new record   作:朱月望

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決戦まであと―――6日

 都が見える。

 その都は時の流れと共に繁栄と衰退を繰り返し、次第に大きくなる。

 何十年、何百年とその都は存在し続ける。

 世界の中心が此処であると言わんばかりに……

 

 

「ん? 夢か……」

 慎二は目を覚ます。

「えーっと、昨日は予選を通過して割り当てられたマイルームについたら急に眠気がして……そのまま眠ったのか」

「でも他にもなんかあったような……」

「起きたかシンジ」

「あー忘れてた。いや、忘れておきたかった」

 慎二はロムルスの顔を見てうんざりした顔をする。

 昨日、ロムルスを召喚した後にマイルームで二人は会話したのだが、ロムルスの一人称が(ローマ)であるのとロムルス自信がローマの話しかしなかった為に話についていけず、慎二はふて寝したのだ。

「いいかランサー、聖杯戦争を勝ち抜くには僕の言うことだけ聞いてればいいんだ。昨日みたいに一方的に訳が分からないこと喋るなよ」

「分かった。言葉などなくとも(ローマ)はローマであるということだな」

「はぁ、もうマジでワケが分からない。こいつ本当はバーサーカーなんじゃないの?」

 慎二は大きなため息をつく。

「あ、そうだ。たしか2Fの掲示板に対戦相手が公開されてるんだっけ」

「ちょっと見てくるから、お前はそこで待っとけよ」

「うむ」

 慎二はマイルームを出て掲示板に向かう。

「さ~て、僕の初陣を飾る映えある犠牲者は誰かな~」

 掲示板を見る。

 しかし、そこには慎二の名前はあったが対戦相手の名前がない。

「あれ? おかしいな。名前の部分を(デリート)したり 塗り潰(クラッキング)したような形跡はないし……」

「ん? どうかしたかね?」

 振り向くと 神父服(カソック)を着た男が立っていた。

「私は言峰。この聖杯戦争の監督役として機能しているNPCだ」

「お前、昨日の予選でアナウンスしてたやつか。

 どうもこうもないよ。対戦相手が割り振られてないんだからさ!」

「ふむ……少々待ちたまえ……」

 言峰は考えるような姿勢になる。

「―――妙な話だが、システムにエラーがあったようだ」

「はぁ!? しっかりしてくれよ」

「すまない。君の対戦相手は予選をギリギリのところで通過した為に登録が済んでいないようなのだ。

 対戦の組合せは明日にはなんとかしよう」

「予選もまともに通過できない弱小魔術師(ウィザード)が相手なんて締まらないな~」

 残念そうに言いながらも口元は厭らしく歪める。

「それなら、まぁいいや。明日、存分に間抜け面を拝んでやるとするか」

 慎二は笑いながらマイルームに戻る。

「シンジよ、アリーナへ行かないか」

 マイルームに戻るなりロムルスが話しかける。

「あ? まぁ他にやることないし、いいよ。迷宮(ダンジョン)構成(グラフィック)とか見てみたいし」

 

「ローマ!」

 ロムルスが樹槍を振るい、アリーナ内の敵性プログラム(エネミー)を撃破する。

「なんだお前強いじゃないか!」

 お世辞などではなく、慎二の言う通りロムルスは強かった。

 アリーナの奥までやって来たが、出てきた敵は全て一撃で倒し、ダメージを受けても傷ついた風には見えない。

「そうだ! どうせならここでお前の宝具見せてよ」

 慎二は覗き見(ピーピング)している者がいないことを確認してロムルスに言う。

「良いだろう。このアリーナをローマにするとしよう」

「えっ!? ちょっと待て、僕は宝具を見せろって言っただけで……」

「すべて、すべて、我が槍にこそ通ず……」

 ロムルスは樹槍を地面に突き立てる。

「マジで話が成り立たない。本当はバーサーカーじゃないのか!?」

「『すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌス)』!」

 地面から何本もの樹木が生え、急速に成長しフロアを埋め尽くす。

「う、うわーっ!?」

 目の前に迫る樹木を見て、慎二は思わず悲鳴を上げてしゃがみ込む。

「……ど、どうなったんだ?」

 物音が止み、恐る恐る顔を上げる。

「なんだよ……これ……」

 アリーナの見た目は全面ガラス張りの水族館に似ているのだが、慎二たちがいるフロアだけが世界史の教科書や映画に出てきそうなローマ、ギリシャ風の建物の中に変わっていた。

「うむ。これこそローマである」

「凄いじゃないかランサー! これどうやったんだ?」

「我が槍はローマに繋がっている。つまり現在、過去そして未来のローマでさえも(ローマ)は創造することができるのだ」

「あーよくわかんないけど、その宝具で色々なことが出来る訳ね」

「ふふ、そなたもローマを理解してきたようだな」

 ロムルスは笑みを浮かべる。

「いや、分かんないけど。で、結局それ、攻撃に使えんの?」

「うむ。この圧倒的ローマを受け、ただですむ英霊はそういまい」

「そうか」

 慎二はもう一度、宝具により変化したフロアを見る。

 通常、アリーナに損害を与えてもセラフが早急に修復する。

 宝具により外装が変わることも、セラフはアリーナの破壊と捉えて直ぐに修正されるはずなのだが、一向にその兆候は見られない。

 よく見ると修正はしているのだが、それを上回るスピードでロムルスの宝具が上書きを繰り返している。

 それはセラフの回復すら追いつかないほどのダメージを与えていることを意味する。

「確かにお前の宝具は攻撃面でも有用そうだ」

 慎二は厭らしく口を歪める。

「はは、これなら僕の優勝は確実だね。皆には少しくらい楽しんで貰いたいけど、これじゃ圧倒的過ぎて文句言われちゃうな~」

 まだ見ぬ敵の姿を想像して慎二は笑う。

「あ~決戦の日が待ち遠しいな~」

 

 

 つづく

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