イントルード・デイモン   作:捻れ骨子

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ここからオープニングは
PCゲーム『大番長』OP『Dash! To Truth 』
または
『AAA』の『Samurai heart-侍魂-』
でおにゃしゃす。




37・ここから先を、どうするって?

 

 

 

 圏外圏の一角。いつものごとく手下を集め会合を開いているジャスレイは妙に機嫌が良かった。

 

「ようやっと運が向いてきたってこった」

 

 取り巻きに状況を説明したジャスレイが杯を傾ける。話を聞いた取り巻きたちは、不安げに顔を見合わせた。

 

「その、大丈夫なんですかいその話。下手をすりゃ……」

「前にも言ったが、鉄華団は良くて俺が駄目じゃ話が通らねえだろ。親父も文句は言えねえさ」

 

 くく、と笑いながら「それにしても」とジャスレイは続ける。

 

「馬鹿な連中だぜ。GHの最大戦力、艦艇だけでも半数を牛耳るアリアンロッドを相手取ろうだと? まともにやり合えるわけがねえし、裏工作もやれる相手だ。『今回』みてえにな」

 

 ジャスレイは勝利を確信していた。確実に邪魔者である名瀬を排除し鉄華団を潰せると。

 

「勝ち馬に乗るのが賢いやり方よ。ガキどもとはひと味違うって所を見せてやらあ」

 

 一気に干されたロックグラスが、だん、と力強くテーブルに叩き付けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 某所にあるGH研究施設。撃破されたハシュマルの残骸はそこに運び込まれていた。

 解体しつつ調査を行っているその様子を眼下に納めながら、マクギリスは傍らの石動に語りかける。

 

「目新しい情報はなかったか」

「システム構成、プロトコルはデータバンクに記録されていた物と変化無し。予定通りに事は進みそうです」

 

 戦闘終了の後、ハシュマルの使えそうな武装、部品などは報酬の名目で鉄華団へと密かに譲渡されていた。これは『ラスタル側に余計な情報を与えない』という理由もある。

 この研究施設を含む一連の『暗部』は、マクギリスが取り仕切っているわけではない。セブンスターズ共同で運営されている物だ。当然ながらここでの研究成果は『ラスタルも閲覧できる』。中枢とリアクターを含む『構造がすでに分かっている部分のみ』を持ち込んだのは、情報を制限し彼らに解析させないためであった。

 まあ持ち込んだ部分だけでも『信じられないような情報』はあるわけだが。

 

「それにしても見事な物です。まさかリアクターを外殻の一部とはいえ破壊するなどとは」

 

 珍しく表情に驚きを乗せて石動が呟く。理論上物理的には破壊できないとされるエイハブリアクターに、一部だけとはいえ損傷を与えた。俄には信じがたいことである。だがマクギリスはその事実を『ありえることだ』と判断していた。

 

「ガンダムフレーム、いや『ツインリアクター機のコンセプト』から考えれば不可能ではないよ」

 

 ツインリアクターとは、単にMAの大出力に対抗するため開発された物ではない。二つのリアクターを共振させることによって発生する特殊なエイハブウェーブ、リミッターを外された状態で放たれるそれは、『他者のナノラミネート装甲とエイハブリアクター自体の防御力を低下させる効果がある』のだ。

 エイハブリアクターが異常なまでに頑強なのは元々の素材がとてつもない強度を誇るという理由もあるが、自身が産み出すエイハブ粒子による重力偏向の効果で外部からの物理衝撃を緩和するからという理由がある。その効果を応用したのがナノラミネート装甲であり、それらを備えるMAは物理攻撃に対して絶大なる防御力を有することとなった。

 これを打倒するために厄祭戦当時の技術者たちは研究を重ね、その結果『エイハブ粒子の効果をエイハブ粒子にて相殺する』手法を編み出した。それをもっとも効果的に運用するために開発したのがツインリアクターであり、そしてそれを阿頼耶識システムを効率的に運用するための人型機械、MSの原型と組み合わせて産み出されたのがガンダムフレームであった。

 

「MAに対して近接戦闘を仕掛け、自身が発するエイハブウェーブによってMAの、リアクターの防御力を低下させ、リアクターに直接作動不能に陥るほどのダメージを与える。それがガンダムフレームの最初期のコンセプトだった。リアクターを一時的にでも止めてしまえばMAは作動停止に陥る。そうやって多くのMAが撃破された。ダインスレイブが開発されるまで近接戦闘主体の機体が多かったのはそう言う理由さ」

 

 まあだからといって、そう呟きながらマクギリスはくく、と笑う。

 

「斬る、なんてことをやってのけた人間は当時でもいなかったのではないかな。アグニカを含めて」

「理論上不可能ではないのと、実際やってのけるのは違いますからね。いやはや末恐ろしい」

「改めて敵に回したくないと思うよ彼らは。……それに、ふふ……ラーズグリーズとは、流石に皮肉が効いている」

 

 よほど愉快であったのか、ついにくすくすと笑い声を漏らすマクギリス。石動は肩をすくめた。

 

「あの人らしいと言えばらしいネーミングですな。計画を壊す者。グレイズなどと捩って名付けるよりは、よほどストレートで分かりやすい」

 

