テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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第十六話

 

 

 

「――……ルバーブ連山に…?」

 

 

「……ん……」

 

 

――食堂にて、僕の聞き返すような答えに、メリアは小さく頷いた。

 

何がどういう事か、というと…どうやら、あの『願いを叶える存在』がルバーブ連山に居る、という話が入ったらしい。

それで、これ以上一般人をソレに接触させるのは危険、と判断したアンジュが、その『願いを叶える存在』がいるルバーブ連山に数人程派遣したいらしいのだ。

 

それで、メリアがそのメンバーの一人にしたい、と現在、ロックスさんに料理を教わっていた僕を誘いに来たのだ。

 

『願いを叶える存在』が、かぁ……どうしよう。

 

「――行ってきてはどうです?メリア様もその方がいいようですし」

 

 

 

 

「え……、いいの、ロックスさん?」

 

 

「えぇ。この料理は後は味付けぐらいですし……帰ってきた時に教えてあげますよ」

 

 

「うん、…ありがとう」

 

 

ロックスさんのその言葉に、ちょっと嬉しくなってそう礼をする。ロックスさんに料理を教わるのは結構楽しみながらできるからいいんだよなぁ。

でも、何故か教えてもらえる料理は油物とか結構カロリー高めな物が多かったりする。

 

 

「……衛司……行く…?」

 

 

「うん、僕も気になるからね。僕もついて行くよ」

 

 

「……ん……」

 

小さく首を傾げながら聞いてきたメリアにそう応えると、メリアはどこか嬉しげに頷いて僕の袖を引っ張り歩き出した。

最近、やけになんというか…メリアのスキンシップがこういう感じに強くなってきてる気がするんだけど……どうしたんだろ……?

 

 

それにしても……『願いを叶える存在』か…本当、一体何なんだろか。

兎に角……行ってみれば分かること、かな。

 

 

 

――――――――――――

 

 

「――……はぁ…相変わらず、ルバーブ連山って、登りは本当にキツいなぁ」

 

 

「んー?そうかー?俺はまだまだ元気だぜ!」

 

――ルバーブ連山の山頂ルートを登っている中、ふとこぼしてしまった言葉に、隣を平然とした表情で歩くティトレイが笑いながらそう言ってきた。

 

ルバーブ連山に派遣されたメンバーは僕、メリア、ティトレイ、メルディの四人であった。

それで、当初は、今まで扉があった山頂ルートの手前までかなー、と考えていたら案の定、山頂ルートへの扉が解放されており、もしかしたら既に『願いを叶える存在』を求めて人が入ったかもしれない、との事から山頂まで向かう事になった。

流石に山道でしかも山頂までのルートなので、会話を繋げながら僕達は山道を登っていた。

例えば…『一番効率のいい練習方法』とか、『異性に作られて喜ぶ料理』とか、『ティトレイ、シスロリコン疑惑』だとか。

詳しい詳細は載せないでおこう。

 

 

けどやっぱり山道は山道。キツいもんはキツいんである。まぁ…クラトス師匠の鍛錬に比べればまだマシだが。

 

 

 

 

 

――それにしても……

 

 

 

「……さっきので何人目だっけ?」

 

 

「……六人目……」

 

 

「ったく。大層な野郎共だぜ、全く」

 

 

先程までこの山道を登る最中、無謀とも言える装備で山道を登っていた人達を思い出しメリアがその人数を言うと、ティトレイは呆れたような、どこか怒っている様子で呟いた。

登っていた皆が皆、『願いを叶える存在』に会うためにこの山道を登っているのだ。

 

 

 

 

「ティトレイ、何か怒ってるか?」

 

 

「あぁ、大して努力もせずに、夢を叶えようってヤロウを見るとムカムカするんだよ。正直、さっきまで会ってた奴ら、一発ずつ殴らせろって思ったくらいだ。ああいうヤロウ共は、何でもしてもらって当然って思ってやがる。だから、他人の大事なものを平気で踏みにじって、奪い取れるんだよ」

 

 

メルディの問いに、そう、見ていてイライラしているのが分かるように、言葉を出すティトレイ。

確かに……先程まで会っていた一般人は『億万長者になりたい』等々、自分の欲を丸出しにしていた者達ばかりだった。

 

 

「……でも…確かに、後者や、大した努力もせずに夢を叶えようって言うのは気に入らないけど……もし本当に願いが叶うのならって思うと…僕もさっきまでの人達を否定はできないかもしれない」

 

 

「……どういう事だ?」

 

 

僕のふと出した言葉に、ティトレイが少し怒った様子でそう聞いてきた。

 

 

「うん……さっきも言ったけど、確かに他者から奪い取る事や、大した努力もしない人の事は否定するよ。……でも、逆にさ……頑張って努力しても上手くいかない人や、奪い取られた側の人は、こういう話が来ると多分、…ううん、きっと望んじゃうよ。『こんな不運な自分に幸運を』って、感じにさ…」

