底辺扱いされる強く生きる者たち   作:ガッセー

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本当は1話で終わらせるつもりだったのにどうしてこうなった・・・。


3話 特別対応班 1

朝の6時、閑静な住宅街に智紀とユキナがいた。二人とも隈のついた顔をしながら眠そうに車の中でじっと座っていた。実は昨日の残業中に別の部署から応援に来てくれないかと頼まれ、残業が終わらないまま徹夜して今に至ると言う訳なのだ。

 

「6時か…。最近時間の流れがさらに速くなったきがするな…」

「あら、あなたもついにおっさんの仲間入り?うつさないでよ」

「病気みてーに言うんじゃねーよ」

 

二人が軽口を叩き合っていると念話による通信が入ってきた。

 

『目標出てきました』

 

その瞬間二人が真剣な表情になり、前の住宅を注視する。そこには赤のチェック柄のシャツにジーパン姿で青のリュックを背負った、30代くらいの中肉中背の男が出てきた。

 

「あいつか」

「あいつね」

 

二人が男を確認し智紀がキーに手を掛ける。男が駐車場にある自分の車に乗り込みエンジンを掛けようとしたそのとき、智紀が車のエンジンを掛けそのまますばやく発進し、同じく発進してきたほかの車と一緒に、駐車場の出入り口を塞ぐ。裏にもある出入り口も同様に塞ぎ、完全に退路を断った状態にする。

 

「管理局です。ちょっといいですか」

 

車から降りた仲間が男に話しかける。

 

「い、一体なんですか!」

「自分たちが来た理由わかってるでしょう?これ令状です。あなたの車調べさせていただきますね」

 

そういうと数人で車を物色し始めた。

 

「あ!ちょっと!ちょっと待って…」

「あった」

「うわ、こんなに…」

 

そこには大量の女性下着がダンボールのような箱に入れられていた。

 

 

 

 

「ホントあの手の輩はムカつくわね」

「無駄に疲れるやつだったな…」

 

あのあと自宅まで捜査し多くの下着を押収しいざ逮捕といったときに、犯人の男がかなりゴネてかなりめんどくさかったのだ。朝一での仕事ということもあり余計に疲れ、昼飯まで仮眠室で寝ようと智紀が思っていたとき、部隊長のクリアから通信が入った。

 

『智紀君、あなた今時間空いてるわよね?』

「アイテナイデスヨー」

『空いてるのね。じゃあちょっとすぐオフィスに来てちょうだい』

「え、ちょっ…切りやがった」

 

それだけいって通信が切れた。

 

「空いてないって言ったじゃん!!」

「あんた演技ヘッタクソね」

「ハァ、せめて用件言ってくんないかな…」

「急用なんじゃない?」

「だったら尚更だろ」

 

そう愚痴りながら歩みを速める。こういった急に呼び出されるときは碌な用事ではないということを智紀は経験上察知していた。今日は何なんだろうと考えているうちにオフィスの前について、ドアを開ける。

 

「おや、来たわね。じゃあ智紀君いくわよ」

「はい?行くってどこに?」

 

智紀が当然の質問をするがそれより前に二の腕を万力のような握力で掴まれ引きずられていく。

 

「い、痛い!右は痛い!」

 

そう叫びながら智紀は拉致られて行った。

 

「いったい何なの…」

 

ユキナが呆然とした表情をしながら自分のデスクに戻っていく。

 

「あら?金髪はいいとしてガルシアさんは?」

 

よくみるとフレッドとガルシアのデスクが空いていたのだ。ユキナは一人残っていたラナに聞いた。

 

「ガルシアさんは刀の調子が悪いって言って、開発部のほうに行きました。」

「ふ~ん、そう」

 

ユキナはそのまま興味の対象をデスクの上に溜まっている紙束に移して盛大にため息をついた。

 

 

 

 

 

「腕ちぎれるかと思った…」

「まったくだらしないわね~」

 

今二人はいるところに向かっていた。管理局地上本部上層区画である。

 

「で、上層部の巣に来て何があるんですか?」

「それは行ってからのおたのしみ~☆」

「いい年こいて『おたのしみ~☆』ってグボァ!!?」

 

智紀がついツッコミをつぶやいてしまった瞬間、まさに神速の裏拳が顔にはいった。

 

「あら大丈夫?鼻血出てるわよ?」

「いえ…大丈夫じゃなさそうなんで帰ってもいいですか…」

「いいえダメよ。さっさとその顔洗ってきなさい」

 

そういってトイレを指差した。鬼である。

そんな一幕を終え目的地までたどり着いた。そこは自分らのオフィスとは違い随分と上等な両開きの扉があり、そこの前にフレッドがいた。それを見て智紀は大体のことを察した。

