テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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なんとか完成できたので投稿+

ただ今回色々と纏めすぎたかなー、とちょっと後悔してたりします;;





第七十一話

 

 

 

 

──アンジュとの話し合いから約一時間して、皆の準備が終わり……僕達アドリビトムはエラン・ヴィタールへと突入し、無事にエラン・ヴィタールの大地に到着する事が出来た。

到着したジルディアの大地に決戦組、補助組の皆がバンエルティア号から降りて、そして周りに広がった光景に誰かが言葉を漏らした。

 

「──綺麗……」

 

そう、その誰かが零した一言は、確かに今僕達が見ている景色に合っていた。

ジルディアにほぼ完全に浸食された大地……それは一言で言ってしまえば完璧なまでの『白の世界』であった。今まで僕達が見てきた浸食された部分はあくまでキバの出現したほんの一部分程度であったが、今この場に広がる浸食は大地も、花も全てが浸食の『白』で覆い尽くされ、なんとも言えない美しさが感じられた。

──だけど……。

 

「……駄目。……このままだと……この世界じゃ……生きていけない……」

 

僕の隣に立つメリアが、皆が薄々思っているであろう事を静かに言葉にしてだした。

確かに今、僕達が立つジルディアの大地はなんとも言えない美しさを感じれた。だけど……この大地からはルミナシアの大地や僕のもといた世界にあるような草木、水、生き物……『生』というものが、全くと言っていいほど感じられなかった。

元々……ジルディアはルミナシアのような『世界』として完成する前に、星晶の減少で早くに目覚めてしまったのだ。そんないわば『中途半端』な状態では、今僕達が見ているような現状にも納得してしまう。

だから……だからこそ、今ジルディアにはもう一度『休んで』もらわなければいけない。

 

「──よし。こっち、解析終わったわ。それじゃ、説明するけど……まずエラン・ヴィタールの全体図がコレで……ラザリスがいるであろう場所が此処よ」

 

ふと、セルシウスやヴォルト、ウンディーネとエラン・ヴィタールの解析をしていたリタが皆の前に立つと、手に持った何かの小型の機械を操作し、その機械から解析されたであろうエラン・ヴィタールの全体図が立体映像となって現れ、リタがそう言っていくと映像のエラン・ヴィタールの中心部……一見すると建物のように見える結晶で構築された物が映し出された。

 

「此処にラザリスが……。この中心部にラザリスがいるのなら、この全体図から見てここから真っ直ぐの場所みたいだし……衛司達だけでもすぐに辿りつけたりするんじゃ……?」

 

「それが……向こう側もそう簡単にいかせてくれないみたいよ。確かに、ラザリスのいるこの中心部に向かうまでは真っ直ぐ行けばいいだけみたいなんだけど……その途中までの道が結晶の壁で封鎖されてるのよ。で、その封鎖を解くために、このエラン・ヴィタールの数カ所である程度の工程をしなきゃいけないみたいなのよ」

 

「数カ所、か……。それじゃ、手分けしていくしかねぇみたいだな」

 

「えぇ。だからまず私達補助組が手分けして封鎖を解除、その後に私が衛司達に通信機を使って連絡するからそれまで衛司達決戦組は此処で待機よ」

 

立体映像を見ながら誰かが出した言葉に、リタは溜め息を一つ吐くと機械を操作してエラン・ヴィタールの映像から更に数カ所を映し出して説明を続けた。わざわざそんな面倒な手順を踏ませるということは、多分向こうの目的は始めから此方のメンバーの分断、それとラザリスの『生命の場』浸食までの時間稼ぎなのだろう。 

リタは最後に説明をすると、補助組のメンバー分けを開始させて僕達決戦組の方へと歩み寄ってきた。

 

「これが通信機よ。連絡は全員の道造りの工程が終わり次第するから、アンタ達は体力使わない程度で待機しといてね」

 

「うん、分かった。……気をつけて行ってきてね」

 

