とある手記   作:蒼霜

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とある受刑者の手記

やぁ

 

こんにちは

 

初めまして

 

私は……君の先輩のようなものだ

 

君は私を知らない

 

私も君を知らない

 

でも君がこれを見つけることは知っていたよ

 

あはは

 

君の困惑する顔 少し面白いね

 

ごめんごめん

 

今の言葉は忘れてくれ

 

心配しなくてもいい

 

君には分かるはずがないのだから

 

 

 

______________________

 

 

 

 

君は何故そんな所にいるのだろう

 

己の罪を償うため?

 

自分の正義を貫いた結果?

 

それとも濡れ衣を着せられて?

 

答えたくないなら別にいい

 

今の状況に満足してるならそれで十分さ

 

もしも満足していないのならば

 

そんなクソったれの状況をぶち壊してやれ

 

 

 

______________________

 

 

 

 

私はこの状況に満足しているよ

 

愛する人を守るために犯した罪だ

 

それで死刑判決を受けようとも

 

どれだけメディアに叩かれても

 

私の存在が否定され消されたとしても

 

彼女の笑顔を守れたならば 悔いはない

 

たとえ彼女から拒まれても

 

彼女が幸せならばそれでいい

 

 

 

______________________

 

 

 

 

君にもそんな存在がいるだろう

 

例えば「母」

 

優しい訳でもなく いつも口喧嘩になった

 

ても困った時は傍に居て 寄り添ってくれた

 

例えば「父」

 

理解してくれている様に見えず ただただ厳しい

 

でもそれは不器用なりの優しさだった

 

 

 

時々考える方向を変えてみるといい

 

自分を心から大切に思ってくれる人達

 

彼らは私達を大切に思うが故に 厳しい態度をとる

 

君は誰からも大切にされていないと思っている

 

しかしそれは大きな間違いだ

 

君を大切に思っている人は 数え切れないほどいる

 

ただ君が気づいていないだけだ

 

彼らを大切にするといい

 

 

 

______________________

 

 

 

 

私が犯した大罪

 

ニ十人あまりの命を奪った

 

私が殺した

 

彼女の両親 姉妹 親族を

 

この手で

 

ナイフで切って刺した

 

 

 

人を殺める事は憎むべき事だ

 

だが私は彼らを殺したことが悪いとは思わない

 

彼女を殺そうとしていたから

 

私はそれを阻止するために殺した

 

何も殺すことはなかった?

 

もし君が私なら冷静でいられたか?

 

 

もし仮に殺さないという選択をしたとしよう

 

ならばどうやって防ぐ?

 

彼女に「家族に命を狙われている」と告げるのか?

 

彼女は家族を信頼しているのに?

 

その家族に命を狙われている?

 

彼女の心に傷が残るに決まっている!

 

 

 

彼女は何も知らない方がいい

 

そう だから私はころした

 

私が罪を被ることで

 

私が殺人者の烙印を受けることで

 

彼女を守ったんだ

 

 

 

______________________

 

 

 

 

私の死刑は明日だ

 

私の言葉は君の胸だけに留めておいてくれ

 

真実を知っている者がいるだけで私は救われる

 

決して後悔しない行動を心掛けてくれ

 

 

 

ただ……

 

ただ一つ後悔することがあるならば……

 

この先 彼女の隣に立つのが 私ではない事だ

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