「旦那、やっぱ予想通り連中ブルワーズを退けたようですぜ」
通話を追えた男――トドが振り返りながら言う。彼の視線の先には、フクロウを模した仮面を付けたスーツ姿の男。
男は笑みの気配を漂わせながら応えた。
「当然だろうな。彼が共にある以上、真っ向からの戦いで鉄華団に適う者などいない」
断言するその言葉には、状況を楽しんでいる心持ちがにじみ出ている。
「GHをやり過ごし、武闘派と謳われる海賊を退けた。これで彼らにちょっかいをかけようとする存在は暫く現れることはないだろう。最低でも、ドルトにたどり着くまではね」
「しかし良いんですかい? あの嬢ちゃんの身柄を押さえたかったんじゃ」
トドの問いに、男はくっと口元を歪めた。
「建前上は、さ。実際の所『彼らには地球にたどり着いて欲しい』。その方が色々と都合が良くなる」
「さいで」
トドは肩をすくめてそれ以上の追求を止めた。自分を雇ったこの男、どうにも何を考えているのかいまいち読めない。GHでも頂点に立つ、セブンスターズが御曹司のはずだが、相方の坊やに比べてなんというか『捌けている』。自分のような裏社会に浸っている胡乱げな人物を『正式に』雇用した時点で変わっているとは思うのだが……それ以前に、どうにも『こちら側』に近い気配があるように感じていた。
へつらいながらも油断なく様子を伺うトドの視線を感じながらも、なんと言うことのないように振る舞う男は一人呟く。
「さて、ドルトあたりで接触できればいいが……彼のことだ、予想もつかない方向に状況を導いてくれるだろうな」
それまでは高みの見物といくかと、男は虎視眈々と機会を伺う。
戦闘終了後、捕縛されたブルックは、オルガら主要メンバーの前に引きずり出されていた。
「艦一隻にヒューマンデブリ全員、それとMS全機に武器弾薬洗いざらいってところか? そんなもんでどうよ兄弟」
名瀬がそう提案する。圏外圏ではこのように武力衝突が起こったとき、損害賠償として相手の資産を要求し巻き上げることは往々にしてある。それも交渉次第であるが、今回はかなり法外と言っても良い。当然ながらブルックは難色を示した。
「そんな! 無茶苦茶言いやがって!?」
「あ゛ァ!? なんだったらてめえを肉屋に売り払ったっていいんだぜ?」
抵抗するブルックの胸元を掴み上げてオルガが凄む。
その背後では。
「こいつだと人食(カニバル)用じゃあ良い値つかねえな。無駄に脂身多いし。スナッフムービー用の資材としてならまあそこそこ……」
「「いやにリアルで生々しい話やめて!?」」
とてつもなくヤバげな事を呟いていたランディ。本気で肉扱いする彼に対して名瀬とオルガからツッコミ入った。まあ当然である。
それを受けて、ランディはぽん、と手を叩いた。
「じゃあ間(あいだ)取って、資産全没収した後連絡艇(ランチ)に乗せて放逐ってのはどうよ」
「「マジもんの悪魔か!?」」
当然ながら非常時には脱出に使われるとはいえ、連絡艇ごときではデブリ帯からの離脱など、ましてや生きてどこかにたどり着くなど不可能に近い。遠回しどころかダイレクトに死ねと言っているようなものだ。
名瀬と共にツッコミを入れた後、オルガは沈痛な表情になってブルックに向き直り告げた。
「優しく言ってる内に頷いておいた方がいいぞ? あの人が本気になったら多分……いや絶対俺らでも止められねえ」
その言葉にブルックはぶんぶんと首を縦に振るしかない。
こうして取り敢えず賠償問題は片づいた。後は……。
ブルワーズでこき使われていたヒューマンデブリは全員、鉄華団預かりとなった。格納庫の一角に集められた数十人ほどの彼らは、座り込んだままどのような目に遭うかと、戦々恐々としている。
そんな彼らに対し、オルガはしゃがんで目線を合わせると穏やかに語りかけた。
「火星はまあ、そんな良いところでもねえが、ここよりはマシだぜ」
