new record   作:朱月望

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騎士たちの矜持(二回戦)
プロローグ


「これで終わりか……」

 老人が敵性プログラム(エネミー)を撃破し、辺りを見回す。

「結局はここも戦場というわけか」

 老人のいる空間には魂の抜けた残骸(したい)が積み重なっている。

「おめでとう。傷つき、迷い、辿り着いた者よ。とりあえずはここがゴールだ」

どこからともなく男の声が聞こえる。

「聖杯戦争の本戦に進む前に君にはその資格と力を授けよう」

男がそう言うと老人の右手が焼けるような痛みに襲われる。

「これは?」

 右手を見るとそこには、大剣(クレイモア)のような紋様が浮かび上がっていた。

「それは令呪。聖杯戦争の参加者である資格であり、サーヴァントの力を強め、あるいは束縛する、3つの絶対命令権。まあ使い捨ての強化装置とでも思えばいい。

 ただし、先程も言ったがそれは聖杯戦争本戦の参加証でもある。したがって令呪を全て失えば、マスターは死ぬ。注意することだ」

「ふむ……」

 老人は早速、令呪の使い道を思案する。

「では、最後に君の盾となり剣となる英霊を召喚してもらう」

「触媒はどうするのかね」

 老人は軍人にして電子ハッカー(ウィザード)であるが、元々魔術師の血筋を引く古い家柄の出身で、聖杯戦争の知識を有していた。

「問題ない。地上の聖杯戦争には正式な召喚手順があったらしいのだが、ここではただ念ずるだけでよい」

「……了解した」

 老人は令呪のある右腕を突き出し、念じる。

「この老骨に女王の願いを叶えるに足る力を」

 令呪が 紅く輝き、その輝きが頂点に達したとき、周りのステンドグラスが割れて、この空間の中央に光が差す

「(……しかし、できることなら国のためではなく、一人の『騎士』として戦いに挑みたいものだ)」

 女王の忠節を言葉にする一方で、胸の奥では今は亡き最愛の女性を想う。

「サーヴァント、セイバー。参上いたしました」

 白銀の鎧を身に纏った騎士が老人の前に現れる。

「貴方が正しい道を歩む限り、私の剣は如何なる敵をも切り伏せるでしょう」

 老人は数々の戦場を体験し、どのような危機にも心乱されることがなかった。しかし、白銀の騎士を前に心臓が早鐘を打つ。

「名乗るのが遅れました。我が真名はランスロット。マスター、貴方の名を教えていただけますか」

 それは、高位の存在(えいれい)の圧倒的なオーラに恐れを抱いた訳ではない。

「……ふ、ふふ」

「如何なさいましたか?」

「いや、すまない。ここまで心が高鳴るのは数十年ぶりで抑えがきかなかった。なにしろ、幼少に寝物語で聞いた伝説の英雄に会えるなど……長生きはするものだな」

 老人は一呼吸してから、自己紹介を始める。

「わしはダン=ブラックモア。イングランド王国の軍人であり、名ばかりだが騎士の称号を女王陛下より賜っている」

「これより契約は完了した。マスター、ダン=ブラックモア。これより私は貴方の剣として仕えましょう」

「いや、出来るなら……主従ではなく、同じ騎士として共に戦ってくれないだろうか」

「了解しました。こらからよろしくお願いします、サー・ダン=ブラックモア」

「ああ、こちらこそ。サー・ランスロット」

 二人の騎士は手を取り合う―――仕える主のいない世界で、彼らは誰よりも騎士然としていた。

 

 つづく

 

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