「なんだ、こりゃ?」
鬼退治のために山を登って、森を抜けた場所に少女――いや、幼女といっても差し支えないような小娘が寝ていた。
「こんなとこで寝るとか、山育ちのオレでも……いや、フツーに寝てたな」
だが、それはオレの力ありきだし。なにより、ここは鬼が出るのだから放ってはおけない。
「たく、しゃーねぇな……えーっと、こんなとこで寝てると危ないぜ、嬢ちゃん」
「んー? なんやお客さんかいな、静かなとこ探して御殿出たのに」
少女は目を覚ましたようだ。
「うちの眠りを邪魔したのは頭にくるけど、嬢ちゃんなんて呼ばれたの初めてやさかい赦したろ」
そう言って、少女は起き上がる。
「ッ!?」
そこで気付いた。少女の異様な姿に。
「て、てめーなんつー恰好してんだよ!?」
少女は身の丈以上のブカブカの着物をはだけさせ、その下は真っ裸だった。
「普通はうちの角見て驚くもんやけど、その下見るやなんて、やらしい小僧やなぁ」
「はっ、別に裸見たかった訳じゃ……角? うわっマジだ」
今更ながら、頭の上についている二本の角に気付く。
「てことはなにか、てめーがこの山に巣くう鬼だってことか?」
「ふふふ、うちも有名になったもんやねぇ。あんさんの思ってる鬼が『酒吞童子』ゆうんやったら、おうとるで」
「子供の姿してるってのは正直ヤリづれーが、まぁいいここでくたばっとけ!」
マサカリを振り下ろす。この間合いで外すわけもなく、酒吞童子はペシャンコに潰れたと思われた。
「いきなり突っ込むなんて、気が早すぎるわぁ。まぁ、我慢できんゆうんも若さゆえやなぁ」
オレのマサカリが酒吞童子の細腕に受け止められていた。大将にも受け止められたことはあるが、今の自分はその時以上の力だし、酒吞童子の腕は大将のそれより小さい。にも関わらず難なく受け止められたというのは、かなりのショックだった。
「ちっ、腐っても鬼種っつーわけか」
「腐ってもやなんて失礼やなぁ。長生きしとるとはいえ、見た目は少女そのものなんやから」
酒吞童子がマサカリを軽く押し返す。
「ぐはっ!」
それだけでオレは後ろに吹き飛ばされる。
「おもしれぇ、久々に全力だすか!」
起き上がり、マサカリに雷電を纏わせる。
「そんなにうちを求めてくれるやなんて、嬉しいわぁ」
そうして、オレたちはマサカリと拳を打ち合った。
「ちっ、なんでオレを殺さない」
長時間戦ったが一向に決着がつかず、疲弊したオレが先に倒れた。
酒吞童子も疲れているはずだが、息の一つも上がっちゃいない。
「ん? なんでうちがあんさんを殺さないかんの?」
「あ? そりゃあ、オレはお前を殺そうとしたからに決まってんだろ!」
「ふふふ、せやな。いつもやったら、骨まで溶かしてさいならするけど……うちはあんたはんのこと気に入ったさかい、しばらく見ておきたいんよ」
「はぁ?」
まったく理解ができない。
「ところであんさんの名前聞いとらんかったね」
「オレは……金時だ。坂田金時」
「そうか。じゃあ金時、今日は疲れたやろうから帰ってゆっくり休みぃ。
元気なったら、また明日遊びにきたらええから」
「何言って……」
「さっきの打ち合い楽しかったやろ? あんたやって、こないな風に終わんのはつまらんやろ」
「…………」
「やから、また明日ここでな」
「……わーったよ。でも勘違いするなよ、オレはお前を退治するために来るんだからな」
「素直やないとこも、ほんま可愛いなぁ」
「うっせー」
こうしてオレは山を下りる。明日またここへ来るために。
遊びに行くわけじゃねーぞ。
「ん……あさ「よう、シンジ! やっと目ぇ覚ましたか」……ッ!?」
慎二が起きた直後、金時が詰め寄る。
「な、なんだよ!? いきなり」
「おう。昨日、シンジがさっさと寝ちまうから、起きるの待ってたんじゃねぇか」
「お前が帰ってくるの遅いから悪いんだろ!! ていうかずっと起きてたの?」
「んなことはどうでもいい。それよりバイク造ってくれねぇか」
「バイクぅ? なんでさ」
「昨日、教会にいるメガネのねーちゃんと話してたら、むしょーに乗りたくなったんだよ。
ライダーならベアー号持ってこれたんだが」
「なんだよそれ?」
「いいから造ってくれよ。モンスターマシーンをさ。シンジならそれくらいよゆーだろ?」
「当たり前だろ! ちょっと待ってろ。お前も驚くような凄いやつ造るから」
「サンキュー、シンジ。出来たらオレのケツに乗せてやるよ。オレっちのゴールデン・ドライブ味わえるぜ」
「いいよそんなの」
文句を言いながらも慎二はバイクを製作する。
「なんでしょうか……あれ」
「えーっと、ツーリング?」
なぜかバイクスーツに身を包んだ金時がハーレーを乗り回し、
「おう、お前らか! 折角会いに来てくれたとこ悪いが、今日はゴキゲンなマシーンに夢中でそれどころじゃねぇんだ」
白野たちに気付いた金時がハーレーを停車させ、挨拶する。
「べつに貴方に会いに来たわけじゃないんですけどー」
「そうかい。だが、今日はこのアリーナはオレたちの貸し切りだ。トリガー取ったらさっさと帰んな」
勝手なことを言い、金時は再びハーレーを走らせる。
「そんじゃあカッとばすぜ! ゴールデンドライブ!!」
周りのエネミーを薙ぎ倒しながら、ハーレーは疾走する。
「……酒吞ちゃんの言う通り、本当に元気な方ですね」
「あれ?」
「どうされましたか?」
「バイクの後ろに慎二も乗ってるなぁって」
「おや、本当ですね。魂が小さくてよく見えませんでした。
でも意外ですね。あの海藻類はああいうの苦手そうに思いましたが……まぁ、金時さんにムリヤリ乗せられたといったところでしょうか?」
「そうかもね。
でも……」
慎二の顔を見て、白野は言う。
「なんかすごく楽しそうだな」
つづく