「え?」
オルガの手前に座っていた頬に傷のある少年が目を丸くする。
「最近懐具合も良くなってきたから飯にはスープが付くし、毎回じゃねえが野菜も食べられる。給料だって……まあその、多くはないが出してやれる、と思う」
「な、何を言って……」
「団長、じゃあ」
「ああ、名瀬の兄貴には話を付けた。こいつらは俺らが預かる」
オルガの言葉に、少年達はどういうことだと戸惑った。先の少年が、おずおずと言葉を発する。
「どうして……俺たちはさっきまであんたらとやりあってたのに……」
敵艦制圧のおり、抵抗した彼らと突入した団員達とで銃撃戦が行われ、双方にそれなりの死傷者が出ていた。当然恨みやわだかまりもあるはずだ。
それでもオルガは穏やかな態度のまま、少年に言う。
「お互い仕事だったんだ、おまけに死にものぐるい。だったら仕方がねえ。……それともお前ら、やりたくてやったのか?」
「違う! けど……」
少年は悲痛なまでの声で訴えていた。
「……今までそんなこと考えたこともなかった。だって俺たちは……」
その様子に、チャドやダンテは眉を寄せる。彼らも同じ立場だったのだ、気持ちは痛いほどに理解できた。しかし。
「ヒューマンデブリ。宇宙で生まれ散ることを恐れない、誇り高き選ばれた奴らだ」
オルガはそう断言してにっと笑った。
「ようこそ誇り高き男達。鉄華団はお前らを歓迎する」
その言葉に、少年達の多くは泣き出した。そのようなことを言われるとは思っていなかったのだろう。自分でも分からない感情で胸が詰まり、涙がこぼれたのだ。
だが、全員が全員そうだったわけではない。
「ふざけんな……ふざけんなよ! 情けをかけたつもりか!」
立ち上がって吠えたのは、前髪一房にメッシュの入った少年――ビトー。彼は仲間を殺された恨みを忘れることが出来なかった。そして弄ばれた憤りも。
馬鹿なことをしていると自分でも分かっている。いつも通り頭を下げて媚びへつっらったふりをしてやり過ごせばいいのにと。
それでも、それでもだ。自分でも制御できないほどの感情が、彼をいきり立たせる。
「そんな簡単に割り切れるもんかよ! お前らに情けをかけられるくらいなら死んだ方がマシ……」
「ほ~う?」
ビトーの咆吼は最後まで続かなかった。いきなり背後からわしりと頭を掴まれたからである。
そのまま強制的にぐりんと後ろを向かされると、悪魔の笑顔がお待ちかねであった。
「おぢさんが折角苦労して手加減して生き残らせてやったのに、それを台無しにしてくれちゃうつもりかなァボクゥ?」
「あだ、あだ、あだだ!?」
ぎりぎりと、頭を掴んだ手に力が込められていき、ビトーは悶絶する。
「ちゃあんと生きて鉄華団で勤労してくれるって約束してくんないと、おぢさんとっても悲しいなァ」
「わ、分かりましたすんませんナマ言いましたあああああ!!」
少年達は感涙にむせび泣くのをやめ、唖然と後頭部に汗を流している。色々と台無しだなあと思いながら、オルガは再び口を開いた。
「まあアレだ、色々と思うところはあるだろうがこれだけは守ってくれ」
そこで彼は沈痛かつ真剣な表情となって、心の底から大真面目に告げる。
「この人には絶対逆らうな」
少年達は全力で頷くしかなかった。
まあ確かに、鉄華団の方は皆受け入れることに意義はなかったが、わだかまりがすぐに解けるものでもない。特に突入班を指揮していたシノなどは珍しく落ち込んでいるようであった。
さりとてすぐさま解決する手段などもない。時間が緩和してくれるのを待つしかないかとオルガなどは考えていたのだが。
「お葬式をしましょう」
彼らの様子を見て、メリビットがそう言う提案をしてきた。
「はあ? なんすかそれ?」
オルガは意味が分からないといった態度だが、メリビットは諭すように言う。
