「この服なんてどう?ほむらちゃん」
ほむらとまどかはデパートの洋服売り場に来ていた。
さまざまな洋服を着たりして楽しむ二人。
フリフリの洋服、ちょっと大人な洋服、冒険して露出度の高い洋服、それをまどかに着せることはほむらにとってこれ以上ない幸せであった。
(ああ・・・まどか、とってもかわいいわ)
「次はこれなんかどうほむらちゃん」
試着室から出てきたまどかの格好はこれまた冒険してチャイナドレスの衣装を着ていた。
「うっ」
これはやばい鼻血が出そうな魔女級の可愛さ。
気をしっかり持たないと倒れてしまうかもしれない。
「恥ずかしいけど似合うかな?」
「ええとっても・・・」
その時。またあの現象が。ソウルジェムから。
「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
ソウルジェムから先ほどのくすぐったさが。
傍から見ればまどかの試着姿を見て笑っているようにしか見えない。
「ほむらちゃん」
「ち、違うのよまどかこれはギャハハハハハハ!!」
悲しそうな顔をするまどかに必死に弁解しようとするがくすぐったくてうまく喋れなかった。
○
「取り寄せバッグ!」
宿題も終わり、やることが無くなったさやか。
何もしないでダラダラするのももったいないので杏子を呼ぶことにした。
しかし、神出鬼没でしかも行き当たりばったりの生活の杏子を見つけ出すのは至難の業。
そんな時こそ役立つのがほむらの楯。
杏子をこちらに呼び出すことのできる道具とイメージして出したのが、取り寄せバッグであった。
「でもこんなので杏子を取り寄せられるのかな?ま、やってみるか」
取り寄せバッグとは遠くの場所にある物をバッグの中に手を入れて手元に取り寄せることができる道具だ。
杏子をイメージして手を入れる。
「えっと、どこかな」
バッグの中は真っ暗な空洞なので手探りで見つけだすしかない。
「ないな、どこだ。ん?これは何かつかんだ感じ」
しかし、人間をつかむとなると重い。
両手を使ってつかんだものをギュッと力を入れ一気に引き上げる。
「よいしょっと」
「キャアッ!」
そこから出てきたのはなんとマミ。
つかんでいたのはマミの楯ロールであったのだ。
「何でマミさんが!?」
「それはこっちのセリフよ。なんで美樹さんが私の楯ロールを?」
「いやそれは・・・あれ」
ふと下を見るとバッグから手がニュッと出てきて足元をつかんでいた。
「何だこの手は?」
思い切ってその手を引っ張ってみるとそこから現れたのはなんと杏子であった。
「HELLO」
「へ、HELLO・・・って、うわああああ」
「やっぱりさやかの仕業だったんだな」
「どういうこと」
「あたしの家でお菓子食べてたらさ」
「佐倉さんの家じゃなくて、私の家ね」
数分前に杏子がマミの家でお菓子を食べていたら、頭上にいきなり超空間のようなホールが現れそこから手が出てきたのだ。
ビックリして後ずさりするとその手はこともあろうことかマミの楯ロールをつかみ超空間の中に引きずり込んだのだ。
悲鳴を上げる間もなく超空間の中に消えていくマミ。
マミを助けようとホールが消える寸前にマミの足をつかんだのだ。
そして二人とも空間の中に引きずり込まれ、その先にいたのがさやかだったというわけだ。
「なるほど」
「なるほどじゃねえ。せっかくお菓子食べていたのにさ」
「まあまあ、実はすごいものを手に入れたんだ」
「すごいもの?」
「これだよ」
ほむらの楯にスペアを二人に見せる。
おなじみの楯に二人は大変驚いた。
「どうしたんだよ」
