今回推奨BGM,ゲーム戦国BASARAより【長宗我部元親戦闘BGM】
アーヴラウの代表官邸。国を挙げての厳戒態勢が取られている中、鉄華団地上支部の面子は代表たる蒔苗の身辺警護を任された……という名目の元、官邸に詰めていた。
勿論お題目通りに蒔苗の警備を行ってはいるのだが、それ以上に『彼ら自身の身を護る』という理由があった。
何しろ相手は策謀に長けたラスタル・エリオン。決戦の裏で何をやらかすか分からない輩だ。実際に未確認情報であるが、火星の方で何やら工作しようとしたらしいという情報もある。地上支部の少年たちも自分の身を護るくらいは出来るが、念には念をと言う奴だ。
「申し訳ありません代表。妹まで……」
「なに構わんよ。君たちと儂らは一蓮托生のようなもの。それ以前に国の長というものは国民を護るものじゃて」
蒔苗の執務室。恐縮して頭を下げまくりタカキに対し、 蒔苗はかんらかんらと鷹揚に笑う。アーヴラウの庇護は、鉄華団団員周辺にまで及んでいた。とは言っても身内が居る者などタカキくらいだ。だったら一纏めにした方が手っ取り早いと、タカキの妹フウカも官邸にて保護されていた。(なお現在フウカは官邸のVIPルームにて手厚くおもてなしされている)
現在執務室には蒔苗とSP、そしてタカキとアストンの姿がある。そして壁に備えられたいくつかのモニターは、現在軌道上で行われている決戦の様子を映し出していた。
蒔苗が少年二人をここに呼び出したのは、保護するためだけではない。
「さて、君たちにちいとばかしこの戦況を解説して貰いたい。なにしろ儂は戦術に関しては素人も良いところじゃからのう」
言いながら髭をしごく。この戦いの行く末によってアーヴラウの舵取りも左右されるだろう。出来うる限り正確な状況を把握しておきたいという思惑からのことであった。
その申し出に顔を見合わせるタカキとアストン。瞬時の戸惑いの後、アストンがおずおずと問うてきた。
「あの、タカキはともかく俺なんかが……」
「謙遜するものではないぞアストン・アルトランド。聞けば防衛組織におけるMSの運用原則(ドクトリン)を組織幹部と協議し構成しているそうではないか。なかなか出来ることではあるまい」
「お、俺の名前を……?」
「鉄華団団員の名は全員記憶しておる。ま、じじいの自己満足さ。……ともかく君たちは地上支部の責任者とエースじゃろう。解説にはうってつけと思うておるのだよ」
鉄華団の団員たちを少年だと甘く見ているような人間は、最低でも蒔苗の周りには居ない。彼らは修羅場をくぐり抜け、実績を積み上げてきた。そしてそれに驕ることなく努力を続けている。アーヴラウの防衛組織とも深く関わる彼らは、もうこの国の重鎮と言っても過言ではない。
とにもかくにも、蒔苗の言葉を聞いた二人はまあそういうことならと、一応納得する。
そうして戦況の分析が始まる。様々な報道関係や各勢力の情報機関など、情報源は山と在る。それらとモニターから見とれる現状に目を通し、二人の少年は見解を纏めていく。
「現時点で、双方の艦隊戦力比は倍ほどの開きがあります。通常真正面からのぶつかり合いでは、倍ほども差が在れば優位は揺るぎません。しかし今回の場合、戦端が開く前にマクギリス代表の工作によってアリアンロッドの士気は格段に下がりました。かてて加えて鉄華団を含むエースパイロット級の投入。これで戦力は五分、とまで行きませんがかなり差が埋まったことになります」
あくまで戦場だけを見て、最低限の要因のみで語るタカキ。実際はもっと複雑な状況だが、素人である蒔苗にも分かりやすいよう要点のみを告げていた。
「しかし、艦隊戦においては艦艇の数というのも重要ですけれど、もっと重要なのが艦載機――MSの数です。アリアンロッドはスキップジャック級だけで反逆軍全体を上回る数を保有している。そして向こうのエース級も0ではありません。これに反逆軍がどう対処するか。そこにかかっているでしょうね」
この時点でタカキたちはエイロー隊などの存在を知らない。しかしながらそれを差し引いてもアリアンロッドの数は脅威だと認識していた。覆すのはエースの存在……などと楽観視してはいない。
