結局、王は私を赦した。裁くことも、罰することもなく、ただただ私を赦した。
私は理想の騎士だから、忠節の騎士だからと。
人のまま王となった、あの方は最後まで正しく在ろうとした。その胸にあるはずの感情を押し殺して、貴方は悪くないと。
私が悪でなくて、他の誰が悪だというのか! 私のどこが正しいなどと云えるだろうか!
この胸を押し潰す罪悪感は日に日に大きくなる。私にはもう耐えきれない。
このままでは私は狂気の道に堕ちるしかなくなってしまう。
我が王よ、どうか私を――
「…………」
いつもの夢と共に目が覚める。
これがただの夢でないことは理解している。
そもそも電脳の世界では夢は見ない。情報そのものである霊子ダイブでは情報整理のための夢は見れないのである。
「となると……」
ダンはある噂を思い出す。かつて魔術という神秘が存在していた頃、地上での聖杯戦争でマスターはサーヴァントの生前の記憶を夢という形で見ていたという。
「まるでファンタジーだな」
英霊を喚び出し戦わせている時点で十分ファンタジーだが、と呟く。
「ダン、本日はどうしますか」
ダンの呟きが聞こえなかったのか、ランスロットはいつもの調子で訊ねる。
「明日の決戦に向けて、作戦会議でもしようか」
「アリーナに行かないのは彼らへの配慮ですか」
力量の差を見せつけられた白野たちはアリーナでレベルを上げているだろうことは想像に難くない。
「さてな」
そして、ダンとランスロットは明日のことを話す。
「ところで……」
とダンが切り出す。
「君はアーサー王とギネヴィア、どちらが大事だったのかな」
「……どうして、そのような疑問を持たれたのでしょうか?」
ランスロットの目はいつになく鋭い。
「君とギネヴィアの関係を赦されたにも関わらず、君たちは添い遂げることなく生涯を終えているので、気になってな」
夢のことは伏せて話す。
いくらサーヴァントといえど、プライバシーに土足で踏み込んだとあっては、ただでは済むまい。
「……私は王から赦しを得たことが、赦せなかったのです」
ランスロットは滔々と語り始める。
「私は罪を犯した。その罪は私の心に大きな傷を付けて、私を苦しめ続けるのです。
この痛みを取り除くには、それに相応しい罰が必要なのです!
なのに、私は赦された……胸の痛みはそのままに」
ランスロットは堰を切ったように感情的に話す。
「すみません。みっともないところを見せて」
「いや、わしも無粋だった」
暫くの間、沈黙が流れる。
「話が逸れてしまいましたが、私はもしかしたら、王の方が好きだったのかもしれません……
それに気付いたときには、全てが手遅れでしたが……」
ランスロットはどこか遠くを見つめながら、ひとりごちた。
つづく