イントルード・デイモン   作:捻れ骨子

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 今回推奨戦闘BGM、筋肉少女帯で【タチムカウ】



51・出し抜いてやるさ

 

 

 

 

 

 ヴィーンゴールヴ。ほとんど護りらしい護りもなくなったそこでは、ほとんどのものが固唾をのんで天空の戦いがいく末を見守っている。

 いや、息を潜めていると言ってもいいだろう。施設内での行動は制限されていないが、ヴィーンゴールヴより外に出ることはかなわず、あちこちで警務局の歩哨が目を光らせていた。

 マクギリスを認められるほど柔軟ではなく、さりとて反抗するほどの気概も持たない。ネモやエレクは己の保身しか考えておらず、ガルスは現実に打ちのめされ意気消沈し、決戦に対して動きに出る様子もなかった。

 セブンスターズの重鎮からしてこれである。トップダウンに準じるしか出来ない者たちは、内心に何を抱えようが、あるいは口に出して愚痴ろうが、実際の行動に出るものなど皆無と言っていい。

 しかしながら、大多数を無視するかのように行動を続けている者たちもいる。

 

「ここまでふぬけているとは情けない話だ。……しかし我々にとっては都合がいいともいえるな」

「はっ、おかげで事がスムーズに運んでいます。上の決着がつくまでには、大方片付くかと」

 

 側近と、監視のために追従している警務局の者たちを引き連れ車椅子を進めるのはカルタ。彼女はGH内部の様々な資料をまとめ上げ、今後いかなる状況に移行しても即座に対応できるよう準備を整えていた。

 決戦の結果がどうなろうと各方面からの干渉は防げない。いや『防ぐわけにはいかない』。マクギリスのやり方を全面支持するわけではないが、組織に大鉈を入れることは必要だった。例えラスタルが勝ったとしても介入を妨げる気はない。場合によっては彼の敵に回ることも辞さない覚悟をカルタは持っている。

 それに多くの部下が追従してくれるのはありがたいことだ。統制統合艦隊の事実上の解体をカルタは隊員たちに知らしめたが、ほとんどの者たちは彼女の元を離れようとはしなかった。

 統制統合艦隊の司令官ではなく、カルタ・イシューという一人の人間に仕えてきたのだと部下たちは胸を張り、最後まで仕えさせてもらいたいと申し出てきた。家ではなく自分自身という人間を見て、評価し、その上で仕えたいと訴える彼らに対し、「物好きどもが……」とか言いながら目頭が熱くなったことを密かに隠すカルタであった。

 ともかく部下たちの協力もあって、事は滞りなく進んでいる。意外だったのが、監視役の警務局員たちがなんの妨害も口出しもしてこなかったことだ。確かにマクギリス派にとって助力となるであろう行動をとってはいたが、何もリアクションがないというのも少々不気味に感じられた。邪魔をしないというのはありがたいことではあったが。

 

「我々も少し余裕が出来た。各員を交代で休ませよう。本番は戦いが終わってからなのだから」

「一両日中には決着もつくでしょうな。こちらもそれまでには目処がつくかと」

「有るものを掘り出すだけだ。そう考えれば楽とも……ん?」

 

 道すがら、通路に面した大窓の外、小さな人か影がたたずんでいた。

 人工的に作られた草原の中、ただひたすら空を見上げている少女。それを見たカルタは、傍らに控える警務局員に声をかける。

 

「少し席を外す。良いかしら?」

「はっ! 小官らは監視対象のプライベートまで干渉するよう命じられてはおりません。ご自由に」

 

 敬礼とともに間髪入れず返された言葉。随分と気を利かす人間を回してくれたようだと、若干マクギリス派の評価を上方修正し、カルタは車椅子に備え付けてあった杖を手に取った。

 その少女はただ空を見上げている。祈りはしない。呪詛を口にするでもない。ただひたすらに、悲しげな視線を空の彼方に向けている。

 こつりと、堅い音が響いた。

 

「少しよろしくて? アルミリア・ボードウィン」

 