 二人はランディが己の機体に付けた名に思いを馳せる。

 古い北欧神話にて謳われた戦女神の一角。計画を壊す者を意味するそれにあやかってグレイズはネーミングされていた。その原典を名付けることによって、己が死の女神の本質だと主張しているのか。それとも原典の役目に従い計画を破壊してみせるという意気込みなのか。

 まあ実際は多分単なる揶揄と嫌味を込めてのネーミングでしかないのだろうが、本人の思惑以上にその名には意味があるように感じられる。最低でもこの二人にとっては。

 

「その名にふさわしい舞台となるかね。我々のやろうとしていることは」

「相手がアリアンロッドですから。ふさわしいかはともかくあの人に満足して貰えるステージにはなるのでは、と」

 

 石動は、我知らず微かな笑みを浮かべていた。

 

「『細工は流々』、用意は調いつつあります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーヴラウ議会議事堂の一室にて、蒔苗 東護之介はとある報告を受けていた。

 

「なるほど。やはり武力衝突は避けられぬか。後は互いがどれだけ有利な環境を整えられるか、それが勝敗の鍵になるのう」

 

 密かに持ち込まれたGH内部動向の情報。それを告げたのは。

 

「は、ラスタル派は状況を優位にするため、アーヴラウに対しても何らかのアクションを取る可能性があります。十分に注意して頂きたいと」

 

 直立不動の姿勢のまま言うのは傭兵部隊ガルーダ隊隊長、タリズマンことブラウン。彼らは単にランディの顔見知りだから雇われたのではない。ネットの秘匿チャットなどを通じてマクギリスからの情報を伝えるという役割を依頼されていたのだ。

 勿論彼らの本義ではない。そもこのような役目など不得手だとブラウン自身が思っている。しかし逆にそれが目くらましになると、敢えて頼み込まれたのであった。

 

「そうか。こちらもファリド准将の計画に呼応する用意はあるが……大分計画は前倒しになりそうじゃな。そのあたり君はどう見る?」

「自分個人の意見を、ということでしょうか」

「うむ、プロの兵の考えを聞いておきたい」

「では私見となりますが……ラスタル派、ファリド准将双方の勢力にとって、MAの件が決定打となったのではないかと。偶発的な事件でありましたが、ファリド准将はMAをも打倒できるほどの武威を示したことになり、流れは自分達の方に来ていると感じているでしょう。対してラスタル派は信用を落とし、加えて経済的なダメージを被ることになった。これ以上時間をかければ数の優位をいつまで保っていられるかも分からない。早期の決着をと考えてもおかしくはありません」

 

 ブラウンの言葉を聞いて考え込む蒔苗。GH内部抗争、その武力衝突は避けられないようだ。だがどうにも『引っかかる』。

 

(ラスタル・エリオンは分かる。あれは苛烈で己の前に立ちはだかる者には容赦をせぬ男だ。しかし……マクギリス・ファリド、さほど短絡的な人物ではなさそうなのだがな)

 

 マクギリスはただ武力衝突のために準備しているだけでなく、自分達が優位を取るため様々な根回しをしていた。ブラウンを通じてアーヴラウに情報を流しているのもその一環だ。その気の回しようは細心の注意が払われており、誠意すら感じられる。

 アーヴラウだけではない。彼は様々な勢力と接触し、最低でも敵対しないよう働きかけている。それだけのことが出来るのであれば――

 

 『GHの上層部にも働きかけ、武力を伴わない改革を推し進めることも可能ではないのか』?

 

 なぜ穏当な手段を取らず、武力衝突を誘発するのか。その目的が読めない。力を示し覇権を握る。そのような短絡的な発想であれば戦力だけを整えればいい。彼は潤沢な資金源を持っているとはいえ、それも無限ではない。人員だって限られている。各勢力に働きかけるだけでも相当の労力と負担がかかっているはずだ。己の優位を維持するだけにしては手が込みすぎていた。

 

(分からぬが、こちらにとっても有益なのは事実。話に乗っても良いと思わせるくらいには勝ち目もある)

 

 正体の分からぬ不気味さを飲み込んで、賭に出るだけの価値はあると蒔苗は腹を決めている。しかしただ乗せられるのは面白くない。

 

(ちと小細工をしたい所じゃのう。……さて彼女は上手くやれるかどうか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クリュセ市街の一角。高級マンションの自室にて、イアンナはアリアドネの通信を繋いでいた。

 

「久しぶりね。そちらの景気はどうかしら」

 

 普段と違い随分と砕けた言葉遣い。通信向こうの相手はと言えば。

 

「ぼちぼち……と言いたいところだけれど、とても順調とは言えないわ。今立て直しでてんてこ舞いと行ったところ」

 

 相手もまた気安い口調だ。声の様子からすると女性らしいが。

 

「でしょうね、話はそれなりに耳にしているわ。……それで、『この間送ったデータ』が貴女の助けになれるかしら?」

「……意地の悪いことを言うのね。今の私に、危ない橋を渡れと?」

「そちらもGHとは一悶着あったらしいじゃない。このままだと定期航路取得の件、難しいんじゃなくて?」

 

 暫しの沈黙。そして溜息が吐かれる。

 

「確かに交渉が遅々として進まないのは、『ザルムフォート家との件』が多少なりとも影響を及ぼしているからでしょうね。だからといって『盤をひっくり返すような真似』に、早々容易く荷担できる物でもないのよ」

