私ことイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、愛称イリヤには前世の記憶と言う物がある。
前世の私は何処にでもいる普通の日本人だった。だけど、ブラック企業の激務に耐えきれず過労が限界を迎え社内で倒れてしまったのだ。
その後、気が付いたら私はイリヤスフィールとして再びこの世に生を受けたのだが……周りの情報を集めていくと信じがたい事実を知ってしまった。
私が生まれたアインツベルン家は表向きはドイツの古い貴族だが、実際は外界から隔絶された古い魔術師の家系だったんだ。
この時点でヤバめのフラグが乱立しているのだが神様は余程私が嫌いらしい。
更なる爆弾として私や母親であるアイリスフィール・フォン・アインツベルンは全ての始まりである根源に辿り着くための大規模な魔術儀式、聖杯戦争に必要不可欠な魔術礼装である聖杯その物だった。
聖杯戦争で聖杯が完成すると同時に私達母娘は人としての機能を失い、人として死ぬ。そんな定めを産まれながらに持っていたのだ。
8歳になった頃、とうとう聖杯戦争が始まる前兆が現れてしまった。
そして、私の父親である魔術師殺しの異名を持つ衛宮切嗣が己の願いを成就するために聖杯戦争に挑んだ。
しかし結果はアイリお母様は帰ってこれず、
そして……お母様が死に
反抗する術の無かった私はバーサーカーを召喚するまではアインツベルンに服従するしかなかった。
だが、バーサーカーを召喚しバーサーカーと心を通わせた時に私はアインツベルンに反抗する手立てを獲たのだ。そしてバーサーカーに頼んでアインツベルンを壊滅させたのだ。
その後、聖杯戦争の舞台である冬木市に入って直ぐに
それが災いしマスターに選ばれてしまう。
義理とは言えこの世でたった一人しかいない家族である士郎を私は死なせたくなかった。
だから、士郎の成長を妨げない様に注意しながらも
しかし、そこから1年と数ヶ月が経ったころ事態は急変し、私にとって最悪の物になってしまった。
「ふははははは!!理性があった貴様なら兎も角、狂った獣に堕ちた貴様程度がこの
「■■■■■■っ!!!」
黄金のサーヴァントの言葉が確かならあのサーヴァントは英雄王ギルガメッシュ。
バビロニアの暴君にして人類史最古の王のはずだ。彼はこの世すべての財を手にしたとされている。それを象徴するかの様に様々な宝具がバーサーカーを襲う。
無論、バーサーカーが迎撃に向かうが相性が最悪な上に私の未熟さのせいで
「バーサーカー……」
目の前で繰り広げられる大英雄ヘラクレスと英雄王ギルガメッシュの神話にも匹敵する戦いに私はただ祈ることしか出来なかった。
しかし、私の祈りは通じずバーサーカーは徐々に命のストックを減らしていく。
そして命の残高が残り一つになった途端、バーサーカーは守りを捨てた。ギルガメッシュに道連れだと言わんばかりに捨て身の一撃を放つ。
「ふっ、残念だったな。バーサーカー。貴様程の神性持ちなら
ギルガメッシュの言葉が正しいのなら
一撃が当たる寸前で拘束されたバーサーカーは無数の宝具に身体を貫かれ止めを差されてしまう。
「あぁ……バーサーカー……」
私みたいな未熟な魔術師を守ってきてくれたバーサーカーが消えていく。
何とも言えない喪失感と同時に目の前に迫ってきている死への恐怖で私はその場に崩れ落ちてしまう。
「ふんっ、現代の魔術師も芸がないものだな。前回と同じく聖杯に人格を持たせ、あまつさえもマスターにしたてあげるとはな」
「ひっ」
思わず悲鳴が漏れてしまう。
目の前に居るのは一度はこの世全てを手にいれた最古の王、ギルガメッシュなのだから。
この英霊には何をしても勝てはしないと言う考えが頭の中に自然に浮かんでしまうのだ。
「ではな、人形。せめてもの情けだ。一瞬で逝かせてやろう」
「がふっ……」
グチャッと言う水っぽい音が聞こえると共に胸が突き破られる感触がした。
そして、私の心臓……聖杯を掴み一気に抜き取られる感覚と共に私の意識はそこで途絶えた。
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気が付くと私は見覚えが全く無い場所に居た。
