で吹き飛ばされたのだ。マルカが食らえば確実に絶命する。
「逃げろ。逃げてくれ……マルカ」
声はか細く誰にも聞こえない。しかしその代わり妙な音が聞こえてきた。ひどく耳障りで不快な音が。
「もう大丈夫」
耳元で囁かれると同時に耳栓がつけられた。それから体が回復していくのがわかる。
「ラルス!」
ラルスも耳栓をしており声は届かなかったが、ラルスは首肯した。そしてアドリスクはランドンの方へと視線を移す。
そこには黒髪をちょんまげに結って、ギャングを思わせる丸眼鏡をしているどでかいモグラが歌っていた。
「ワシの芸術スペシャルをとくと聞くがよい!」
「くおっ、この下手くそな歌は……」
ランドンは耳を塞ぎ苦しそうに身を縮こませる。
「ドン・モグーラ貴様ついに裏切ったな!」
「ふっ、これまでワシの部下が世話になった……だがそれも今日までモグ」
ドン・モグ―ラはさらに声高らかに歌い、ランドンを苦しめた。
「妙な果実でパワーアップしたとはいえ聴覚までは強化できなかったか」
アドリスクは剣を手に立ち上がる。身体は既に全快しており、耳栓を着けているため、自由に動き回れた。
「これならランドンを倒せる」
またしてもその言葉は誰にも聞こえない。しかしそれはアドリスク自身を勇気づけた。