Fate/EXTRA 虚ろなる少年少女   作:裸エプロン閣下

12 / 18
スランプに入りました。最新話とかまだ一割程度しか進んでないです。自分で自分を殴りたいです。ガチで。
前話でそこまで遅くならないと言っておきながらこの始末。もう私は更新速度に関することは言わないほうがいいですね。見事にフラグを立てては回収してしまうので。

今回の予告は『大体こんな感じになるよ~』的なものなので、切り方とかいろいろアレですが気にしない方向で。



閑話――極楽湯治+予告CCCVer.2

 ――自分たちの生活は質素である。別に謙遜ではなく、正当な評価である。与えられたマイルーム――教室にあったのは一クラスの生徒二十四人分の椅子と机とロッカー。そして黒板と掲示板にゴミ箱と掃除道具、あとはぶら下がっている旧型のブラウン管テレビだ。これらのあらかじめ配備されていたものを除けば、自分たちのマイルームにあるのは布団だけである。それも一組。

 

 食事は購買があるし、そもそも情報収集やアリーナの探索が日課となっており、マイルームは精々寝たり起きたりするだけなので、極端な話布団があれば問題はない。とはいえ、完全に機能性重視で娯楽もなにもないこの部屋は、現代人が見ればきっと驚くこと間違いなしだろう。まあ余人にとってはそうでも、娯楽をほとんど知らなない自分や基本寝るばかりの式にとってはこれといった不満はない。

 

 とまあ、そんな質素倹約を地で行く自分たちだが、そんな者の部屋にも――正確には違うが――豪華な物がたった一つだけある。それは一般家庭になら必ずあるものだが、おおよそ学校という場にはあまりない物だ。

 

「先に入らせてもらっていいかしら、お風呂?」

 

 バスタオルを片手にした式が、いつも通りの口調で自分にそう声をかける。特に反対することもなく、首肯と笑みで示すと式は短く謝辞を述べて碌に使わない黒板隣りの扉に繋げた浴室へと向かっていく。

 ――そう、風呂である。購買の改造データだと安いシャワールームでも最低3万PPTもする、五日目現在、日給約3000PPT程度の自分たちにとっては手も足もでないほど高価な品である。

 

 さて、何でそんな物が自分たちのマイルームに在るかというと、話は少しだけ時を遡ることになる。アレは――たしか、いまから三日前のことだ。

 事の発端は、購買で呟いた自分のその何気ない一言だった。

 

 

 ※※※

 

 

 ――そういえば、凛っていい香りするよね。

 

 特に意識していなかった自分のその些細な一言に、凛が恥じらうように赤くした顔を背け、式がこちらを睨み始めるなど、途端に周りの態度が変化した。そして何故か周りの者がおぉ……と、感嘆の息を洩らす。その聴衆の可笑しな反応に、自分は思わず小首を傾げてしまう。

 

「ちょ、あんた、行き成り何言って……ッ!」

 ――それって整髪料だよね。ムーンセルってこういうところにばかり凝るけど、何か理由でもあるの?

「…………ああ、そういうこと」

 

 凛のどこか呆れたような声と共に、周りのギャラリーの熱も急速的に冷めていき、先ほどとは違う失望の息を洩らしていく。解せぬ。

 

「でも、言われて見ると確かに可笑しい話ね。本来ならこんな些細なことにリソースなんか使う必要もないし、予選だって何で学生生活にしたのかしら?」

 ――それは自分たちの年齢を考えてのことじゃないのか?

「確かに私たちの年齢は学生の範囲内だけど、それでも該当するのは全体の3割程度。理由にしては明らかに弱すぎるわ」

 

 不思議そうに手を顎にあてる式にに、自分がそう答えると凛が緩やかに首を横に振って否定してみせた。確かに、皆が学生らしく学生服を着ているが、それだって大部分の人間がムーンセルからの指定だし、そもそもアバターを改造できない者は外見なんてほぼ一緒に近いものだ。

 さすがの凛だって、自分の隣りに式が居なければ分からなかっただろうし。

 

「そうね。特にあなた全然人間らしくないからNPCにすら思えちゃうし」

 

 ……正直、自分は未だにNPCとマスターの区別が制服以外では中々つかないのだが……。実際、普通に接する分には同じ人にしか思えない。

 

「確かにすごいけど、それはムーンセルの情報と演算能力あってのものだけどね。それで、ムーンセルが何でこんな些細なところにもリソースを使うか、だっけ。それは多分、私たちに飽きさせないためじゃないかしら」

 ――飽きさせないため?

