プロローグ
「これで終わりか……」
老人が
「結局はここも戦場というわけか」
老人のいる空間には魂の抜けた
「おめでとう。傷つき、迷い、辿り着いた者よ。とりあえずはここがゴールだ」
どこからともなく男の声が聞こえる。
「聖杯戦争の本戦に進む前に君にはその資格と力を授けよう」
男がそう言うと老人の右手が焼けるような痛みに襲われる。
「これは?」
右手を見るとそこには、
「それは令呪。聖杯戦争の参加者である資格であり、サーヴァントの力を強め、あるいは束縛する、3つの絶対命令権。まあ使い捨ての強化装置とでも思えばいい。
ただし、先程も言ったがそれは聖杯戦争本戦の参加証でもある。したがって令呪を全て失えば、マスターは死ぬ。注意することだ」
「ふむ……」
老人は早速、令呪の使い道を思案する。
「では、最後に君の盾となり剣となる英霊を召喚してもらう」
「触媒はどうするのかね」
老人は軍人にして
「問題ない。地上の聖杯戦争には正式な召喚手順があったらしいのだが、ここではただ念ずるだけでよい」
「……了解した」
老人は令呪のある右腕を突き出し、念じる。
「この老骨に女王の願いを叶えるに足る力を」
令呪が 紅く輝き、その輝きが頂点に達したとき、周りのステンドグラスが割れて、この空間の中央に光が差す
「(……しかし、できることなら国のためではなく、一人の『騎士』として戦いに挑みたいものだ)」
女王の忠節を言葉にする一方で、胸の奥では今は亡き最愛の女性を想う。
「サーヴァント、セイバー。参上いたしました」
白銀の鎧を身に纏った騎士が老人の前に現れる。
「貴方が正しい道を歩む限り、私の剣は如何なる敵をも切り伏せるでしょう」
老人は数々の戦場を体験し、どのような危機にも心乱されることがなかった。しかし、白銀の騎士を前に心臓が早鐘を打つ。
「名乗るのが遅れました。我が真名はランスロット。マスター、貴方の名を教えていただけますか」
それは、
「……ふ、ふふ」
「如何なさいましたか?」
「いや、すまない。ここまで心が高鳴るのは数十年ぶりで抑えがきかなかった。なにしろ、幼少に寝物語で聞いた伝説の英雄に会えるなど……長生きはするものだな」
老人は一呼吸してから、自己紹介を始める。
「わしはダン=ブラックモア。イングランド王国の軍人であり、名ばかりだが騎士の称号を女王陛下より賜っている」
「これより契約は完了した。マスター、ダン=ブラックモア。これより私は貴方の剣として仕えましょう」
「いや、出来るなら……主従ではなく、同じ騎士として共に戦ってくれないだろうか」
「了解しました。こらからよろしくお願いします、サー・ダン=ブラックモア」
「ああ、こちらこそ。サー・ランスロット」
二人の騎士は手を取り合う―――仕える主のいない世界で、彼らは誰よりも騎士然としていた。
つづく