リタは僕の前で立ち止まり、その手にもつ通信機らしきものを見せてそう言ってき、僕はそれに頷いて言うと通信機を貰おうと手を伸ばした。

通信機を貰おうとしたその時…リタが一歩僕の方へと歩み寄って僕にしか聞こえない程度の小声で言葉を出した。

 

「アンタ……また私達騙してヤバい事になってんでしょ?」

 

「……やっぱり、バレてた?」

 

「当たり前でしょ。むしろ、あんな馬鹿みたいな説明で他のならまだしも私やハロルドを騙せると思ってたの?」

 

「……ですよね」

 

溜め息混じりに出された言葉に、僕はやはりこの人に嘘は通じないんだな、と思いながら苦笑いして言うとリタは呆れたような表情でそう言った。

まぁ結構アレ無理矢理な嘘だったし、ドクメントを専門に研究を進めてるリタやハロルドを騙そうなんてはっきり言ってはじめから無理に等しいものだもん。

 

「詳しい事は状況が状況だから聞けないけど……アンタの性格やカノンノの様子を見たらある程度予想はつくわ」

 

「……やっぱり、止めたりはしないんだね」

 

「アンタなら止めたって『行く』の一点張りってわかってるからね。それなりの長い間、アンタの性格は見てきたからもうある程度アンタがどんな行動とるか想像つくわよ」

 

「あはは……そっか……」

 

「……今はアンタの行動についてとやかく言う気は無いわ。アンタ自身の選んだ行動で、カノンノもそれを分かっててアンタを止めないわけだし。ただし『後で』色々と聞いてやるから……『ちゃんと帰って』きなさいよ?」

 

「! ……分かった、頑張るよ」

 

『はぁ』、と深めの溜め息を吐いて僕の言葉に呆れた様子のままリタは答えると、真っ直ぐと僕を見てそう言葉を出した。『後で』や『ちゃんと帰って』、か……本当、はっきり『生きて戻ってこい』と言わない所は彼女らしい所である。

リタのその言葉に僕が頷いて返すと、リタは通信機を手渡して補助組の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

──補助組の皆がチーム分けを終わらせて手分けして出発して約二時間が経過した頃……リタから通信が入り、ラザリスのいる中心部への道の封鎖が全て解除された事が告げられた。

『頑張ってきなさいよ』と一言が加えられたその報告を受けて僕、カノンノ、メリア、ニアタ、ヴェイグの決戦組はその場を出発し、エラン・ヴィタールを解析して道を理解しているニアタの案内で中心部へと向かう道の前へと到着した。

 

「……この先に……ラザリスが……」

 

「あぁ。……それにきっと、サレもいるんだろう」

 

中心部へと続くであろう道の先を真っ直ぐと見つめて言葉を出すメリアとヴェイグ。リタとの通信では、リタ達補助組はサレと遭遇した、という連絡は受けていないので……やはりサレもこの奥にいるのだろう。

ニアタはリタ達との解析で手にしたエラン・ヴィタールの全体図と今の僕達の居場所を確認すると僕達の方を見て静かに言葉を出した。

 

「うむ……どうやらこの道であっているようだ。この先に、ラザリスはいる」

 

「そうか、なら……」

 

「(……主)」

 

ニアタの言葉に『なら、なるべく早くラザリスのいる場所に向かおう』と言いかけた時、不意に身体の中にいるヴォルトの声が頭に響いた。

突然のヴォルトの声にどうしたのだろうか、と思い声をかけようとした瞬間、ヴォルトに続くようにウンディーネの声が響いてきた。

 

「(ふむ……主様よ、どうやら相手らも此処を進めたくはないようだ)」

 

「それって……っ!」

 

「衛司、アレっ!」

 

ヴォルトとウンディーネの言葉の意味が薄々と分かった直後、カノンノの声に反応してみると僕達が来た道の方に、以前見たラザリスと一緒にいた結晶で覆われたような巨人型の魔物と、まるで結晶で造られたような人型の魔物が数体立っていた。

