ザクロの実が盗まれたことでマミはショックで寝込んでしまった。
杏子は風で落ちたというが、無いと分かった直後に下をくまなく探した。
でもザクロどころか落ちた形跡すらなかった。
まさにその場から消えてしまったのだ。
「大丈夫かマミ」
「ダメ」
ちょうどその時、まどかたちが放課後で看病しに来た。
「大丈夫ですかマミさん」
「風邪って聞きましたけど」
「珍しいこともあるのね」
三人は杏子から事件の経緯とマミの現状を説明する。
するとマミが自分の部屋からパジャマ姿で出てくる。
「大丈夫か?」
「え、ええ。みんなが来てくれたから少しはよくなったわ」
とりあえず来てくれたのでお菓子と紅茶だけでも出す。
体調が悪いのにとまどかたちは遠慮したがそれでもマミは大丈夫と、お菓子をご馳走してくれた。
「でもおかしいね」
「うん、昨日まで元気に実をつけていたのに突然一個なくなるなんて」
「そうね・・・私も不思議でしょうがないわ」
「どうしてあなたはザクロにそこまでこだわるの?」
確かに、普通のカキやミカン程度ならここまで大騒ぎになることもないだろう。
でもマミにはなにかしらの事情があるようにほむらは思えた。
「ザクロは私の想い出の木なの」
「想い出?」
「そうよ、小さいころ・・・まだお母さんたちが生きていたころ・・・よくザクロを食べさせてくれたのよ。それがおいしくておいしくて。でも両親が事故で亡くなっちゃったでしょ。だからあのザクロを見るとお母さんとお父さんを思い出しちゃって・・・ごめんなさい」
そんなマミの想い出にウルッとくる一同。
そうとわかれば一刻も早く犯人を見つけてやることがマミのためだ。
「ようし!私に任せろ!」
名乗りを上げたのは杏子だった。
以前にもマミのティーカップを見事推理で見つけてやったことがあった。
「犯人は・・・ねえ」
ほむらのほうをじっと見つめる杏子。
場が悪そうにお菓子をほおばるほむらとさやか。
「と、ともかく早く推理してみなさいっ」
「へいへい。ザクロの実が無くなったことに気付いたのは今朝だから、さやか!」
「は、はいっ」
急に大声で名前を呼ばれて畏縮する。
「昨日ウチに来たとき何してた」
「ここはあなたのウチじゃないわよ」
「と、ともかくそれは置いといて、何してた?」
「まさか私を疑ってんの?」
「だってマミのベランダに出入りできるのはここにいるメンバーだけだろ」
「だからって私ザクロなんか取んないよ!」
「ザクロなんか・・・って」
自分にとっては大切なザクロでも人から見れば“なんか”、マミはちょっとショック。
一方で杏子の取り調べは続いた。
「じゃあほむらは?」
「知らないわよ。ていうか風で飛ばされたんじゃない。昨日は風強かったし」
その線も十分にあり得るが、マミは確かによく探した。
だから風が犯人の可能性ははないとマミは言う
「だったらほら、この前の連想式推理何チャラ使ってみれば」
「いいわね。使ってみましょう。連想式推理虫メガネ!」
前にも説明したがこの道具は、推理したいことを言ってスイッチを入れると、その特徴から連想される事柄が次々に表示され、最後には推理結果に辿りつく道具だ。
前にもこの道具を利用してさやかとほむらは推理を披露しよとしたが・・・それはまた別の話。
「前回失敗したじゃんそれ」
「今度は大丈夫よ」
「早く暁美さん」
ほむらがマミのザクロはどこにあるかと質問しスイッチを押してみる。
だがしかし。
「あれ?あれれ?おかしいわね」
どれだけスイッチを押しても虫メガネからは何も表示されない。
要するに率直に大方の予想通り平たく所はばからずに正直に言ってしまえば。
「故障したわ」
そういうことだ。
結局その日は犯人の目星はつかない。
ところがこの騒ぎはこれで終わらなかった。
「いやぁぁぁあああああああああ~~」
またしてもマミの悲鳴で起こされる杏子。
もしやと思い急いでベランダのほうに向かう。
「こ、これは…うそだろ」
杏子は目を疑った。
そこには昨日まであった2個のザクロのうち1個がまたしてももぎ取られ、あまりの衝撃に目を丸くして倒れているマミの姿があった。
「なんでどういうことだよ」
この日は土曜日、午前授業で昼過ぎからまどかたちが見舞いに来てくれた。
二日連続でザクロがなくなっていると電話で聞いた時にはさすがにビックリしていたが。
「どうして・・・昨日は風なんか吹いてなかったのに」
「マミ。そんなに落ち込むなよ」
「うん。まだ一個残ってるし」
「実をつけたザクロなんて子供の時以来で、私懐かしくて本当にうれしかったのよ」
可哀想で早く何とかしてあげたかった。
