衝撃のラストをご覧あれ!
『殺してやる!!!』
一人の女が包丁を持って、ベッドで寝ている植木のもとに襲ってきた。
その隣には裸の若い女性が震えながら抱き着いている。
『女もろともあの世に送ってやるわ!!!』
『ま、まて早まるな!』
だが、女はまず若い女性ののど元を勢いよく包丁でぶっ刺した。
『かっ・・・・』
若い女性はその一言だけ言うと口から大量の血を吐き絶命する。
植木の枕元にもドロドロとした血が侵食していく。
血だらけの包丁を持った、血だらけの女。
『や、やめろ・・・』
『次はあなたよ・・・死ねぇ!!!』
女は植木にむかって包丁を振り落した・・・・!
「カット!OKでーす」
テレビドラマの監督、新房昭之にOKのサインを出された植木はマネージャーにタオルをもらい血を拭く。
次の撮影は30分後と言う事で暇になった。
だが何だかそわそわしている。そろそろ電話が来るはずなのだが。
「植木さん。お電話です」
マネージャーから携帯電話を受け取る。
画面に出たのは“暁美ほむら”の文字だった。
「もしもし?!」
『暁美です』
「暁美さんですか?どうでしたか」
『安心して。例の一軒も示談が成立したから。その女性は今後そのことを口出しすることはないでしょ』
「あっ、ありがとうございます」
ホッと一息なでおろす。
今日一日その吉報ばかり待ち望んでいたのだから。
「何とお礼を言ったらいいのか」
『良いわ。ただ約束を守るようにね』
「えっと・・」
『奥さんを大切にすること。別に難しいことでもないわ』
「分かりました!ありがとうございます。では」
これで植木史朗にとって人生最大の危機を乗り切ったわけだ。
○
数日後。無事にドラマの撮影も終わり、悩み事もなくなった植木は六本木のバーで一人楽しく飲んでいた。
「それにしてもあのロボットのどこにそんな能力が」
それよりもあんな便利なロボットを出すことのできるあの少女。
彼女はなぜあんなことができるのだろうか。
まるで・・・・それ以上を考えるのはやめた。
真実を知った時、なにか恐ろしいことになりそうな予感がしたからだ。
「ま、あの子の言うとおりもう浮気は・・・ん?」
ふと右を見るとそこには妖麗な女性が美しくカクテルを飲んでいた。
美しい黒髪、細くきれいな腕、スラリと長い指、程よく大きな胸、全てにおいて完璧な女性。
“美しさ”とは彼女のためにあるようにも思えた。
「あ・・・あ・・」
その瞬間、植木の体に衝撃が走る。
「お嬢さん。お名前は?」
「麗子」
「素敵な名前だよ」
「知りたいのは名前だけ?」
「いや・・・君の全てだよ」
指にはめてある結婚指輪を外し、カクテルの中に落とす。
微笑みを浮かべた彼女は、植木の手と自分の手を絡ませた。
「君は僕の愛の灯つけた。もう君なしには生きていけないよ」
「ウフフフ・・・今までのお相手にもそういってきたんじゃないの?」
「それは違うよ。神に誓ってもいい。君だけは特別なんだ」
「そぉ・・・じゃあ、きちんとしてもらわなきゃ嫌よ」
「きちんと?」
「こういうこと」
植木と麗子は舌を絡ませた濃厚なキスを十秒間続けた。
甘い香りのするキスだった。
○
「どういうこと?」
夜21時。植木は博美を電話で呼び出した。
そこは二人が一番初めに出会った場所であった。
「だから・・・僕ら夫婦は今日をもって別れようと思うんだ」
「ど、どうして?」
「僕は今まで君にいろいろ迷惑をかけてきた。もう自由になってほしいんだ」
あまりにも突然の離婚の話に涙が出てくる博美。
「そんなことない!私はあなたが今まで浮気いっぱいしてたことも知っているけどそれでも幸せだった。だから・・・」
「だからこそ別れるべきなんだ」
「嫌よ!あなたと分かれたくない」
「君のような美しい女性が僕のような男と一緒にいちゃダメなんだ」
「女の人?」
「えっ」
「好きな人ができたの?」
「ち、違うよ!ただ僕は・・・君に・・・」
「もういいわ・・・分かった。別れましょう」
大粒の涙を流す。
美しい女性の世にも悲しい涙。
「ありがとう。家と、その財産は君に」
「そんなこといいのよ。でも・・・私はもうあなたに愛想が尽きました」
「すまないな。今日はホテルに泊まるから」
それだけ言うと振り返りもせずタクシーでホテルに向かう。
植木が見えなくなると博美はその場に泣き崩れる。
あの日、あの人は、自分の永遠の愛を誓ってくれたのに。
「・・・あんまりよ」
「・・・・・・・・」
後ろに気配を感じ振り返る。
そこにいたのはなんと暁美ほむらであった。
「暁美さん」
「立てる?」
博美に手を差し伸べ、優しく立たせ服についた汚れを払うほむら。
「ありがとう」
「いいわ。大丈夫?」
「ええ・・・・うっ・・・グスッ」
「泣きなさい。いっぱい泣きなさい」
泣いた。
ほむらに抱かれながら博美は泣いた。
哀しさに包まれた女性。
そしてほむらは・・・・
(植木史朗。許さないわ・・・・絶対に・・・!)
