「グオオッーーー。頭が、頭が割れるように痛い!」
「こんなにいい気分で歌うのは初めてモグッ。いつもは人間たちがいない時にそれにこっそりと歌っていたモグよ」
ドン・モグ―ラは気持ちよさそうに歌い上げる。しかしその表情とは裏腹に、口から出る音は、ガラスを引っ掻いたような音も、生き物の断末魔さえも子守歌と思えるようなひどいものだった。開けた場所であるのならばともかく音がこもる洞窟ではそれがよく響く。
耳栓を着けていないのは、本人とランドンぐらいのもので、苦しんでいるのはランドンだけだった。
こん棒を落とし両耳を手で塞ぐ。それでもなおその顔は悲痛を訴えていた。
アドリスクとマルカはその隙を突き、ランドンの膝頭めがけて剣を、その裏側に拳を突き出した。
「さすがマルカ、俺のやることが手に取るように分かるらしい」
まるで考えが共有しているようにほぼ同時の攻撃だった。ランドンはダメージが溜まっていたようですぐに膝を着いた。
それからアドリスクがマルカの方を見れば、紫色の髪を垂らしその隙間から眼光を輝かせていた。そのままフラフラと歩き近づいてくる。
「……えっと、マルカさん?」
「後で、100発だから」
マルカは耳元で囁く。ほとんど無音のはずなのになぜか聞こえてきた。
――怖い。怖すぎる。ちょっとしたホラーだろこれ
思い当たる節はある。おとりとなって二人を逃がしたこと。それに対して怒っているのだろう。
――ラルスに頼もう
彼になだめてもらえばマルカの機嫌も幾分かマシになる。殴られるのは確定しているが、数が減ればそれでいいとアドリスクが自分の身の振り方について考えていると、ぞろぞろとモグラが出てきた。
「行くぞーーー」
キラーピッケルがピッケルを掲げその後にモグラ達がスコップを持って文字通り袋叩きにする。
「この野郎くらえ!」
「必殺のスコップトルネード!」
「えいやそいや」
水を得た魚のように叩きのめす。その間ラルスは、二人に補助呪文スカラをかける準備に入っていた。
「こしゃくな……貴様さえいなければこんなはずでは」
恨めがましい様子でランドンは睨みつける。対してそんな地に伏したランドンを勝ち誇ったようにドン・モグ―ラは見る。
「モグモグモグ。ワシの歌に感動で声も出せんか?」
「くそったれが!」
ランドンはこん棒を手にドン・モグーラに襲い掛かる。
「お前のノロい攻撃なんてすぐにかわせるモグ」
「それはどうかな」
瞬間、振り回す速さが増した。そして初めて気づく。ランドンの瞳が赤く染まっていることに。
「なっ」
その意味を考える暇もなくドン・モグーラの体は壁に叩きつけられた。
「……どうしたラルス?」
一瞬驚き手を降ろす。悔しそうに泣きそうな顔でラルスは下唇を噛んだ。
ただならぬ雰囲気に二人が振り返ると、ぐったりしているドン・モグ―ラ、こん棒の犠牲になっているモグラ達の姿があった。
「げははは、貴様さえ倒せばもうこっちのものだ!」
高らかに下品に笑う。50はいたモグラ達は為すすべもなく吹き飛んでいた。
もはや立っているのはランドンと……
「もう一回聞くけどよ、逃げる気はないか?」
栓を外しながら二人に問う。
「もちろんないよ」
「寝ぼけたこと言うわね。先に殴られたい?」
「……ごめん。そして頼む。二人とも死ぬなよ」
返事はなかったが、二人は無言で首肯した。
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後で少し外伝を挟みます。