new record   作:朱月望

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決戦まであと―――1日

 (あたし)たち反乱軍はローマ軍がウェールズに遠征している隙を突いて、ローマの支配する都市の一つ、カムロドゥヌムに侵攻した。

 カムロドゥヌムに住むローマ人の多くは退役軍人とその家族で、(あたし)たち反乱軍と戦う兵力はなく、またローマから送られた予備兵力がたったの200人であったこともあり、あっさりと陥落した。

「我らが女王、降伏した捕虜はいかがしますか?」

 臣下が(あたし)に話しかける。

 ローマ帝国では、捕虜はみな奴隷にして死ぬまで()き使っている。

 だが、(あたし)たちブリタニア人はそんなことしない――

(みなごろし)にしなさい」

「ッ!……よいのですか?」

 臣下は(あたし)の言葉に対して慎重に聞き返す。

「ええ、皆の者も聞きなさい」

 (あたし)はその臣下だけでなく、周りにいた仲間に届くように大きな声を上げる。

「憎きローマ人は全て殺せ! 忌まわしきローマ建築は全て焼き払え!

 (あたし)たちを苦しめたローマの痕跡を跡形もなく破壊しろ!」

 反乱軍は固唾を飲んで(あたし)の言葉に聞き入る。

「幼子も老人も迷わず殺せ! 神殿も偶像も関係なく燃やし尽くせ!

 もし、その手が殺人を拒み、火を放つことを躊躇うなら、思い出せ……(あたし)たちが虐げられ、奪われ続けたあの日々を!」

 その言葉で、皆の目に光が灯る。

「さあ、殺しなさい、燃やしなさい……」

 そして、いつか剣に誓った言葉を叫ぶ。

「全ては、××を××ために!」

 その瞬間、反乱軍は歓声を上げ、動き出した。

 ある者は降伏した兵士を縛り首にし、ある者は子供を生きながらに焼き、またある者は女を磔にして無残に殺し広場で晒し者にした。

 全てのローマ人を殺し尽くした後は、建物に火を放ち、跡形もなく更地に変えた。

 これでいい。あれ程傲慢に支配してきたローマには相応しい末路だ――そう思っているのに、(あたし)は笑みを浮かべていない。

 地面に落ちたガラス片に映る自分の顔はどこか辛そうに見える。

 気のせいだ――笑みを浮かべていないのは、きっと復讐が足りないためだろう。

 進もう、次はロンディニウムだ。ネロの築いた新しい都市、そこでより多くのローマ人を殺そう。

 そうすれば、きっと笑えるよね?

 

 

 

「どうして(あたし)の言うことが聞けないの!」

 前日にありすと白野が一緒に遊んでいたことがブーディカに知られた。

「部屋から出るなって言ったよね。敵と会うなって言ったよね

 どうして、私の邪魔をするの?

 いつもそう。みんなみんな私の邪魔ばっかり……」

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

 苛立ち、不満をぶつけるブーディカに対して、ありすは謝り続ける。

 ありすはブーディカが何に対して怒り、自分が何に対して謝っているのかも分からない。

 ただ、元の優しい“母”に戻って欲しくて――

「ごめんなさい……」

 “母”の笑顔が戻ることを願いながら、謝り続けるのだった。

 

 

 

 つづく

 

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