「お葬式っていうのはね、死んだ人間が安らかに眠れるように、新しく生まれ変われますようにって意味もあるけれど、生きている人間のためでもあるのよ」
つまり鉄華団とヒューマンデブリの少年達、双方の死者を合同で弔いわだかまりや壁を少しでもなくそうという事だった。
そんなことでとオルガは気が進まない様子であったが、当事者であるシノや多くの団員達が賛成し、葬式は行われる運びとなった。
イサリビの甲板上、そこに鉄華団一同と名瀬以下タービンズの主要メンバー、そしてヒューマンデブリの少年達が集められる。
遺体と遺品が詰められたカプセル。それを前にオルガは言葉を発した。
「よし、これでいいな。じゃあ皆祈ってくれ。死んだ奴らがいくべき所に行けるように、そして次はまともなところに生まれ変われるように」
拙いまでも黙祷を捧げる一同。そうしてからカプセルは宇宙に流された。
「弔砲用意、撃て」
手向けの砲が放たれる。そしてそれは宇宙に花を咲かせた。
「なんだあれ!? すげー!」
「綺麗……」
ヤマギが色々と細工して作った花火。皆それに魅入られていた。
「生まれ変わり、か……俺たちも死んだら、生まれ変われるのかな」
オルガに言葉をかけられていた少年が、ぽつりと呟く。その言葉に応えるものはない……と思われたが。
「んなこと考えんのはまだ早えぞ」
突然放たれた台詞に、少年達は傍らを見上げる。そこに立つのはランディ。
彼は花火が消えゆく宇宙を見据えたまま、言葉を続けた。
「お前らは生きてる。折角拾った命だ、死ぬまでは大切にかつ全力で使ってみろや。死んだ後の事ァ死んでから考えりゃいいだろ」
そっけなく、だが何かしらの思いが込められた言葉であった。
自分たちを散々弄び脅しをかけた、傍若無人の権化としか見えない男から放たれた言葉とは思えず、目を丸くする少年達。近くで聞いていた団員達も同様であった。
キャラじゃねえだろ。多くの人間がそう思ったが流石にツッコミ入れられる度胸のある人間はいない。それ以前に――
なぜか彼の言葉が胸に響いていた。
「え!? うえ!? き、き、キス!? な、なにを、いきなり!?」
「可愛かったから。……嫌だった?」
「い、嫌とかそう言う問題ではなくその……」
動力区画の片隅で、三日月とクーデリアが――主にクーデリアが一方的にだが――騒いでいる。
クダルに言われた人殺しを楽しんでいるという言葉……よりもランディと同列に扱われたことが妙に納得できなくてもやもやしていた三日月を、クーデリアが抱きしめて慰めようとしたのだ。
食堂で年少組の少年を慰めていたフミタンに影響されてのことであったが、それ対し三日月はいきなりキスをぶちかますという行動に出た。彼もまたハンマーヘッドでいちゃついていた名瀬とアミダに影響されての事だが、どうにも直情的というか素直すぎる行動である。前から思っていたがこの少年、本質はかなり天然なんじゃなかろうか。
そんな彼らの様子を、フミタンは出入り口の影で伺っていた。
勿論クーデリアの監視という意味がある。彼女の『本来の仕事』から言ってそれは必須だ。冷静に、冷徹に、事を運ばねばならない。
運ばねばならないはずなのに。
(情に流される……お笑いぐさですね)
分かっている、自分が揺らいでいるのが。これまでの生活でクーデリアの性質、その意志に惹かれていると。そのことが自分の胸中に疼きのような痛みを与えているのだと。
忘れようとした。嫌おうとした。現実を見せて心をへし折ろうとした。だがクーデリアという少女は幾度壁にぶつかっても、へこたれたり落ち込んだりはするが歩みは止めない。そして何か一つ乗り越えるたびに確かに成長している。それを自分のことのように喜んでいるのに気付いたとき、フミタンは内心愕然とした。
だが、だからといって全てを告白する勇気もない。こんな薄汚い自分でも、クーデリアはきっと許すのだろう。であるならば、自分に対する『報い』はどこから来るのか。それが恐ろしい。