「何も手を貸せと言っているのではないわ。ただ出来るだけ情報が欲しいの。賭けの勝率を上げるためにね。見返りと言ってはなんだけど、GH火星支部には伝手があるからそれなりに口添えすることは出来ると思う。航路習得の手助けにならないかしら?」

 

 再び沈黙。ややあって通信向こうの女性は言葉を放った。

 

「……こちらで調べられるアリアンロッドの動向。出せるのはそれくらいしかないわ」

「十分。火星(こちら)からすれば信頼できる情報源は千金の価だもの。期待させて貰うわよ」

 

 その後、いくつかの取り決めを交わしイアンナは通信を切る。ふうと一呼吸の後、小さく笑みを浮かべる。

 

「さて、『種を蒔いてみた』わけだけど……芽吹かせるかしら、彼女は」

 

 一方、火星より遙か彼方で通信を切った女性は、深くため息を吐いていた。

 『友人』からもたらされた情報は、自分達にとって特効薬にも猛毒にもなりうる。静観しておくのが無難ではあるが……彼女の指摘したとおり、現在自分達の状況はあまりよろしくない。大幅な状況改善を目指すのであれば、彼女の話に乗ってみるのも手ではあるが……。

 暫く考え込んでいた女性は、デスク上の内線通話機に手を伸ばす。

 

「ジャンマルコ顧問? 少し相談に乗って欲しいことがあるのですけれど……」

 

 かつてイアンナの学友であった、現タントテンポ頭目【リアリナ・モルガトン】。彼女もまた激動の中に巻き込まれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、鉄華団はMA事件の解決からこっち、てんてこ舞いである。何しろ譲り受けた採掘場は完全に崩壊し、その立て直しにどれくらいの時間と金額がかかるか分からない。幸いというか、集めた鉱山関係の技術者たちは残留し、一から鉱山を作り直すつもりで働かせてくれと申し出てきていた。ほかになかなか仕事も無く、鉄華団から離れてしまえば再就職の当ても少ないと考えてのことだろうが、オルガたちにとってはありがたいことだった。特に採掘場を担当していたユージンは、五体投地せんばかりの感謝ぶりである。

 しかしだからといって仕事が減ったわけでもない。採掘場再建に関してやらなければならないのは現場のことだけではないし、その上でGH火星支部から委託される事業の準備も進めなければならなかった。これもすぐさまどうこうしろと言う物ではないが、今のうちから多くの根回しが必要になる仕事だ。採掘場再建の業務の傍ら、時間を作ったあちこち飛び回るオルガに休む暇など無い。

 

「……私が言うのもなんですけれど、働き過ぎじゃありません?」

「みんなそう言うんだよ。そんでそう言うことを言う連中に限ってどいつもこいつも忙しいと来てる」

 

 制作した記事をチェックして貰うためにオルガの元を訪れたアヤは、疲労困憊と言った様子の彼に対して思わず一言物申した。オルガの返事に眉を顰めるが、まあ確かに自分も相当忙しい。次々と起こる事件を記事に纏め、方々に配信する作業でまともに寝る暇もないほどだ。流石にMAに関係することはまだマクギリスのGOサインが出ていないため表沙汰にすることは出来ないが、現在の火星や鉄華団の状況を記事にするだけでも膨大な量となる。(そんな中でも人前――特にオルガの前に出るときはしっかり身なりを整えるところは流石というかなんというか)

 お互い様だろと笑うオルガは、疲労の割りには随分と余裕がありそうだ。どういう事だろうと思ったアヤが問うてみれば。

 

「委託業務の件だが、ランディ教官を通じて『信用できる人材』を集められそうだ。全部丸投げってわけにはいかねえだろうが、ある程度は任せられる目処がつく。根回し関係の話も大分纏まってきたし、ようやく一息付けるってわけさ」

 

 まあすぐにまた忙しくなるんだけどなと、オルガは言う。アヤの表情が引き締まった。

 

「ファリド准将の依頼、ですか」

「ああ、あれに関しちゃどれだけ準備しても用意しすぎってこたあねえ。嘗めてかかれる相手じゃねえからな。……タービンズの人たちも、引き上げることだしな」

 

 そう言って、オルガは天を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたし完全に忘れ去られてない!? 出番超遅くない!?」

 

 突然柳眉を逆立てて言いつのるエーコに対し、ランディはきょとんとした表情を見せた。

 

「お前さんずっと鉄華団で整備の指導したりなんやかんやしてたじゃないか。何言ってんだ」

「そうだけどさそうだけどさあ」

 

 なんか妙なストレスでも溜まっているのか。まあ女には色々あるしなあとランディは生暖かい視線を向ける。まあそれはいいとして。

 

「しかし思った以上のダメージだなこりゃ。今のこいつにゃツインリアクターのフルドライブは相当の負荷になるらしい」

 

 ランディたちの前には、装甲の大半を外されたバルバトスの姿がある。先のMA戦にて右腕を丸ごと失うほどの損傷を受けたバルバトスだが、問題はそれだけではなかった。老朽化したフレーム自体が、リアクターの全力稼働の影響で各部にガタが生じ始めていたのだ。

