処刑が決まったギネヴィアを救出すべく、私は仲間を殺した。赦されざる罪だと理解しても、愛する者を護りたいという激情に迷いはなかった。
だからどうか、我が王よ。貴方も私を罰して下さい。貴方の妻を寝取ったのです。貴方の大事な騎士を殺したのです。その胸に宿る憤怒を、憎悪を、恩讐を私にぶつけて下さい。
―――それだけが私の救いなのだから
ダンが教会を訪れると、そこで白野に出会った。
「これは珍しいところで会いますな。君もクリスチャンでしたか」
「いえ、何の気はなく彷徨ってたらここに」
白野は苦笑しながら答える。
「君のセイバーはどうした? いつも一緒だと記憶しているが」
「セイバーは昨日のあれから機嫌が悪くて……今もふて寝しています」
「そうか……それは難儀だが、あのお嬢さんなら大丈夫だろう」
先日のアリーナの時とは異なり、ダンの声は温かい。
「一つ聞いておきたかったのですが……」
白野は唐突に切り出す。
「あなたはどうして聖杯戦争に参加されているのですか?」
「……既に聞いていると思うが、私は西欧財閥の一角を担うイングランド王国の軍人でな。今回も軍人として女王陛下の命に従ってるにすぎん」
「軍人として?」
白野はその言葉に疑問を抱く。
「あなたは生き残るためなら、どんな手段でも使う……そんな人物だと聞きました」
「……あの革命家のお嬢さんが言いそうなセリフだな」
「最初に狙撃された時は、俺もそう感じました。でも、先日の戦いではそう感じなかった」
「…………」
「あなたは無防備な俺を攻撃する機会はいくらでもあったし、自身のサーヴァントに加勢する様子が見れなかった。それは、騎士の戦いを貶めないようにしているみたいで、聞いた話と比べると違和感を感じました」
「……そうだな軍務に徹していれば、別の戦い方をしただろう」
ダンは重い口を開く。
「だが、スコープ越しに君を見た時、妻の面影がよぎったのだよ」
「奥さんがいたのですか」
「老人の昔話だがね……今は顔も声も忘れてしまった。面影すら思い返すことができない
……そんな彼女が『このままでいいのか?』と私に語りかけてきた気がしたのだ」
「…………」
「そして、私のセイバーの姿を見て思ったのだ……私もあのような騎士になりたかったのではないかと。
……そう思ったら、
「…………」
ダンの言葉に白野は返す言葉が出なかった。
この老兵の言葉は、記憶のない自分には重すぎた。
「……らしくない。つまらない話につき合わせた。老人の独り言と笑うがいい」
ダンは教会の扉に手をかける。
「良い戦いをしよう、少年。君の目に曇りが生じぬように」
扉を開けながらもう一度、白野の方を向き言葉をかける。
「わしも、わしに恥じぬ戦いをしよう」
何者かに誓うように、最後の言葉を呟く。それは人生をやり直す力強い意志が感じられた。
つづく