ほむらのその顔はまるで悪魔のごとき形相あった。
○
「・・・・・・・」
とあるマンション。
一人の女性が煙草をふかしている。
傍らにはリンゴが。
「・・・・・・・あなたが」
「これよ」
「・・・・・・・こんなのが」
「大丈夫。あなたの手は煩わせない。自分の手を汚すことはないのよ」
「・・・・・・・」
傍らに立っていた黒髪の少女はニヤリと笑った。
○
数週間後。植木は無事に離婚を済ませた。
妻が一般人でしかも傍から見れば円満離婚にしておいたのでマスコミは騒がなかった。
週刊誌の三面記事に乗る程度だ。
すぐに新しい女のもとに行くとよからぬ噂を立たれるかもしれないので、数週間はじっとしておいた。
そして時期を見計らって彼女に連絡した。
すると、すぐにでもマンションに来てほしいと。
「僕の新しい人生だ」
早く彼女のいる階に行こうとエレベータのボタンを押したその時。
「植木さん」
後ろから声をかけてきたのは紛れもなくほむらだった。
クールな表情で立っていたが、その時はなにかただならぬ恐怖のようなものも感じた。
「あなたに奥さんを大事にするように言ったのに・・・・約束を破ったわね」
「妻にとっても別れることが一番よかったんです」
「そんなことないわ!彼女はあなたと幸せに暮らしたかった!」
「それは・・・」
「裏切ったのよ。決して許されることではないわ」
「これは僕たち夫婦の問題だ!君には関係ない!」
「そう・・・分かったわ。だけど残念ながらあなたのタレント生命はこれで終わりよ!」
その言葉を最後に暁美ほむらはその場から姿を消した。
まるで瞬間移動したかのようだった。
「一体どうなってるんだ・・・?」
○
マンションの一室。
麗子はロッキングチェアーに座り、煙草をふかしながら一枚の写真を見ていた。
傍らには腐ったリンゴが。
「麗子。君にプレゼントがあるんだ。ほら、受け取ってくれるね?」
ポケットから出したのは今日のために買った時価数百万のダイヤモンドの指輪。
恐らくは婚約指輪。
「フゥ・・・婚約指輪なら受け取れないわ」
「えっ、な、なぜ?」
麗子は手に持っていた写真を植木に投げつける。
写っていたのはワンピースを着た綺麗な女性の写真。
それを見た瞬間、手が震えだし、指輪を落としてしまう。指輪は麗子の足もとまで転がる。
「こ、これは」
「あらぁ、お忘れ?」
「麗奈・・・・」
「そう・・・あなたのために自殺した・・・」
忘れるはずもない。
-「僕とのスキャンダル報道でノイローゼになって自殺した娘もいるんです。だからどうかご内密に」
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―――――
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「覚えているさ」
「私の妹なの」
「ま、まさか!?」
「私は妹の復讐のためにあなたに近づいただけよ」
「そんな・・・」
あまりに衝撃なことで、言葉が出ない。
「植木さん」
「じ、示談君?どうしてここに」
宙に浮かびロボット独特の可愛らしい笑顔を浮かべる。
「あなたのことは全て、彼にお任せしてあるわ」
あの日、一人の少女が持ってきたこの示談ロボット。
本来ならあの男を殺して自分も死ぬつもりだった自分。
だが彼女は私の手を汚す必要はないとこれを貸してくれた。
悪魔のような、天使のような。そんな少女だった。
「麗子!待ってくれ俺は!」
必死に自己弁護しようとする植木に示談君はリュックサックから大量の写真を取り出す。
大勢の若い女性と肩を抱き合い、熱いキスをしている植木の姿だった。
「こ、これは・・・」
「未発表のあなたのスキャンダル写真だよ」
「そんな、嘘だ、ありえない」
「植木さん、諦めなさい・・・・この僕がゆっくりと示談しましょう・・・・」
「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だあああああああああああぁぁぁっっっっっっ~~~~!!!!」
植木の絶叫がこだまし、煙草から落ちた吸殻がボトッと指輪の上に堕ちた。
○
「身から出た錆とはいえ、また有能なタレントが一人消えることになったわね。残念ね・・・。あとは博美さんの出会いの斡旋・・・ま、彼女の美貌なら直ぐにでも素敵な人が見つかるでしょう」
『示談ロボット』END
原案:なし(オリジナル作品)