案内役と自らを呼んだ魔法少女、アインラードゥン。彼女が指差した方角へ、一行は飛んでいた。途中に大きな街や村が見えたが、あまり注目せず。まっすぐ飛んで行く。
ナザリックらしき影が見えず、ペロロンチーノがぼやいた。
「本当にこっちでいいのかな」
モモンガも同じ気持ちだった。焦がれた存在が、会いたい人が誠にこの先にいるのだろうか。疑惑は空っぽの胸の中でもやとなり、たちこめる。この中で最も目が良いペロロンチーノが見つけられないのだ。ナザリックはまだ遠くにあるのだろう。
たっちが沈む空気を入れ替えるように言葉を発した。
「たしか、私たちをナザリックから近い場所に落としたんですよね。案外すぐ着くんじゃないですか?とりあえず、夕方まで進んでみましょう」
隣りを飛ぶモモンガが頷く。
「そうしましょう」
そして夕方まで飛ぶと、村の外壁を木材でぐるっと囲んだ、村に着いた。
あっ、とペロロンチーノが驚く。
「あの気持ち悪いネズミ、パインさんのネズミだ!」
「どこに?」
「村の内外、そこら中にいるよ」
たっちはスキルを、モモンガは魔法で目を強化しよく見てみる。いた。間違いなく、パインの使い魔であるネズミたちだ。
ネズミたちは村を守るように、あちこちを走り回っている。時々、立ち上がってはキョロキョロと周りを警戒している。どうやらこちらには気づいていないらしい。つまり、ネズミたちの索敵能力よりも、ペロロンチーノさんの目のほうがいいんだ。
モモンガが二人に問いかける。その声は探し物が見つかった喜びで興奮し、抑えきれていない。
「本当にパインさんのネズミですかね」
「わかりません。どうしたら確認できるでしょうか」
「向こうが俺たちに気づいてくれたら楽だけど、敵だったら危ないですよね」
三人は一度話し合うため、元来た方角へ反転した。
森の中、魔法で防壁を築き、その中に腰を下ろす。モモンガが再びランタンを取り出し、灯りをつけた。おぞましい異形の姿が闇夜に浮かぶ。
「どうしましょうか。こちらから接触するか。味方だとわかるまで隠れているか」
「隠れている方が安全だよ。もし敵で、戦闘になったらどうするの?怪我したら今の俺たちじゃ死ぬかもしれないし」
「ヒーラーいませんもんね。アイテムにだって限りがありますからね」
「そういえば、あの村……他の村とは違ってやけに発展していましたよね。造りが頑丈だし、防衛設備が整っているし。もしかして、プレイヤーが力を貸しているんじゃないですか?」
「ということは、あの村を見張っていればいいんですよ。もしかしたら、ナザリックが力を貸しているのかもしれませんし!よし、今晩からしましょう!」
初日ということで、まずはペロロンチーノさんが見張り役をかってでた。次はモモンガさんで、最後にたっちさんの順番だ。敵かもしれないので、気づかれないように息を潜めて過ごす。大変息がつまる日だった。
しかし、昼頃。事態は動いた。
「あ、パインさんとルプスレギナ見つけた!」
頭上からそう聞こえてきて、すぐペロロンチーノさんの側まで飛ぶ。
「村の中ですか?」
「そう、今村人と話してる」
魔法で目を強化して、パインの姿を探す。
いた。村の中で一番大きな家の近くにいる。そこに人が集まっていて、中央には〈身代わり姿〉のパインさんと、ルプスレギナがいた。
たっちも上ってきて、パインたちの姿を確認する。
「二人で間違いないですね。どうします?今出ますか?」
「今行ったら警戒されませんかね?」
「それよりも、本物のパインさんか確かめないと。最悪戦闘になる可能性もあります。準備できたら、姿を隠さず接近してみましょう」
「了解」
「了解です」
三人は地表に降りて装備を見直した。特にモモンガの気合の入れようは半端ではない。
やっとパインさんに会える。
偽物ならば、友を騙った奴を殺したかった。
〈つづく〉