テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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第九話

 

 

 

――やぁ、皆。最近、本当に実力がついてるか不安になっている僕こと、乾 衛司です。

 

何故、僕がこんな始め方をしてるかというと……

 

 

 

「――うわあぁあぁあぁぁっ!!イリア早く!スプレッドでもアクアレイザーでもいいから早くぅうぅぅっ!!」

 

 

「分かってるからあんまし動き回んないでよっ!狙いにくいっつーのっ!!」

 

 

「イヤ、僕達も動き回らないとこれ危ないから!本当に危ないからっ!!」

 

 

『グォオォォォォッ!!』

 

 

「「イヤアァアァアァァァァッ!!」」

 

 

現在、カダイフ砂漠にてクレス師匠と一緒にイリアの魔法や援護時間を稼ぐ為に、僕達の身の丈二倍以上は楽に超える『サンドワーム』から逃げ回ってます。

うん、現実逃避です。

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

「――ハァ……ハァ……危なかったぁ…。依頼受けてオアシスルート入った瞬間サンドワームとか……不意打ちすぎる…」

 

 

数分後、僕達は息を整えながらなんとか倒したサンドワームを見ながらそんな言葉をもらした。

 

 

「ハァ……うん、確かに危なかったね。でもなんとか倒せたし、ケージも無事みたいで良かったね」

 

 

「まぁね。ケージに近付きそうになったらメリアが守ってくれてたし」

 

 

「そうだね…。……ありがとうね、メリア」

 

 

「……ん…」

 

クレス師匠の言葉を始めに、イリアがそう言うと、僕がそう言った後、メリアの頭を撫でる。

 

……それにしても……

 

 

 

「…このケージに入ってる魔物……本当に何なんだろ」

 

 

メリアの頭から手を離し、その近くになる大きめなケージに目を向けると、僕はそう言葉を出した。

 

今回の依頼の理由であるこのケージ。依頼者であるモラード村の村長、トマスさんの依頼内容の『オアシスへの魔物の搬送』。結局この依頼を受けたメンバーは僕、メリア、クレス師匠、イリアであった。

そして、カダイフ砂漠へつき、依頼を受け、魔物が入ったこのケージを受け取った際、受けた条件がある。

それは――『絶対にケージの中を見ない』事。

 

 

トマスさんが言うには薬で眠らせてあるから光で起きてしまうかもしれないらしいのだが……イリアが開けようとした時の反応がどうにも……何か隠しているようにも見えた。

それに理由も……若干矛盾点がある気もする。

 

僕の気のせいならいいんだけど……。

 

 

 

 

 

 

「う~っ!やっぱり面倒だし、暑いし、此処でパパっとケージを撃ち抜いて帰りましょうよ~っ!」

 

 

「駄目だよ、イリア!僕達の依頼は魔物の搬送であって、魔物の討伐じゃないんだから!」

 

 

ケージの前で繰り広げられるイリアとクレス師匠の数回目にもなるやり取り。

僕も正直、このケージの正体が気になっているが……クレス師匠はかなり真面目だから、中を見たくてもさっきのイリアのように止められてしまう。

 

――…と、言うか……今更だけど、なんで僕…こんなにケージの事を気にしてるんだろ…?

『赤い煙』のあんな生物変化を見た後に、直ぐに赤い煙を浴びたジョアンさんの住んでいるモラード村からこんな依頼が来たから…?

でも……もし本当に『そう』であるなら……あの村長は……

 

 

 

「――……衛司……?」

 

 

不意にそんな声が聞こえ、服の袖を引かれるような感覚に顔を向けると、メリアが心配そうに此方を見ていた。

 

考え過ぎてたのが顔に出ていたのだろうか。

 

「どうしたの、メリア…?」

 

 

「……大丈夫…だよ」

 

 

「……ぇ…?」

 

「……何か分からない…けど……皆居るから……衛司一人じゃないから……大丈夫……だよ…?」

 

 

メリアの唐突なそんな言葉に、思わず先程までの考えが止まってしまった。

僕ってそこまで思い込んでた表情してたんだろうか…。

でも、そんなメリアの言葉のおかげで、自分なりに大分表情が落ち着いた気がした。

 

 

 

「――…うん。そうだね……ありがとう、メリア」

 

 

「……ん……」

 

 

 

そう言った後、僕は手を伸ばすとそっとメリアの頭を撫でる。癖になってしまったのか最近、よく僕は人の頭を撫でている気がする。

落ち着け僕。よく考えたらそれは確実にセクハラだ。

 