それぞれが腕を大きく回していたり、結晶で出来た剣や槍にも見える武器を構えていたりと明らかに此方に敵意を見せているのが分かった。

 

「あれが……ジルディアの民か……」

 

「数が多いな……逃げられたりしないか?」

 

「ここから中心部へはほとんど一本道だ。ここから逃げてもしこの先にも待機しているのなら挟み撃ちにされてしまう。出来る限り、此処で対処したいが……」

 

「やるしかないわけか……」

 

此方に敵意を出している巨人型や人型のジルディアの民達の数を見て、ヴェイグが確認するようにニアタに聞くとニアタは一度中心部への道を見た後、ジルディアの民達を見てそう応えた。

ニアタの言葉にメリアとヴェイグが武器に手をかけるのを見て、僕も星晶剣を抜こうとする……が……

 

「! 衛司は駄目……っ!」

 

「っ! ……カノンノ……」

 

「衛司は今、一回の戦闘だって危険なんでしょ……? なら、此処は私達に任せて、出来る限り闘わないようにして……」

 

星晶剣を抜こうとした手が、不意に伸ばされたカノンノの手に掴まれて止められる。僕が思わずカノンノを見ると、カノンノは小さく首を横に振った後真っ直ぐと僕を見てそう言った。

確かに、今の僕の状態なら出来る限り闘う回数は少ない方がありがたいけど……如何せん相手の数が数だ。向こうは見える限り少なくても十体程……それに対して此方はニアタと僕を外せばカノンノ、メリア、ヴェイグの三人だけだ。流石にあの数を三人だけに相手させる訳には……。

そう迷っていた時であった……。

 

「(!ふむ……主様、どうやらその心配は不要なようだ)」

 

「え……それって、一体……」

 

『──カハハッ! 困っているようだな、小僧っ!』

 

ウンディーネの言葉が頭の中に響き、その言葉の意味を聞こうとした瞬間、上空から高い聞き覚えのある声が耳に届き、ジルディアの民達に炎の塊が降り注いだ。突然の炎の塊の落下にジルディアの民達は対応出来ず、全てとはいかないが数体が炎に飲まれて燃えていった。

この声に炎……間違いないっ!

 

「まさか……イフリートっ!?」

 

『カハハッ! 久方振りだな、小僧よ。あの時の礼、返しにきたぞっ!』

 

僕の声に答えるように、僕達とジルディアの民達の間に割り込むように上空から降り現れたのは、炎を身に纏った人の上半身の姿をした者……見間違うこと無く、以前サレに操られ暴走した火を司る大精霊『イフリート』であった。

『借り』については以前の時に言っていたのは覚えてるけど……でも、どうやって此処に……。

 

「(それについては……実は昨日、主の身体から離れた後、ウンディーネと話し合ってイフリートをこのエラン・ヴィタールに呼ぶことにしたのです)」

 

「(最悪、余かヴォルトのどちらが主様の身体から離れて足止めを担当するつもりであったからな。その時に離れすぎた際に主様の身体に影響が無いかどうかの確認も込めて、余達は独断で離れてイフリートを呼びに行ったのだ。結果的に主様の身体に影響は無く、イフリートもこうやって呼べたわけであるが)」

 

『うむ……話はヴォルトとウンディーネから聞いている。此処は我に任せて先に行くが良い。安心せよ、小僧……お前への礼だ。此処から先は何人たりとも通しはさせんわ』

 

僕の疑問に頭の中でヴォルトとウンディーネの説明の声が響き、イフリートもそれが聞こえているのか一度頷くとそう言って、ジルディアの民達の前に妨害するように振り返った。

以前、暴走していたとはいえ戦ったその実力からイフリートのその姿は、自然と頼もしく見えた。

 

「イフリート……ありがとう」

 

『カハッ! お前への礼なのだ……礼をされる側ではないのだがな。まぁよい、その言葉が聞けただけで我は心地良いからな。さぁ、早く行くがよい』

 