 もちろんちゃんとした整備を受け続けていればそんなことはなかったのだろうが、厄祭戦からこっち火星の砂漠に放りっぱなしだったバルバトスは特に老朽化が激しく、歳星の技術スタッフの力を持ってしても整備に限度があった。さらに言えば、GHを除けば現在最高峰の技術者が集う歳星のスタッフからしても、リミッターを外した負荷がこれほどの物とは予測の範疇になかったらしい。

 

「僕らのミスかなあこれは。ヴィントがここまでぼろぼろになる戦闘なんて想定していなかったからねえ」

「……ああ、バルバトスのことか」

「誰もその名前呼んでなかったから分かんないって技術長。それはそれとして、これフレーム造り直すところからやんないとダメなんじゃない?」

 

 頭を掻きながら機体から降りてくる技術長に言うエーコ。それに対して技術長はにやりと笑った。

「もちろんさ。それにただ直すだけじゃない、リアクターのフルドライブに耐えるようにしてみせるよ。幸いにして『原型は出来てる』」

 

 その言葉に、ランディは口元を歪める。

 

「エウロパフレーム……いや、『ラーズグリーズの設計を元にする気』だな?」

「イエスその通り! 元々エウロパフレームは僕らでガンダムフレームを再現しようとした設計だ。相性は悪くない。その上で、リアクターのフルドライブに対応できるよう色々と『ぶっこんで』みよう。面白いことになるよこれは」

「そいつは楽しみだ。……あとは」

「ああ、『阿頼耶識がどうなるか』だね」

 

 二人が向ける視線の先には――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、このデータの出所に関しては聞かん。じゃがこいつは今までの阿頼耶識の常識を覆すどころではないことは理解していような? 下手をすれば余計な争乱を産むかも知れぬぞ?」

「その上で先生に預けるというのが、団長の意向です。むしろ先生以外にこのデータを有効利用できる人間はいないでしょう」

 

 渡されたメモリーを弄ぶキシワダに対して、ビスケットはすまして応えた。

 言いよるわと、キシワダは皮肉めいた笑みを浮かべる。

 

「まあええわい。取り敢えずは『ガンダムフレームの問題』を解決すればいいんじゃな? それならある程度の目処はついたわ」

「は!? 本当ですかそれは!?」

 

 まさかこれほどあっさりと断言されるとは思わなかったビスケットは、素っ頓狂な声を上げる。キシワダはすぴしと人差し指を立てて見せた。

 

「そもそもMSと阿頼耶識を接続した状態でパイロットに負荷がかかるのはなぜかと言うところからじゃな。……なんのことはない、『パーツが足らなかった』のよ」

「パーツ?」

「これまで阿頼耶識搭載機を調べ、さらにこのデータと照らし合わせて分かったことじゃが、本来ガンダムフレームのコクピットはセーフティとリミッターを兼ねた制御システムが備えられていたはずなんじゃ。それが現在無いのはまあ当然と言えば当然で、現在ガンダムフレームで使われておるコクピットブロックは、そのほとんどがMWなどを流用したもので『本来のコクピットブロックではない』。パイロットの安全を守るための機構がすぽーんと抜けておるわけじゃ」

「じゃあなんで本来のコクピットじゃないのに阿頼耶識を接続できるんですか? それにMWとかガンダムフレーム以外の機体も動かせるのは」

「そりゃMSの原型であるガンダムフレームの根幹プログラムが『阿頼耶識接続を前提としておる』からよ。その根幹プログラムは後発の機体やMWなどにも流用されておる。じゃからダイレクトな接続も可能だったと言うわけじゃ」

「要するに最初からガンダムフレームは阿頼耶識システムを搭載していたんですか……」

「GHがそれをひた隠しにし、阿頼耶識を禁忌の技術とした理由は分からん。いずれにせよ現在流通しておる阿頼耶識システムは本来の物のデッドコピーで安全性など二の次じゃ。じゃがこのデータと今まで儂が蓄積した技術があれば、本来の阿頼耶識に限りなく近いシステムを構築することが出来る」

 

 そこまで語って、キシワダは傍らに向かってにやりと笑いを向けた。

 

「そういうわけできりきり働いてくれい」

「働きますけど、働きますけどさあ……俺ホントこんなんで出世できんのかな……」

 

 ぶつくさ言いながらキーボードを叩いているのは、キシワダに連れてこられたザック。ガンダムフレームの不調、その原因をいち早く見抜いた感性。そして普段の様子からは想像できないような高い技術者としての能力。そのあたりに目を付けられ助手として抜擢されたのだが、ほぼ休む間もなく新たなシステムの構築に従事させられていた。

 そんな彼の様子を見て、ビスケットはまあまあと宥める。

 

「働いた分ちゃんとボーナスは出るから。それにこれが上手くいったら阿頼耶識の調整関係を任せる班長にするって話も出てるし」

「……それ、出世じゃなくて仕事押しつけられてるって言わねっすか?」

「ダイジョウブダヨーシュッセダヨーホントダヨー」

「ぐるぐる目で迫らんでください!?」

「まあそれは冗談として」

 

 ホントに冗談だよな、などと戦々恐々とするザックを尻目に、ビスケットは言う。

 

「ともかくここは任せますね。俺はワンさんの所に行って物資の買い付けと、サカリビの改修について話を付けてきます。……三日月も退屈だろうけど我慢してくれよ?」

 

