「ふむ、またここか……」
前回と同じ、何もない荒野に門司は立つ。
「なぜ、ここにいる?」
前に門司の首を刎ねた影が現れる。
「ぬおぉ!? 貴様は……
いや、よく考えるのだ。ここは小生の夢の中、つまり目の前の影は小生自身!
つまり! ユング的思考におけるアニマ!!
深層意識の中においてペルソナを脅かす、まさにシャドウ!
さあ、我が心へと還るがい、痛ったーーーっ!!?」
「前にも言ったはずだ。私の平穏を奪うことは許さない、と」
影は剣を横薙ぎにして、門司の胴を真っ二つに裂く。
「もう来るな……私は一人になりたいから、ここにいる……」
影の声は相変わらず無機質だが、門司はどこか寂しそうに聞こえた。
「痛たたたたたたー痛い! この痛さ、まさにドレッドノート級!
小生、修行のためなら針の
いや、現実でも腹を真っ二つは死ぬほど痛いのでムリではあるが」
門司は服を捲り、自分の腹部を見る。
「ふうむ、やはり無事であるな。ということは思い込みによるファントムペインか……
はたまた、人体切断マジックか……」
「お前は黙って考えることは出来ないのか」
アルテラがベッドから起きる。
余談ではあるが、この部屋に寝具はキングサイズのベットが一つ。門司はドアの前の床に三角座りで寝ていた。これはアルテラが追い出したのではなく、門司が自主的にそうしている。神と同じ空間にいるだけでも恐れ多い、と出来るだけ離れているのだという。
「おお神よ!! 目覚めましたか。そのお姿はまるで覚者! ブッダの……」
「静かにしろ。私は平穏を、静寂をこそ望む。そう言ったはずだ」
「おお、それは申し訳ない……む?」
門司はあることが気にかかり、首を傾げる。
「小生の記憶が確かなら、その神託は得ておりませんが?」
「……言った」
「ですが……」
「言った」
アルテラは被せ気味に答える。
「むむむ。小生とあろうモノが天声を聞き逃していたとは、不覚!!」
門司は『モンジ奮闘記』と書かれた本に何かを書き込む。
「そろそろ外に行こう。滅ぼさなければならないモノを感じる」
そう言い放つ彼女の頬は少し赤くなっていた。
「むう、あそこに見えるは……」
アリーナで散策していると、白野たちを見かける。
「小僧! 佛敵に取り組むことなく、このような場所で、何をやっておるか!」
「ガトー……」
「あの暑苦しい男か。今日はサーヴァントを連れているようだが」
白野はなんとも言えぬ表情で、ネロは呆れたように半眼で門司とアルテラを見る。
「神よ! あれなる者たちが此度の迷える子羊!
如何なされますか?」
「破壊する……それだけだ」
アルテラはいつもと変わらぬ冷たい声で言う。
「問答無用か。あの男のように暑苦しく喋るのも困ったものだが、こう淡泊なのも好きにはなれんな。
まあよい、どうやらあやつもセイバーらしい。ならば剣を交えて語りかけてみるとしよう」
出会って1分も経たずに
「ここまで、か」
SE.RA.PHからの介入により戦闘は終了する。
「見たか! これこそが我が神の力! あらゆる文明を破壊した圧倒的な力を!」
門司は高らかに叫ぶ。
「帰るぞ。
それに対して、アルテラがまるでネロたちが見えていないように言う。
それもそうだろう――先程の戦いでネロはアルテラに手も足も出せず、文字通り眼中になかったのだ。
「はあ! 仰せのままに。
ではな小僧!」
門司とアルテラはアリーナを去る。
「くっ、奴の呼吸一つ乱せぬとはな」
ネロの皇帝特権で習得した剣技を以ってしても、力の差は歴然だった。
「あれは技量云々より、霊基の格が違う。
どうしたものか……」
「でも、セイバーの宝具を使えば……」
「たしかに宝具を使えば、格上でも打倒しうる。
だがな、それは奴とて同じこと」
「あっ……」
アルテラはこの戦いで宝具はおろか、目に見える形でのスキルも使っていなかった。
「一先ずは魂の改竄と、奴の情報を探ろう。
あの男が言っておったことも気にかかる」
「……あらゆる文明の破壊した、か」
白野は敵の真名を探る手掛かりを記憶に刻み付ける。
「奏者よ、
「うん。付き合うよ」
圧倒的な敵が立ち塞がっても、挫けることなく前へ進むことを決意する。
少年の胸には未だ願望と呼べるようなものはないが、彼女と並ぶために足を止めることはない。
つづく