 かけられた声にはっと我を取り戻して振り返ってみれば、そこには上級士官服をまとった長身の女性。

 杖をつきながらもしゃきりと背を伸ばし、優しげな表情を浮かべるその人物に対し、アルミリアは慌てて淑女の礼をとった。

 

「も、申し訳ありませんカルタ・イシュー様! 非礼をお詫びいたします!」

「気遣いは無用よ。……もうセブンスターズやら何やら無意味なのだから」

 

 別段非礼でも何でもないのだしと、カルタは小さく苦笑する。そうしてから彼女はアルミリアに問う。

 

「ここで何を? 戦いの様子であれば中で見られるでしょうに」

 

 各報道関係から垂れ流される戦場の様子は、ノーカットでヴィーンゴールヴにも伝えられている。見ようと思えばどこでも見られるはずだ。

 こんなところで空を見上げていても、何が分かるわけでもあるまい。そう思っての言葉。

 アルミリアは小さくかぶりを振る。

 

「私は……戦いを見ても何も分かりません。セブンスターズの一角を担う家の娘でありながら、何一つ」

 

 それは当然のこと、そう言いかけてカルタは自分に言えたことではないと口を噤む。意地とプライド、危機感と飢餓感に突き動かされ、女だてらに軍勢を率い、敗北した自分には何も言う資格がない、と。

 

「マッキー……マクギリスが何を考え蜂起したのか。兄が何を思って姿をくらまし、戦うことを選んだのか。それを理解できる知識も経験もないのです。……何も分からないまま、戦いの現状を見るのがつらくて、悲しくて。……こんなところに逃げ出すしか有りませんでした」

 

 そうか、とカルタは理解する。この少女は『どこにも行けない』のだ。もちろん物理的にという意味ではない。アルミリアはボードウィン家……『ギャラルホルンという篭の中しか知らない』。家や組織に守られているのではなく、押し込められている。平穏で、狭い世界しか知らないから、それが崩れ去ればオロオロと途方に暮れるしかなかった。

 

(まるで……いえ、マクギリスは分かっていたのでしょうね)

 

 彼女とマクギリスとの間にあったことをカルタは知らない。だが彼の過去と心情を知れば、予測できることである。

 どうせ格好をつけて突き放したりしたのだろうあの男は。まったく、色々引き寄せるくせにアフターケアがなっていない。まあ『昔に比べれば大分ましになった』のだけれども。

 内心でマクギリスをこき下ろしつつ、しょうがないなと言いたげな風情でカルタは口を開いた。

 

「……そうね。今の貴女は何の力もない、子供だわ」

「……っ!」

「でも、『これから先がある』」

 

 俯いて唇をかんだアルミリアが、はっと顔を上げる。彼女の見たカルタは優しげな目で、しかしどこか苦いものを噛み潰したかのような表情で語りかける。

 

「これから先GHは、いえ、世界は激しく揺り動かされるわ。そしてGHは終焉に向かうのでしょう。……でも貴女はこの先の道を選んでいくことが出来る。自分が何をするべきか、何をしたいのか。貴女自身が考え、新たな未来を作っていくことが」

 

 カルタの言葉で、アルミリアは思い出す。

 

「……マクギリスは言っていました。ここに私の幸せはない、と。……私に幸せの道標を残す、とも」

「あの男らしい物言いだこと。……多分貴女に対する何らかの方策が残されているのでしょうね。今はそれに甘えておきなさい」

「それは……でも」

「良いのよ。これだけの迷惑をかけてくれたのだからあの男の財産を使い込むくらいでなければ。貴女にはそのくらいの権利はあってよ」

「良いのでしょうか、そのようなこと」

「かまわないでしょう。そして……」

 

 言いながらカルタは天空の彼方――決戦が行われているだろう方角を見上げる。

 

「いつか、あの男が袖にしたことを後悔するくらいの良い女になりなさい。きっと貴女にはそれが出来るでしょうから」

「カルタ様……」

 

 カルタにつられるように、アルミリアも空を見上げた。

 男をとどめることが出来なかった女二人が見上げる先、彼方の戦いは未だ終結する様子を見せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嵐のように襲い来るレギンレイズ・ジュリアの猛攻を、3体のMSはなんとかしのいでいた。

