new record   作:朱月望

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決戦まであと―――1日

 兄は弟を殺し、国を造った。

 街は次第に賑やかになり、気がつけばどこよりも繁栄した都市になった。

 ある豪雨の日に兄は一人で外に出た。

 弟を埋葬した、この国が一望できる丘の上へ。

「今日もローマは美しい」

 兄は自分の国を見ながら呟く。

「もう私がいなくても、この輝きはなくならないであろう。この場所でローマの有り様を見届けたい……ロムス、お前と共に」

 兄は樹槍を突き立てる。

「私は……いや、(ローマ)は此処で永遠となる! ローマがそこにあり続ける限り!」

 兄がそう叫ぶと周りから何本もの樹木が伸び、兄に絡みつくようにして全身を覆う。

「全ては我が国(ローマ)に通ずる! 」

 そして、建国の王は消え、そこにはとても大きな月桂樹が鎮座していた。

 

 

 

「おい、ちょっと待て」

 慎二は目が覚めると同時に、一人で部屋を出ようとしていたロムルスに声をかけた。

「なにか用か?」

「なにか用かじゃないよ、マスターに黙って好き勝手やりやがって!」

 慎二は着替えを済ませて

「いいから僕も連れてけ」 

 ロムルスにそう言った。

 

「はぁ!!」

 セイバーがエネミーを倒す。

「まだまだ!」

その後も破竹の勢いでエネミーを狩り続ける。

「お前、こんなの見てて楽しいの?」

「ああ、ローマの成長と可能性を感じさせるからな」

 二人は皇帝特権により、気配遮断をして白野とセイバーを観察していた。

「いつも、こんなことしてたのか?」

「ああ」

「ストーカーだな」

「ああ」

 ロムルスは顔を崩す。

「お前、あいつらを成長させたくて、僕にエネミーを強くさせたのか?」

「うむ。強くなって欲しくてな」

「勝つ気あんのかよ?」

「無論だ。ただ、あやつもローマである以上、全力で戦って我が槍に還したいのだ」

「よく分かんないけど……わざと負けるワケじゃないならいいや」

 二人は再び、白野とセイバーの戦いを見る。

「…………」

「…………」

「なぁ」

 しばらくの沈黙の後、慎二は思い出すように訊ねた。

「なんだ?」

「なんでお前はローマから突然いなくなったんだ?」

「……あの時点で(ローマ)の役割は終わっていた。これ以上、(ローマ)が居てもローマは進展も後退もしないからだ」

「なんでだよ! お前はその時、一番になったんだろ? 世界に歴史に名を残したんだろ? なら、そこでチャレンジ終了してどうするんだよ!

 最高得点叩き出して満足してゲームを辞めるなんて二流だよ。最高記録を打ち立てたなら、その記録が他の誰かに覆されないように居続けるのがプロだろ!」

「違うぞシンジ。(ローマ)が目指していたものはそうではない」

「歴史で一番の王様になるのが目標じゃないの?」

(ローマ)は弟のロムスと共に見た夢を叶えたかっただけなのだ」

「夢?」

「そう。我が国(ローマ)が世界の中心となり、世界がローマになるという夢を」

「…………」

「故に(ローマ)(ロムス)と共に一本の()となり、世界(ローマ)を見守っていたのだ」

「分かんないよ、そんなこと……」

 慎二は振り絞るように声を出す。

「今まで僕は誰からも見向きもされなかった……家族は僕を跡取りにすることしか考えてないし、知り合いは家柄のことしか考えてなかったからね」

 慎二は心に秘めた想いを吐露する。

「でもある時、暇潰しに始めたゲームでランキング一位になった。大したことなかったけど、それを見た他のプレイヤーたちは騒ぎまくってたよ。記録(スコア)に対するお祝いの言葉、羨望に満ちた声、嫉妬だらけの醜いコメント、なかにはチート扱いするバカもいたけど……その時さ、認めて貰えた気がしたんだ……僕はここにいるって、ここにいてもいいんだって」

「…………」

「だからお前みたいに自分で造り上げたものを譲り渡すなんて出来ないよ」

「……シンジ、何時かお前にも自分を犠牲にしてでも守りたい何かが必ず出来る。その時に後悔しないように行動するのだ」

「…………」

「そうすればお前もローマになれる」

「……だから、分かんないって」

 慎二は苦笑する。

「あーもうどうでもよくなった。ランサー、そろそろ帰るぞ。楽しみは明日に取っておこう」

「そうだな。良きローマを期待しよう」

 二人はアリーナを後にする。

 

 

 つづく

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