そして、私の目の前には人の事は言えないが造られた様に整った容姿を持つ少女が椅子に座っていた。
「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさん。ようこそ、死後の世界に。貴女はつい先程、亡くなってしまいました」
「あっ……そっか……私は……」
全服の信頼を置いていたバーサーカーがあっさりと殺され、
ついさっきの光景、感覚が脳裏を過り膝が震え立てなくなり崩れ落ちる。そして、恐怖で全身が震える。
「あっ……いやっ……」
うずくまり震えているとふと頭を優しく撫でられる感触がした。震える身体を起こすと優しく抱き締められる。
「大丈夫ですよ……。ここには貴女を害する存在は居ません」
まるで母親の様に優しい声色で少女は私に言い聞かせるように語りかけてくれる。
そして、暫くの間この状態で居ると落ち着きを取り戻す。
「えっと……取り乱してしまってスミマセン……」
「いえいえ。貴女の最後が最後ですから恐怖する事は仕方がありません」
「はい……」
「さて、改めて話を始めましょうか。私の名は幸福の女神エリスと申します」
そう自己紹介してきた少女……もとい女神であると言うエリス様。
慈愛と神々しさが相まって目の前にいる少女は女神様だと言うことが本能的に理解できてしまう。
「女神って本当にいるんですね……」
私は直ぐ側に
いや、理屈では神は実在することは知っていたが、バーサーカーは写し身に過ぎなかった。
だからなのか地上か目の前に居ると考えると現実離れしてるなーと思ってしまう。
まぁ、バーサーカーも魔術師の私が見ても充分現実離れした存在だったけど……。
「ふふふ、そうですね。私の他にも何人もの女神や神が存在しますよ。さて、本題に入りましょう。イリヤスフィールさん。
私はあるお方に対する依頼の報酬……願いを叶える為に貴女をこの場に呼びました」
その言葉で私は困惑する。何せ、私の周りで目の前に居る本物の女神様とはまるで縁がないのだ。
私の回りにはバーサーカーと言う神代の大英雄以外神聖な存在と関わりなどないのだから……。
私にあったのは血に染まった魔術師の歴史とアインツベルンの呪縛しかなかったはずなのに。
「その方は貴女の義理の弟さん……エミヤシロウさんです」
「え……士郎が……?」
「はい……彼はイリヤさんが亡くなった十数年後、世界と契約し守護者となられました。そして現在は守護者として抑止力の一端としてアラヤに酷使されているんです」
「そんな……」
簡単に言えば人類を存命させるための大いなる意識、アラヤが人類が滅びえる大災害や人災の際に関わったもの全てを破壊し殺すことでそこで起こった全てを抹消し、それ以上被害を拡大させない様にする世界のシステム。そして、それを実行するのが
何かを成すために世界と契約し、死後を受け渡した者達。
意思さえも奪われ目の前のもの全てを壊し尽くす彼らは世界の掃除屋とも呼ばれている存在である。
「ですが……彼は、エミヤさんはあるチャンスを掴みました。
私達、神は時たまとある世界に若くして亡くなられたあなた方の世界の方を転生させると言う形で送り出しています。
その代価は魔王討伐。
そして、勇者となるべく送られた若者には特典を与え異世界に送り出しています」
「……それと士郎がどう関係しているのですか?」
「それは私達が送り出した若者達と関係しています。
その中の少女がサーヴァント召喚の権利を授かり、異世界に向かいました。
そして召喚されたのは守護者となったエミヤさんだったのです」
「あの唐変木め……」
私は桜や凛と言った士郎に惚れていた少女達に囲まれた姿を思いだし、思わず額に手を当ててしまった。
「あははは……。そして、エミヤさんとそのマスターになった少女は幾多の歴戦を経て等々数代前の魔王を打ち倒しました。
その際に特例でエミヤさんの願いを叶える事になったのです。
その願いとは……貴女が幸せになることです。
ちなみにエミヤさんは少女の願いによって受肉し、その世界で再び生を受け、その生涯を彼女の伴侶として過ごしたんです」
「士郎、私のことそこまで思ってくれていたんだ」