 

「速い! しかも攻撃が読みづれぇ!」

 

 蛇腹剣を弾き飛ばしつつ、チャドは吐き捨てるように言う。

 彼は地球支部時代からマン・ロディを使っていたが、今は獅電に乗り換えている。それは元ブルワーズの面子に使い慣れている機体を回すという意図もあったが、それ以上に獅電の方が『性に合っていた』からだ。

 防御よりも回避。操縦の癖からそちらに向きであり、機体は重いより軽い方が良い。事実機種転換のおりマン・ロディよりも適性が高いと示された。素直にそれに従ったのは確かに当たりではあったが。

 

「反応はともかく基本性能が違いすぎる! 凌ぐので手一杯だっての!」

 

 カスタムチューニングを施した機体でも、基本性能の差はどうしようもない。阿頼耶識システムを搭載している分反応速度だけは勝っているが、出力と機動性は天と地ほどの差がある。

 

「しかもこっちの格闘武器が届かない位置から攻撃してきやがる! 銃も当たらない!」

 

 チャドとバディを組んだデルマも苦戦を免れない。

 彼の乗るマン・ロディは強襲型に改装してあるが、小回りは獅電に劣る。ジュリアクラスとの高機動戦闘ともなれば、どうしても受け身にならざるを得なかった。

 その上で、ジュリアの蛇腹剣に手こずる。変幻自在の軌道をとり、そして間合いも広い。獅電やマン・ロディが持つ格闘用の武器だって当たればジュリアにダメージを入れられるだろう。しかし絶対的なリーチ差はそれを許さない。ましてや銃撃など論外。FCSも追尾するのが精一杯だ。

 

「くそ、こっちの装備が生きてりゃ邪魔することも予測射撃も出来るってのに!」

 

 格闘用の武器を持たず、マン・ロディ並に機体が重いダンテが一番苦労していた。

 電子装備を捨てればそうでもないのだが、間が悪いことに装備をパージする機能も死んでいる。機体そのものは問題なく動くが、相当のハンデであることは間違いない。

 3機は背中越しに固まって防戦一方の様相であった。まともに反撃もおぼつかないが、それでも。

 

「ここでくたばってたまるかよ。……デルマ、ダンテ。弾は?」

「半分切った。あと10分は保つ」

「こっちもまだ残ってる。当たっても大して効きゃしねえけどな」

「黙って嬲られるよりはマシさ。……それに堪え切りゃ、チャンスもある」

 

 誰一人、諦めていない。彼らの目は鋭く、虎視眈々と勝機を窺っていた。

 対するジュリア――ジュリエッタであるが。

 

「しぶとい! ただの電子戦機、ただの雑兵ではないと!」

 

 粘る3機に苛立ちを隠せない。

 相手は改装はしてあっても量産機。性能ではこちらと比べものにならない。数の不利など問題にならないはずであった。

 だが連携が上手く、致命傷どころかまともなダメージも入れられなかった。互いの死角をカバーし合い、隙を作らない。デッドウェイトとなった電子装備を背負っている獅電ですらたいした損傷を受けていなかった。

 技量も性能もこちらが上なのに、倒せるはずなのに。『確実に倒せる相手を選んだはずなのに』!

 ジュリエッタには自覚がなかった。功を焦るが故、『自分より確実に弱いと思われる相手』に狙いを定めていたと。そしてそれを仕留められないことが焦りを生み、視界を狭めていると。

 だから『それ』に気づくのが遅れた。

 レーダーに感づいたときには、すでに懐に飛び込まれている。

 

「っ!?」

 

 ぎゃりんっ! と火花が散る。

 打ち払われる蛇腹剣。巨大な剛剣を振り抜いたのは重装の騎士を思わせる機体。

 

「遅くなった。無事か?」

 

 少年たちの眼前に立つのは、最強の中の最弱。石動・カミーチェは微かにだが、しかし確かに不敵に笑んで言う。

 

「石動三佐!? 指揮を執ってたんじゃ!」

「なに、もう大体戦況は決まる。それにこのまま何もしないのでは、古巣の面子に嗤われるのでね」

 

