コンティニュープレイヤーの日常   作:如月シュウ

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どうも如月です。無謀にも二作品を同時にやります。
処女作とタグ付けしたのは、私が以前ノートに手書きで書いたやつが出てきたので、手直ししつつ掲載します。




ソードアート・オンラインとは、2022年に発売されたVRMMO。仮想現実を使用する特殊なゲームハード、ナーヴギアによって五感すべてをシュミレートし、本当にゲームの中に居るように感じられる画期的な発明は、日本にいる多くのゲーマーを熱狂させた。中でもソードアート・オンライン、通称SAOのクローズドβテストは当選人数は千人だったのに対して、応募人数はそれを遥かに上回る人数で、名門学校の受験倍率など比べ物にならないくらいの倍率だったらしい。

一ゲーマーに過ぎなかった俺、天宮優梨(あまみやゆうり)もSAOのクローズドβテストに応募して、見事に当選した幸運な少年だった。

βテストが終了して、正式サービス開始後すぐにSAOにログインして、仮想現実の中で楽しんでいた。

だが、そんな俺を衝撃的な事件が襲う。

 

 

ソードアート・オンラインが、ゲームオーバー=現実世界での死亡を意味するデスゲームへと変貌したのだ。

ソードアート・オンラインのプレイヤー、約一万人を二年間も仮想世界の中に幽閉し、四千人もの死者を出したこのデスゲームは、人類史上初の大規模サイバーテロとなった。約二年間かけてクリアされたSAOだが、俺が偉そうに語っているのには理由がある。

 

本来であれば、SAO攻略中に死んでしまった俺。その死に様は今は割愛するが、確かに死亡したはずなのだ。

だが、今の俺の視界に写っている物は、一万人を仮想世界に閉じ込める牢獄になってしまったもの、ナーヴギアだ。

ひょっとして、俺は夢を見ているのでは?と考えたが、いくら頬を引っ張ろうと、痛みを感じるだけなので夢ではな

く現実だ。

つまり、二次創作などで見かける『逆行』という現象が発生していると考えた。

自分でいっていて訳がわからなくなってきたが、無理矢理にでも納得するしかない。俺自身SAOで戦っていき、そして冷たい刃で貫かれた感覚も覚えているのだ。そ

正直なところ、デスゲームになるとわかっているゲームに飛び込むのはかなり勇気がいる。だが、俺の取った選択が間違いだったのかもしれないという疑問と、あんな結末にはしたくないという思いが、俺をデスゲームへと向かわせた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

キャラメイキング画面でパスワードと、使いなれたプレイヤーネーム《Ulick》を入力することで、βテスト時代のキャラを引き継ぐ。画面上の選択肢に、アバターを作り直すかという質問が表示されている。

SAOでは、『手鏡』というアイテムがプレゼントされる。それはリアルの身長体格、さらには顔つきまで再現する物なので、結局は自分の顔―親や周りの人間から、童顔で女顔と言われている―になってしまうので、折角ならリアルの自分とほとんど同じにしてやった方がいい。

そういうわけで、俺のアバターはリアルと殆ど同じの赤混じりの黒い髪を首もとで束ねている頼りなさそうな顔立ち、身長こそ170有るものの、体の細さや色白さも相まって女性プレイヤーに見えなくもないアバターになった。

小さい頃は、名前と外見のせいでよくハブられたものだ。などと思い出しながら決定ボタンを押し、ソードアート・オンラインへ、ログインする。

Welcome to the swordartonline!という文字が表示され、俺はデスゲームをコンティニューすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソードアート・オンラインの世界観は、所謂西洋ファンタジーである。有名どころで言えばドラ○ンクエスト等だろうが、ソードアート・オンラインには魔法が存在しない。つまり剣や槍などの武器のみで戦って行くことになる。

プレイヤーのステータスは、《STR(筋力)》《AGI(敏捷)》《DEX(器用)》《VIT(生命力)》の四つのステータスをレベルアップ等で手に入る、ポイントを振り分けていく。

STRは文字通り、筋力の値であり、高ければ高いほど重いものが持てたり、アイテムを大量に持つことができる。純粋に攻撃力にも関わってくるので、プレイスタイルがどのようなものであれ、上げておいて損はない。

