双子は成長し青年となった。
そしてある出来事がきっかけで自らの出生の秘密を知る。
そして、偽りの王を倒すべく双子は立ち上がった。
自分たちの本来の地位を取り戻すためではない……幽閉されている祖父と母を助けるためだ。
顔も知らない家族のために双子は国と戦争を起こす。
恐怖はなかった―――なぜなら一人ではないのだから
「…………」
慎二は目を覚ます。
部屋を見渡すと、いつもは無駄なほど存在感のあるロムルスがいなかった。
それだけで、只でさえ異質な王室風のマイルームに違和感を感じる。
「ふん」
昨日、マイルームに戻って慎二はロムルスに説教したのだが、反省の色が見えず、終いには「僕の目の前から消えろ」と言い捨てて寝たのだ。
その言いつけは守っているのか気紛れからか、初めて姿を消している。
「僕は用事があるから、そこでじっとしていろよ」
慎二は誰もいない空間に声をかけ、外に出た。
「あら、間桐くん」
廊下を歩いていると赤い服の少女―――遠坂凛が声をかけた。
「遠坂……今、君と話す気分じゃないんだ。またね」
慎二は凛の横を通り抜ける。
「あら、あなたのことだから自分のサーヴァントの自慢でもするかと思ったけど……弱い英霊でも引き当てたのかしら?」
「は? 僕みたいな優秀な
慎二は振り返って、凛に怒鳴る。
「ふ~ん。じゃあ、相性が悪いのね」
「そうさ!
「あなた、自分のサーヴァントのことちゃんと理解してる?」
「は? 知らないよあんなやつ、話しもまともに通じないし、いつもいつもローマローマって」
「対話が出来なくても、その人のことを知る方法ならあるわよ」
凛は図書室を指差す。
「これから戦う上で対戦相手のことを知るのは当然だけど、自分の陣営のことも知っておくのは大切よ」
「…………」
慎二は考えるように俯く。
「まあ、アジア圏有数のクラッカーである間桐慎二くんには必要のないことかもしれないけど」
「な、当たり前だろ! でも、アリーナでせこせこ経験値稼ぎするようなみっともない真似は出来ないし、暇潰しに図書室に行くのも悪くないかな」
そう言い残して慎二は凛の元を去る。
「はぁ、なんであんな助言みたいなこと言っちゃったのかしら」
「(嬢ちゃんがあのマスターを気に入ってるからじゃないのか?)」
凛のサーヴァントが霊体化したまま声をかける。
「冗談! あんなの好みじゃないわよ。ただ、あいつがいつもと違う雰囲気だったから調子が狂っただけよ」
「(ははは、そうだな。嬢ちゃんのお気に入りは出会い頭に身体中ベタベタ触った坊主だもんな)」
「な、だからあれは誤解だって言ってるでしょ!」
「ふ~ん。思ったより沢山の
慎二は図書室に入り棚を物色する。
「あった!」
慎二はロムルスに関わる資料を一通り全部集め、図書室の席の一角に座る。
「どれどれ……」
慎二は本を読み進める。
かつてアルバ国という国ではロムルスの祖父であるヌミトルが王であったが、ヌミトルの弟のアムリウスが王位を欲してヌミトルを幽閉し、代わりに王になった。
王となったアムリウスはヌミトルの一人娘で姪であるシルウィアを巫女とした。
巫女は神に体を捧げる聖職者である事から婚姻や姦通を許されず、これで兄の血筋を断絶させようと目論んでいたのである。
神殿に軟禁されたシルウィアであったが、その美しさを気に入った軍神マルスに見初められる。
神であれば巫女でも身を捧げても良いと考えたシルウィアは契りを結び、双子の子供ロムルスとロムスを授かる。
しかし、アムリウスはシルウィアの言い分を認めず、王位を継ぎうる双子の子を殺すように兵士に命じる。
だが兵士は幼い双子を哀れんで、彼らを籠に入れて密かに川へと流した。
流された双子は川の精霊に救い上げられ、川の畔に住む雌狼に預けられる。
やがて、羊飼いが双子を見つけると妻と相談してその双子を引き取ることにした。
そして双子は羊飼いとして成長した。
ある時、弟ロムスがアムリウス王の配下と諍いを起こし、兵士に捕らえられて宮殿に連れ去られる。その過程でロムルスとロムスは自分たちがアムリウス王の甥で、幽閉されている先王ヌミトルの孫である事を知る。
ロムルスは弟と祖父を助ける為に剣を取り、アムリウスと敵対する羊飼いらを率いて王宮へと攻め入った。
「あれ? 慎二」
「うぁ、き、岸波なんでこんなとこに」
読むのに夢中になっていた所為で白野の接近に気づけなかった。
「そうか、僕のサーヴァントのことを調べに来たんだな」
慎二は読んでいた本を閉じ、机の本と一緒に抱きかかえる。
「残念だけど、そうはさせないよ!」
慎二は本を持って、図書室を出る。
「調べるもなにも真名はそっちが教えたのに、変なやつだな」
白野はそう言いながら本を一冊取る。
暴君と呼ばれたローマ皇帝の本を
「ただいま」
慎二はマイルームに戻った。
あの後、慎二は本を屋上の隅に隠した。
図書室の本はマイルームに持っていくことが出来ず、サーヴァントを連れていないためアリーナに行けなかったためである。
「昨日のことは許してやるよ。僕は寛大だからね。でも、2回戦からは勝手なことするなよ」
未だにロムルスの姿は見えないが、慎二は玉座のある方へ声をかける。
「なんだよ。許してやるって言ってんだから返事くらいしろって! それとも、まだ僕に文句が……」
すると突然、ガラガラガラとドアが開く音がした。
「ただいま戻った! ん? シンジよそこで何をしておる」
部屋に入って来たのはロムルスだった。
「お、お前、いつの間に外に!?」
「そなたが起きる前だが」
「はぁ!? じゃあ、最初から部屋にいなかったのかよ!」
「ていうか、なんで僕から離れて勝手に行動できんの!?」
本来であれば単独行動のクラススキルを持たないロムルスがこうも自由にできる訳がない。
「
皇帝特権―――本来所有していないスキルを短期間のみ獲得することが出来る固有スキル。これにより、単独行動スキルを習得していたのだ。
「じゃあ、僕の話は聞いてなかったていうのか」
「なんのことだ?」
「知るか! 僕はもう寝る」
「???」
つづく