テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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なるべくほのぼのにしたかった。
だが結果がこれだよっ!←


第五十三話

 

 

 

 

 

──カノンノに僕が隠していた事を話して数日がたった。

 

あの後…僕はホールに皆を集めて、僕の身体の事を全て話した。

 

自分が死んでいる事。そして…その事で皆に拒絶されてしまうのではないか、と怖かったけど…隣にカノンノが居てくれたおかげで、皆に話す事が出来た。

 

 

 

僕が話を終えると、やっぱり皆驚いた様子だったけど……カノンノの言った通り、皆…恐れることも、拒絶することもなく…僕の事を受け入れてくれた。

 

 

その皆の優しさに…皆を信じれていなかった自分が情けなくなって、また皆の前で泣いてしまったのは言うまでもない。

 

 

こうして、僕が皆に隠していた事を話すと同時に…皆に隠し事をしていた事を許されたわけだけど……僕が皆…特に僕のドクメントを直に目の当たりにしたカノンノを心配させた事に変わりない、という事で…アンジュからちょっとした罰を受ける事になった。

 

 

 

それは……僕に二日間休暇を渡すと同時に、その二日間の間、カノンノとメリアの言うことを一日交代で何でも聞く、というものであった。

 

 

 

 

─────────────────

 

 

 

 

 

「──……メリア…一旦止めて良い…?」

 

 

「──……んふふ…やだ…♪」

 

 

「……ですよねー」

 

 

 

──一日目の午後。僕は自室にて一日目の命令者…メリアの命令を実行していた。

その命令の内容とは…彼女、メリアをベッドの上に胡座で腰掛けた僕の膝の上に乗せて、メリアを左手で後ろから抱き締めて、右手で頭を撫でる、という事であった。

 

午前の方では『メリアに料理を教える』、という命令で彼女と一緒に料理をしていたけど、午後に入ってからは今までずっとこの状態なので…正直足と手がヤバい事になってきている。

 

 

…そんな僕の様子を知ってか知らずか、メリアは僕のしている事が心地良いのか、目を細めて嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

「メリアって、本当…撫でられるの好きだよね」

 

 

「…うん。…衛司の手…あったかいから…私は…好きだよ…」

 

 

「…そっか…」

 

 

依然と頭を撫でながら僕はメリアに言うと、メリアは嬉しそうな表情のまま僕の方に顔を向けると、その嬉しそうな表情に笑顔をのせて真っ直ぐとそう応えてきた。

…うぅん…こう、真っ直ぐに言われると…なんか恥ずかしいなぁ…。

 

 

「……ねぇ、衛司…」

 

 

 

「…うん?」

 

 

 

「……衛司が言っていたあの…衛司がボロボロだって事…本当…なんだよね」

 

 

 

しばらくメリアの頭を撫でていると不意にメリアが僕を呼んだ。

僕はそれに小さく首を傾げると…メリアは嬉しそうな表情を止めて僕の方を真っ直ぐと向くとそう言った。

 

 

 

「…うん…まぁ、色々あってね。…やっぱり黙ってた事、怒ってる…?」

 

 

メリアの言葉に、僕は撫でていた手を止めて頷き、その後真っ直ぐとメリアを見てそう言葉を出した。メリアは僕の言葉に小さく頷くと言葉を出した。

 

 

「…うん…。…今でこそこうして衛司と話してるけど…聞いた時には…正直…怒ってた…。…皆やカノンノ…それに私も…信じてくれないのか、って…」

 

 

「…ごめん」

 

 

 

僕を真っ直ぐと見てそう、メリアの出した言葉に、僕は改めて申し訳なくなり少し俯いてそう返す。

そんな僕に対してメリアは小さく首を横に振った。

 

 

「…ううん…別にもう怒ってないから、いいよ…。…衛司は遅かったけど…ちゃんと話してくれたし…皆が衛司の事を許してるのに、私だけ許さないのは…嫌だから…」

 

 

「…メリア…」

 

 

首を振った後、再度僕を真っ直ぐと見てそう言葉を出したメリア。その言葉に、僕は少し安心して再びゆっくりと彼女の頭を撫でた。

 

 

 

「…ん…。…衛司…」

 

 

 

「…何…メリア…?」

 

 

 

再び頭を撫でられ、嬉しそうな表情を見せるメリア。

メリアはそのまま身体を僕に預けるように、僕の胸元に顔を埋めて言葉を出し、僕は小さく首を傾げる。

 

 

 

 

 

 

 

「……もう……いなくなったり…しないでね…」

 

 