タカキに促され、今度はアストンが説明に入る。
「えっと……鉄華団のエースは教官を筆頭に並の乗り手が束になっても叶わない腕前を持っているんだ……です。それでも、100機の敵を倒したとしても向こうは200機の敵を出してくる、そんぐらいの戦力差がある……です」
敬語になれていないので、どうにも拙い説明だ。蒔苗はそれを微笑ましく見ている。
「鉄華団のエース級、その平均が並のパイロットの5、6人分。それは6倍を相手取れると同時に、『6倍消耗する』って事だ…です。阿頼耶識を付けていたところで体力や精神力が増える訳じゃない。数の不利を覆すどころか、持久戦に持ち込まれたらヤバ……危険です。当然うちの団長もマクギリス代表もそれは理解しているだでしょう」
拙いまでもアストンが説明を引き継いだのは、MS戦に置いては誰よりも造詣が深いからだ。この戦いにおける要をいち早く理解している。
「だから『伏せ札』がある。そしてそれを見越したラスタルも同様のものを用意しているはずです。この戦いは長引かないと同時に――」
モニターを見ながら説明するその目が、鋭く細められた。
「可能な限りカードを伏せ、可能な限り効果的な場所で切る。互いがその機会を巡って駆け引きを行う。そんな戦いになります」
断言。その言葉は果たして的中するのであろうか。
一見互角。現在の状況を評するとなればそうなる。
単純に艦艇の積載量を考えると、鉄華団を含めた反逆軍が300弱。アリアンロッドは1000を超える。三倍以上の開きがあると同時に、アリアンロッドの連度は高い。かてて加えてエイロー隊やシュネー隊などの存在もある。普通に考えれば一方的な流れになるはずだ。
それを押し止めている要因の一つは、当然ながらこの男。
「どうしたどうした! お礼参りどころじゃねえなァ!」
「くっ、この機体、格が違いすぎる!」
からかうように言い放ちながら電光のようにラーズグリーズを駆るランディ。それと交戦しているのはシュネー隊である。
上手くかち合ったと、歓喜と同時に警戒心を抱くイッヒ以下隊員たち。『上手くいきすぎている』。ランディと直接戦えるのは願ってもないことだったが、そう簡単にかち合えるとは思っていなかった。たとえ遭遇したとしても、まともに相手取る事はないだろうと予想していた。
だがランディは、『真正面からこちらの相手をしている』。いつも通り人を小馬鹿にしたような言葉を吐きながらであるが、戦闘自体はしごく真っ当なものだ。『だからこそおかしい』。
こちらを嘗めてかかっている? そのような男ではない。あれは傲慢だが、慢心とは無縁の思考回路をしている。であればこのようないつもと違う戦い方を選択した理由があるはずだ。
すぐさまそれに思い当たる。
「『我々をここに釘付けにする気』か!」
クロウ隊を知ったランディがこちらの存在を察しただろう事は想像に難くない。そして自分達の思惑も。
自分達は戦果を必要としている。当然ながらそれを得るために、敵を数多く撃破しなければならない。そして自分達は、GHの中でもかなり高い連度を誇るという自負がある。鉄華団やマクギリス直下の兵はともかく、一般の兵や合流組には荷が重い。そう判断し自ら相手をしに来たのだ。
ランディを無視して他の相手をするなどということは、シュネー隊にはできなかった。なにしろ彼と一戦交えたいがために意に添わぬ戦いに身を投じたのだ。本懐を無視することなどどうして出来ようか。このような心理を読まれていることなど百も承知。愚かだとは思うが、意地と矜持が引くことを許さない。
同時に――
「この我々を、『自ら足止めしなければならないほどの敵』と見て取った! そう判断するぞランディール・マーカス!」
気圧されるものかと挑発的な言葉を投げかける。自分達をフリーにすれば、味方の損害も馬鹿にならないと見て取ったのだろう。それだけの力を持つ兵だと『認めた』。あのランディール・マーカスが! その事実は、イッヒに、シュネー隊の面子に、高揚感を与えている。
勝てるとは思わない。だが死力を尽くして悔いのない戦いだと、全員がそう感じていた。 対するランディは。
(言うほど楽な仕事じゃねえんだよな)