 そうなるとあとまでいぢられると、冗談めかして問いかけてきたチャドに応える。

 

「ここは私に任せてくれ。君たちは機体の修復と補給を」

「分かった、助かる。……そいつは機動力と得物が面倒だ。気を付けてくれ」

 

 素直に後を託し撤退する3人。戦績にも面子にも拘らない。技能だけでなく精神的にも鍛え上げてくれたようだ。あの人が見いだしてくれただけはあると、石動は感服したような誇らしいような、妙な気持ちを感じていた。

 そこから気持ちを切り替え、眼前を見据える。

 

「さて、選手交代だ。今しばらく付き合ってもらおうか」

 

 振るわれる大剣は明らかに重く、その機動力は低く見える。しかしジュリエッタは石動の駆るヘルムヴィーゲ・リンカーに脅威を覚えた。

 

「マクギリス・ファリドの懐刀……ここに来て、これほどの相手っ!」

 

 だが下がれない。ここで下がるという選択をジュリエッタはとれない。それほどに追い詰められているという自覚が、彼女にはなかった。

 

「相打ちでも、貴様を墜とせばっ!」

 

 半ば自暴自棄に近い心境で、ヘルムヴィーゲに挑みかかる。振るった蛇腹剣が、バスターソードに絡みついた。

 

「……ふっ」

 

 無造作に、いや、『わざと蛇腹剣を絡ませるように』剣を振るう石動。そのまま勢いよく振り払う。

 そうなれば結果は当然のことで。

 

「なっ! 引っ張られる!?」

 

 蛇腹剣はジュリアの腕部装甲に直接取り付けられている。咄嗟に離すことが出来ない構造上、一度絡まれば離脱することが難しい。ましてや機体の膂力が同等であれば。

 

「く、このっ!」

 

 絡め取られた左腕の蛇腹剣を装甲ごとパージ。攻撃力は下がるが、この場合やむを得ないという判断だった。

 

「なるほど、思い切りは良い」

 

 石動は特に心を動かした様子もなく呟く。さすがにラスタルの子飼いだけあって技量も判断も悪くない。

 しかしそれだけだ。

 

「機動性だけでは優位とならんよ!」

 

 一度距離を離し、幻惑するような機動でヘルムヴィーゲに再度挑むジュリア。だが。

 

「私の前に!?」

 

 機動の先、そこに大剣が叩き込まれ回避を余儀なくされる。慌てて機体を翻し、ジュリエッタは驚愕の声を上げる。

 

「どうやって先に回り込んだ!? 機動性では明らかに差があるというのに!」

 

 パワー重視のセッティングにされたヘルムヴィーゲは、通常のグレイズと大して変わらない機動力しか持たない。それでジュリアの機動を上回ったなど、にわかには信じられなかった。

 石動は大したことをしているわけではない。彼がやったのはジュリアの機動を予測し、その行く先に一歩踏み込んで攻撃を『差し込む』。それだけだ。

 ジュリエッタは技量こそ高いものの、操縦に妙な癖がないし、策を練ったり裏をかこうとしたりしない。故にその行動は読みやすく、後の先を取ることは難しくない。(とは言ってもそういう行動をあっさり出来る石動も大分おかしいのだが)

 一癖も二癖も有る者たちと渡り合ってきた石動にとって、さほど苦戦しない相手。ジュリエッタはそう見られていた。

 

「この程度か。……ラスタル閣下も目が曇ったな、この程度の乗り手に虎の子を預けるとは」

 

 淡々と言葉を放つ石動。それを耳にしたジュリエッタの頭に、かっと血が上った。

 

「私のみならず、ラスタル様をも侮辱するか!」

 

 真っ向から蛇腹剣を振るう。それを難なく弾き飛ばし、飛び込んでくるジュリアに向かってヘルムヴィーゲは頭部の角を突きつけた。

 電磁衝角。プラズマをまとったそれは、危ういところですり抜けるジュリアの装甲をかする。途端に警告音が鳴り響いた。

 