自分一人が命を失う、で済めばいいが、周りの人間……クーデリアが巻き込まれるのは身を切られる思いだ。それは避けなければ……と考えて気付いた。
このまま進めば、それどころではなく直にクーデリアの命が危険であると。
どうしたらいい、どうすればいい。フミタンは一人思い悩む。
こんな時に、現れる存在は一つだ。
「どしたァこんな所で、道ばたのありんこでも数えてたのかい?」
悪魔だ。悪魔がやってきた。かけられた声にはっと振り返れば、「よっ」と片手を上げるランディの姿。
「お嬢様がこちらにおられるようでしたので。今取り込んでいるようですが」
冷静なメイドの仮面を被り、何事もなかったかのように応対するフミタン。彼女の隣で動力区画を覗き込んだランディは「あ、そなんだ」と言ってから。
「ところでよ、あんた『これからどうなるか知ってる?』」
「っ!?」
不意打ちの言葉に、フミタンは身を強張らせる。薄暗がりの中ゆっくりと彼女に向き直ったランディの表情は陰り、よく分からない。ただその目は射抜くような光を放っていた。
「……何をおっしゃっているのか、分かりかねますが」
口調はいつも通り。だが彼女は自分が後ずさっていると気付いていない。
「しらばっくれるならそれでもいいさ」
背中が通路の壁に当たってから、追い込まれていると悟る。迫るランディは、軽くフミタンの肩口付近の壁に右手を当てた。そしてこう言葉を放つ。
「今のあんたの主は、忠誠を誓うに価するのかい?」
「な、何を言って……」
やっとフミタンにもランディの表情が分かった。
嗤っている。口を弓の形に歪め、彼はおぞましいとすら感じる笑みを浮かべていた。
彼はそのままフミタンの耳元に口をよせ、蠱惑的とも思える声色で言う。
「まさしく『悪魔の囁き』ってヤツさ。己の心のままに従えってな」
言ってからすっと身を離す。そして何事もなかったかのように彼は動力区画へと姿を消した。
残されたフミタンは壁に背中を預けたままだ。彼女は右の拳を握りしめ、そっと胸元に当てる。
薄暗がりで彼女の表情は分からない。ただその拳が微かに震えていた。
「お、三日月ここにいた……あれ、邪魔だったか?」
三日月と共に動力区画の窓からなんとなく外を眺めていると、気楽な様子のランディが姿を現した。
「あ、いやその別にそう言うわけではないのですけれど……」
「ん? なんか用?」
クーデリアはわたわたと言い訳しようとするが、三日月の方は全くいつも通りだ。なんかどっかから「やっぱすげえよミカは」という声が聞こえたような気がするが、空耳だろう、多分。
それはともかくランディは、「今タブレット持ってっか?」と三日月に尋ね、三日月は「持ってるけど?」と懐からタブレットを取り出す。
「例のカタナソード……太刀ってヤツの使い方、色々調べてみた。ひとまず目を通して参考にしてみたらどうよ」
そう言いつつ自分のタブレットから三日月のものにデータを移してやるランディ。それを確かめてみると、ほとんどが動画データのようだ。
「なにこれ、えっと……」
覗いてみれば、居合い、青竹斬り、兜割りなどなど日本刀を使った多種多様の演舞や型の動画だ。どうやらいつの間にか集めていたようである。しかも文字の読めない三日月に合わせてか、動画と画像のみで構成された資料であった。
「折角の『贈り物』だ、使ってやった方が親分さんの印象も良いだろうさ」
「そんなもんかな? ……まあそれはいいんだけど」
「どうしました三日月?」
興味を惹かれて三日月の肩口からタブレットを覗き込んでいたクーデリアが問う。問われた三日月は、眉を寄せた表情で応えた。
「刃物の練習って、どうすればいいんだろ?」
「そういうことなら任せて!」