 

 

そう、言わばそれは一種の麻薬だ。効力だけ聞いて、副作用を聞かずに服用した人間と同じ、一度入れば抜け出せず、それは服用する人間が今まで不運である程、効力は高くなる。

そして今と同じように…噂となり、広まり、服用する人間が多くなって来るだろう。

 

だからこそ……。

 

 

 

「――…だからこそ、此処で何なのかを見極めて、今流れているこの現状を少しでも止めないといけないんだ」

 

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

僕の言葉に、ティトレイの他、メルディとメリアも頷いて、再び山頂に向け歩き出した。

 

 

そう、他の何よりも早く、『願いを叶える存在』を止めるために――。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

「――…ッ…霧が…」

 

 

しばらく山頂ルートを登っていると、徐々に霧が濃くなっていき、広い場所についたと思えば霧が更に濃くなってきた。

山頂……じゃ、ないみたいだけど……。

 

 

「――…おい、ありゃ何だ?」

 

 

不意に、ティトレイから出た言葉に、その視線の先を見ると、前方の濃い霧の中に、赤い何かを周りに纏った人影らしきものが見えた。

 

 

「バイバ、光ってるよ!」

 

 

「あれは……一体……」

 

 

思わず目前のそれにそんな言葉が見えた。霧が濃いためよくは分からないけど…多分、あの『願いを叶える存在』だろう。

……って事は、赤い煙が此処まで変化したって事…?

 

そう考えていると、突然それは歩き出し、此方に近寄ってきた。どうやら……メリアに歩み寄ってきたみたいた。

 

 

「………………」

 

 

「多分……大丈夫、だよ。メリア」

 

 

不安になったのか袖を握ってきたメリアに、目前に近寄ってきた赤い人影を見てそう言う。

攻撃してこないって事は……、危害を加える気はない……のかな?

 

そして、メリアが少し警戒しながら、ゆっくりと赤い人影に歩み寄ろうとした時であった―。

 

 

『いたぞ!!ディセンダー様だ!!』

 

 

突如、後ろから聞こえだした大声に全員が振り向くと、何か変わった服装をした二人組が現れた。

ディセンダー…様…だって?

思わずメリアを自分の後ろに隠すように下がらせる。

 

 

「願いを叶え、全ての者を導き給うお方。ディセンダー様!やはり、降臨されていたか!」

 

 

興奮したように大声でそう言う一人。まさかあの人達が言ってるディセンダー様って……この赤い人影っ!?

それにディセンダー様って口振りからすると…この人達、例の『暁の従者』か!?

 

 

「我々の救世主をお運びするぞ!」

 

 

「ちょっと待てよ!コイツがディセンダーだって確証はあるのか?うかつに接触しない方がいいぜ!!」

 

 

「何だ、お前達は。邪魔をするな!!」

 

「その方こそが、貧しき者を救いに導き、私欲に肥え膨れ、堕落した大国の者共を成敗する為に降臨したディセンダー様だ!!」

 

ティトレイの言葉に、強い言葉でそう言い出す暁の従者の人達。この喋り方からすると……相当、酔ってるみたいだな…。

しかもタイミングが最悪だ…こんなに崇拝に酔ってる団体が…偽物とは言えディセンダーって言える存在を見つけたとなると……ヤバいなぁ。

 

 

 

「ちょっと待って下さい!アレが本当にディセンダーっていう確証が無い今、アレを下に下ろすのは危険ですっ!!今、もしかしたらアレは、この世界の生物全てに害を成す危険な存在かもしれないんですっ!!」

 

「貴様ァっ!ディセンダー様を侮辱するか!!」

 

 

「違いますっ!まずは落ち着いて、こちらの話を聞いてくださいっ!!」

 

 

「黙れっ!さては貴様等、ディセンダー様を私欲の為に独占する気だな。ならば、これでも食らえ!!」

 

 

僕の言葉に、暁の従者がそう言葉を出したと同時に、只でさえ霧が濃い場所に、光が広がった。くそっ……閃光弾かっ!?

 

 

「――ああああああっ!!光ってる奴がいねえ!」

 

 

ティトレイのその声に目を開くと、その場には先程までの赤い人影や、暁の従者の姿はなかった。

 

 

「イナイよー。連れてかれたな!」

 

 

「急いで戻って報告だ!アレが人の手に渡ったんだ。えらい事になるぜ…」

 

 

ティトレイの言うとおりだ。…しかもあの赤い人影が、ディセンダーを崇拝する暁の従者に渡った以上……状況は最悪な方に転がり出しただろう。

 

 

そして、この事をアンジュに報告して数日後、それは案の定、最悪な事態へと転がっていた。

 

 

 

 

 

 




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