「飽きるというのは、この空間に?」

「正確にはここでの暮らし、じゃないかしら。ムーンセルの目的が観察だとすると、広いけどここ閉鎖空間だし、少しでも現実味を持たせて生の反応を観察したいんじゃないかしら」

 

 それならば地上の観察だけでも十分だと思うが、それ以外に思いつかず、無難な答えを当て嵌めて終わらせる。結局、ムーンセル自体人知の及ばぬ代物なのだから、考えるだけ無駄という結論に達したからだ。それに、いま自分たちがいる場所は購買で、先ほどから色々な匂いが自分たちの食欲を増長させてくるのだ。それは食事が数少ない娯楽となっている自分には、とても耐えがたいもので、これ以上先延ばしにできそうになかったのだ。

 

 ――と、いうわけで今日は少し豪華に鮎の塩焼き定食(230PPT)にしよう。

「じゃあ私は……ざるそば(190PPT)で」

 

 券売機に端末を当てて食券を買い所定の場所へ差し出し、すぐさま現れた鮎の塩焼き定食とざるそばを手に取り、空いている席を探し始める。既に多くの人が居たため、かなり後方の席になってしまったが、大して気にすることもなく座り、やや遅れて凛が月海原のロゴマークが入ったビニール袋を片手に自分の正面に座る。

 

「どこもかしこも混んでるわね。ま、時間帯を考えればしょうがないか」

 

 そういいながら凛が袋から取り出したのは、焼そばパンだ。根強い人気を誇る三大総菜パンの一角で、価格は150PPTと学生に求めやすい価格をしている。これは月海原の購買では同じ三大総菜パンであるカレーパンに次いで安い逸品である。ちなみに、残りの一つはコロッケパンだ。

 しかし総菜パンはその微妙なボリュームから主食になることはなく、精々が間食としての扱いなのだが……。……その質素な暮らしには自分と言えど、同情を禁じ得ない。

 

「ちょっと、何よその目は。いっとくけどお金が無いわけじゃないからね。大体、マスターにとっての食事は習慣でしかないから、別にこれでも十分に足りるのよ」

 

 いつの間にやら憐れみの視線を向けていた自分に、凛が顔を顰めながら反論し、袋の中身をひっくり返す。すると中から小粒な色取り取りの宝石と、タオルや歯ブラシといった生活必需品がテーブルの上に散らばった。

 

 その宝石の数と、それが持つ鮮やかな色合いに、つい感嘆の息を洩らす。それにふふんと凛が満足そうに鼻を鳴らす。宝石なんか自分には価値は分からないが、少なくともたかが1000、2000程度のPPTで手にはいる物ではないと理解できた。

 

 宝石の価値を認識すると、今の凛が勝ち誇っているであろうことが手に取るように分かる。同じマスターなのに、ここまでの格差があるとは。これが格差社会というやつか。今ならフランスで革命が起きた理由がよく理解できる。

 

 と、そこであることに気付いた――これだけのお金、どうやって手に入れたのだろうか。最初に入っていた資金は1000PPTで、自分たちが昨日倒したエネミーから得たのはその半分程度の561PPTだ。途中で切り上げたため、全エネミーを倒せば、もう少しは手に入るだろうが、それで買えるのは今散らばっている宝石の一つも買えないだろう。いったいどうやってこれほどの額を稼いだのか。是非とも知りたいものだ。

 

「そんなの簡単よ。アリーナをハッキングしてアイテムフォルダと貨幣を作り出しただけだし」

 

 違法じゃないか。それと『別に普通でしょ』みたいな顔して容易く言ってのけるが、そんなことは一流ハッカーでないと出来ないことだ。その証拠に、今しがた周囲のマスター達が悔しそうに歯を軋ませたような不協和音が響かせてた。

 自分とて、式や凛の前でなければ悔しさに涙を滲ませながらハンカチを噛んでいたかもしれない。こちらは日々の食費にも困っているのに、向こうはちょっと操作するだけで手に入るとか、チートしてるよこいつ……!

 

「ところで、これって一個当たりいくらなの?」

 

 そんな自分たちを尻目に、先ほどから鮮やかな翠の宝石を光に透かしたり指先で弄ったりしていた式が疑問の声を上げる。それは自分も薄々気になってはいたが、これ以上自分と彼女の経済事情の隔たりに関することはお腹一杯なので、出来れば聞きたくないことだ。

 

 どうせ、4、5万は軽くするのだろう――、

 

「一個当たりは2万ちょっとよ。そこまで高くは無かったわ」

 

 ――て、あれぇ?

