new record   作:朱月望

46 / 54
決戦まであと―――2日

 あれから何度も人間たちと対話をしようと試みた。

 しかし、妖怪を退治する目的でやってきた兵達は耳を傾けなかった。

 終いには傷ついた私を気遣った使い魔たちが兵をことごとく(みなごろし)にした。

 そして、さらに私とあの人の溝は深まった。

 私はそれでも諦めず声をかけ続けた。

 しかし、三日三晩降り注ぐ矢の雨にはどんな叫び声も、誰の心に届くことはなかった。

 

 

 

「おや、兄さん。お久しぶりです」

「……ああ」

 廊下でユリウスとレオが出会う。

「兄さんの相手は岸波さんと聞きました。

 岸波さんに勝てそうですか?」

「……問題ない」

「ですが、まだ脱落していないところを見ると、岸波さんも力をつけているようですね」

 レオは薄く笑う。

「……嬉しそうだな」

「はい。彼の実力はどの魔術師(ウィザード)と比べても劣り、一回戦も通過できないと思っていました。

 ですが、マトウシンジやダン=ブラックモアなどの名だたる魔術師(ウィザード)を屠り、兄さんを前にしても未だに生き残っている――大変興味深いです」

「……あいつと戦いたいと思っているのか?」

「えっ、そう、なのかもしれませんね。僕は彼と戦うことを期待している。

 不思議ですね。実力はトオサカリンやラニ=Ⅷの方が上だというのに」

 レオは真剣に思案しているようだ。

「ところで、兄さん。どうして聖杯戦争(このたたかい)に参加したのですか?」

「……お前の護衛のためだ」

「ですが聖杯戦争に参加する以上、参加者同士で直接的な支援は出来ませんよ。兄さんがやっていた闇討ちも、日に日に脱落者が増えるトーナメントでは効果が薄いですしね。

 本来、兄さんは聖杯戦争に参加せず、外部からのハッキングで支援した方が効率的だと思いますが」

「(今回、オレは対戦相手以外の闇討ちはしていないのだが……)」

 元々、レオへの支援を考え、陰で他のマスターを始末する予定であったが、サーヴァントが気紛れなキャットということもあり、それは断念している。

「(まあ、いい……)」

 自分以外のマスターが潰し合うなら文句はない。レオが負けるとも思えないからな、とユリウスは考えるのを止める。

「……何が起きるか分からない以上、使い捨ての弾除けも必要だと思っただけだ」

 ユリウスは話に戻る。

「そうですか」

 自分から話題を振っておいたにも関わらず、レオはさして興味もないように答える。

「では兄さん、そろそろ失礼します」

 レオはそのまま立ち去ろうとする。

「……レオ」

 普段は自分から話しかけないユリウスがレオを呼び止める。

「何ですか、兄さん?」

「……お前は、亡くなった奥様のことをどう想っている?」

 何故、このような質問をしたか、ユリウス自身にも分からない。

 だが、聞かずにはいられなかった。

「特になにも」

 しかし、自分の母親のことにも関わらずレオは素っ気なく答える。

 恐らく、死の理由も誰が殺したのかも知っていての発言だろう。

「……そうか」

 ユリウスはいつもと変わらぬ表情で答える。

「こちらからも、いいですか?」

「……ああ」

「兄さんのサーヴァント、まだ聞いてませんでしたね。

 いったい何を召喚したのですか?」

「…………」

 ユリウスは自分のサーヴァントを思い浮かべ――

「なん、だろうな」

 なんとも言えない顔で苦笑した。

 

 

 つづく

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。