 そう言って振り向けば、部屋の片隅でもきゅもきゅとソイバーを口にしていた三日月が頷く。

 

「余計な心配なく戦えるようになるんなら、文句は言わないよ。ちゃんと終わるまで待つさ」

「それならOK……ってあれ? ハッシュは?」

 

 三日月の付き人としてついてきていた少年の姿が見あたらないことに気づき、ビスケットは三日月に問う。それに応える三日月は、小首を傾げた。

 

「なんかこう……そう、あれだ、『葛藤』? してるみたい。よく分かんないけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 工房から少し離れた人気のない通路の片隅で、ハッシュは壁により掛かり溜息を吐いていた。

 なんというか、凄く鬱な空気を纏っている。ただでさえ暗い気配の中近寄りがたいこと夥しいのだが。

 

「……こんなところで、どうした?」

 

 空気が読めているのかいないのか、あえて語りかけてくる者が居る。ハッシュやザックと共に歳星に訪れていたデインだ。彼としては雑用の合間、たまたま見かけた様子のおかしいハッシュに声をかけただけであったのだが。

 それに応えるハッシュはなんだか力無く。

 

「う、ああ、なんでもない……わけでもないんだけどな」

 

 迷いながら、それでもなにか吐き出すところが欲しかったのだろう。ハッシュはぽつりぽつりと語り出す。

 かつてスラム街にいた頃、ハッシュには兄貴分がいた。【ビルス】と言う名のその少年は、立身出世を志しCGSへと入隊。阿頼耶識の施術を受けた。しかしそれは失敗し、半身不随の障害を負ったビルスは役立たずのそしりを受け、捨てられるようにスラム街へと戻される。

 弟分たちへの希望となるべく起ち、挫折した彼は絶望の末自ら命を絶った。その彼の志を継ぎ、スラムの仲間たちが希望となるべくハッシュは鉄華団に入隊したのだ。

 入隊した初期三日月に対して対抗心のような物を持っていたのは、運良く阿頼耶識が適合した程度で、という嫉妬に似た感情があったからだ。実情を見て体感して、その感情は一気に敬意へと変化したのであるが。

 

「……さっき聞いたんだよ。『阿頼耶識手術の失敗を、治療する手段がある』、ってな」

 

 ずるずると壁沿いに腰を落とし、ハッシュは座り込む。

 

「どうしようもなかった、ってのは分かってんだ。……けどな、『あと1年早ければ、ビルスは助かったのかも知れない』って、どうしても考えちまう」

 

 タイミングが悪かった、としか言いようがない。実際の所技術的には可能と言うだけで、現状実例は0の技術だ。本格的に実用化するにはまだまだ多くの時間と実績が必要になるだろう。たとえ1年早くかの技術もたらされていたとしても、ビルスが助かっていたかどうかは怪しい。

 それが分かっていても、わだかまりが晴れるわけではない。ハッシュは悶々とした空気を抱え込んだままで、それをつい吐き出してしまった。情けないと彼は自己嫌悪してひとり落ち込んでいく。  

 と、黙って聞いていたデインが口を開いた。

 

「……分かるな、それ」

 

 どかりとハッシュの隣に腰を下ろし、デインは言う。

 

「何であの時ああならなかったのか。俺もそんな事を考える。多分大なり小なりみんな考えたことがあるんじゃないか、鉄華団(ここ)に来た人間は」

 

 じっと自分の両手を見つめるデイン。そう言えばこいつの過去を何も知らないなと、今更になってハッシュは気付いた。

 

「過去は変えられない。忘れることだって出来ない。このままでいいのか、って思うときもある。……それでも生きていれば、死んでるよりは何かが出来るって、ランディ教官は言ってた」

 

 デインの言葉には重みがあった。それを感じ取ったハッシュは暫く思いにふける。

 ややあって。

 

「……あの人や三日月さんは、俺達みたいな事で悩んだことはねえのかな」

 

 ぽつりと言うハッシュ。デインはむう、と小さく唸った。

 

「想像もつかないな」

「確かに」

 

 ハッシュは小さく笑った。何がどう変わったわけではない。わだかまりが消えたわけでもない。

 ただ……色々吐き出したせいか、少しだけ気持ちが楽になった。

 

「デイン」

「ん?」

「……ありがとな」

「……どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鉄華団に派遣されていたタービンズメンバーの引き上げは滞りなく進んでいた。後はバルバトスの改修に携わっているエーコがそれを片づければ終了だ。

 

「ホントありがとうございました。長々とお世話になっちまって」

 

 愛想良くタービンズの女性たちに頭を下げるシノ。彼を筆頭とした幾人かが、鉄華団に出向していたメンバーの引き上げを手伝っていた。

 

「なに、弟分たちの面倒を見るのが上の仕事さ。あんたたちもよく頑張ったよ」

 

 出向メンバーの代表としてアジーが応える。実際彼らは技術の習得に精を出し結果を出してきた。それは自分達出向メンバーの力だけではないが。

 

(ランディが鍛えた地金があったとはいえ、よくぞこの短期間で組織としてそれなりの形になってきたもんだよ)

 

 最早鉄華団はただの下部組織では収まらなくなってきている。色々と横槍やアクシデントがあったが、それを乗り越え大きく成長した。ここから先は少し離れた立場から見守らなければならないが、彼らがどこまで行けるのか、楽しみではある。