撫でている対象であるメリア自身は目を細めて結構心地良さそうにしている。

 

 

「………………」

 

 

「……ぁ………」

 

 

なんとなく、手を引いてみるとメリアは小さく声を出した後、どこか心残りな表情をしてシュンと落ち込んだ様子を見せる。

何だろう……この子犬みたいな生物。

少し可哀想に見えたので再び頭を撫でると今度は機嫌良さげな笑みを見せた。

……本当になんだろうこの子。

いや、うん……普通にかわi―――

 

 

「「…………………」」

 

 

 

――今更だけど気付いたらイリアとクレス師匠が口論を止めて此方を見てた。

うん、ガン見で。

 

 

「――…ぁ、ご、ごめんっ!アンタらがまさか『そこまで』進んでるとは思わなくて……」

 

 

「ちょっと待ってイリア!絶対なんか勘違いしてるよねっ!?『そこまで』ってどこまでデスカっ!?」

 

 

「衛司…、メリアと一緒にしていたいのは分かるけど、今は依頼なんだからちゃんとしないと…」

 

 

「師匠っ!?アンタやけに『大丈夫、僕は分かってるから』みたいな顔してるけど色々分かってないからね!むしろ色々間違ってるからねっ!?」

 

 

 

「「はいはい、ごちそうさまごちそうさま」」

 

 

「アンタら武器構えろォオォォォッ!!」

 

木刀を持って走り出す僕とそれから逃げるように走り出すイリアとクレス師匠、突然始まった僕達の追いかけっこに小さく首を傾げてそれを見ているメリア。

 

依頼そっちのけで何やってんだろ、とか思ってしまったけど……メリアの言うとおり、こんな事のおかげで先程までの考えが一気に楽になった気がした。

うん……僕は、僕達は一人じゃないんだ。

 

 

因みにこの後、ちゃんと二人を捕まえて誤解である事を言いました。

その時の二人の疑うような表情に本当にイラッときたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

「――此処がオアシス、か……さっきまでの砂漠地帯に比べて結構綺麗だなぁ…」

 

その後、僕達はなんとかオアシスまで到着する事が出来た。

目前に広がるそれは先程までのだだっ広い砂漠とは打って違う、少しの木々と小さな泉がある光景だった。

さっきまで砂ばっかり見てたせいか余計に綺麗に見えた気がした。

 

 

 

「ぁ~…もういいからさっさとケージ置いて帰りましょうっ!正直暑くて堪んないのよっ!」

 

 

「それもそうだね…。イリアの言うとおり、早くケージを置いて帰ろうか」

 

 

イリアとクレス師匠の言葉に小さく頷いて、ケージを泉の前まで運んでいく。

……こんなもんかな?

 

 

「――さて、それじゃ帰ろう――」

 

 

 

『ギシャアァァァァァッ!!』

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

ケージから離れた瞬間、響き渡った声に視線を向けると、どこから現れたのかケージの周りに四体のトカゲの様な魔物『サンドファング』が群がっていた。

 

 

「コイツ等……一体どこから……」

 

 

「でもアイツ等、ケージに群がってるじゃん!もう気にせず帰っていいでしょ!」

 

 

いきなりの出現に戸惑っていたが、イリアの言葉の通り、サンドファングはケージの周りに集まっていた。

確かに本来ならイリアの言葉の通り、此処は帰っていただろう。

――――だが、

 

 

 

『――う、うわぁあぁぁぁっ!?な、なんだ……揺れてるぞっ!?』

 

 

『な、何が起こってるんだっ!?』

 

 

「なっ……人の…声……っ!?」

 

突如、ケージの中から聞こえだす人の声。しかもこのどこかで聞いたことのある声は……

 

 

 

「……っ!まさか……ジョアンさんっ!?」

 

 

「えっ!?…それってこの間病気が治ったって言ってた……!?」

 

 

「じゃ、じゃあ今あのケージの中に居るのは……魔物じゃなくて……」

 

 

「…………人…」

 

 

 

メリアの最後の言葉で理解し、思わず舌打ちをしてしまう。

くそっ……案の定、やっぱり…ジョアンさんの身に何かあったんだ……!

 

 

「っ……皆、散開して一人一体の割合で早くサンドファングを倒そう!」

 

 

「そうだね……早くしないとジョアンさんが危ないっ!」

 

各々武器を持ってサンドファングに向けて走り出す。

くそっ……最悪の状況にはなってないでくださいね、ジョアンさんっ!

 

そして…戦闘は始まった――

 

 

 

 




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