 

「よう、ひでぇツラだな」

「うっせぇな」

「あなたたち静かに。失礼します」

 

クリアがそう言いながら入っていく。智紀とフレッドも顔を引き締め入室する。

 

「おお、来たかい」

 

そこにはゆったりとしているが、力強い覇気を放つ老人が立っていた。

 

「323部隊クリア・へミスティン二等陸佐、浮岳智紀一等陸尉、フレッド・オーレン二等陸尉。ただいま到着しました」

「ああ、ご苦労。」

 

彼がそういった瞬間全体に結界のようなものが張られ、空気が一気に緩やかなものになった。

 

「もう楽にしてくれてかまわないよ。防音、盗聴対策の結界を張ったからね」

「ではお言葉に甘えて…。直接会うのは部隊結成以来ですね、ジョバンニ少将」

「君は本当にかわらないなぁクリア君」

 

互いに握手しソファに掛けた。

 

「君たちも座りなさい」

「「はい。失礼します」」

 

智紀とフレッドも座り、話が始まった。

 

「君たちとも久しぶりだねぇ」

「はい。書面か通信で軽い意思疎通をするくらいでしたから。」

「そうッスね。何か報告する時くらいしか接することないですからね」

 

久しぶりに直接会ったため、会話に花が咲く。そこにクリアが話しを戻した。

 

「積もる話もありますが本題に入りましょう」

「ふむそうだね。実は今回呼んだのは特別対応班としての任務と警告を伝えようと思ってね」

 

ある程度察しがついてたのか動揺はしなかったが、警告と言う言葉に皆が眉をひそめる。

 

「仕事と警告ですか・・・前者はともかくとして後者は穏やかじゃないですね。」

「任務は文面や通信でもよかったのでは?」

「うむ、色々と理由があってね。まずは依頼についての話をしようか。フレッド君調査報告も兼ねていいかい?」

「はい」

 

そして空中に大きめの画面が投影された。

 

「依頼するのは第37管理外世界にある違法研究施設の潜入、破壊だよ」

「潜入に破壊ですか・・・。どういった施設なんでしょう?」

「そこからは俺が説明します」

 

そこでフレッドが立ち上がる。

 

「えー、自分は今回ここの研究所について、関系組織、企業などを探って調査していました」

 

そういって画面を変える。画面には緑に囲まれた山の中に、自然豊かな所には不釣合いな人工物のゲートのようなものが映っていた。

 

「ここの研究所は表向きでは第52管理世界にあることになっており、デバイスなどに使われている高性能AIを開発する研究所としてあります。しかし裏ではレアスキルや人間の脳を使ったある研究がなされていたこと。あと実際に第52管理世界赴きダミーであることを調査した結果、確認しました」

「どんな研究なんだ?」

 

智紀が真剣な表情で聞く。

 

「簡単に言うと脳と脳を繋いだスパコンみたいなものを作っているようだ」

 

その言葉に部屋の空気が重くなる。

 

「専門的なものは分からないんですが、どうやら連中は人間の脳は未知の可能性を秘めているから、それでスパコン作ったらすごいことになんじゃね?って考えたらしいですね」

「イカレてるわね…。レアスキルはどういったものなの?」

「レアスキルは脳みそ研究の副産物みたいなものらしいです。ただ面白いのがレアスキルの付け替えを研究していたらしい」

「付け替え?」

 

智紀が首をかしげ、フレッドが頭をガシガシ掻きながら説明した。

 

「これもよくわかんねぇけど、レアスキルを連中は脳が特殊な何かを起こして出来るって考えて、その「何か」をチップとかメモリーに移して誰でも使えて且それが付け替え可能なようにするっていう研究をしてたようだ」

「(チップ、メモリー…)」

 

智紀がなにかを考え込み、クリアとジョバンニが質問する。

 

「大体想像つくけどバックにはなにがいるのかしら?」

「どの証言や資料のも明確なものは出てないッスけど、たぶん最高評議会関系じゃないかと」

「その研究施設で使われている人間はどういった人たちなんだい?」

「それがこれも明確なルートは掴めませんでしたが、おそらく人身売買の組織と各世界のスラム街や出稼ぎ労働者の人間を使っている可能性があります。出稼ぎ労働者の裏を取ろうとしたんですが、雲隠れするやつらがいるもんで絞りきれませんでした。」

「ふむ、よく調べてくれた。あとは報告書として提出しておいてくれ」

「了解しました」

「少将、今回の任務でも本局の情報部との連携はあるんでしょうか?」

「それは問題ない。彼らも情報は欲しいからね」

 