「分かった……行こう、皆っ!」

 

高らかに笑い、僕達に背を向けたままそう言ったイフリート。その姿に、僕は大きく頷くと皆を連れて中心部へと向かう道へと走り出し、イフリートはそれに合わせるようにジルディアの民達の方に向かって拳を振り上げた。

後方から聞こえだした轟音を背に、僕達はなるべく後方を見ないように中心部へと向かった。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

──中心部へと向かって走り……暫くして僕達の目線の先に、リタが立体映像で映し出していた中心部に立っているであろう建物の姿が見えだした。

ただ、その前に……まるでその建物を見守るように僕達に背を向けて立つ人の姿があった。そして……少なからず、僕達はその後ろ姿の人物を知っていた。

 

「──やはり……こんな所に居たんだな、サレ」

 

ヴェイグが僕やカノンノ達より一歩前にでて、後ろ姿の人物に向かってそう言葉を出した。その人物──サレは僕達の方にゆっくりと振り返ってきて小さく口元を吊り上げた。

そのサレの姿は……以前僕達が浄化した時から傷そのものは消えてはいるが、結晶化している部分は以前の片目部分だけであった。

 

「おや……やっぱり来たのかい。予想してたよりは少し早かったのは意外だけどね」

 

「サレ……悪いが、そこを通してもらうぞ」

 

「君達もしつこいね……。この素晴らしい大地を、景色を見てまだこの世界を守ろうだなんて……」

 

口元を吊り上げたまま言葉を出すサレに向かって、ヴェイグが剣に手をかけながら言うとサレは『やれやれ』というかのように溜め息を吐いてみせ、まるで今、この場にいる事を喜んでいるように両手を広げてそう言った後、広げた片手を奥に立つ建物へと向けた。

 

「もう間もなくラザリスは『生命の場』を浸食してこのルミナシアはジルディアに飲み込まれる。悪いけど……ラザリスの世界の為だし、思いっきり邪魔させてもらうよ」

 

「っ!」

 

建物へと向けていた手を此方に戻し吊り上げた口元を更にあげ、サレは不気味に笑みを浮かべてそう言うと結晶で造られたような細剣を出現させて構えた。サレの行動に思わず僕達も身構える中……片手を剣に添えたヴェイグがもう片方の手を僕達の前に止めるように出した。

 

「ヴェイグ……?」

 

「……俺がサレの相手をする。衛司達はその隙に先に進め」

 

「そんな……いくらヴェイグでも一人だけじゃ……っ!」

 

「サレの言っている事が本当なら、俺達全員でサレと戦って時間を使うよりも俺がサレと戦ってお前達を先に行かせてラザリスを止めさせる方がいいだろう。それに……元々、サレとは決着をつけるつもりだったからな」

 

そう言って僕達より更に一歩前へと出て剣を抜き、サレに向かって真っ直ぐと構えるヴェイグ。

幾らサレが弱体化しているとはいえ、ヴェイグ一人で戦うのは確実に危険だろう。だけど……今はヴェイグの言うとおり、今着実に浸食を進めているだろうラザリスを止めるためには、此処はヴェイグを信じて先に進むしかないだろう。

 

「……ヴェイグ、ごめん……任せたよ」

 

「あぁ。……衛司……お前も、『無茶をし過ぎるな』よ」

 

「え……」

 

「……スゥ……ハアァアァァァァァッ!」

 

僕の一言にヴェイグは剣を構えたまま小さく一度頷いた後、僕を目だけで真っ直ぐと見てそう言った。

その言葉はまるで、僕の身体の状態をわかっているかのようで僕は思わず言葉を出しかけるが、ヴェイグは一度呼吸をした直後剣を振り上げて声とともにサレに突撃した。

 

「っと……これはこれは……っ!」

 

「! 今のうちだよ、行こうカノンノ、メリア、ニアタっ!」

 

「う、うんっ!」

 

ヴェイグの突撃にサレは結晶の細剣で防ぐと、そのままヴェイグと鍔迫り合いになって建物への道が完全に開いた。僕はヴェイグとサレの戦闘開始に茫然としているカノンノ達を呼び、カノンノ達を連れて中心部の建物へと入った。

ヴェイグ……任せたよ……っ!