心の中で苦笑を浮かべている。
確かにシュネー隊は『それなりの敵』だ。殲滅するには全力を出さなければならないほどの。
それをやらないのは顔見知りだから手心を加えている……などという理由ではない。殲滅したって別にかまいはしないのだが、それをやれば自分は相当に消耗するであろう。『その後が控えている』身としては、それは避けておきたい。
結果、手加減をしていることとなってしまったが、それで倒せるほどシュネー隊は甘くない。準エース級一個中隊を手加減して膠着状態に持ち込んでいるだけでもうアレだがそれはそれとして。
シュネー隊は非常に『ねばり強い』。これは地球外縁軌道統制統合艦隊全体に言えることだが、損失を最小限にし目的を果たすこと、そういった戦術に長けている。そうなったのはランディとの関わり合いに寄るところが大きいが、部下を無闇に消耗したくないカルタの思惑があってこそのことだろう。
戦場で勝つことよりも『負けない』戦術。そして手加減しているランディと、その戦術は相性が悪かった。膠着状態に陥ってしまうくらいには。
だが、それでも。
ランディは確かに、『楽しんでいた』。
彼らだけではない、ぬるま湯に浸った表向きの平穏な世の中では決して現れなかったであろう強者たち。それが育ち、頭角を現してきている。
激動の時代だ。闘争の幕開けだ。戦乱の狂気に犯されているランディにとっては、実に喜ばしい事態となりつつあった。
理性では面倒だと苦笑するが、その闘争本能は歓喜を押さえられない。
だから彼は、満面の邪悪な笑みを浮かべ、こう宣う。
「さあさあ! もっと俺を楽しませろよ!」
有力な戦力であるシュネー隊が押さえられると同時に、エイロー隊もまた膠着状態に落とし込まれていた。
いや、むしろ――
「ば、馬鹿な!? 『俺達が圧されている』だと!?」
気が付けば、少しずつ戦力を削られている。俄には信じられないことだった。
エイロー隊に集められたのは歴戦の海賊や犯罪者たち。元々高い技量がある上、阿頼耶識に高い適性を持っていた選りすぐりだ。その実力は通常の阿頼耶識付きなど歯牙にもかけない――はずだったのに。
何がおかしいのかと言えば、相手が鉄華団だったから、としか言いようがない。
「こいつら……以前戦ったときよりも確実に技量が上がっている! この短期間で何をした!?」
別に何か特別なことをしたわけではない。いつも通りの訓練を重ねてきただけだ。
……ただちょ~っと、決戦に向けて鍛錬の濃度を上げるために、『シミュレーションの仮想敵戦闘データがランディのものになってた』だけで。
想像してみよう。『複数で襲いかかってくるランディ』。
地獄だった。
「温いんだよ! 阿頼耶識付けただけで勝てるほど俺たちゃ甘くねえぞ!」
「つかアレに比べりゃクソに集るハエだぜ!」
獅電が、ランドマンロディが。性能で上回るはずのレギンレイズを押し返していく。実戦よりも数倍しんどい鍛練を重ねていれば、そりゃあ技量も上がる。元々並の兵より濃密な鍛練を重ねて来た身だ。今の彼らは数ヶ月前の彼らではない。
しかしながら、やはり中には例外も居るわけで。
「やるじゃねえか。気合いの入ってんのも居る!」
「こいつら、確か夜明けの地平線団の連中だ」
背中合わせになった状態でシノと昭弘が言葉を交わす。
対峙しているのは、それぞれ蒼のラインと朱のラインが入った2機のレギンレイズ。銃剣と一体化したライフルを備えたそれらは、高度なコンビネーションを駆使して昭弘たちを翻弄していた。
前衛と後衛が変幻自在に入れ替わり、攻防共に付け入る隙を与えない。相対することが出来るのは、それこそエース級のみであった。
「崩しきれないな。さすがは鉄華団といったところか」
「以前よりもさらにキレをましている。今の俺達と互角とは」
その2機を駆るのは、サンドバルの副官であった双子である。サンドバルの威光に霞んで目立たなかった二人であるが、実力主義の海賊団で副官を張っていたのは伊達ではない。阿頼耶識を得てからのその力は、鉄華団エースたちとも互角に渡り合えるほどのものだ。
かてて加えて双子ならではのコンビネーションを駆使した戦法は、昭弘とシノを持ってしても手こずるほどのものであった。