AGIは、敏捷のステータスだ。プレイヤーの移動速度、攻撃速度に関わってくる。これを上げていくことは、ある程度防御力を度外視して、回避に徹する事になる。

DEXは、戦闘ではクリティカル率に、その他では裁縫や道具作成の成功率に関わってくる。生産系のスキルを使用するのであれば、上げていくことをお勧めする。

VITは、レベルアップ時のHP上昇にボーナスが得られ、更に各種デバフ―毒や麻痺などの悪い状態異常のこと―の耐性が上昇する。

プレイヤーはこのステータスを自由に振り分けて、キャラクターを育成する。

リセットされる前の俺のステータスタイプは、AGIとDEXに、多くポイントを振り分けた、スピード重視クリティカルアタッカーであった。使いなれたプレイスタイルがいいと思って、今回も同じにしていく。

 

ソードアート・オンラインには多種多様な武器がある。

片手剣、細剣、曲刀、短剣、メイス、斧、両手剣、刀、槍、が主なところで、変わり種として爪やクロスボウなどがあった。

この中で刀はエクストラスキル、つまり隠しスキル扱いなので、すぐには獲得出来ないため実質八種類の武器種から選択する事になる。

筋力に対して振らないスタイルの俺としては、筋力要求値の高い武器が多いメイス、斧、両手剣は必然的に除外。かつてのSAOでは、片手剣と短剣の兼用をするスタイルだった。

片手剣は、ザ・標準と言った性能の武器で、物にもよるが尖った性能のない人気の武器だった。

逆に短剣は、リーチの短さと一撃辺りの威力の低さにSAO開始序盤の頃は不人気ナンバーワンの武器だった。その真価は、おびただしい数のデバフとソードスキルのクーリングタイムの短さなのだが、それに気づくのはかなり後の話だ。

レベル1の段階で使えるスキル枠は二つ。王道である騎士プレイをするならばスキルは、片手武器と盾で固定だ。まぁなんというか、スピード型が盾を持つのはおかしいと考えている―事実、俺の周りのスピード型は、盾を持っていなかった―俺としては、盾は持たない。

 

こうしてあれこれ悩んでいるのは、ネットゲーマーの性というものか。

結局、散々迷った結果は片手剣スキルを取り、残りの枠は他のサポートスキル用に残しておくことにした。

 

 

 

 

 

 

ソードアート・オンラインの世界観は、天空に浮かぶ鉄の城『アインクラッド』を、第一層から第百層まで攻略していくというものだ。各階層には主街区と言うものがあり、云わばその階層の都市のようなものだ。

そしてアインクラッド第一層の主街区は、はじまりの街という場所だ。アインクラッドの形状が円錐形になっているので、上の層にいくごとに狭くなっていく。アインクラッド第九十九層の終わりの街に比べると、約十倍近い差がある。このように、はじまりの街は恐ろしく広いのだが、βテスト経験者は、というか俺はβテスト処か正式サービスされていたソードアート・オンラインで、クリアする直前まで生き抜いて居たのだ。そんな俺が幾度となく訪れたはじまりの街で迷う筈はなく、最寄りの武器屋に直行し、最安値の短剣であるスモールダガーと片手剣のスモールソードを購入し、ダガーを装備する。

二、三度試し振りをして感覚に狂いがないか確かめた後、フィールドに直行した。

 

 

さて、ここで少しSAOの戦闘について説明しておこう。前述の通り、このゲームには魔法が存在しない。必然的に、戦闘は近接戦がメインとなる。もちろん、通常攻撃のみの戦闘行為もありなのだが、それだけでは時間もかかるし、戦闘時間が長引くとそれだけ死の危険が迫ってくる。故に、戦闘での『決め手』となるソードスキルが存在する。

ソードスキルというものは、あらかじめシステムに設定されたモーションを超高速で放つというもので、ソードスキルには専用のエフェクトが用意されており、ソードスキルを使用している間は、自分が超戦士になったかのような感覚を得られる。ただし、ソードスキルにはそれぞれ硬直時間というものがあり、強力なソードスキルであればあるほど長くなるため、ソードスキルを連発していればいいというものでもないのだ。

ソードスキルが戦闘での『決め手』である理由は、ステータス補正ダメージが入るからだ。例えば、片手剣ソードスキルの初期技『ホリゾンタル』だと、AGI80%DEX100%となっている。つまり、敏捷と器用のステータスがそれぞれ80%と100%の補正ダメージが入るのだ。初期技とはいえ、自分のステータスタイプと照らし合わせると大ダメージを叩き出せる。使う武器によって、ステータス補正の掛かりかたは偏りがあるため、自分のステータスタイプに合った武器を使うのが、デスゲーム攻略法の一つである。