次元航行部隊、または本局や海と略される組織である。そこの情報部とはこういった任務のときだけ協力関係にあり、次元世界に渡る手続きや各種サポートをしてくれるのだ。

ここで智紀がジョバンニに聞く。

 

「さっき仰っていましたが、端末ではなくここで話さないといけない理由とはなんでしょうか」

「ああそうだったね。この話は先ほど言った警告と直結する話なのだが、ここ最近管理局上層部できな臭い動きがあってね」

「きな臭い、ですか?」

「うむ、レジアス・ゲイツ少将を知っているかな?」

「たしか地上本部の人ですよね」

「ああ、私自身が彼と敵対しているわけではないんだけどね、彼はちょっと地上の現状に大きな疑問を抱えていて、海の連中と大きく事を構えだしているんだよ。おまけに身内の荒捜しまで始めている。そんな中で文章や通信でこういった裏が漏れたら厄介でしょう?だから今回はそれらの警告と任務を口頭で伝えようと思って、このような形にしたと言うわけなんだよ。まぁ近いうちに新しい秘密回線を作る予定だけどね」

 

思っていた以上に大きな話なってきて智紀とフレッドは聞き入り、クリアは思案顔で聞いていた。

 

「元々陸と海は連携がとり辛かったり予算の問題で度々衝突はあったけど、彼のような権力のある人物が表立って言うことはあまりなかったからね。今のところ問題はなさそうだけど海との関係がさらに冷める可能性があるんだよねぇ」

「それは困りますね。海の情報部にはだいぶお世話になってますからね」

「情報部のほうは私から連絡をとって、特に問題はないことを確認したから大丈夫。おまけに彼らから『存分にやってくれ』と言伝までもらったよ」

 

その言伝に皆から苦笑が漏れる。するとクリアが腕時計をのぞき立ち上がる。

 

「さてあまり長居して怪しまれるのも厄介ですからここらで失礼します」

「監視でもされてるんスか?」

「上層部の陰険さを舐めてはいけないよフレッド君。その気になっていれば今頃君たちのプライバシーは全て覗かれてるかもしれないからねぇ」

「うえ~最悪ッスねそれは」

「ははは、じゃあ頼んだよ」

「「「はい、失礼します」」」

 

そういってドアを閉め3人は足早に上層区画を後にし、オフィスに戻ってすぐ会議を始めた。

 

「今回は智紀君とフレッド君のツートップだけで行く」

「クリアさん、私も行かないんですか?」

 

ラナが挙手しながら言う。

 

「今回の任務は機械的な電子回線だけでなく人間の脳も含まれる。君には少し酷過ぎる」

 

ラナは能力で人間の神経パルスにアクセスしてハッキングすることも出来るが、人の感情がモロに自分の中へ入ってきてしまうデメリットもある。そのためいくつも繋がった脳に間違ってアクセスしてしまった場合、発狂してしまう可能性があるとクリアは判断したのだ。

 

「でも…」

「気にすんなチビッ子。俺たちがパパッと終わらせちまうさ」

 

そういいながらフレッドがラナの頭をクシャクシャと撫でる。

 

「う~、だから子ども扱いしないでください!!」

「ハハハ、撫でられるのはガキの特権だ。あきらめな」

「まぁ、そこまでにしておきな。で、部隊長俺たちはどうすんだ?」

 

ガルシアが場を納め自分らの役目を問う。

 

「残りのみんなはこの二人の残ってる仕事を引き継いでもらえる?」

「まぁそうだろうなってわかってたけどさ…ちなみにドンくらいこいつら帰ってこないんだ?」

「3日ね」

「マジか…」

 

そういいながらガルシアは天井を仰ぎ見る。

 

「ハァ、智紀あなたの仕事渡しなさい。やっとくから」

「ありがてぇ。書類ばっかで現場行くようなのは今のところないから安心してくれ。帰ったら飯くらいは奢るよ」

「じゃあ俺のはおっさん、引き続きよろしく!」

「この野郎…。帰ったら飯の奢りの他にカートン二つ追加しとけよ」

「私も手伝います!」

 

皆の会話がひと段落ついたところでクリアが手を叩き全員の視線を集めた。

 

「じゃあすぐに準備しなさい。行くためのお膳立てはもうできてるから」

「分かりました。準備が出来次第出発します」

 

二人は緩んだ表情を引き締め、オフィスを出て行った。

 




ジョバンニ少将
323部隊の後見人的な人。どちらかと言うと穏健派で強硬的な主張はしないものの締める所は締めて制裁を加えるような清濁併せ持つ人。

情報部
本局にある管理局の諜報機関的な所。秘密主義で排他的なのであまり他部署とつるむことはないが323部隊は別で裏で協力関係を結び管理局内や次元世界の問題を解決している。
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