new record   作:朱月望

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決戦まであと―――5日

「ふむ、またここか……」

 前回と同じ、何もない荒野に門司は立つ。

「なぜ、ここにいる?」

 前に門司の首を刎ねた影が現れる。

「ぬおぉ!? 貴様は……

 いや、よく考えるのだ。ここは小生の夢の中、つまり目の前の影は小生自身!

 つまり! ユング的思考におけるアニマ!! 

 深層意識の中においてペルソナを脅かす、まさにシャドウ!

 さあ、我が心へと還るがい、痛ったーーーっ!!?」

「前にも言ったはずだ。私の平穏を奪うことは許さない、と」

 影は剣を横薙ぎにして、門司の胴を真っ二つに裂く。

「もう来るな……私は一人になりたいから、ここにいる……」

 影の声は相変わらず無機質だが、門司はどこか寂しそうに聞こえた。

 

 

 

「痛たたたたたたー痛い! この痛さ、まさにドレッドノート級!

 小生、修行のためなら針の(むしろ)でも平気だが、夢の中は対・象・外!

 いや、現実でも腹を真っ二つは死ぬほど痛いのでムリではあるが」

 門司は服を捲り、自分の腹部を見る。

「ふうむ、やはり無事であるな。ということは思い込みによるファントムペインか……

 はたまた、人体切断マジックか……」

「お前は黙って考えることは出来ないのか」

 アルテラがベッドから起きる。

 余談ではあるが、この部屋に寝具はキングサイズのベットが一つ。門司はドアの前の床に三角座りで寝ていた。これはアルテラが追い出したのではなく、門司が自主的にそうしている。神と同じ空間にいるだけでも恐れ多い、と出来るだけ離れているのだという。

「おお神よ!! 目覚めましたか。そのお姿はまるで覚者! ブッダの……」

「静かにしろ。私は平穏を、静寂をこそ望む。そう言ったはずだ」

「おお、それは申し訳ない……む?」

 門司はあることが気にかかり、首を傾げる。

「小生の記憶が確かなら、その神託は得ておりませんが?」

「……言った」

「ですが……」

「言った」

 アルテラは被せ気味に答える。

「むむむ。小生とあろうモノが天声を聞き逃していたとは、不覚!!」

 門司は『モンジ奮闘記』と書かれた本に何かを書き込む。

「そろそろ外に行こう。滅ぼさなければならないモノを感じる」

 そう言い放つ彼女の頬は少し赤くなっていた。

 

「むう、あそこに見えるは……」

 アリーナで散策していると、白野たちを見かける。

「小僧! 佛敵に取り組むことなく、このような場所で、何をやっておるか!」

「ガトー……」

「あの暑苦しい男か。今日はサーヴァントを連れているようだが」

 白野はなんとも言えぬ表情で、ネロは呆れたように半眼で門司とアルテラを見る。

「神よ! あれなる者たちが此度の迷える子羊!

 如何なされますか?」

「破壊する……それだけだ」

 アルテラはいつもと変わらぬ冷たい声で言う。

「問答無用か。あの男のように暑苦しく喋るのも困ったものだが、こう淡泊なのも好きにはなれんな。

 まあよい、どうやらあやつもセイバーらしい。ならば剣を交えて語りかけてみるとしよう」

 出会って1分も経たずに剣士(セイバー)二人の戦闘が開始された。

 

「ここまで、か」

 SE.RA.PHからの介入により戦闘は終了する。

「見たか! これこそが我が神の力! あらゆる文明を破壊した圧倒的な力を!」

 門司は高らかに叫ぶ。

「帰るぞ。暗号鍵(もくてき)は果たしたからな」

 それに対して、アルテラがまるでネロたちが見えていないように言う。

 それもそうだろう――先程の戦いでネロはアルテラに手も足も出せず、文字通り眼中になかったのだ。

「はあ! 仰せのままに。

 ではな小僧!」

 門司とアルテラはアリーナを去る。

「くっ、奴の呼吸一つ乱せぬとはな」

 ネロの皇帝特権で習得した剣技を以ってしても、力の差は歴然だった。

「あれは技量云々より、霊基の格が違う。

 どうしたものか……」

「でも、セイバーの宝具を使えば……」

「たしかに宝具を使えば、格上でも打倒しうる。

 だがな、それは奴とて同じこと」

「あっ……」

 アルテラはこの戦いで宝具はおろか、目に見える形でのスキルも使っていなかった。

「一先ずは魂の改竄と、奴の情報を探ろう。

 あの男が言っておったことも気にかかる」

「……あらゆる文明の破壊した、か」

 白野は敵の真名を探る手掛かりを記憶に刻み付ける。

「奏者よ、暗号鍵(トリガー)は既に入手したが、しばらく敵性プログラム(エネミー)を狩るぞ」

「うん。付き合うよ」

 圧倒的な敵が立ち塞がっても、挫けることなく前へ進むことを決意する。

 少年の胸には未だ願望と呼べるようなものはないが、彼女と並ぶために足を止めることはない。

 

 

 

 つづく

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