「三十分後城門前に集合な」
とは言ったものの、マルカは愛用している武道着をすでに着ていたしラルスも、孤児院の人とも挨拶を終え、院長先生からもらったというかしの杖と絹のローブを装備していた。アドリスクも一昨日には準備を終えていたので結局三人で町の知り合いに別れを告げることになった。
「じゃ最初はマイナンのとこに行くか」
アドリスクの言葉に二人が頷くと、サラス大森林の跡地を後にした。
マイナンはアドリスク達と同じ年で、防具屋を継いでいる。二歳上の兄がいるのだが『賢者の使徒』として旅立って以来帰ってきていなかった。
「あれ、なんでまだいるの?」
防具屋に着くと三人の姿を見てマイナンが疑問を口にした。
「あはは、ちょっと野暮用でな」
「ふーんそうなんだ」
アドリスクが適当にごまかすと、マイナンはそっけない態度を取った。それからマルカとひとしきり談笑した後、今朝入ったという青銅の盾をただでもらった。
「いいのか、もらって」
「あげるから旅先でマルコス兄さん見かけたら無理やりにでも連れ帰りなさい」
ぶっきらぼうに見えて案外兄のことを心配しているみたいだとアドリスクは思った。
「ありがとなマイナン。マルコスさんがいたら言っておくよ」
それから武器屋のおじさんにあとを告げ、城の中庭に進んでいった。行くと大臣は、馬を一頭連れて、アドリスク達を待っていた。
「すいません残っている馬がこれしかなくて」
「こ、これは」
その馬はアドリスクの祖父が譲り受けたカストコという名前の馬だった。体格はほかの馬よりも少し小柄だが、力強く地を蹴り、馬力も相当なものだったそうだ。馬の寿命は二十年いけばよいのだが、カストコは既に五十年生きている馬だった。なるほどさすがは賢者に選ばれた馬だけのことはあるとアドリスクは考えていたものだがその馬に昔のような威風堂々とした様子は見られなかった。
「ブフーー、ブフフーーーー」
呼吸は荒く、体も辛うじて立っているというような出で立ちだった。これではさすがに荷物などを運ぶ馬車としての役割は果たせそうにないと三人は顔を見合わせたが、大臣は嬉しそうに少し出張った腹を叩いた。
「今はこのように死にかけですがね。賢者様の孫と旅が出来るとくればカストコは以前のように魔物の前でも怖気ず、炎の山でも颯爽と走り抜けることでしょう」
よくもまあそんな話がすらすらと出るなとアドリスクは感心したものだが他に馬はないということなので、カストコを連れ三人は夜のソルムトルク城を抜け、その足で隣町ラスぺスタにつながる洞窟へと向かった。