 

(まあそれもこれも、この子らがGHとの戦いを終わらせてからの話だけどね)

 

 そのことに関しては、立場上決着がつくまで距離を置かなければならないと言うのが少々歯がゆい。彼らのことは信用しているし、勝ち目のある戦いだというのも分かっている。だがそれでも、家族も同然の弟分だ。気にかけるのは致し方あるまい。

 

「ともかくあんたらはこれからが正念場なんだ、気を抜かずにしっかりとやんな」

「あざっす。暫く忙しくなりますけど、落ち着いたらまた団長共々顔出しに来ますんで」

 

 軽い言葉だが、必ず帰って来るという意気込みが含まれている。一丁前に言うようになったと、アジーは微かに笑みを浮かべた。

 そんな感じで会話を交わしている間にも。

 

「……これで荷物は最後だな」

「悪いわね。全部運ばせちゃって」

「世話になったんだ、これくらいはやらせてくれ」

 

 ラフタと彼女の荷物を運んでいる昭弘である。いつも通りの昭弘と、どこか残念そうなラフタ。その姿を見て。

 ぎゅびいんと、シノとアジーはアイコンタクトを交わした。

 

「ようおつかれおつかれ。でよう昭弘、ちょっと」

「? どうした?」

 

 手招きされた昭弘は、そのままシノに肩を組まれて端っこの方へと連れ去られる。

 

「な、なんだ?」

「おう、お前さんラフタさんにさんざ世話になったろ? だからちょっと一杯くらいおごって来いや」

「は? なんで俺が? そりゃ確かにラフタには世話になったが、それはアジーさんたちもそうだし、お前らだって世話になったろうが」

「お前さんは特に世話になったじゃん。シミュレーターにつきっきりで指導して貰ったり、差し入れして貰ったりよ。……しばらくは会えねえんだ。ここで恩を返しておくべきじゃねえ?」

 

 言葉巧みに昭弘を誘導するシノ。一方アジーはラフタになにやら言い含めている。赤くなったりわたわたしてたりするところを見ると、多分ろくなことではない。

 結局シノに言いくるめられた昭弘は、ラフタを誘うようだ。苦労して彼女に言葉をかけている昭弘の様子を横目で見つつ、シノとアジーたちはこそこそと会話を交わしていた。

 

「へっへっへ、ご要望通りにしておきましたぜ姉さんがた」

「みんなちょっとやきもきしてたからねえ。小学生かあの子らは、って」

「……それにしてもいんすか? ラフタさんも名瀬さんの嫁だっつーのに」

「来る物は拒まず去る者は追わず、ってのがあの人さ。……ラフタの事はラフタ自身が決めるべきだ。どう転ぶにしても、良い機会じゃないか」

「そんなもんすかね。……ところでアジーさん、あいつら上手くいくかどうか、賭けねえすか?」

 

 にい、と笑むシノに応えて。アジーとともについてきた女性たちが、同じような笑みを浮かべた

 

「上手くいく方に50」

「あたしはいかない方に100」

「暫く平行線じゃないの? 何もないに70」

「あんたらね……」

 

 アジーは呆れた様子で鼻を鳴らした。

 

「あんまり人をおもちゃにするんじゃないよ。……上手くいく方に150」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歳星が繁華街の一角。居酒屋……というには少々上品な店に、昭弘とラフタの姿はあった。

 

「へえ、なかなかいい雰囲気の店じゃない」

「始めてここに来たとき慰労会をやった店でな……」

 

 その節はご迷惑をかけましたという意味を込めて会釈すれば、いえいえお構いなくといった雰囲気を込めて会釈を返すバーテンダー。なかなかに人間が出来ている。

 まあそれはそれとして、軽く飲み物とつまみを頼んで……二人の会話が途切れた。

 うむどうしよう。シノに乗せられてラフタを誘ってみたものの、昭弘は完全にノープランである。ここからどうしたものかまったく分からない。

 ええっと、どうしようかしら。なんか適当にアジーたちに乗せられたラフタもまたノープランである。当然ここから先の展開なんて考えてない。

 暫く互いに悩んだ末、口火を開いたのはラフタだった。

 

「仕事……」

「ん?」

「この先の仕事、とか、GHの件が片づいたら、あんたやりたいこととかある?」

 

 それは単なる思いつきであったが、即座にラフタは言い訳をでっちあげる。多分昭弘は将来のこととかあまり考えていないんじゃないか。だったらこう、タービンズ関係の仕事に引き抜くとかすれば近くにいられるかもいやいやいたからどうだってわけじゃないけれど。一瞬にしてそんな捕らぬ狸のなんとやらを組み上げるラフタであったが。

 

「ああ、あるな。やりたいことが」

 

 その言葉に、ラフタはぴくりと反応した。予想外。え、ちょっと待ってと口にする前に、昭弘が語り出す。

 

「交易船団……いや、船に関わることをしたいと思っているんだ」

 

 昭弘は元々交易船団を率いていた一族の出である。海賊に襲われ一族のほとんどは死別。唯一残った昌弘とは運良く再会できたが。

 

「船団を再建できる……とは思えねえ。俺は馬鹿だし、昌弘に任せるにしたって途方もない時間と金がかかるだろう。だったら少しでも、交易船団の人たちの仕事を手助けできるようなことをしてえ」