「互いに押し切れねえなあ。決め手がない」
「だがこいつらを野放しにも出来ない。俺達で押さえ込むしかないだろう」
隙が見出せず、また油断も出来ない。神経をすり減らすような戦いをシノと昭弘は強いられていた。
別の場所では。
「しぶとい! 性能ではこちらが上回っているというのに!」
「性能だけで勝てるほど、世の中甘くないのよ!」
レギンレイズジュリアと辟邪が死闘を繰り広げていた。
双方共に得手は機動力を活かした戦術。しかしながら性能的には全ての面でジュリアが上回る。
だというのに押し切れない。いや、やもすれば自分が押し負けている。
攻撃が当たらないわけではない。事実辟邪の装甲は結構な損傷を受けている。だが一つとして致命傷はない。数こそ多いが全て装甲を浅く削った程度のものだ。ジュリアも似たようなものだが、それは完全に互角に渡り合っているという証明に過ぎない。
その理由は――
「このお!」
ジュリアが剣を振るう。それは細かく分離し、ワイヤーで繋がれた蛇腹状の形状に変化して、複雑な軌道を描きつつ辟邪に迫る。
「なんのお!」
迷わず辟邪は前に突っこんだ。迫る刃をブレードで払い軌道をずらす。しかしそれも一部分。のたうつ刃は容赦なく襲いくる。
構わず前に。一部の刃が頭部を掠め火花を散らすが、怯むことなくすれ違いざまに銃撃を放った。
「くっ!」
ジュリアの装甲を銃弾が叩く。致命傷にはほど遠い、かすり傷と言っても良いほどのものだ。だが毎回、交錯するたび『確実に当ててくる』。
損傷を恐れないのではない。『損傷を最小限にして、カウンターで合わせてくる』のだ。そのために、あえて懐に飛び込んでくる。相当の度胸と集中力、そして見切りを必要とする行為だった。
性能で上回る相手に対して互角の戦いをしているのは、それだけが理由ではない。相手――ジュリエッタ本人にも問題があった。
「私は……まだっ!」
一言で言えば精彩に欠ける。まだ心に迷いがあるのだ。
これがもし、GHの正義が大っぴらに否定されていなければ。アリアンロッドが全体的に冷静さを保っていれば。彼女はその本領を発揮できていただろう。だが、司令であるラスタルですら精神的な余裕はない。表面上を取り繕うだけで精一杯だった。
ラスタルに余裕があれば、大事な任務の一つも任されていただろうし、ジュリエッタ自身も揺るぎがなければ格上の相手だろうが食い付く気迫を見せる。だが今はそれがない。迷いの中振るわれる剣は鋭さを欠き、それはラフタに付け入る隙を与えている。
「そんな剣じゃ、アタシは止められないよ!」
さらに今のラフタには勢いがある。ただがむしゃらに突っこむだけではない。成すべき事を成そうとする強い意志と、実戦と鍛錬で培った実力。技量なら彼女は今のジュリエッタを上回る。逆にジュリアと辟邪の性能差があるから互角の戦いで済んでいるのだ。これが同格の機体であれば、早々に雌雄は決していたかも知れない。
「こんな所で、留まっているわけには!」
「墜ちろとは言わないけど、余所にはいかせない!」
女たちは火花を散らして舞い続ける。
三日月とサンドバルもまた、激戦を繰り広げていた。
「技量、そして機体の性能。以前とは比べものにならんか」
「地味に強くなってる。機体と阿頼耶識だけじゃないな」
対艦ソードメイスを軽々と振るい、嵐のような斬撃を連続して叩き込むバルバトス。それをレギンレイズハイムーバーが2刀で凌ぐ。
以前戦ったときとは攻防が逆だ。あの時三日月は速度で負けじと最初から太刀に切り替えていたが、いまのバルバトス――ゲブリュルヴィントは通常出力でも以前を上回る膂力を発揮する。その速度は太刀を振るうより劣るが、近い速度でMSを粉砕する破壊力を産み出す。
それを何気なく凌いでいくサンドバルも大したものだった。捕縛されてからこっち鍛錬を続けられたわけでもないだろうに、確かに技量が向上していた。
「ふん、強さなどどこでも培える! 例え牢獄の中であるともな!」
実際に技量が上がっている以上、凄まじく説得力のある台詞であった。三日月も「そういうものか」となんか納得している。
