王様のいないナザリック(完結)   作:紅絹の木

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シャルティアに許可もらってますか?

〈女神の助力〉の活用法。

字面だけ見ると、ナザリックが叛逆の物語のキュウべえみたいだ。しかし、悪用するわけではないので許してほしい。

 

まず、アインラードゥンによって様々な事がわかった。自分たちよりも先に、この世界へ転移しているユグドラシルプレイヤーの存在。いつ来るかもわからないギルドメンバーの存在。

どちらも早急に対処するべき問題だった。ちょうど良いので、モモンガさんから命じてもらう。

円卓でそんな話をすると、だいぶ嫌がられた。

「俺が命令するんですか!?そんな、俺たちは対等なんですよ!」

「もちろんですよ。でも命令系統において上下関係ははっきりしておかないと、NPCたちがいざという時に困ります」

平行線になりそうなところでたっちさんが手を上げた。

「だったら、命令というより、依頼する感じにしましょう。それでどうですかお二人とも」

「いいと思います」

「それなら、いいですよ」

というわけで。

玉座の間にて、帰還報告、簡易的な宴の催しをやること、パインの予定通りリザードマン達と戦うこと。パインが主軸となりギルドメンバーの捜索、ユグドラシルプレイヤーの痕跡を探ることなどが話された。

 

ちなみに、パインの能力によって帰還できたことは、内密にしている。NPCたちの間で大きな混乱が予想されるからだ。変に希望を持たせてしまうことも問題だが、今は話す時期ではないと、全員が判断した。

もう来ないベルリバーさんのNPCに、どの様に説明するか話し合いの真っ最中だ。

 

それから私たちは活動を再開する。

ウルベルトさんは外に出て、冒険者活動中。

モモンガさんたちは、ナザリック内で活動中だ。外での疲労を癒したり、自身が創造したNPCたちに囲まれて仕事している。

 

モモンガさんは黒歴史と向き合いつつも、非常に優秀なので、滞りなく仕事をしているだろう。

たっちさんは、問題なんて見当たらない。一日の内、数時間はセバスたちの潜入先の屋敷にお邪魔しているらしい。セバスたちの仕事ができるように考えているのかな?

ペロロンチーノさんはシャルティアと仲良く仕事しているようだ。シャルティアの仕事に付いて行ったり、二人で第九階層の様々な施設を回ったりと。多分、三人の中で一番楽しんでいる。

 

私は副官にヘドラをつけてもらい仕事をしている。仕事内容は〈女神の助力〉を使い、昔馴染みのユグドラシルプレイヤーを召喚して情報を集めることだ。主に第八階層でスキルを使い、相手から情報を聞き出す。

今回は、戦士・タンク役だったカナリア。他所のギルド長だった彼女なら、有益な情報を持っているだろうと予想したからだ。

 

はたして、カナリアは円環の理にいるだろうか。スキルを発動し、カナリアに呼びかける。彼女はすぐに来てくれた。

「来てくれてありがとう、カナリア」

「ちょうど暇してたからね。どうってことないよ」

大学生くらいの歳。フルアーマーで全身を覆い、水色のマントをなびかせる。声は美しく、デミウルゴスと同じくらい耳に心地よい。リアルでは歌手だと教えてくれた。

「あなたも円環の理の中にいたんだね。ちょっと驚きかも」

出会った魔法少女が二人とも、円環の理にいたのは驚いた。まあ他のギルドに出会っていないのだから仕方ないけれど。

「そうでもないよ。……ほとんどの魔法少女は、みんな円環の理にいるからね」

「そうなの?じゃあ、私みたいなのが珍しいんだ」

「ええ、そうなるわね」

「どうして、皆そちら側にいるの?寿命でも迎えたの?」

冗談で聞くと「そうじゃないけれど」と彼女は続ける。

「私の場合は、ギルドで最後に残ってね。寂しくて、落ち込んでいたところを導かれたの。ねえ、私に何か頼みたくて喚んだんだよね?私の頼みも聞いてくれる?」

ギルドで最後に残った。一瞬、途方もない時間を生きる自分を想像した。そこにはモモンガさんがいる。寿命がないNPCたちもいてくれる。独りぼっちじゃないから大丈夫だ。想像はパッと流れた。

「そりゃあ、できる限りは聞くよ」

今のパインに恐れはなかった。カナリアは祈るように両手を組んだ。

「私のギルド拠点を壊して欲しいの」

 

 

 

「という訳で、近々アゼルシリア山脈にあるらしいギルドに出かけてきます」

パインの自室、応接用ソファに至高の五人は集まっていた。NPCたちはおらず、気軽に話せる空間だ。

モモンガが心配そうな声を出す。

「わかりました。けれど、気をつけてくださいね。俺たち四人には階層守護者が警護についてくれますが、パインさんのところはヘドラと始祖たちでしょう?」

パインは少し唇を尖らせる。

「わかっています。バランスの悪いチーム編成なんだから、他のプレイヤーから襲撃があった場合、無理はするなってことでしょう?この前みたいに戦ったりしません。お約束します」

ウルベルトがにやにやと口角を上げた。

「パインさんは後、七回はやらかすでしょう。クラン時代の皆は知っているんですよ。あなたは不器用だってね」

それを聞いたパインが眉をぎゅっと寄せた。怒りますよ、というアピールだ。じゃれ合いの範囲内なので、本気ではない。

「いじめないでください!こっちじゃ命の危険がある分、本気で取り組んでいるんですから」

「ああ、そうだったな。こうして喋ってるとつい、忘れちまうぜ」

居心地が良すぎてな、と紅茶をあおる。ペロロンチーノも同意した。

「本当にそうですよね。NPCたちの忠誠心は重いですが、皆いい子ばかりですし、リアルより全然楽しいんですよ」

モモンガはガパリと大きく口を開けて、閉じた。リアルよりナザリックが選ばれて嬉しかった喜びが、一気に抑制される。

「クソ、またか……」

モモンガの隣にいたたっちが甘い蜜のジュースを置いた。

「大丈夫ですか?例の感情の抑制ですか?」

「そうです。一定以上の感情の波は抑制されるので、なんというか、テンション高くなれないんですよね」

「うーん、常に冷静な判断を求められるリーダー向きの能力ですけど、こういう場では邪魔ですね。パッシブスキルのようにオンオフできませんか?」

「無理です。あー、何度も助けられた能力ですけれど、こういう時はオフにしたいです」

「それなら、願いを叶えちゃいますか?」

パインはアイテムボックスから三つの流れ星が彫られた指輪を取り出して、モモンガに差し出した。モモンガはブンブンと首を振る。

「いやいや、こんな事で使えませんよ。もったいない!」

「もったいなくないと思いますよ?モモンガさんの望みなら」

本気でそう考えるのだが、モモンガが頑なに拒否するので、指輪はアイテムボックスにしまった。

「あー、それで何でしたっけ?そうだ。いつから、そのカナリアさんのギルドに行くんですか?」

「次、スキルが使える時に行きます。アインラードゥンの力を借りれば、迷わずに目的地まで行けますから」

「わかりました。くれぐれも気をつけてくださいね」

そこでバードマンの手が上げた。

「はいはい!俺も付いて行っていい?アインちゃんに会いたいんだ!」

「ダメですよ。今回はお墓参りなんです。部外者や興味本位での参加はご遠慮ください」

「ああ〜。仕方ありませんね。今回も写真を撮るんでしょ?楽しみに待ってます」

アインちゃんの写真多めでお願いします、と頼まれた。なので「シャルティアに許可貰ってますか?」と確認すると、ペロロンチーノさんは口を閉じてしまった。

 

 

〈つづく〉

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