new record   作:朱月望

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決戦まであと―――3日

「なんだ、こりゃ?」

 鬼退治のために山を登って、森を抜けた場所に少女――いや、幼女といっても差し支えないような小娘が寝ていた。

「こんなとこで寝るとか、山育ちのオレでも……いや、フツーに寝てたな」

 だが、それはオレの力ありきだし。なにより、ここは鬼が出るのだから放ってはおけない。

「たく、しゃーねぇな……えーっと、こんなとこで寝てると危ないぜ、嬢ちゃん」

「んー? なんやお客さんかいな、静かなとこ探して御殿出たのに」

 少女は目を覚ましたようだ。

「うちの眠りを邪魔したのは頭にくるけど、嬢ちゃんなんて呼ばれたの初めてやさかい赦したろ」

 そう言って、少女は起き上がる。

「ッ!?」

 そこで気付いた。少女の異様な姿に。

「て、てめーなんつー恰好してんだよ!?」

 少女は身の丈以上のブカブカの着物をはだけさせ、その下は真っ裸だった。

「普通はうちの角見て驚くもんやけど、その下見るやなんて、やらしい小僧やなぁ」

「はっ、別に裸見たかった訳じゃ……角? うわっマジだ」

 今更ながら、頭の上についている二本の角に気付く。

「てことはなにか、てめーがこの山に巣くう鬼だってことか?」

「ふふふ、うちも有名になったもんやねぇ。あんさんの思ってる鬼が『酒吞童子』ゆうんやったら、おうとるで」

「子供の姿してるってのは正直ヤリづれーが、まぁいいここでくたばっとけ!」

 マサカリを振り下ろす。この間合いで外すわけもなく、酒吞童子はペシャンコに潰れたと思われた。

「いきなり突っ込むなんて、気が早すぎるわぁ。まぁ、我慢できんゆうんも若さゆえやなぁ」

 オレのマサカリが酒吞童子の細腕に受け止められていた。大将にも受け止められたことはあるが、今の自分はその時以上の力だし、酒吞童子の腕は大将のそれより小さい。にも関わらず難なく受け止められたというのは、かなりのショックだった。

「ちっ、腐っても鬼種っつーわけか」

「腐ってもやなんて失礼やなぁ。長生きしとるとはいえ、見た目は少女そのものなんやから」

 酒吞童子がマサカリを軽く押し返す。

「ぐはっ!」

 それだけでオレは後ろに吹き飛ばされる。

「おもしれぇ、久々に全力だすか!」

 起き上がり、マサカリに雷電を纏わせる。

「そんなにうちを求めてくれるやなんて、嬉しいわぁ」

 そうして、オレたちはマサカリと拳を打ち合った。

 

「ちっ、なんでオレを殺さない」

 長時間戦ったが一向に決着がつかず、疲弊したオレが先に倒れた。

 酒吞童子も疲れているはずだが、息の一つも上がっちゃいない。

「ん? なんでうちがあんさんを殺さないかんの?」

「あ? そりゃあ、オレはお前を殺そうとしたからに決まってんだろ!」

「ふふふ、せやな。いつもやったら、骨まで溶かしてさいならするけど……うちはあんたはんのこと気に入ったさかい、しばらく見ておきたいんよ」

「はぁ?」

 まったく理解ができない。

「ところであんさんの名前聞いとらんかったね」

「オレは……金時だ。坂田金時」

「そうか。じゃあ金時、今日は疲れたやろうから帰ってゆっくり休みぃ。

 元気なったら、また明日遊びにきたらええから」

「何言って……」

「さっきの打ち合い楽しかったやろ? あんたやって、こないな風に終わんのはつまらんやろ」

「…………」

「やから、また明日ここでな」

「……わーったよ。でも勘違いするなよ、オレはお前を退治するために来るんだからな」

「素直やないとこも、ほんま可愛いなぁ」

「うっせー」

 こうしてオレは山を下りる。明日またここへ来るために。

 遊びに行くわけじゃねーぞ。

 

 

 

「ん……あさ「よう、シンジ! やっと目ぇ覚ましたか」……ッ!?」

 慎二が起きた直後、金時が詰め寄る。

「な、なんだよ!? いきなり」

「おう。昨日、シンジがさっさと寝ちまうから、起きるの待ってたんじゃねぇか」

「お前が帰ってくるの遅いから悪いんだろ!! ていうかずっと起きてたの?」

「んなことはどうでもいい。それよりバイク造ってくれねぇか」

「バイクぅ? なんでさ」

「昨日、教会にいるメガネのねーちゃんと話してたら、むしょーに乗りたくなったんだよ。

 ライダーならベアー号持ってこれたんだが」

「なんだよそれ?」

「いいから造ってくれよ。モンスターマシーンをさ。シンジならそれくらいよゆーだろ?」

「当たり前だろ! ちょっと待ってろ。お前も驚くような凄いやつ造るから」

「サンキュー、シンジ。出来たらオレのケツに乗せてやるよ。オレっちのゴールデン・ドライブ味わえるぜ」

「いいよそんなの」

 文句を言いながらも慎二はバイクを製作する。

 

「なんでしょうか……あれ」

 暗号鍵(トリガー)取得のために、新しいアリーナに入った白野たちの目の前に異様な光景が広がっていた。

「えーっと、ツーリング?」

 なぜかバイクスーツに身を包んだ金時がハーレーを乗り回し、敵性プログラム(エネミー)を蹴散らしながらアリーナを周回していたのだ。

「おう、お前らか! 折角会いに来てくれたとこ悪いが、今日はゴキゲンなマシーンに夢中でそれどころじゃねぇんだ」

 白野たちに気付いた金時がハーレーを停車させ、挨拶する。

「べつに貴方に会いに来たわけじゃないんですけどー」

「そうかい。だが、今日はこのアリーナはオレたちの貸し切りだ。トリガー取ったらさっさと帰んな」

 勝手なことを言い、金時は再びハーレーを走らせる。

「そんじゃあカッとばすぜ! ゴールデンドライブ!!」

 周りのエネミーを薙ぎ倒しながら、ハーレーは疾走する。

「……酒吞ちゃんの言う通り、本当に元気な方ですね」

「あれ?」

「どうされましたか?」

「バイクの後ろに慎二も乗ってるなぁって」

「おや、本当ですね。魂が小さくてよく見えませんでした。

 でも意外ですね。あの海藻類はああいうの苦手そうに思いましたが……まぁ、金時さんにムリヤリ乗せられたといったところでしょうか?」

「そうかもね。

 でも……」

 慎二の顔を見て、白野は言う。

「なんかすごく楽しそうだな」

 

 

 つづく

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