ついにパート4まで来ました。
原案のないオリジナルだとこうも長くなってしまうんですね。
実はクリスマススペシャルに一本ネタがあるんですが、間に合うかな・・・
植木との電話を切り、一息つくほむら。
だが他の四人は一息なんてついている余裕がない。
「驚いちゃったな」
「ほむらはもう私達とは違う世界の人間なんだね」
さやかは何かを悟ったような顔をしている。
「何を言っているの?」
「だってだってだって!」
「はぁ・・・よく聞きなさい」
ファサッと、嫌いな黒い髪をなびかせる。
「いいこと。確かに植木は有名人。だけど、有名人という仮面を剥がせばただの浮気男。私は浮気男の手助けをしたに過ぎないわ」
自分が助けた相手がいかに醜いか。
そして助けた自分さえも醜く感じる。
そんな自分に、有名人と話したというだけで好奇の目を向けてくるさやかは腹立たしく感じるのだ。
「分かった。だからあんまり羨ましいとか言わないで」
「分かったよ」
「ほむらちゃん・・・」
「暁美さん・・・」
自分たちがついさっき間で浮かれていたことを反省する。
確かに不倫というのは人生で最もやってはいけないことの一つ。
ほむらとてあまりやりたくなかっただろう。
「まぁ、そのサインは大切にしなさいね」
「ええ。ありがとう」
あたりはすでに暗くなり、夕日も沈み始めていた。
そろそろ帰らないといけない時間である。
その時であった。
後ろから彼女たちに話しかけてくる人物が一人。
「あなた。暁美ほむらさん?」
「えっ?」
振り向いた先にいたのは茶色い髪をなびかせた綺麗な女の人。
年齢は30代前半ぐらいだが、それでも女優さんに間違われるぐらいの美貌を持っていた。
でもほむらを含め一人も彼女に身に覚えはなかった。
「あ、あなたは誰ですか?」
「あっ、自己紹介が遅れちゃったごめんなさい。私は植木博美。植木史朗の妻よ」
「なんだ。植木史朗の妻か」
「誰かと思っちゃった・・・・ん」
五人は顔を合わせ。
「「「「「えええええええぇぇぇぇぇぇぇ~~~~!!」」」」」
五人の驚愕の叫び声が見滝原市に響き渡る。
一人は驚きのあまりパクパクと口を動かし声が出ず、一人は何が何だかわからずポケットの中のロッキーを無意識で探し出す。
反応は十人十色。
(これどういうこと?)
(どうして私たちのこと知ってるの?)
(調べたのかな?それとも植木さんが言ったのかな?)
(どちらにしろ、これはヤバいんじゃねえか)
(どうして?)
(バカだな。自分の夫の浮気の仲裁をした奴が目の前にいるんだぜ)
(た、確かに・・・)
(とりあえずほむらには・・・ってほむらは?)
魔法少女の能力で四人は目の前の人物に聞かれずにテレパシーで話すことができる。
だがテレパシーをするには意識を集中させる必要がある。
そのため会話に参加していないほむらがどのような行動をとるかわからなかったのだ。
「なぜあなたは私の名前を知っているのですか?」
「「「「ほ、ほむらあああああぁぁぁぁッッッッッ~~~」」」」
今日は良く叫ぶ日だ。
「ではそれに関してはあそこで話しましょうか」
博美さんが指差した先にあったのはとある喫茶店。
そこでお茶でも飲みながらお話ししましょうというのだ。
彼女たちは渋ったが、博美が見せた笑顔につい心を許してしまった。
まるで夫のことを全面的に信頼しているみたいであった。
しかし本当にそうなのだろうか。
○
「何でも頼んでいいわよ」
とはいってもこの状況であれやこれや頼めるような人はいなかった。
ただ一人を除いて。
「じゃあオレンジジュースとスパゲティとサンドウィッチ!」
杏子だけはあれやこれや頼んでいた。
「杏子っ!少しは遠慮しなよ」
「なんでだよ。何でも頼んでいいって言ってるのに」
「あんたはそういう人よね」
「何でも頼んでいいのよ」
ニコッと笑顔を見せる。
そこまで言われては逆に頼まないのは申し訳ない。
それぞれコーヒーとサンドウィッチだけ頼んだ。
「それで。あなたは何で私の名前を知っているの?」
サンドウィッチを口に頬張りながら本題に入る。
「それは主人から話を聞いたからよ」
「ご主人?植木史朗さん?」
「ええそうよ」
「つまりあなたは知っているのですか?」
この先は本来なら言いたくない話であった。