僕の胸元に顔を埋めたまま…どこか寂しそうに言葉を出したメリア。

 

…ドクメントがボロボロであるという事は……それは僕がいつ、どこで死ぬかも分からないような状態である、という事でもある。

多分彼女は…以前サレにさらわれた時と同じように、僕が彼女や皆の前からいなくなってしまうと思っているのだろう。

 

 

 

「…大丈夫だよ、メリア」

 

 

 

「…ん……」

 

 

「大丈夫。…僕は絶対…メリアやカノンノ…それに、皆の前から居なくなったりしないよ。…『約束』する」

 

 

僕の胸元に顔を埋めたままのメリアに、僕は頭を撫でたままそう言う。

正直…僕が消えない、という確信は全くない。さっき言ったように…僕はいつ、どこで死ぬのか…それは僕自身にも分からないのだ。

 

 

だけど…もう皆を心配させたり、皆の前で『死ぬ』なんて言わないって…僕は決めたんだ。

 

だからこの『約束』は…メリアに…カノンノに…皆に対する『誓い』でもある。

もう絶対…皆を裏切ったりしない、という『誓い』の。

 

 

 

 

「……約束……ん…絶対…いなくならないでね…」

 

 

「うん…絶対…約束するよ…」

 

 

顔を上げてそう、真っ直ぐと僕を見てそう言うメリアに、僕はそう答えて、メリアの頭を撫で続けた。

もう…彼女達を心配させる事のないように…。

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

「──……本当にいいの、カノンノ…?」

 

 

「──…うん、これは…私のお願いだからね」

 

 

 

──二日目。僕は今、向かい合っている相手であるカノンノに確認するように聞くと、カノンノはもう決心しているような表情で頷いてそう答えた。

 

 

「…分かった。だけど、きつくなったら言ってよ

 

 

「そっちこそ」

 

 

僕の言葉にカノンノはクスリと小さく笑ってそう言ってきた。僕はそのカノンノの様子にもう止めはしないというように小さく頷いた。

 

僕達はそのまま暫く見合うと、お互い決心したように小さく頷き合い、そして……

 

 

 

「はあぁあぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 

「やあぁあぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 

…僕は木刀を、カノンノは大剣を手に僕達は前に立つ相手に向けて走り出した。

──バンエルティア号の甲板。二日目のカノンノからの命令は……『カノンノとの模擬戦』であった。

 

 

何故模擬戦なのかは分からないけど…カノンノがやるという以上、僕は止める事が出来ないし…それに今回は命令であるため、僕に止める権利もない。

 

 

 

 

 

「虎牙破斬っ!」

 

 

「っ…なんのっ!」

 

 

カノンノが勢いよく振り上げてきた大剣を避けると、続け様に振り上げた大剣がそのまま振り下ろされ、僕はその大剣を木刀で防ぐ。

っ…中々重いなぁ。いつも思うけど…一体あの華奢な身体でどうやってこの大剣を扱ってるんだろう…。うぅむ…意外と馬鹿ぢかr──

 

 

「──獅子戦吼っ!」

 

 

「うぉわぁっ!?」

 

 

突如僕(主に顔面)を狙って放たれた獅子の頭を模した闘気に、僕は慌ててその場を退いて避ける。前を見直すと、何やら不機嫌そうに頬を膨らませたカノンノが、先程の獅子戦吼を出したであろう膝を此方に向けたまま僕を睨んでいた。

 

 

 

「………今、なんか失礼な事思ったでしょ?」

 

 

「い、いえ、とんでもございませんっ!」

 

 

不機嫌そうに頬を膨らませ、膝を此方に向けたままそう言ってきたカノンノに僕は首を全力で横に振って否定する。僕のその様子にカノンノも分かったのか、表情を戻して構えなおした。

……今度からなるべく考えないようにしよう、うん。

 

 

「…それじゃあ仕切り直しだよ。…ファイヤーボールっ!」

 

 

「了解、と……魔神剣っ!」

 

 

言った後素早く詠唱を終え、カノンノは三つの火の玉を放つ。僕はそれに小さく頷くと、放たれたファイヤーボールの二つを避け、一つを斬撃を飛ばして相殺させる。ファイヤーボールを全て防いだと分かると、僕はカノンノに向けて走る。

…だが、カノンノは僕がファイヤーボールを防いでいる間に、次の詠唱を終えていた。

 

 

「まだまだ…フラッシュティアっ!」

 

 

 

「っ!?ライトニング・シェルっ!」

 

 

 

