new record   作:朱月望

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決戦まであと―――4日

「あーはっはっは! 三度目となると驚きを通り越して笑えてくるわ!」

 門司は再三、荒野の世界に訪れる。

「どうして、また無の世界(ここ)に来る?」

 いつもの影が目の前に現れる。

「殺されに来たのか?」

 影は剣を取り出す。その瞬間、殺意や敵意とは異なる、冷たい圧力が門司の身体に突き刺さる。

「いやいやいや、待たれよ! 今回は貴様と話がしたいのだ!」

 正直痛いのはもうこりごり、と門司は言う。

「話すことなど、何も……」

「では、まず聞きたいのだが、ここはどこなのだ?」

 影の事情などお構いなしに門司は話しかける。

「ここは、私の中だ」

「むう?」

「物理的でなく、精神的な私の記憶からなる世界……」

「ずっと小生の夢かと思っておったが、なるほどなー」

 門司は辺りを見回す。

「だが、腑に落ちん。記憶の世界だというなら、なぜ何も無いのだ?」

「私は機械だ……人のように考え、感じることはなかった。

 この場所はそんな私の空っぽの心そのものだ」

 影は平坦な声で言っていたが、どこか憂いを感じた。

「それはいかんな、いかんぞ!

 この世の中にはすんばらしい教えがあるのだ! 我が神とか我が神とか!

 ちと待たれよ、いま聖典を……」

 門司が自分の荷物を漁る。

「それはなんだ?」

 影は荷物の中にあった包みに興味を示す。

「む? これは団子だ。聖杯戦争の舞台は月だと聞いて用意したものよ!

 他にもススキや萩、月見バーガーも用意したのだが、はてどこにいったか?」

 影は門司の話もそこそこにじぃっと団子を眺める。

「食うか? 老舗の名店、竹取堂の月見団子。味は保証するぞ」

 言うが早いか、影はモグモグと団子を咀嚼する。

「おいしい……」

 食べ終わると、影は感動したように呟く。

「月見というのは気に入らないが……」

 影は門司の方を見る。

「団子はいい文明だな」

 相変わらず顔はよく見えなかったが、門司の目には笑っているように見えた。

「そうであろう!」

 その笑顔を見て、門司は満足し破顔する。

 

 

 

「……おお! 今日は痛くない! グッド、モーニン! ハレルーヤッ!!」

 大声を上げながら、門司は目覚める。

「?」

 門司は違和感に首を傾げる。

 アルテラは既に起床しているにも関わらず、門司の大声に文句を言ってこないのだ。

「あれ? 神よ、ほっぺに何か……あいたぁ!?」

 アルテラは身近にあった物を軍神の剣に変えて、門司に投げつける。

「なんでも、ない」

 アルテラは頬についていた黒いモノを拭って言う。

 その顔は赤くなっていたのだが、門司は気を失いそれに気が付くことはなかった。

 

 

 

 つづく

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