しかし見た目の激しさに比して、双方共にまだ本気ではない。現在展開している戦力だけが全てではない、互いにそう理解し伏せ札を警戒しているからだ。目の前の敵は強敵だが、それだけに拘っていると足下を掬われる。まだ全力を出すときではないと判断していた。
(それにラスタル・エリオン、あれは我々を囮か足止めに使う気なのかも知れんしな)
口に出さずに呟くサンドバル。彼はラスタルを欠片も信用していなかった。自分達のような人間を使うからには、腕が立つという以外にも相応の理由があると踏んでいる。そしてそれはろくなものではあるまい。
途中で逃げるにしても何にしても、余力は残しておきたい。そのような算段があった。
片や三日月は。
「向こうも本気じゃない。今はこの場に釘付けにしてるだけでよしとするか」
冷静に状況を見ていた。彼が見ているのは『自身の戦いだけではない』。機体のレーダー、センサー類から捉えられる情報、索敵班やダンテの機体から送られるリンクデータ。それらから戦場全体を俯瞰するように把握していた。
安定し性能が向上した三日月の阿頼耶識システムはただのマン・マシーンインターフェイスには留まらない。戦闘の思考とは別に情報を統合、分析し乗り手に伝える戦術補助機構としての機能を得ていた。実の所、これは普段からランディがやっている戦術思考と似通ったものであり、今の三日月は彼に比肩しうる戦況判断能力を持つに至っている。
その彼はサンドバルを『余所に向かわれたら面倒な相手』と見ていた。サンドバルはプライドも高いが同時にクレバーな男だ。何が何でも三日月と再戦し雪辱を果たしたい、そう思うほど因縁に拘っていない。こちらが見逃そうとすればあっさりとこの戦いを放棄し、もっと与しやすい相手の元に向かうだろう。そうなれば被害が広まるのは目に見えている。
「ここでケリを付けたいけどね」
かといって全力を出しても、そう容易く仕留められる相手でもない。状況が動くのはこちらか敵、どちらかがカードを切ったときだ。早々にこの場での決着を諦め、三日月は激しく剣戟を繰り広げつつ機会を伺う。
白と紫の機体が、激しく鎬を削り合う。
キマリス・ヴィダール、66番目のガンダムフレーム。厄祭戦の後半、ガンダムフレームの中でも後発に位置するその機体は、初期のフレームに比べ完成度が高められている。
かてて加えて本来の阿頼耶識システムを部分的に上回るTypeEを備えたことで、全ての性能を発揮できる状態にあった。
バエル。ガンダムフレームの1番機にして全ての原型(オリジン)。機体の性能こそ厄祭戦当時のものを保っているが、膂力以外は後発の機体に劣り、またメインの武器である双剣は本来のものではなくレプリカである。
しかしながらオリジナルの阿頼耶識システムを備え、それを使いこなせる乗り手を得たことでキマリスに劣らない戦いぶりを見せていた。
「なるほど、確かにその機体の性能を引き出せるに至っているか」
「お前と相対するためにな! 俺だけの力では至れなかったことなど重々承知だ!」
打ち込まれた剣を、背部から可動アームで伸びた盾を使い器用に打ち払うキマリス。お返しとばかりに、ランスに内装された200㎜砲を放つが、それは危なげなく避けられた。
「そうだ、それでいい。言葉だけで理想を『騙る』者よりも、外道に堕ちてでも力を手に入れようと渇望する強者の方が、戦う価値がある!」
「どこまでも俺を見下す! あくまで己が絶対強者だと嘯くか!」
回転しながら突き込まれるランスを、両の剣で絡め取るように弾く。そして背中の翼に内装された電磁砲を放つバエル。
強引に振り回したランスでそれを防ぐキマリス。たしかに重装甲で大重量の機体を、軽装のバエルと同じレベルでガエリオは反応させている。
「そうだとも! 最早この戦いの結果如何に関わらず世界は変わらざるを得ない! 俺はそれを成し遂げた! お前たちの背負う大儀などすでに意味はなく、ただ足掻くしかないと知れ!」
「……大儀? 足掻く?」
不意にガエリオの雰囲気が変わった。それを感じたマクギリスが訝る。
は、と吐かれる息。ガエリオの口元が、獰猛に歪んだ。
「勘違いをするなマクギリス。『俺はそんなもののために戦わない』。……GHの大儀? どうでもいい。この戦いの行く末? 知ったことか」