「2万、ねえ……」

 

 凛から言い放たれ言葉に、自分は予想よりも安かったことに、式はその安さに胡散臭げに言葉を漏らして再び宝石を見つめ始める。自分も不審に思い、式に倣って輝くような蒼色の宝石を手に取り、じっと凝視する。

 

 確かにこれは宝石だろう。それは手にかかる重みと澄んだ耀きが証明してくれている。ただ、何故だろう。その澄んだ綺麗な色の中に、僅かに雑味のような色があるように感じる。それは注視してもなお、微細にしか感じ取れない程度で、自分が生み出した幻影とすら思えてしまえるほどだ。

 

 なんだろうと思い、しばしそのまま見つめ続けていると、唐突に式が嘆息しながら腕を降ろし翠色の宝石をやや乱雑と言ってもいい扱いでテーブルに放る。

 

「とりあえず、これ大半が悪質な品だから返してくることを薦めるわ」

「は、はぁ!?」

 

 そして自分の懸念を一足早く解いた式が、凛が買ってきた宝石の大部分を右側、こちら側に寄せてくる。どういうことかは分からないが、自分も一抹の不安を胸に抱きながらも手に持つ宝石を目の前の山に積む。式が何も反応しなかったことから、間違ってはいないのだろう。

 

「それってどういうことよ! ちゃんと説明してよね!」

 

 式に言われた言葉に理解が及ばない凛の心情を代弁するかのように、叩かれたテーブルが悲鳴を上げる。

 

「テーブルを叩かないで。説明はするわ」

 

 その衝撃に跳ねる料理(特にざるそばのつゆ)に気を遣いながら、式が粛々と言葉を紡いでいく。

 

「まずこれ。かなり精巧に偽装されてるけど、そこまで質は良くないわ」

「嘘でしょそれ! 完璧詐欺じゃないの! ていうかNPCの目的はマスターのサポートでしょ!? なんでそんな真似してくるのよ!」

「アリーナを弄ったから、意趣返しでもされたんじゃないの?」

「うぐっ……そ、それは……」

 

 やはり悪いことだとは自覚していたらしく、そこで言葉に詰まり悔しそうに歯噛みして唸り始める。さすがに気の毒そうに思い、慰めようかと思い手を伸ばそうとすると、式が先んじて必要ないと言いたげに首を左右に振ってみせた。

 不安ではあったが、式に従って眼前の震える背中を見つめていると、凛はおもむろに寄せていた宝石を掴んで立ち上がり、苛立ちを隠さない乱暴な足取りで購買の方へ向かって行った。

 

 それを見送りながら、二人して顔を見合わせて、自分たちはようやく食事に入った。

 

「返品よ返品! 大体偽物掴ませようってどういうつもりよ!? ムーンセルに訴えるわよ!」

「その時はこちらもムーンセルに問いただすまでです。二日目の段階でどうやってここまでの大金を稼げたのかを」

 

 音声に関してはスルーの方向で。

 

 

 ※※※

 

 

「あの店員、サイッテーね」

 ――おかえり、遠坂凛(クレーマー)

「その様子だとどうにかなったみたいね、遠坂凛(クレーマー)

「誰がクレーマーよ。私は詐欺られたのよ。裁判沙汰にしなかっただけましでしょ」

 

 あるんだ、裁判。

 苛立ちを隠さず、罵倒を口にしながら凛が帰ってきたのはたった三分後だった。汗を拭い、手で自身を扇ぐその姿が激闘の苛烈さを自分たちに否応なく告げていた。それを労わるように水を一杯差し出すと、一息でそれを飲み干して酔っ払いか何かのように、荒々しく叩きつけた。やはり騙されたということは凛にとってはかなり屈辱的なことだったらしい。

 しかし大分落ち着いてきたのか、少しずつではあるが呼吸が大分落ち着け始めた。

 

「にしても助かったわ。危うく粗悪品掴ませるところだったわ。あなたたちよく分かったわね」

「天然にしてはやけに線が多かったから、ね」

「線?」

 ――にしても意外だったよ。凛はこういうことには詳しそうだからてっきりそんなミスはしないと思ったけど。

 

 線というのは十中八九式の魔眼に関することだ。凛がこちらの手札に関することを追及してくるとは――周りに人がいなかったとしても――思わないが、ずれかけた話題を本筋に戻す。

 

「仕方ないでしょ。確かに私の魔術は宝石を使うけど、基本的に地上の偽物はあそこまで精巧じゃないし。ていうか、たとえAIといえどムーンセルがやればさすがに私でも判別はできないわよ」

 

 言われてみればそうだ。そも、この空間自体がムーンセルによって生成されているのだから、小さな宝石を本物に見せるなどいとも容易い行いだろう。むしろ、少しでも気付けるように濁りを混ぜていただけ、遥かに良心的だったのだろう。