「伝達系に一時的な異常!? 機体の機能を麻痺させるのかあの武器は!」

 

 本来であれば突き刺して内部機構に電子的なダメージを与える武器である。それが外れたにもかかわらず、石動は余裕を崩さない。

 

「避けたか。そのくらいは出来ると」

「どこまでも、馬鹿にして!」

 

 再びの交錯。しかし完全に冷静さを失ったジュリエッタの攻めは単調なものとなり、石動に軽くあしらわれていた。

 

「どうした。それでは私の命には届かんぞ」

「このっ!」

 

 淡々と、余裕を崩さない石動。その態度が益々勘に障る。いきり立つジュリエッタの様子に、全く与しやすい相手だと石動は鼻を鳴らす。

 

「強敵に会った途端冷静さを失う。猪と変わらんな。喚いているだけで実力差は埋まらない」

 

 そこまで言ってから、思いついたように言葉を続ける。

 

「そういえば貴官はイオク・クジャンの元にいたことがあったな。彼に学んだか?」

 

 今度こそ、頭が真っ白になるほどに怒りを覚える。はっきり言ってジュリエッタはイオクを見下していた。ラスタルに仕えていて、その才覚の十分の一も学ばない彼に、常々失望を覚えていたと言ってもいい。

 『その彼と、同格に見られた』。それは本人が思っている以上に、プライドというか存在価値そのものを揺るがすほどの屈辱と感じられたのだ。

 

「貴様ああああああぁ!!」

 

 咆吼とともに嵐のような攻撃を繰り出すジュリエッタ。それを冷静に捌きながら、石動は内心でため息をはいた。

 

(やれやれ、どうにもシンプルに過ぎるな)

 

 この程度の挑発など、ランディや他の標的艦隊面子に比べれば生ぬるいにもほどがある。それで周りが見えなくなり躍起になるとは。技量はともかく精神面での鍛錬が全くなっていなかった。

 まあこちらにとっては都合が良い。これで『釘付けに出来る』。曲がりなりにもラスタルの子飼い。冷静さを取り戻せば『残った仕掛け』に感づくかもしれぬ。邪魔をさせるわけにはいかない。それにもはや状況は自分の手を離れつつある。後は時間を稼げば良い。油断ではない余裕が石動には有った。

 ランディの元で得た経験と薫陶。それは確かに彼の血肉となっている。良い意味でも悪い意味でも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月軌道上某所。3機のMSが周囲を索敵しながらゆっくりと進んでいる。

 

「さて、指示のあったポイントはこのあたりなんだが」

 

 ごてごてとした装備を身にまとう、無骨なMS【ガンダムアスタロト・リナシメント】。それを駆るのは目つきの鋭い青年【アルジ・ミラージ】。月のアバランチコロニーにある企業タントテンポに属する傭兵であった。

 彼は雇い主であるタントテンポ頭目リアリナに命じられ、『ある施設』を探している。

 

「このあたりは小惑星を引っ張ってきた施設も多い。そう簡単に見つかるか?」

 

 青と黄色の外装をまとうMS【ガンダムウヴァル・ユハナ】を駆るのは、アルジと同じくタントテンポに雇われた傭兵【サンポ・ハクリ】。元々アルジたちの敵対勢力に従っていたが、紆余曲折の末タントテンポに雇われる形となった。

 そして同じ事情で雇われているのはもう一人。

 

「大体座標が分かってるんだから、結構すぐ見つかるんじゃ?」

 

 サンポの妹、【ユハナ・ハクリ】。彼女が駆るのはガルム・ロディを改装した【ハクリ・ロディ】。どこかの戦闘で破棄されたものを手に入れ己のものとしたらしい。

 そんな三人に下された指示は、『エクスカリバーを擁する衛星基地を特定すること』。イアンナやドルトコロニー群を通してつながりの出来たモンターク商会ごしの依頼である。元々今回の決戦に際して警戒していたこともあり、その上で位置的に月軌道衛星群に近いので、彼らに頼めば早期に特定できるはずとマクギリスは読んだのだ。

 だからといってなあと、サンポは少々やる気なさげで。

 