僕の方に手をむけてカノンノが叫ぶと、走っている僕の足場に光の陣が現れる。僕はそれに対して避けれないと思うと走りながらも受けるダメージを抑えようと、紫色の雷でできた膜を張る。

ライトニング・シェルを張った直後、足場の光の陣から光の衝撃が放たれた。

 

 

「くっ…まだまだ…っ!」

 

 

「!それなら…」

 

 

「させないよ…覇道滅封っ!」

 

 

 

光の衝撃に耐えながらカノンノに接近を続けると、カノンノは再び詠唱をしようとするが、僕はそれを妨害すべく木刀を納刀するように構え瞬時にその木刀を抜刀し、灼熱波を飛ばす。

 

 

「っぅ…!」

 

 

「このまま……四葬天幻っ!」

 

 

「っ…こっちも…空蓮華っ!」

 

 

 

僕の放った覇道滅封に、カノンノは詠唱を止めると大剣を盾にしてそれを防ぐ。

僕はそのまま再び木刀を納刀し、カノンノに接近して舞うように連続蹴りをする。

それに対してカノンノは防いでいた大剣を構え直し、僕に対抗するように三段蹴りと大剣を振り下ろしてきた。

 

 

 

 

「くっ…重っ…!」

 

 

「っぅ…女の子にそういうのは…失礼だ…よっ!」

 

 

カノンノの三段蹴りを四葬天幻の蹴りで相殺した直後、自分に大剣が振り下ろされるのが分かり、蹴りを止めて木刀を抜き大剣を防ぐ。

カノンノが跳び、体重をのせて大剣を振り下ろしている為か防いだ大剣は重くそう呟くと、聞こえていたのかカノンノはそう言って振り下ろしている大剣に更に力を込めてきた。

 

 

 

「くぅっ…それは失礼っ……烈震虎砲っ!」

 

 

 

「!?きゃぁ…っ!」

 

 

重みが増す大剣とカノンノの言葉に防ぎながらも小さく苦笑して僕はそう言うと、防いでいた木刀から手を離す。

木刀から手を離した事でカノンノは驚くも力を込めていた為そのまま僕の方に落ちてき、僕は瞬時に両手をカノンノに向けて『獅子戦吼』に似た虎の頭を模した闘気を放つ。

大剣に力を込めていた為、カノンノはそれにすぐに対応出来ず、烈震虎砲を受け後方へと吹き飛んだ。

 

 

 

「…ふぅ…ぁっ…ごめん、やりすぎた…かな」

 

 

「…ぃたた…だ、大丈夫っ……まだまだいけるよっ!」

 

 

 

手を離した為落ちた木刀を拾うと、僕は吹き飛ばしてしまったカノンノを見てそう言う。カノンノはゆっくりと立ち上がって僕の方を見ると、再び大剣を構えてそう言った。

 

 

「…分かった。なら…次は本気でいくよっ!」

 

 

「うん…私だって…っ!」

 

 

カノンノの様子を見て僕は小さく頷いてそう答えると、再び木刀を納刀するように構える。その僕にカノンノは同じように頷いてそう言うと大剣を構えたまま真っ直ぐと僕を見る。

 

お互いに構えたまま相手を真っ直ぐと見合う。そんな状態が暫く続き…そして……

 

 

「はあぁあぁぁぁぁぁっ!紫電滅天翔っ!」

 

 

「やあぁあぁぁぁぁぁっ!空蓮双旋華っ!」

 

 

…お互い、どちらが先に動いたか分からない程同時に走り出し、そして二人は自分の武器の間合いに入った瞬間、お互いが誇る技を放ち合う。

 

そして……二人の技は激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

 

 

「──あ~ぁ…やっぱり負けちゃったかぁ…」

 

 

「──やっぱり、って……結構やられてたよ、僕」

 

 

 

──甲板。僕の隣に座るカノンノは甲板から見える空を見上げながらそう言い、僕は小さく苦笑した。

カノンノとの模擬戦の結果は、僕の勝利という事になった。

 

模擬戦を終えた僕達は特に大した怪我もなかったので、二人で甲板に腰掛け空を見上げていた。

 

 

 

「…それにしても…衛司は強くなったね」

 

 

「ぇ…そう…かな…」

 

 

不意に、隣で空を見上げていたカノンノが僕の方を見てそう言ってき、僕はカノンノを見て思わず少し頬を掻いてそう言った。

カノンノは僕を見ながら小さく微笑み頷いて口を開いた。

 

 

「うん、そうだよ。…此処に来た時はオタオタに苦戦してた衛司が…今じゃ私達にとって大切な存在で……皆と肩を並べるぐらい強くなってるんだもん」

 