「へへ、ちょっとね。なんでもさやかちゃんに任せなさい」
とん、とふっくらとした胸板を叩いて、楯の中に手を入れる。
「さあどうしたい?」
「そうだな」
「じゃあ美樹さん。ちょっとお願いがあるんだけど」
少し恥ずかしそうにもじもじさせるマミ。
さやかを自分の近くに呼び寄せて耳元で小さくこう言った。
「あのね・・・SOMAPの村井正弘さんに会いたいな」
「SOMAPの村井!?」
「しぃ!美樹さん」
顔を真っ赤にさせてぶんぶんと手を横に振る。
杏子は何やら納得したような顔でうんうんと頷く。
「どういうこと?」
「そこはあたしが説明するぜ」
ズンッ!と杏子が前に出て説明する。
実は先ほど二人でお菓子を食べながら見ていたのはSOMAP×SOMAPの再放送。
杏子は特に見ていなかったのだが、マミのほうは魔女退治より真剣な顔でテレビを見つめていた。
そしてその真剣に見ているシーンは全て村井正弘がテレビに出ているシーンに限られていた。
「それでわかったんだ。こいつ村井のファンだって」
「本当なんですか?」
「ええ。昔からのファンなのよ」
「以外だな」
先輩の意外な一面に親近感がわいたさやか。
自分もSOMAPのことは好きだし一度会ってみたいと思っていたのでちょうどいい。
「よし分かりました。私たちも村井正弘に会いに行こう!サインをもらおう」
「でもどうやって?」
「任せてよ!」
○
まどかとほむらはカフェでお茶を飲んでいた。
カッコよく見られようとクールに紅茶を飲むほむらと、可愛らしくオレンジジュースをストローを使って飲むまどか。
そんなまどかの姿を頬を赤らめさせながら見る。
(まどか可愛いわ・・・)
「やっぱりほむらちゃんは紅茶が似合うね」
「そうかしら。巴マミのほうが似合うんじゃない?」
「ううん。とってもカッコよく見えるよ」
「ありがとう。まどかもオレンジジュース飲む姿がとても・・・ギャハハハハハハ!!」ブーッ!
口に含んでいた紅茶をまどかの顔めがけて口から噴射してしまう。
「あわわわわわ・・・・(いったいどうなってるのよ)」
○
日曜日の昼下がり。
群馬県の上空に一機の円盤が浮遊していた。
数人が入れる程度の小さな円盤なのだが、ライフル銃や大砲ごときではビクともしない。
そこに乗っていた三人の魔法少女。
「お、おい大丈夫か!?」
「う、うん。たぶんね」
「ちょっと大げさ過ぎない美樹さん?」
「でも空飛ぶ道具ってイメージしたらこれが出てきたから」
「で、村井正弘の家はまだか?」
「どこだろう」
地上4000メートルの位置から村井正弘の家を見つけ出す。
円盤のナビ機能で自動的に村井の家に着くように設定しているのでもうすぐ着くはずなのだが。
「あれじゃない?」
見滝原市の郊外に巨大な庭が見えた。
「あれだ。ひゃあっ!でけえな」
「プールの上に降りよう」
「うわぁっ」
ついに念願の村井正弘に会えると言う事で目に見えるぐらいワクワクしているマミ。
「でも勝手に入って大丈夫かしら」
「そうですね。こんな時は、オールマイティパス!」
スペア楯から出したのは現代の列車の定期乗車券を模した道具。
これを持っていればどこへでも入ることができる
入ろうと思えば首相官邸でも、銀行の金庫でも、夢のような道具だ。
「ただ期間は一日だけだけどね」
「じゃあ早く入ろうぜ」
円盤を庭の上に降ろす。
あまりに広い庭なので迷ってしまいそうになるが楯から出した“みちびき地蔵”のおかげですぐに家の玄関まで案内できた。
「じゃあ入るね」
「ドキドキするわ」
ピーンポーン!
