new record   作:朱月望

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決戦まであと―――6日

「ぬぅ? ここはどこだ?」

 門司が気が付くと、何もない荒野にいた。

「まさか、最後の審判が来たというのか!? ハルマゲドンか!? パーシュパタか!? ええい、黙示録のラッパは何処(いずこ)!!?」

 門司は地平線に向かって叫ぶ。

「うるさい」

 いつの間にか門司の前に黒い影が姿を現す。

「私の世界に雑音(ノイズ)はいらない……消えろ」

 影は剣を振り、門司の首を刎ねる。

「……ぁ……ぅ」

 声にならない叫び声を上げて、門司は意識を失う。

「私の平穏を奪うな」

 影は無機質にそう言い放つ。

 

 

 

「南無八幡大菩薩ッ!?」

 そう叫びながら、門司は目覚める。

「はぁ、ゆ、夢であったか……」

 門司は先ほど見た夢を思い出す。

「しかし、あれはどういう意味なのか……むむむ、マーラが小生を堕落させたいのであれば淫魔(サキュバス)の一人や二人出てもおかしくない筈、まぁ小生はエロスになど屈したりはしな、ふぎゃ!?」

「朝から鬱陶しい」

 アルテラは慣れた手つきで門司を殴る(剣で)。

「おお、これは失礼しました!

 では、朝の礼拝として我が神に向かって三々九度のサラートを」

「しなくていい。

 それより、次の戦が始まったようだ」

 テーブルの上にあった携帯端末に『2階掲示板にて、次の対戦者を発表する』と表示されている。

「ぬおお、これは不覚!!

 早速、次なる神に捧げる贄を確認して参ります!

 Go West モンジー!!」

 門司はマイルームを後にする。

 

「貴様が小生の相手か」

 掲示板の前に先に来ていた少年――岸波白野に声をかける。

「………ぬるい面持ちをしている。後生戦いとは無縁な、もやし学者を思わせる面構えだな。

 さしたる覚悟も高尚な目的も持たず、欲界に流されるままやってきた流浪者。そんなところかな?」

 小生か? ふんっ。貴様のような流浪者と一緒にされては困る。

 小生は、この浮世で最も尊き目的のために、戦地に赴いている。

 それは……我がただひとりの神を、世界の神とすること! まさにこれこそ浮世のレクイエム!

 貴様も感じるだろう? 小生の全身から溢れる、この修羅にも勝る猛々しき力を!

 ふふふ、だがこれは小生の力にあらず。万能にして優美なる我が神が、脆弱なこの身に与えたもう御力!

 いわば後光! 大天使の羽にも引けを取らぬ、圧倒的な観無量寿経なり!!

 我が神さえいれば、アポクリファも不要であり、ゴリアテも恐るるに足らず!

 鬼子母神すらも凌駕し、世界を浄土へ導くその存在は、ヨハンネウム以上の絶対なるもの!

 これほどの力を持つ神が、小生だけの神であっていいものか?

 否!!!そんなことはデミウルゴスも許しはしない!

 エデンに向かう資格は、全人類が平等に持ちえるものである! 貴様もそう思うだろう?

 だから小生は勝たねばならない。これはいわば因果であり定命なのだ!

 むう、もうこんな時間か。光陰矢のごとし! 月日の関守は小生が引き受けよう!

 では少年、餓鬼道に堕ちぬよう修行を怠るな!」

 白野が何も言っていないにも関わらず、門司は意味不明な内容を言い残し、立ち去る。

「えっと……なんだったんだ?」

「さてな。ただ、一つ言えることは、あれがサーヴァントなら間違いなくバーサーカーであろうよ」

 霊体化したネロがそう答える。

「マスターは狂うていてもサーヴァントは優雅であるといいのだがな」

 次の対戦相手(サーヴァント)に思いを馳せながらネロはひとりごちる。

 

 

 

 つづく

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