 

「ぁー……オタオタのアレは本当によく記憶に残ってるよ。確かにあの時に比べたら…大分強くなってたんだな…僕」

 

 

カノンノの言葉に僕は苦笑を浮かべるも、その後自分の手を見てそう呟く。

この世界に来た時の自分は本当に弱かった。

だから僕は強くなりたかった。皆と一緒に闘えるぐらい、皆を…守れるぐらい。

 

 

「…ぁ、そうだ…ねぇ、カノンノ。前に言っていた『強さ』の事…大分分かったよ」

 

 

「ん…何かな?」

 

 

ふと、以前カノンノが出していた宿題…『僕の持つ強さ』の事を思い出してそうカノンノに言うと、カノンノは小さく首を傾げて聞いてきた。

 

 

「…誰かを追い越すだけの力でもなく…ただ敵を引き裂くだけの力でもなく……僕の持つ『強さ』は…皆と一緒に闘えるだけの力、それに…誰かを守れるぐらいの力…それを目標にして追う『想い』…かな。『自分の為』じゃなく、『大切なもの』の為への…『想い』。…それが上手く纏めれてないけど…僕なりの答え、かな」

 

 

カノンノを真っ直ぐと見て僕は自分なりの答えをカノンノに告げる。

僕の答えを聞きカノンノは暫く僕を見ると小さく微笑み頷いた。

 

 

「…うん、そうだね。…衛司はずっと、自分の為じゃなくて…皆の力になりたい、誰かを守れるぐらいの力が欲しいって……『誰かの為』の力を『想って』た。私はそんな…衛司の『想いの強さ』を教わったんだ」

 

 

「そう…だったんだ…」

 

 

カノンノのその言葉を聞き、僕は少し頬を掻いた。

あの頃は…ただ本当に『皆と一緒に闘えるようになるぐらい強くなりたい』と思いながら鍛錬や闘いをしてたからなぁ…。カノンノにそう思われていたと考えると、思わず少し照れてしまう。

 

 

 

「うん…。…ねぇ、衛司…衛司は確かに『想って』た通り…皆と一緒に闘えるぐらい…誰かを守れるぐらい強くなった。…でも…」

 

 

「…カノンノ…」

 

 

「…でも自分だけが守ったり、闘ったりするばっかりじゃなくて…私達にも守らせたりさせてね。…約束だよ…?」

 

 

僕の隣に座ったまま真っ直ぐと僕を見て、僕の手をそっと握ってカノンノはそう言った。

そのカノンノの真剣な…そしてどこか心配そうな表情に僕は小さく頷いて応えるようにカノンノの手を握り返した。

 

 

「…うん、分かった…。…約束する…心配させて…ごめんね…」

 

 

「うん…分かってくれたならいいよ。…もう、いなくならないでね」

 

 

僕の言葉に、カノンノは安心したような表情になってそう言うと、ゆっくりと僕の方にもたれかかってきた。僕はそれを支えると、カノンノに応えるように握る手の力を少し強くした。

 

──もう、いなくならないというように…ホールの中から呼ばれるまで僕はカノンノに手で、支えている肩で触れ続けていた。

 

 

 

 

 




以上、第五十三話、如何だったでしょうか?

これが限界だ←




【衛司に1日命令権】
最近シリアスばっかでほのぼの書けてないな、という事でこんなネタをやってみました+←
…まぁその結果がこれだよっ!←←


【メリアとイチャイチャ】
メリアに衛司への命令権があったらこんな感じなんだろうなー、と考えながら書いたらこうなった←

だがしかし結局微量程シリアスが入ってしまった件←

やはりカノンノもメリアも、衛司が突然いなくなってしまう事はいまだ不安なわけです。



【カノンノとの模擬戦】
という訳で初、衛司対カノンノでした←
暴走状態を外せば初のカノンノ戦ですが…描写こんな感じでいいのかな…←

因みに当初はカノンノともイチャつかせる予定でしたが…ほのぼのネタが思いつかずこうなってしまいました…。

カノンノ、ごめん←←


【衛司の『強さ』】
色々迷いに迷った結果、衛司の『強さ』はこんな感じになりました。

無理やり感いっぱいいっぱいで本当に申し訳ない←

カノンノの言葉については…衛司はやっぱり強くなってもどこか事故犠牲な所があるので、そういう意味も込めての言葉になっています。

本当に文で伝えにくくて申し訳ない←←



皆様、感想やご意見、評価等良ければ宜しくお願いします+


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