玄関の扉から出てきたのは村井家のお手伝いさんと思われる人。
「あなた方は」
「こういうものです」
オールマイティパスをお手伝いさんに見せると、快く上がらせてくれた。
「村井正弘さんは?」
「こちらにいますよ」
「ほらね」
「良かったわ」
村井はリビングのソファーに座っていた。
溜息をついて何だか悩んでいる様子。
「いらっしゃい」
「「「お邪魔します」」」
三人はそれぞれ生写真と、直筆サインをもらう。
マミは感激のあまり、卒倒しそうになったが何とか気合で持ちこたえた。
「あ、あ、ありがとうございます」
「いやあ。構わないよ。遠くからありがとね」
「いえいえ全然」
「はぁ・・・」
「あの・・・何か困ったことでもあるんですか?元気が無いようですけど」
「もしかして私たちが勝手に来たから」
「違うんだよ・・・うーん・・・」
「私に言ってください。魔法少女さやかちゃんが何でもお役にたちますよ!」
「魔法少女?」
「いえ!?それよりも何があったんですか?」
「実はあれなんだ」
指差した先にあったのはゴミの山。
村井はそれに身に覚えが無く、急に現れたといっていたが、それもそのはず。
そのゴミに身に覚えがある人物がここにいるのだから。
(や、やばい)
「ひどいわ」
「本当だ。いったいどこのどいつだ」
「何とかならないかな」
汗がダラダラ顔をつたっていく。
このままバレたらとんでもないことになる。
「酷ーい!本当に酷い!私が片付けてあげます!この楯には何でも入るんですよ」
次から次へとゴミを楯に中に詰め込む。
あっという間にゴミはなくなった。
「終わりましたよアハハ・・・」
○
夕方。
散々まどかに迷惑をかけてしまい、最後は何とかして喜ばせたい。
さすがのまどかもちょっとプリプリ怒り始めた。
(怒っているまどかも可愛い。じゃなくて!)
「ほむらちゃん?」
「今日の私はどうかしてたわ。お詫びにぜひプレゼントがしたいわ」
「嬉しいっ」
「大したものじゃないんだけどね。待ってて」
楯から今日のために買っておいたプレゼントを取り出そうとする。
しかしそこから出てきたのは!
「なにこれゴミ!?」
大量の粗大ごみが楯から出てくる、出てくる。
その一つがまどかの顔に直撃してしまう。
「あああ、ち、違うのよ。どうして」
「酷いよほむらちゃん」グスッ
涙を浮かばせながら走って帰ってしまうまどか。
ほむらがとめる間もなく。
まどかの怒った姿がかわいいと思いもしたが、泣いている姿を見たいとは一回も思わなかった。それなのにどうして。
「そうか!美樹さやかめ!!!とんでもないことしてくれたわね!!!」
○
貰ったサインを見ながら自宅で優越感に浸るさやか。
「いいなこれ。あとでほむらに自慢しよう」
「さぁぁぁぁぁやぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
怒鳴り声とともに窓の外からタケコプターで接近してきたのは暁美ほむら。
「ああっ!」
しかも通常頭のみにつけるタケコプターを両手にもつけて。
それはジェット機にも勝る速度。
「やばいっ!バレちゃったみたい。どうしよう、どうしよう、どうしよう」
だが時すでに遅し。
ドッカーン!という衝撃音とともに窓ガラスを突き破って部屋に突入してきた。
「美樹さやかの大馬鹿野郎!どこに隠れた!」
あたりを見渡してみてもだれもいない。
「逃げたわね。やっぱりスペア楯を勝手に持ち出してたのね。これは当分暗黒空間に入れておきましょうか」
「ちょっと待って!!!!」
さやかの声が聞こえる。
でも姿は見えない。
「ど、どこにいる?」
「ここだよ・・・!」
ヌウッっと楯から手が出てきて、ほむらの顔をつかむ。
そこから出てきたのはなんとさやかの姿だった。
「い、い、いやああああああああああああああああああ!お化け!!!!」
手に持ったマシンガンでで楯を打ちまくる。
「ち、違うよ。私だよさやかだよ!スペア楯に隠れてたんだよ!助けて!ゴメン!許して!もうしませんから~~~~~!!」
「ほむらの楯にスペアがあった!」END
原案:四次元ポケットにスペアがあったのだ(ドラえもん25巻所収)
アニメ:1984年7月20日放送「四次元ポケット」
脚本:丸尾みほ
絵コンテ:原恵一 演出:原恵一、安藤敏彦
作画監督:中村英一