「えぇ、彼は貴女の事をたった一人の大切な姉だと言っていましたよ」
エリス様から士郎の話を聞けて私は何とも言えない感情が込み上げてきた。
「さて、ここからが本題になります。
貴女はエミヤシロウさんの願いにより健全な身体を得て、転生してもらいます。
転生先はどこでも良いです。なんなら魔術なんて関係しない貴女のご家族と幸せに暮らせる世界でも構いません」
エリス様の提案は凄く魅力的だった。
脳裏に
決して手に入れることの無い何気ない生活。私が望んで止まなかった物。
でも、それを選んでしまうと私は絶対に後悔すると思うんだ。だって私の両親は死んでしまった二人だけなんだ
ら。
だったら私は……
「エリス様、私決めました。私は士郎が召喚された世界に行きます。
そこで私なりに幸せを見つけてみたいと思います」
私の言葉にエリス様がビックリしていたが次第に嬉しそうな表情に変わっていく。
「そうですか。ではイリヤスフィールさん。
あなたは私が管理し、エミヤさんが召喚された世界に転生することになります。
その際に、1つだけ特殊な武器や能力を授けます。まぁ、エミヤさんを召喚したような力ですね」
「成る程……では、エリス様。あなたのお勧めの特典をください。下手に選んだ物よりエリス様が選んだ物の方が確実だと思うので……」
「成る程……貴女の願いを受諾します。
では、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさん。私は貴女にこちらをお勧めしたいと思います」
そして、エリス様が私に手渡してきたのは一枚の弓兵が描かれたカードだった。
だが、それはただのカードではなくとてつもなく複雑な魔術理論で構築された魔術礼装だったのだ。
「この複雑な魔術理論は……」
「これはクラスカード。
貴女の居た世界の平行世界で行われたイリヤさんには全く関係の無い聖杯戦争の参加資格だった物……の完全な複製品です。
そして、このカードは……いえ、野暮な真似は止めましょう。貴女ならばそれを使ったならば自ずと理解できるはずです」
「え、それって……」
「ふふふ、内緒ですよ?私が一人の転生者を贔屓にしているなんて?」
「あ、はい」
と、エリス様は素敵な笑みを浮かべながらそう言ってきた。ただし、目は全く笑ってない。
「では、イリヤさん!貴女はこれから再び生を受け、異世界に旅立ちます!願わくば貴女の行く末に祝福を!」
エリス様のその言葉の直ぐ後に私の足元に魔法陣が現れる。そしては魔法陣から発せられ光に包まれた。
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私が目を開けるとそこはレンガ造りの建物が建ち並び現代的な建造物が一切無い中世のヨーロッパの様な町並みだった。
「ホントに……私は転生したんだ」
しかし、私はふとした違和感を覚えた。
身体のあちこちにガタ来ていて失明寸前だった右目の視界が戻り、常に痺れを訴えていた左足の痺れ、常に体を襲う倦怠感が無くなっていたのだ。私はすかさず近くにあったため池に自身を写し出す。
「うそ……目が本当に戻ってる……」
そこに写し出されたのは、濁りきり機能がほぼ失われた右目と常に血色が悪い青ざめた顔色ではなく瞳に光が戻った健康的な右目と血色の良くなった顔色をしている私だった。
「う、うぅぅ……」
私は思わず泣き出してしまう。だって今までずっと誤魔化してきた身体の不調の一切がスッキリと消えてなくなり死の恐怖に怯えなくていいのだから。
そして、暫くの間泣いた私は気分が落ち着いたので何事もなかった様にその場を後にする。
「……私はこの世界で自由に生きる。前の世界や前世の社畜の私の数倍は生きてやる……」
そう決意し、私は行動を開始するするための第一歩を歩みだした。
このイリヤ(偽)の一人称は一律して『私』で通します。原作イリヤとは素の時が『わたし』、マスターとして冷酷さをだして振る舞う時は『私』となっていますがイリヤ(偽)はぶっちゃけ裏表が無い性格をしているためです。
まぁ、それでもアインツベルン家を潰す時にユーブスタクハイト以下老害共をミンチにしても罪悪感が無かった点では魔術師の思考回路になっちゃってますけどね