むふんと張り切って胸を叩くのは、鉄華団の厨房を預かる少女【アトラ・ミクスタ】である。ひょんな事から三日月に助けられる形で職を得て、それ以降彼を慕っている彼女は鉄華団創設の折自ら雑用、飯炊きとして売り込んできた。そのまま雇用されて現在に至っているわけだ。
「まあここで刃物を扱えるつったら厨房しかねえもんなあ」
言い訳するようにランディは頭を掻く。三日月の素朴な疑問にどうしたらいいのもかと頭を悩ませた末がこの様だった。彼は万能器用型の人間であるが、予想も付かない問題が提示されると微妙な方向に舵を取る習性があるようだ。
ともかく刃物であるなら包丁は基本だろう、多分。というわけで厨房を訪れ、アトラに使い方を教わってみればと言うことになったのである。
「それにしても似合いますね、三日月」
「そう?」
あんな事(三日月ズギュウウウン事件)があった後なのでアトラと顔を合わすのは少し気まずかったクーデリアであったが、今の三日月の格好を見てそれも吹き飛んだ。
なんのことはない。いつものジャケットを脱いでタンクトップの上にエプロン付けた姿である。たしかにこう、異様に似合っていた。
(か、可愛い……)
端から見ればどうなのかは分からないが、なんかクーデリアの琴線に触れたようであった。ときめいた視線が向けられる中で、三日月はアトラと並び包丁で材料に挑む。
「上から押しつけるんじゃなくて、こうやってそっと刃の根元を押し当ててから引くように切るの。力みすぎちゃだめだよ?」
「ん」
アトラはアトラで(うわ~、なんか新婚さんみたい)などと内心ときめきまくりながら三日月に指示する。それを受けて彼は素直に包丁を扱った。
「押し当てて、引く」
さすればするりと人参が切れる。ふむ、と三日月は頷いた。
「押し当てて、引く」
切れる。思い出すのは動画。流れるように刀を扱い、見事青竹を斬り飛ばした女性。
「押し当てて、引く」
切れる。斬れなかったグシオンの腕。その時に阿頼耶識から感じた感触。
「押し当てて、引く」
再調整した機体の操作感、操縦桿の指先で感じる反応。阿頼耶識の一体感。
「押し当てて、引く」
それらを総じて練り上げて、ただ無心に斬れば――
「押し当てて、引く」
すぱん。
「……あれ?」
きょとんと目を丸くする三日月。彼の刃先では、人参どころか『まな板まで真っ二つになっていた』。
「あー! なにしてんの三日月!」
「えっと、ごめん?」
「いくらなんでも力みすぎ! もー、こうなったらちゃんと使えるようになるまでとことん教え込むからね!」
ぷりぷり怒るアトラに気まずそうに頭を下げる三日月。その様子を見ていたランディは後頭部に一筋汗を流した。
「え~っと……上手くいってるようだから、俺はこのへんで」
もしかしたら、とんでもないことしちゃったかも知れない。なんかこー斜め上の方向に三日月の成長を促したような気がするが、そんな事実から目を背けてランディはそっと厨房から退散した。
さて、ひとまず色々と片づいた後、整備班は総出でてんてこ舞いとなっている。
何しろ中隊規模のMSが丸ごと手に入ったのだ。そもイサリビクラスの強襲装甲艦は最大で中隊級、12機前後のMSを運用するように作られている。そのままならキャパシティがオーバーしてしまうのだ。
そこで破損が大きい何機かは解体して売り払いあるいはパーツにし、残った機体を運用前提で整備することにしたのだ。何しろ阿頼耶識搭載機だ、現在予備パイロット候補として訓練を受けている連中にも使えるだろうと、オルガたちは考えたのである。
ヒューマンデブリの少年達が使っていた機体とあって、皆色々と思うところはあったのだが、これからのことを考えれば戦力は少しでも欲しいし、何よりも機体にも乗り手にも罪はない。それにサバイバビリティの高いマン・ロディは未熟な乗り手でも生き残る可能性は高いものだ。上手く使えば有効な戦力になるだろう。
そんなこんなでマン・ロディの戦力化は決定され、ついでにとばかりにグレイズ改の本格的な改装などにも着手され始めたわけだが。