もし相手が知らないのであればそれは相手を絶望の淵に陥れることになる。
にこやかな笑顔を浮かべている彼女にそんな残酷なことできない。
でもそんなほむらの考えとは裏腹に彼女はそれを口に出した。
「あなたの口からは言えないのね・・・・知ってるわ」
「え」
「ずいぶん頼りないロボットだと思ったけど、ありがとうね」
彼女は示談ロボットの示談君のことまで知っているようだ。
二人の間に沈黙が訪れる。
四人は介入することなんてできず、ただ黙って食べ物を食べることしかできなかった。
「あなた何処まで知ってるの?」
「何にも知らない。主人から聞いた話だけ。ただこれも仕方ないことと思ってるの」
「仕方ない?」
「植木史朗・・・つまり私の夫が駆け出しの頃結婚して、ずっとこんな調子だもの。慣れっこよ」
「あなたはそれでいいの?」
「それでって?」
「そんな・・・浮気ばかりしてる夫なんて。失礼な言い方だけど、私ならまっぴらごめんよ」
博美は紅茶を飲み干すと静かにティーカップを置く。
「それでも夫を愛しているの」
「・・・・・・」
「家にいるときは私の食事をおいしく食べてくれるし、暴力も振るったことない。そして何より私のことを愛してると言ってくれたわ。そりゃ浮気はしてほしくないけど。これでいいの」
「・・・・・・」
何処か朗らかな、そして少しばかり悲しげな顔が印象的だった。
○
ほむらは自分のやったことについて深く考えていた。
これで正しかったのだろうか。
あの男は奥さんの本当の気持ちに気付くことができるのだろうか。
あの人には幸せになってほしい。
でもこれは夫婦の問題だ。
一人の魔法少女が介入していい問題ではないのだ。
自分のやっていることにここまで疑問を抱くのは・・・久しぶりだった。
○
あれから数日がたったある日。
家で夕食を作っているほむらの携帯にメールが鳴った。
「何かしら。もしかしてまどかが一緒にご飯食べようってお誘いだったりして」
ワクワク、ドキドキ、期待しながら携帯を開く。
「これは・・・」
メールの本文を読んで、深いため息をつく。
やはり懲りていなかった。あの男。植木史朗は。
「行かないわけにはいかないわね」
数時間後。ほむらは前回のあのラーメン屋にやって来た。
植木はすでにラーメンをすすりながら待っていた。
「待ってたよ。何頼む?」
「いいわ。食べてきたから、早く本題に入りましょう」
ラーメンを食べているときの汗とはまた違う、冷や汗が垂れ、ズイッとほむらに顔を近づける。
「暁美さん。助けてください」
「何があったの?ま、大体予想はできるけど」
「そ、それがまさかファンだといって違づいて来た彼女が業界の大物プロモーターの女房だったなんだ」
「懲りないわね。今度は人妻」
プロモーターとは音楽用語で、放送局や雑誌媒体、またはレコード・ショップに対してアーティストや曲の販売促進活動をする人。またはコンサートなどのイベントを企画、運営する興業主のことを言う。
要は芸能界を生きる上でこの人を怒らせると非常にまずいわけである。
植木もこれを知っているのでほむらに頼み込んだのだ。
「女性週刊誌に嗅ぎつけられたらしいんです。もしバレたら、僕のタレント生命は終わりです」
「全く。一度全部崩壊してまたやり直したほうがいいんじゃない?」
「からかわないでください。お願いだ、また示談ロボットを出してください」
「分かったわ」
楯から示談ロボットを出す。
だが植木に渡さず、ほむらはある交換条件を提示した。
それはここに来た理由であり、植木のためでなく、植木の妻博美のためである条件であった。
「じゃあ約束をして」
「約束?」
「奥さんを大事にしてください。あんなにすばらしい奥さんを蔑ろにすることをは許さないわ」
「博美にあったんですか?」
ほむらは植木をじっと睨みつけるだけで何も答えなかった。
何か底知れない闇を感じる目であった。
これ以上反論したり、質問したりしたらその場で殺されてしまうかもしれない。
そういう目であった。
「分かっています。僕は浮気して、苦労ばかり掛けていますが心底女房を愛しているです」
「分かったわ」
外では冷たい風が吹き荒れていた・・・
『示談ロボット』to be continued