 

 

 

 

 

 

 

「──……意外だな」

 

「おや、何がだい?」

 

──衛司達が中心部の建物に入ったのを見送った直後、鍔迫り合いを離しサレから距離をとったヴェイグは剣を構え直しながらサレを真っ直ぐと見てそう言い、サレはその言葉に小さく首を傾げて応えた。

そんなサレにヴェイグは視線を逸らすことなく口を開いた。

 

「さっきの事だ。お前なら、俺の攻撃を避けて衛司達が進むのを止められた筈だ。……何故わざわざ通らせた?」

 

「おや、やっぱり気付かれてたかい。……衛司君やメリアちゃんはラザリスのお気に入りだからね、元々通すつもりだったんだ。後のカノンノちゃんとニアタ……だっけ? あの二人はいわばオマケだよ。後は……ヴェイグ、そろそろ君と決着をつけたかったからね」

 

ヴェイグの言葉にサレはクスリと笑うように笑みを浮かべると、建物へと一度視線を向けてそう言っていき最後にヴェイグへと視線を戻して細剣の切っ先をヴェイグに向けた。

サレのその返答を聞き、ヴェイグは真っ直ぐとサレを見たまま構える剣を握る力を強め口を開いた。

 

「そうか……なら、ちょうどいい。俺も、お前とは決着をつけたかったからな。それに……お前に聞いておく事もあった」

 

「おや、まだなんかあるのかい?でもまぁ……もし聞きたいんなら、此処からは僕を倒せてからにしたらどうだい?」

 

「あぁ……はじめからそのつもりだ」

 

お互いに見合ったままヴェイグとサレは言葉を交わり合わせ、お互い武器を握る手の力を強める。

真っ直ぐと、ただ無言でお互いに睨み合い……少し時間が立った時だった。

 

「──ハアァアァァァァァッ!」

 

「──ヒャハハァアァァァッ!」

 

一陣の強い風が吹き、それによって舞い上がった一つの小石が浮き、地面へと落ちた音がした瞬間、それを合図にするかのようにヴェイグとサレはほぼ同時に、地を蹴り相手へと向けて斬り掛かった。

 

『氷』と『風』……混じり合うことがなかった二人の、最後の激突が幕を上げた……。

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

──皆に、イフリートに、ヴェイグに道を作ってもらいながらようやく到着することのできた中心部の建物。僕達はそこに足を踏み入れ中に入ると……僕達の前に広がったのはただ大きくひらけたフロアで、このフロアの周りほぼ全てが結晶で構築されているという光景だった。

そしてその奥に……僕達が探していた人物の後ろ姿があった。

 

「……ラザリス……」

 

「……来たんだね、ルミナシアのディセンダー」

 

メリアの言葉に反応するようにゆっくりと僕達の方へと振り返るラザリス。よく見れば先程までラザリスが見ていたであろう彼女の背後には、淡く輝く宙に浮いた光の塊と、それに迫るように浸食を進めている結晶が見えた。

僕達の視線に気付いたのか、ラザリスは光の方を見て静かに口を開いた。

 

「分かるかい? あれが、あの光こそがルミナシアの世界の中枢……生命力が生まれ、世界の理を維持するところ、『生命の場』さ」

 

「つまり……その近づいている結晶があの光に浸食したら……」

 

「そう、君達『ルミナシア』の世界は終わり、僕の『ジルディア』の世界が始まる。争いもなく、僕が与える恵みに浸り平和に暮らしていける」

 

「恵みを受け取るだけが幸せなんて……そんなの間違ってるよっ!」

 

光の塊……『生命の場』へと手を伸ばし、そう淡々と言っていくラザリス。そのラザリスの言葉にカノンノが声を上げると、ラザリスは僕達にキッと睨むように振り返った。

 