「頼む、ランディさん! 俺に、俺にこいつを使わせてくれっ!」
見事な土下座であった。格納庫の奥に鎮座するグシオンの前でオルガと話していたランディは、いきなりのことに目を丸くする。
突如土下座ってきたのは昭弘。共に付いてきたらしい昌弘も、何がなんだかと目を丸くしている。
どういう事なのかと詳しく聞いてみれば、強奪……じゃなかった譲渡されたグシオンを、自分に使わせて欲しいとの訴えであった。
「俺は馬鹿だ。馬鹿だから力に任せる事しか出来ねえ。そんな俺が弟やその仲間、ひいては鉄華団を守るために出来る事といやあ、それこそ力に任せて敵を殴りつけるだけだ。そのために、少しでも強い力がいる! 勝手なことを言ってるとは思うがそれでも頼む! こいつを俺に譲っちゃくれねえか!」
「兄貴……」
「あ、うん……え~と」
土下座(げざ)る兄に感極まる弟。そう必死こいているところを悪いのだがと、ランディは僅かに居心地の悪さを覚えつつ応えた。
「いいんじゃねえか? なあ、大将?」
「うんまあ、それなら話は早いか」
実の所、グシオンは三日月がとどめを刺したから鉄華団のものだと主張するランディと、いやいい加減ボーナスもなしってのは気が悪いから貰ってくれというオルガとでちょっと意見が対立していた形であったのだが、押しつける相手がいるのであれば双方文句はない。
決してキモいオカマが乗っていたから押しつけあっていたわけではない。本当に。
「ならこいつも阿頼耶識仕様にする感じか。同じガンダムフレームならバルバトスのデータが使えるだろうよ」
「ありがてえ、ありがてえ! 一生恩に着るぜ!」
「おうさ、そのうち纏めて返して…………ってああっ!?」
貸し一つげとー、とか思っていたランディは、『とあること』に気付いて声を張り上げる。
「テイワズから預かった荷物! 確かめねえとヤバいんじゃねえか!?」
「いやいくら固定してあるからってもよ、戦闘(ドンパチ)やった後だぜ? どんな影響出てるか分かりゃしねえって」
「妙な所で心配性ですね。衝撃や振動に注意をと注文があったわけではないんですから。コンテナも対衝性のものですし」
「ま、なにもなけりゃそれでいいさ。ヤマギ、開けてくれ」
先の戦闘により、テイワズから預かった荷物に対する影響がないか心配したランディ。それを受けてオルガは一応確認することにした。事務手続きを請け負ったメリビットに確認してもらうため同行して貰い、揃って開け放たれたコンテナを覗き込む。
途端に凍る面々。ややあってランディが口を開く。
「…………大将、こいつァヤバいんじゃねえ?」
コンテナの中に鎮座していたのは、戦闘用のMWであった。
※今回のえぬじい
「……私が作ったのより、美味しいような気がする……」
「クーデリアさん! 三日月材料切っただけだから! 調理したの私だから! クーデリアさん!?」
予想外の攻撃がクーデリアにダメージ。
すたみな太郎にマッキー見参!?
とある物語後のIFを記したSSにほっこりした捻れ骨子です。
はいお約束通り事後処理。そしてやりたかったことをしたかったの回でした。特にフミタン壁ドンと三日月エプロン。これがやりたかっただけの話だったりします。え? フラグ? ……なんとかなるんじゃないすか多分。(無責任)
というわけで次はドルトに続くわけなんですけれども、なんかいきなりバレちゃいましたからね~。どうなるんですかね~。予想もしなかった展開が、あなたを待つ。かも知れなかったりしちゃったりして。
あとアレですな、ランディさんが乗り換えるとしたらって話が感想の所でいくつかございましたが。
ヤツと一番相性がいいのは、レギンレイズ・ジュリアとだけ言っておきます。
さあ存分に予測するが良い俺も全然決めていないけど! ということで次回共々お楽しみに。