「なんだと?」
予想外の言葉であった。外道に堕ちてもガエリオの本質は変わらないと思っていたが、どうにも様子が違う。
キマリスが槍を振り抜き、ガエリオが吠える。
「この戦いは俺にとってただの私闘! ただの逆恨みの八つ当たりだ! そのためにラスタルを、俺自身の名を利用して俺はここにいる! 今更正義だの大儀だの『つまらないこと』を背負うものか!」
どこまでもただ個人の都合だと言い放つ。ただ一人の人間として、私怨を晴らすためだけに全てを利用し投げ捨てたのだと。
ただただマクギリスと決着が付けられればそれでいい。今の自分はエゴを体現したものだと、ガエリオはそのように決めつけている。
マクギリスは驚くと同時に……得心した。
ガエリオの行動。妙に違和感を感じてはいたが、まさか完全な私怨だけで動いているとは思わなかった。今までの彼であったらばラスタルの大儀を擁護する台詞の一つも吐いていただろう。それがなかったと言うことは、最低でも言葉に嘘はなさそうだ。
マクギリスもまた、獰猛な笑みを浮かべる。
「お前が大儀ごときなどと言うとはな。……だがそれで、背負うものを全て無くして、俺に勝てるとでも?」
「しがらみがあるから勝てるというものでもあるまい! それにお前には、『取るに足らない人間から打ち倒される』という方が効くだろうが!」
「小さいな、ガエリオ」
「元々大きくなど無かったさ!」
言葉と刃が交わされる。似て非なる、妥協のない意志のぶつかり合い。それは留まるところを知らないように見えた。
「何とか互角に持ち込んだ。だがこの状況、長くは続かんな」
艦隊間近まで後退し全体の指揮を執っている石動は、そのような判断を下した。
上手い具合に、相手のエース級にはこちらのエース級が当たっている。それ以外には数の不利があるが、スカーフェイス隊やクロウ隊が上手く立ち回っており、侵攻を良く食い止めている。だが長々と波状攻撃が続けば先に消耗するのはこちらだ。崩れるとすればそこからで、そしてラスタルはそれを見逃すまい。
であるならば。
「まずは一枚、切らせて貰う」
頃合いだと見て取った石動は、指示を飛ばす。
散発的に艦艇の反応が現れては消える。時折思い出したかのように作動するコンテナダミーの存在に、アリアンロッドの索敵担当士官たちは慣れ始めていた。
(またダミーか。一々報告するのも面倒くさい――)
だから、『それ』に感付くのが遅れる。
「……っ! 反応が、消えない! これは本物! ラスタル司令、敵の増援らしき艦艇が現れました」
ラスタルは慌ても騒ぎもしない。
「ふん、増援の接近を誤魔化すためにあのような手を使ったのか。……それで、規模は?」
「はっ、数は……一隻? せ、船籍を照合……」
単艦という事に対して訝しげに眉を寄せていた士官の目が見開かれる。
「か、艦名は……『ケストレル』! ケストレルです!」
「なんだと……?」
太陽を背に現れるたった一つの艦影。威風堂々と現れた旧式艦のブリッジで、老齢の男がにやりと笑い、宣う。
「イエス、ケストレル!」
※今回のえぬじぃ
「しまった! 弟が生きていれば双子同士のネタ合戦が出来たというのに!」
「お前は何を言っているんだ」
わりと兄弟多いよね鉄血。
最近リアルでふぁっきんふぁっきん呟いてる事が多くなったような気がする。
端から見たら完全に危ない人じゃんおのれストレス社会め捻れ骨子です。
はーいバトル回なのに描写少ないの巻~。そして話が進んでない。出来るだけ色々な人にスポットを当てていきたいと思ったらごらんの有り様だよ。
しかしなんとかガエリオ君の本音を引きずり出しました。なんと開き直りやがりましたよこの男。貴様は正義かと聞いているとか言われたら、んなモン俺が知るかと言い放つアレっぷりです。マクギリスと真の意味で相対させようとか考えていたらなぜかこのように。どうしてかって? それこそ俺が知るか。(無責任)
そしてやっぱり出ましたケストレル。ここから一体どのような暴れッぷりを見せるのか見せないのか。そしてどんどんキャラを出す捻れ骨子はどこまで苦しむのか。
自業自得っぽい次回を待て。