「欲しがってばかりじゃないか、いつも君達は……ずっと! 滅びるまでっ! 奪い合うだけじゃないかっ! ……だから僕が変える……ルミナシアを。僕が与え続けるよ、君達は何もしなくていい……僕の世界で『創造』をする必要はないんだ」

 

僕を睨んだまま叫ぶようにそう言っていくラザリス。ラザリスの言う『彼女が作り、僕達がもらい続ける創造』……だけど、それは……つまり……。

 

「ラザリス……君は、自分の世界の住人からも……想像を奪うつもりなのか?」

 

「そうさ。創造は『欲』だ、『罪』なんだよ。君達の欲は満たされる事がない。人はそれを追い求め、ついには危機を招く。僕一人がその罪を背負うよ。この世界の終わりまで、ね……」

 

「……そんなの……そんなの、違うッ!」

 

ラザリスの言葉に僕達より一歩前に出て声を出したメリア。そのメリアの言葉にラザリスはジッとメリアを見つめて静かに問い掛けた。

 

「何が違うんだい、ディセンダー?」

 

「……確かに……ラザリスの言う事はあってる所もある。……だけど創造が作るのは罪だけじゃないっ! 楽しみや、喜びや、幸せだってあるっ! ……私は……私が見てきたこの世界のヒト達は……少なくともそうだった……」

 

ラザリスの問いに途切れながらもそう声上げていくメリア。言葉を出しながらメリアは一度僕達の方を振り返って小さく一度頷くと、再びラザリスに向き直り言葉を続けた。

 

「……だから……それを『罪』だなんて言って、一人で背負おうとしないで……。世界樹は……きっと、そんな生き方……望んでない……」

 

「ッ! だったらっ! だったら何故、僕を取り込んだっ!? 僕を封じ込めてまでっ!!」

 

「……一緒に、生きたいからだよ」

 

真っ直ぐとラザリスを見てそう言葉を続けたメリア。そのメリアの言葉にラザリスは再び叫ぶように、吠えるように声を上げる。ラザリスの言葉に、僕はメリアと並ぶように一歩前に出てそう言った。

元々、このルミナシアがジルディアを取り込んだのは今はまだ『理』が違い、共に生きていく事が出来ないジルディアの世界を、一緒に生きていこうとする為に取り込み星晶で『休ませて』いたのだ。

だから、決して……このルミナシアは彼女のジルディアを否定している訳ではないのだ。

ラザリスは僕のその言葉を聞くと、キッと睨んだまま僕に向けて口を開いた。

 

「……君にも聞きたい事があったよ、イレギュラー。君はどうして……こんな世界の為にそこまで命を張れるんだい? 『君の世界』と全く関係の無いだろう、この世界を……」

 

「……この世界が好きだからだよ、ラザリス。確かに、君の言う通り……この世界は僕の世界とも、君の世界とも違う。この世界のヒト達の醜い所や、汚い所もそれなりに見てきた。……だけどさ、メリアの言う通り、この世界はそれだけじゃない。大切なヒト達を守る意志も、人々が変わっていける姿も、人を好きになる想いを見てきた。だから、僕はこの世界を好きになった。だからこの世界の為に出来ることはなんだってやってやろうって決めたんだ」

 

僕を睨んだまま問い掛けてきたラザリスに、真っ直ぐと向き合ったまま僕は自分の想いをラザリスへと伝えた。

僕の言葉を聞き、ラザリスはゆっくりと顔を俯かせて静かに言葉を出した。

 

「……そう、かい。『好き』になったから、か。……もし君が、このルミナシアの世界じゃなくて……僕のジルディアの世界に来ていれば……」

 

「……こんな綺麗な世界だからね。もしかしたらジルディアの世界を好きになって……そのジルディアを救うために動く君を見て、君を好きになってたかもしれないね。……だけど多分、きっと……少なくともこんな風に争わないで済む方法を探してたと思うよ」