「んなほいほい見つかるとも……」

「あった! 位置的にアレじゃね?」

「……見つかったよ」

 

 ユハナが指し示す先をズーム。確かにそこには小惑星らしきものがあったが。

 

「ホントにあれかよ。通信基地に見えるんだが」

 

 複数の大型パラボナアンテナ。周辺に太陽光発電パネルが多数浮かんでいるそれは、確かに一見通信基地のようにも見える。

 しかしアルジは眼差しを鋭くしたまま、センサーを働かせ画像を表示する。

 

「いや……」

 

 温感センサーに捉えられた映像だと、中央のパラボナアンテナが異様に高い温度を示している。そして周囲のパネルも発電用ではあり得ないほどの熱を発していた。

 間違いなく中央のものはレーザー発信器であろう。そして周囲のパネルは偽装した放熱板だ。アルジはそう確信を得る。

 

「ビンゴ。……このデータと座標をモンタークへ送る。GHにバレる前に俺たちも引くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「了解、座標は受け取った。こっちもすぐに2機の改装を終わらせる。終わり次第すぐに行かせるさ」

 

 ヒミンビョルグとの通信を終え、オルガは改めて指示を出す。

 

「例のばかでっかいレーザー砲の座標が分かった。昭弘とシノに送ってくれ。……二人の準備は?」

「突貫工事を終えて、今最終調整に入っています。ぶっつけ本番になりますが……」

「あいつらを信じるさ。やってくれるってな。……二人の準備が終わり次第、もう一度特攻艦が仕掛ける。それを合図に二人を出すぞ。連中の切り札を叩き潰してやる」

 

 その言葉にブリッジは活気づいた。オルガの言葉は強がりではないと、確信があったから。

 それを証明する者たちは、最後の準備に追われていた。

 

「ランチャーの固定はしっかり確認しろ! 途中で落っことされる訳にゃあいかないんだからな!」

「ブースターの接続ライン、OKです。粒子の供給、電圧も正常」

「想定よりも距離が違う。耐Gシステムは念入りにな」

 

 グシオンリベイク明王丸と流星号。グシオンは以前装備したものと似たような、流星号は変形した下半身を丸々覆う、ブースターユニットを装備していた。本来であれば『アリアンロッド艦隊に突っ込み、スキップジャックの正確な座標を図る』ために用意されたものだが、エクスカリバーを叩くため急遽仕様を変更されていたのだ。

 セッティングの変更と同時に、対艦ミサイルランチャーを増設されている。一応レールガンなども備えているが、『予定通りの性能を発揮できるのであればFCSが追いつかずまず当たらない』。あくまで万が一の備えといった意味でしかなかった。

 

「基本は最初の計画と同じです。ランチャーの発射はオートですけど、対空火砲を回避するのは昭弘さんがやらなきゃなりません」

「こっちの速度に追いつけるとも思えないがな。まあやってみせるさ」

 

仕様の変更点や注意事項についてデインから説明を受ける昭弘。同じようにシノもヤマギに説明を受けていた。

 

「向こうにMSがいても絶対交戦しないで。帰りは軌道の関係上、10分はかかるから」

「おいおい、それじゃ帰ってきたら全部終わっちまうよ」

「反撃を受けないようにするにはそれしかないんだから仕方ないでしょ。それに無茶な軌道を取ったらどこ吹っ飛んでいくか分からないんだし」

 

 一発勝負、とは行かないまでもそうそう何度も連続して行える手段ではないし、危険度もそれなりにある。だがこの二人ならやり遂げられると皆信じていた。

 

「よーし全部のチェッククリアだ! 二人は乗ってくれ、カタパルトに上げるぞ!」

 

 雪之丞ががなり立て、異形と化した2機はカタパルトへと向かう。

 用意が調ったと連絡を受けたライザは頷き、指示を出した。

 

「特攻艦を再起動させろ! 30秒の時間差をつけてぶつける。向こうの目をこちらに引きつけるんだ」

 

 無人の艦が再び動き出す。今度は2隻、時間差をつけて、エクスカリバーの連射能力を測ろうというのか。ラスタルはそう見て取った。

 