 

少々長話が過ぎたが、思考に耽っていると時間を忘れてしまうのは悪い癖だ。今も第一層に生息している、青イノシシこと『フレンジー・ボア』を、無意識下で四体程狩っていた。

他のゲームだと青イノシシは、初心者に狩られまくる、悲しいやつではあるが、それも仕方のないことだ。何せ、攻撃パターンは単調だわ、攻撃力は低いわ、レベル1の段階でソードスキルを当てるだけで倒せてしまうほどの雑魚敵。まぁ、βテストの時も正式サービスの時も、いい練習台扱いだった。とはいえ、こいつを狩っていたのは腕が鈍っていないか確かめに来ただけで、経験値稼ぎとコル―アインクラッドでのお金の単位―稼ぎには向いていないので、これくらいにして夜を待つ。

大抵のRPGに言えることだが、夜になると昼間よりも強い敵が現れる。俺の狙いはそいつらなのだ。

現在時刻は5:25。そろそろ、他のプレイヤーがログアウトボタンが無いことに気づき始める頃だろう。

 

ゴォーン、ゴォーンと、何処か不気味な鐘の音がアインクラッド第一層に響き渡り、様々な場所でプレイヤー達が転移させられていく。一プレイヤーである俺も例外ではなく、転移させられて、目を開くとはじまりの街の噴水広場、プレイヤー達がログインして最初に見るSAOの場所だ。だが、今は突然集められたプレイヤーの動揺に支配されており、ざわめきがいたるところから聞こえてくる。

空を見上げると、WARNINGと表示された赤いシステムアナウンスの文字が。俺以外のプレイヤーも気づいたようで、皆一様に空を見上げている。プレイヤーが意識を向けるのを待っていたかのように、空一面WARNINGの文字に覆われて真っ赤に染まる。そして文字盤の間から、ドロリとした赤黒い液体が染みだし、あの憎たらしい姿に変わっていく。

全体的に赤色でまとめられた、ファンタジー世界の魔法使いのような出で立ちのローブ。だが、本来そこにあるべきものが欠けている。顔だ、顔がないのだ。

ぽっかりと真っ暗な空洞になっているフードの奥には顔がない。その事がより一層不気味さを掻き立て、プレイヤーの不安を煽っていく。

あれはこのゲームのゲームマスターのアバターとして設定されたもので、第百層のボスモンスターとして配置されているものらしい。

 

「―――プレイヤー諸君、私の世界へようこそ」

 

無機質な声、かつてのアインクラッドで嫌というほど聞きなれた声。

 

「私の名は、茅場晶彦。今やこの世界をコントロール出来る唯一の存在だ」

 

赤いフーデットローブの告げた言葉に、プレイヤー達は少なからず声を上げる。

それもそのはず、茅場晶彦と言うのはナーヴギアの設計者であり、ソードアート・オンラインのゲームデザイナーの名前だ。

勘のいい者なら、既に彼の言葉に違和感があることに気づいているだろう。

 

「諸君らは、メニュー画面の中からログアウトボタンが消失している事に気がついていと思う。しかし、これはバグではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である」

 

茅場がその言葉をもう一度繰り返すが、この状況を理解できる人間が何人居るだろうか。少なくとも、約二年前の俺であったなら、他のプレイヤーと同様に呆然としていただろうが、生憎今の俺は、ソードアート・オンラインで二年間生き延びた経験者だ。今更そんな宣告をされたところで驚くことはない。

 

「よって、諸君らが自発的にログアウトすることは不可能となっている。また、外部の手によってナーヴギアが切断される事もない。何故ならナーヴギアが切断される事になった場合、ナーヴギアから発生させられる高出力マイクロウェーブが諸君らのの脳を焼ききる事になるからだ」

 

茅場は回りくどいことを言っているが、要するにナーヴギアが取り外されようとした瞬間に、電子レンジへとジョブチェンジしたナーヴギアが、プレイヤーの脳をチンするわけだ。

 

「既に多数のメディアによって、この状況が報道されているため、外部からの切断の可能性はほぼ無くなったと言っていいだろう。

諸君らが、このゲームから解放される方法はただひとつ。今、諸君らの居る第一層から第百層まで、たどり着き、そこに居るボスを倒すことだ。

だが留意してほしい。今後、ゲームにおける蘇生手段は一切機能しない。また諸君らのHPゲージが0になった瞬間―――」

 

諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される―――

 

絶句、と言うのだろうか。少なくとも、目の前の赤いフーデットローブが茅場だと名乗った後の喧騒はすっかり収まり、一万人近く居るこの噴水広場は、静寂が支配していた。

 

「最後に、諸君らのアイテムストレージに、私からのプレゼントを送った。確認してくれたまえ」

 

殆ど反射的に、プレイヤー達はメニュー画面を開いてアイテムストレージを確認する。俺の場合、そのプレゼントを使ったところで大して変わらないのだが、念のためというやつだ。慣れた手つきで、メニューを操作して手鏡をオブジェクト化させる。そこに写るのは先程作った自分そっくりなアバター。

広場のあちこちから悲鳴が上がり、プレイヤーが光に包まれていく。現実世界の外見と変わらない見た目になるのだが、俺の場合光に包まれた後のアバターは全く変わらなかった。

またしてもあちこちで声が上がる。それがひととおり落ち着いた頃に、茅場は再度口を開いた。

 

「諸君らは今、何故と思っていることだろう。何故、ソードアート・オンライン及び、ナーヴギア設計者の茅場晶彦は何故こんなことをしたのかと。……私の目標は既に達せられている。私はこの世界を創り上げ、観賞する為にのみこの世界を創った」

 

そういえばそんな理由だったかと、思い出す。何せ、茅場の動機を聞いたのは二年前、その間に何度も死にかけたのだ。ここら辺の記憶は薄れてしまっている。

 

「以上で、ソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君、健闘を祈る」

 

その言葉を皮切りに、赤いGMアバターはノイズが発生し始め、元の赤黒いドロッとした液体に戻っていった。

チュートリアルを聞き終えて、俺はプレイヤー達が衝撃の事実を突きつけられ、フリーズしているのを尻目に、早急にフィールドへと舞い戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『死』が迫り来る。

前述の通り、はじまりの街周辺でも夜になれば危険なModが現れる。その最たるものが、今目の前で跳び掛かってきている狼、《ダイアー・ウルフ》だ。昼間に居る青イノシシとは違い、素早い。プレイヤーの周りをくるくるまわりつつ、突然襲ってくる。その為、βテストの時も正式サービスの時も、こいつに殺られるプレイヤーは多かった。

跳び掛かってきている狼にたいして、俺はバックステップで軽く距離を取り、狼が爪を振り下ろした直後に反撃のソードスキル《バーチカル》をお見舞いし、一刀両断する。そして、背後から跳び掛かってきていた狼は、剣を持っていない左手でアッパーカットを繰り出し、怯んだところで明けっぴろげになった喉元に剣を突き立てる。狼の体力を一撃で削り取るクリティカルダメージが発生し、ガラスが割れたような音を発声させ、砕け散る。

ふぅ、と一息ついて剣を腰の鞘に納める。リザルト画面を秒で閉じて、視界に表示される時間を見た。午後10時前と言ったところ。チュートリアルが終わったのが6時位だったので、四時間ほど狼を狩り続けていた事になる。お陰でレベルが1から3まで上がった。

SAOは、所謂スキルポイント制で、レベルアップすると1レベルにつき3ポイント獲得し、それをプレイヤーが自由に割り振っていく。ついでに言うと、レベルアップと同時に全ステータスが1上昇する―初期値は10―。

現在のステータスは、すべて12になっておりポイントを敏捷に3ポイント、器用さに2ポイント、筋力に1ポイント振った。

こういうMMOでの3という数値は大きいもので、全力ダッシュすれば既にオリンピック選手並みの速度が出るようになる。

夢中で狩りを続けると時間を忘れてしまうのでそろそろはじまりの街に戻る。今後の目標としては、明日朝イチではじまりの街を出て、次の村《ホルンカ》を目指す。あの村で受けられるクエスト、《森の秘薬》で手にはいる、アニールブレードを入手するためだ。

その為にも、今日はさっさと帰って寝るとしよう。

 

そう考えた時だった。

 

 

「嫌ああああぁ!止めてぇ!」

 

耳をつんざくような、悲鳴が聞こえたのは――》

 




武器・アイテムの紹介

スモールダガー:ドラ○エでいうくだものナイフ。
スモールソード:同上より、銅のつるぎ
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