 

俯いたままのラザリスに、僕は『もしかしたら』あったかも知れない出会いを想いながらそう言葉を出した。この場所に来るまでの道で見てきた景色は……『生』というものはまだ感じれなかったけど、少なくとも美しさは感じれた。だからもしかしたら……僕が落ちた場所がルミナシアではなく、ジルディアであったら……彼女とはそういう出会いもあったかもしれない。

僕の返答を聞き、ラザリスは俯いたまま少し震えたと思うと、睨むように顔を上げて口を開いた。

 

「……そうかい。やっぱり、君達とは相容れないみたいだよ。……僕の世界は君達の世界と交わろうと思っていないし、思いたくもない。この世界も……ディセンダーと手に入れるまで諦めてくれそうにないみたいだからね」

 

「……やっぱり……こうなるんだね……」

 

僕達を睨んだままそう静かに言うと、戦闘態勢へと入ろうとするラザリス。その様子を見て、メリアはどこか哀しげに声を漏らして武器である短刀へと手を掛けた。

二人の行動に、僕とカノンノはニアタを後ろへと下げさせるとメリアと同じようにそれぞれ武器に手を掛け、それを見たラザリスはキッと僕達を見たまま声を上げた。

 

「さぁ、来るんだディセンダー。……それにイレギュラーと、この世界のヒトよ。皆まとめて……僕のモノになってもらうよっ!!」

 

「……この世界を……皆を絶対に終わらせたりしない……。……行くよ……ラザリスっ!」

 

声を荒げるように言うラザリスに短刀を手に低く構えて声を上げるメリア。

──ルミナシアの世界と、ジルディアの世界を賭けた……最終決戦が今、始まった。

 

 

 

 








──以上、第七十一話、如何だったでしょうか?

今話はラストバトルに向けてかなり無茶苦茶纏めすぎたかなー、とちょっと思ってます;;


【エラン・ヴィタールの解析等々】
エラン・ヴィタールの解析云々や妨害の仕掛け等々は漫画版でも同じようにリタ達がやってたのでそれを参考にしてみました。
何故ラザリスの居場所を中心部にしたのかは、正直あのラストダンジョンの道のりが複雑すぎてどう描写していいか分からなかったからである←←
因みにリタ達の探索を二時間にしたのは私がエラン・ヴィタールで迷いまくってラザリスの居場所についたのがそれぐらい掛かったからです(実話)←←


【イフリート再登場】
前に言ったと思いますが、イフリート此処で再登場です+
どうやってついてきたかについては、実は光の玉状態で始めからバンエルティア号にくっついてた、とか考えてもらえるとありがたいです←


【ヴェイグとサレ】
ヴェイグとサレ、最後の決着です。
元々サレの最後はやっぱりヴェイグに決めてもらおうと思ってましたからね。
だが描写はしない、気付いたら終わってるパターンとします←←

サレ様「!?」

あ、後いくらラストバトルだからといって決して『虹のフォルス』、『一人四星』とかはしないです←


【ラザリス】
そして遂に、ラストバトル開始です。
ニアタさんがかなり空気でしたが仕方ない←
漫画版基準で書いてたし、原作でもこの部分、某解説王ばりに解説に徹してたからこうなっても仕方ない←←

衛司君の話した『もしかしたら』は書いてて思わず『小ネタで書いてみようか』と考えてみたんで困る←

ラザリスとのこの場面のやり取りはラザリスの言ってる事も多少なりとも間違ってない部分があったりするんで本当に悩んだなー……←



次回は遂に、ラザリスとのラストバトルスタートとなります。
果たして世界の運命は?
そして、衛司の結末は……?

皆様良ければ感想、ご意見、評価等宜しくお願いします+

後、多分次回の投稿は遅れてしまうと思います;
原因は仕事がこれから少し忙しい時期に入るのと、十日に出るスパロボZです←
出来る限り早く投稿させられるよう頑張ります;


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