「出力を50%まで落とし、可能な限り長時間照射せよ」

「120秒の連続照射が可能です。完全冷却に600秒ほどかかりますが」

「クールダウンが完全でなくともかまわん。出力30%で120秒、いや90秒以内に次を打てるように用意させろ。この戦が終わるまで保てばいい」

「はっ!」

 

 ここは無茶を押し通すところだ。それをどこまで押し通し、どこまで押さえられるか。ぎりぎりの戦いを彼も強いられている。

 その彼を、若き戦士たちは上回る。

 聖剣の閃光が放たれた。それは先に突出した艦を飲み込み、そして続いてきた艦も同様に焼き尽くした。

 

「照射時間が長い! だが次まで幾分余裕があるはずだ。オルガ団長!」

「昭弘、シノ、行け!」

 

 ホタルビのカタパルトから、グシオンと流星号が射出される。2機は艦隊からある程度の距離まで慣性で移動。十分に離れたと判断して次の行動に移る。

 

「リミッター……」

「……解除!」

 

 改良阿頼耶識を搭載した2機は、パイロットの負担なしに任意でリアクターのリミッターを解除することが可能となった。反応速度は三日月のバルバトスに劣るが、出力と粒子放出量は同等。そして新たに組み上げられたブースターユニットは、大型のエイハブスラスターをメインにしたものだ。ツインリアクターのフルパワーによって運用されるそれがどれほどの加速力を持つか、言うまでもなかろう。

 二人の意思に応え、それぞれのリアクターが獰猛に唸りを上げる。そこから発生する電力とエイハブ粒子はメインスラスターに注ぎ込まれていく。

 

「出力最大……オーバードライブ!」

「端っから全開で行くぜェ!」

 

 轟、とスラスターが吠え、2機は一気に加速を始める。

 

「ぐうっ!?」

「んぎぎ……」

 

 途端、慣性制御と耐Gスーツ重ねてなお、すさまじい重圧が二人にのしかかった。何の用意もなければ即座に骨が砕けてもおかしくないほどの加速。それをもって2機は一直線に彼方へと向かう。

 エクスカリバーが放たれても当たらないコース。通常よりも少し遠回りになるが、専用ブースターの加速はそれを補って有り余る。あっという間にモニターが目標を捉えた。

 

「見えた、あれだ」

「ランチャーの作動範囲ぎりぎりをかすめる! ドジんじゃねーぞ昭弘!」

「そっちもな!」

 

 押っ取り刀で目標の基地から対空砲火が放たれる。しかし常識外の速度はそれをかすらせもしない。そしてその速度からすると0.01度も角度が狂えば基地にぶち当たるぎりぎりの位置を2機はすり抜けようとした。

 レーザー測定式であるミサイルランチャーの自動発射機構が作動。ロックが外され対艦ミサイルが矢のごとく放たれる。

 それは狙い違わず、エクスカリバーの本体周辺に炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※今回のえぬじい

 

「……やっぱりこの眉が悪かったのかしら。だったら隈取りとか?」

「そういうとこだぞ」

 

 世間知らずでもそれくらいのツッコミは入れられるアルミリアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 また風邪だよ。鼻水に血が混ざるとかどんだけ。直ったけどさ。
 コロナもインフルも流行ってます皆様お気をつけて捻れ骨子です。

 まだまだ話伸びるよー色々ぶち込んでるよーの巻。カルタ様とアルミリアの会話はやってみたかった。うちの話の中でなら割と仲良くなれそうな気がします。そしてジュリ子。タチムカウのはおめーだよ! さて彼女は原作よりもいい性格になった石動君相手に戦い抜けるのか。(無理くさい)
 で、今回ちょい役の月鋼組。実は話の影響で玉突き事象が生じてます。(ハクリ・ロディのベースがガルム・ロディになってたり、キムさんとこのスラムが無事だったり)外伝?書けるわけねえだろつーか原作進めてくださいお願いします。

 そんなこんなで今回はこの辺で。果たして反逆軍の作戦は成功したのか否か、次回を乞うご期待。
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