 

 頼んだ水割りをちびちびと舐めながら、昭弘は己の『夢』を語る。

 

「今は新しい大型交易船を造れないから、古い船を改修するかレストアするしかなくて、船団を組む人たちは苦労していると聞く。……タービンズも確かそうだったよな」

「あ、うん……古い船の改修はどうしても限度があるしね」

 

 エイハブリアクターを新規に製造できない関係で、民間では惑星間航行に用いられる大型船舶の新規製造はできない。(新しい船を手に入れられるのは、GHにコネがある者だけだ)結局現在ある船舶を改修するしかないのだが、当然組織の規模が大きくなれば数は足らなくなるわけで、きちんとした船舶の取り合いなどは頻繁に起こっていた。

 それを解決する手段は今のところ一つ。『デブリベルトなどからサルベージした船舶や、リアクターを再利用するしかない』。当然ながら、それには多くの危険が伴い、サルベージ業者も船舶クラスのリアクターを狙うには二の足を踏む。

 昭弘はあえてその業務に従事したいと考えていた。

 

「そのために、団長には無理を言った。なんか喜んでくれたけどな」

 

 昭弘の『夢』を相談されたオルガはことのほか喜んだ。ヒューマンデブリであった昭弘が、自分自身のやりたいことを見つけた。それが自分のことのように嬉しかったのだ。

 そうしてオルガは昭弘の希望を出来るだけ叶えるべく、将来的な業務の一環として船舶用のリアクターをサルベージする事を本格的に検討し始めた。その話が進んでいく中で、昭弘がランディと相談し仕上げさせたのがグシオンリベイク明王丸である。そう、かの機体に改めて搭載された機能とマルチシザーは、『デブリベルトの中で船舶の解体作業を行うための物』であった。

 

「上手くいけば大口の仕事になる、ってメリビットさんやデクスターさんも太鼓判を押してくれた。昌弘や、ほかの兄弟も乗り気で手伝うって言ってくれる。……それに、この話がうまく行くんなら、ヒューマンデブリだった連中の、受け入れ先になれるかも知れねえ」

 

 確かに阿頼耶識手術を受け、MSやMWを手足のごとく扱える彼らならば、きちんと訓練を受ければデブリベルトの中でも自在に働ける作業員になれるだろう。それはランディの教えを受けた少年たちが証明している。そう言ったものたちを受け入れられる場所を作る。昭弘はそんなことまで視野に入れていた。

 そのことに驚くと同時に、何となく寂しいというか置いてけぼりにされたような感覚を覚えるラフタ。しっかりと将来のことを考えて歩き始めた昭弘が一回り大きく見えて、そして少し遠のいたような気がする。

 その様子に気付かず、少しアルコールが入ったせいもあってか、昭弘はいつになく饒舌に言葉を重ねる。

 

「俺は鉄華団に入ってからこっち、団長やみんなに恩を受けっぱなしだ。ラフタ、あんたにもな」

「あ、あたしはその、大したことしてないじゃない」

「それでも、三日月以外に安心して背中を任せられると思ったのはあんたが初めてだ。そういった諸々含めて、鉄華団やタービンズに恩を返せるようなことっていったら、やっぱり力仕事しか思いつかねえ。俺のやることが、巡り巡ってみんなの、誰かのためになったら少しでも恩が返せるんじゃないか……そんな気がする。こう、上手く言えないけれどな」

 

 そうか、ラフタは何となく理解した。昭弘は己の道を歩き出した。だがそれは、自分達から離れていくための物ではない。

 目指す先、歩む道は違っていても、その道は『自分達と続いている』。義理堅く、恩を忘れることのない昭弘だから、その行く先はきっと自分達と交わっている。そう感じた。

 ふ、と表情を和らげ、ラフタは微笑む。

 

「じゃあさ、もしも……もしもなにかピンチになることがあったら、あたしの背中を護ってよね」

 

 その言葉に対する答えは分かっている。案の定、昭弘は迷い無く、力強く応えた。

 

「ああ、必ず」

 

 分かり切った答え。小さな約束。それは少女じみた外観を持つ女性の心に、ほのかな暖かみをもたらした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜も更けた頃合い、名瀬はハンマーヘッドの一室で静かにグラスを傾けていた。

 

「相変わらず好きだねえ、その酒」

 

 名瀬が座するソファーの端に体重を預け、アミダが言う。グラスの中身はなんと言うことのない、そこらのコンビニでも売っているような安酒だ。だが名瀬は懐にかなりの余裕が出来てからもなお、それを愛飲している。

 

「こいつがいいのさ。お前と出会ったときにも飲んでたこいつがな」

 

 鈍く光るグラスの反射を見ながら名瀬は応え、過去を思い起こす。

 かつて、名瀬は単身でハンマーヘッドを駆り輸送業務に従事する個人業者であった。とある仕事で海賊が横行する航路を使わざるを得なかったとき声をかけたのが、当時傭兵として名を上げ始めていたアミダである。

 仕事の最中、華麗とも言える技量で海賊どもを討ち取っていくその様に、名瀬は惚れ込んだ。惚れ込んで、口説いた。

 アミダの協力を得て、名瀬は己の組織を立ち上げる。それはいままで見向きもされなかった人材、女性のみを雇用していくという形態の物だ。宇宙生活者や圏外圏などでは女性の立場は低く、ヒューマンデブリと大して変わらない扱いを受けているのが常であった。そんな女性たちを拾い上げ、その才能を開花させて人材とする。そうやって組織を少しづつ拡大させていく。さらに彼は雇い入れた女性たちを庇護するために、彼女らと婚姻関係を結ぶという手段を取った。