「もしかして」
「どうしたの杏子」
「犯人はもしかしてカラスなんじゃねえか」
カラスならザクロをもぎ取って空に逃げることも可能だ。
そうとわかればカラス除けを設置しなければならないが。
「カラス除けってなんかあったか?」
そういうものを買ったことないのであいにくマミの家にはない。
ネットで調べて見るとどうやらカラスは常に生息環境の状況を把握して生活しているので、見慣れない物があると警戒して近づかない習性を持つ。
つまりCDやキラキラテープを吊るして、それが光ることによって異常空間を作り出すためカラスは警戒して近づかないようだ。
「でも私いまCD持ってないわ」
「それなら、とりよせバッグ!」
ほむらが楯から取り出したのは婦人用のハンドバッグの形状をしている道具。
「この道具は遠くの場所にある物をバッグの中に手を入れて手元に取り寄せることができるのよ」
「すごいじゃねえか。じゃあさっそく」
とりよせバッグに手を入れて取り出した大量のCDケース。
これだけあればカラスも近寄ることないだろう。
「よ~し!さっそくとりつけ・・・ん?」
何かに気づき、恐る恐るCDケースを確認してみる。
まさかとは思いつつも・・・
「ああああ~~~~~!!!恭介にあげたCD!!!!」
「そうよ。お店の物を盗むわけにはいかないでしょう」
「ふざけんなって!どうしてよりにもよって恭介のを!」
「でも買ったのはあなたでしょ」
「そういう問題じゃないって。てかそれ泥棒でしょ」
「以前から自衛隊の武器庫から弾薬を盗んでいる私よ。たかだかCDぐらい」
「あんたねえ・・・」
「まあともかくこれでカラスは来ないわ」
「ダメダメダメえええ!!これは今すぐ恭介のもとに返してきて!」
「まったく美樹さやかは変なところで正義感ぶるんだから」
「そういう問題じゃない!」
「ね、ねえ・・・」
ほむらとさやかの言い争いにまどかがそっと口をはさむ。
さきほどから何か言いたそうだったが二人があまりにもすごい剣幕で争っているので口をはさめなかったのだ。
「なに?」
「ザクロはいつも朝になるとなくなっていたんでしょ、マミさん」
「ええそうだけど」
「だったら犯人はカラスとは違うとおもんだ。鳥は夜活動しないし」
盲点だった。
フクロウなどの夜行性とは違い、ハトやカラスなどは夜には活動をしない。
一般的には午前から夕方にかけてだ。
「おい、てことは今夜も」
「うん。またザクロがなくなるかも」
全てがなくなるという最悪の結末を想像するマミ。
風でもなく、鳥でもなく、これはもはやはな提灯が引っ込むように引っ込んだとしか思えない。
「その例えはどうかと思うわ」
「でも他に考えられないわ」
そろそろ犯人を捕まえないとマミはストレスで死んでしまうかもしれない。
そしてその夜。
明日が休みと言う事で全員止まっていくことにした。
午前2時ぐらいにほむらがトイレに起きると、ベランダ近くにマミが座っていた。
「まだ起きてるの?」
「起こしてごめんなさいね。鹿目さんの言っていることが気になってね」
「もう2時よ」
「もうすぐ寝るわ。暁美さんも早く寝たほうがいいわ」
最後のザクロの実はまだちゃんと残っている。
「なくならないといいわね」
「うん」
マミ一人を起こしておくのも悪いと、ほむらも椅子を取り出して一緒に見張ることにする。
すると今度はさやかとまどかが来た。
「何してるの?」
「ザクロの見張り。ごめんなさい、起こしちゃった?」
「いや大丈夫ですよ」
「うん」
実は二人も気になってわざわざ見に来たのだとほむらは思う。
翌朝。
4人は椅子に座ったままお互い寄り添いながら寝てしまった。
寝ているマミをそっと起こす杏子。
「佐倉さん」
「ほら、見て見ろよ、あれ」
「あっ」
それを見たマミはすべてを理解した。
理解すると同時に自然に顔がほころぶ。
「暁美さん、美樹さん、鹿目さん、見てごらん」
「「「あっ!」」」
三人が見たのはベランダの柵の隙間からザクロを取ろうとする2歳ぐらいの男の子。
隣の家の子供だ。
「大きくなったね。この前まで赤ちゃんだったのに」
「へえ」
一生懸命手を伸ばしながら頑張る。
みんな「がんばれ」と心の中で熱いエールを送る。
やっとザクロを手に入れると笑顔で喜ぶ男の子。
「やったわ」
とんだザクロ騒動と思いきや思わぬ可愛いものを目撃した日曜の朝だった。
「捨て鉢物語」END
原案:なし(オリジナル作品)
原典:あたしンち:2002年9月6日放送「ベランダでどっきりっ!?」
脚本:高橋ナツコ
絵コンテ:山本寛 演出:牛草健
作画監督:向田隆