 それは書類上だけの関係という者も多かったが、本気で名瀬に惚れ込んだ者も少なくない。事実名瀬は多くの『妻』たちと関係を結び、子をなしてさえいる。そんな彼をアミダはしょうがないなあといった感じで支え、妻たちの筆頭として組織を仕切っていた。女たちが名瀬に惚れ込むのは分かるし、自分もなんだかんだ言って同じなのだから。

 そうして拡大していった組織――タービンズの立場を確たる物とするため、名瀬はテイワズの傘下に収まることを決意する。

 

「あれから大分経った。……タービンズも大所帯になっちまった」

 

 今やタービンズは構成員5万を誇り、テイワズの輸送業務を担う一角となった。それまでは紆余曲折があったし、未だに名瀬のことを女衒だのヒモだの見下す人間は組織内でも多い。(主に某ケツアゴの勢力)しかしマクマードや一部の幹部は名瀬のプロデュース能力を買っており、あるいは将来の跡目候補として考えている節があった。

 しかしながら、名瀬自身はその器ではないと感じている。ここいらあたりが己の限界だと。

 

「……もったいない話だと思わないでもないけどね。まああんたがそう判断したんならそうなんだろうさ。……ところで、ラフタと昭弘が良い感じだって話をアジーがしてるんだけどね?」

 

 悪戯っぽく笑うアミダに、名瀬もまた笑みを持って応える。

 

「昭弘なら文句はないさ。まだまだ未熟だが……あいつはいい男になる。ラフタを任せていいってくらいの、な」

 

 タービンズに集った女性たちを、名瀬は妻として扱うと同時に自分の娘のようにも感じていた。もし自立し、己の意志で自分の元を離れるのであればそれで構わない。事実名瀬を利用しようとする人間も多くいる。だがそれらを全て名瀬は受け入れ庇護を与えた。

 そんなものは男社会でも一緒だ。むしろ女性の立場が軽んじられる状況にありながら、そのバイタリティは見事な物ではないか。そう笑い飛ばせるのが名瀬という人間だった。

 

「ま、簡単に嫁にやってやるつもりはないがな。……最低でも、GHとの戦いから生きて帰ってくれるくらいはやってもらわねえと」

「……歯がゆいもんだね。見送るしかできないってのは、さ」

「親父はもっと歯がゆいだろうさ。……だから嫌なんだよ、上に立つってのは」

 

 からん、とグラスの中の氷が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バルバトスの改修が始まって2週間が過ぎた。

 フレームの多くを造り直すことにあった関係上、改修は今までになく手間と時間がかかり、その間阿頼耶識システムの調整なども度々行われていたが、三日月は多くの時間をもてあましていた。勿論ただぼんやりしているようなタマではなく、トレーニングなどを続けてはいたが、それでも時間は余る。

 そんな彼を、マクマードは呼び出し話を聞いていた。

 

「……ほう、あの化け物相手に一歩も引かねえとは、マクギリスって男も大したタマじゃねえか」

「きちんと整備したガンダムフレームがあったら、アレ倒してたかもね」

 

 機嫌良さそうに三日月の話を聞いているマクマード。三日月の隣で甲斐甲斐しく世話をしているアトラは――

 

(なんかお孫さんの相手をしているおじいちゃんみたい)

 

 といった感想を抱いているが、マクマードからすればそのようなものなのだろう。

 

「ほれこっちの菓子も食え喰え。それで、どういう感じであの化け物を仕留めた……」

「会長、お話し中の所を失礼します」

 

 突然、マクマードの言葉を遮って側近の黒服が声をかけてくる。一見通常と全く態度は変わっていないように見えるが。

 

(……? なんか『焦ってる』?)

 

 黒服が妙に緊張しているのを三日月は感じ取っていた。そして。

 

「……なんだって? アリアンロッドがタービンズにガサ入れただと!?」

 

 事態は、風雲急を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回のえぬじい。

 

「あら、学食で3回おごってあげたじゃない」

「私は17回おごらされたわ」

 

 多分お嬢様方の関係ってこんな感じ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 おっし何とか今年中に、更新っ! その代わり引っ越しの荷物片づかねえわあはははは。
 実は現実逃避しつつある捻れ骨子です毎度。

 まあ実情はそこまで追いつめられていないんですが、ちょっと年末年始にかけて物書く時間がないのは事実でして。それが理由ではないですが今回はやたらと詰め込まれております。一応前回三日月君がリアクターをぶった斬った屁理屈とかもありますが当然独自設定ですから信じるな。いや信じる人とかいないでしょうけれど。ほかにもツッコミ所は多々あるだろうが全部独自設定だ。いいね?

 それはともかく詰め込まれた伏線が収できるのか否か。って言うよりここの読者の皆様はたわけとケツアゴがどんな酷い目に遭うのか興味津々だと思われるのですがそれは叶うのか否か。

 刮目とかしなくても良いから暫くお待ち下さい。
 来年もまたよろしくお願い致します。

 
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