 

「とにかくありがとね。もし何か手伝えることがあれば言って。少なくとも戻った金額分は報いるつもりよ」

 ――なら、アリーナの改竄方を。

「言っておくけど、違法な金稼ぎはさっき禁止されたわ。次やったらペナルティだそうよ」

 

 対応早すぎだろ、昨日の今日だぞムーンセル。

 金欠から解放されるだろうと思っていただけに、割とショックは大きい。しかし只でさえ弱い自分たちがさらにペナルティを受けて弱化するわけにはいかない以上、名残惜しいが諦めるしかない。

 

「まあ、貴方たちの場合は二人いるから食費が倍だからね……。家具とかなんかだったら私が改竄してあげるけど……」

 

 今度は凛がこちらに呆れと憐みの視線を向けてくる。情けないことに、真実であるため反論する余地はない。しかし、家具か……、正直自分は現状でもほとんど不満はないので、式に任せよう。最初に気づいたのも式だし、当然の権利だろう。

 

 ――式は何か頼みたいことある?

「特にないわ。でも……強いて言うなら風呂が欲しいわ」

 

 風呂――それは浴槽に湯を沸かし、それに浸かり心を癒すもの。大半の現代人にとってはなじみ深いものであるが、記憶がない自分には知識しかない物だ。

 一応購買に改造データとして並んではいるものの、値段があれなので自分たちにとっては手の届かない代物でもある。ムーンセルは食に関してはともかく、衣と住に関しては上級ハッカーでなければ自由にすることも出来ないため、自分たちのような弱小マスターはせっせとお金を集めて買わなければならないのだ。

 

 凛はああ、と遅まきながらに気づいたようなセリフを上げた後、すぐさま納得したように笑みを浮かべた。

 

「たしかにお風呂に入れないってのも女の子としてはつらいしね。和風か洋風、どっちがいい?」

「和風でお願い」

「りょーかい。後でデータ送るから楽しみにしててね」

 

 声を弾ませる凛の了承の意を聞いて、式が少しだけ顔を綻ばせた気がした。

 

 

 ※※※

 

 

「上がったわよ」

 ――と、もうそんな時間か。

 

 回想に耽り、夢心地になっていた自分の意識を、凛とした声が引き起こす。視線を上げれば、いつもの単衣の着物ではなく、より着付けが簡単な浴衣を来た式がいた。僅かに火照った肌は彼女が今しがた上がったということを如実に示していた。

 

 式は自分に一言そう告げると、火照った体を冷ますことなくそのまま布団へと向かう。どうやら今日はそのまま眠るらしい。

 

 自分も風呂に入ろうと腰を上げ、タオルを持って奥の扉を引き、脱衣室で服を脱いで浴室へと入る。浴室は眩しすぎず暗すぎずの適度に調整された輝度(きど)によって、檜でできた浴槽は輝いているように、入ると同時に肌に吸い付く湯気と檜の心地いい香りは自分を迎えてくれるように想えてしまう。

 

 一度湯を浴びて、身体の汚れを落として湯に浸かる。湯は程よい熱さで、全身だけではなく身体の奥底まで染み渡る感じに、感嘆の息を漏らす。これだけで今日アリーナを歩き回った疲れも大分取れてきた。

 

 そのあまりの心地よさに、このまま寝てしまいたい心境に駆り立てられたが、残った理性で必死に自生する。さすがにマイルームで溺死なんてのは御免だと、そんな自分の想像に笑みを浮かべながら浮力に身を委ね、自分は命の洗濯を心行くままに堪能するのであった。

 

 

 ※※※ 以下大体予告

 

 

 これがアリーナ、これが迷宮か。空は鮮やかな夕焼けで、構成物(オブジェクト)は繊細そのもの。ここがムーンセルという仮想空間の中だと知らなければ異世界に迷い込んだと錯覚しそうになるほどだ。

 しかしこれらはあくまで電子で構成された空間。ここには本当の空が無ければ海もなく、大地もない。

 

『あと呪われし姫君も居ませんし』

『それを言うなら天空の花嫁もな』

『エデンの戦士もいないし』

『星空の守り人や五つの種族も同様だな』

 

 ドラクエを混ぜるな。折角いい雰囲気出してたのに一気に変わってしまったじゃないか。

 

『おや、白野さんはFF派でしたが』

 

 そういう問題でもないよ。それはそうとあれはいったいいつまでファイナルなんだろうな。ボクシングだって12Rだぞ。

 

 

 ※※※

 

 

 ――退いては、その……お金を貸していただければ……。

 

「まあ、確かに。岸波さんでは5回もあれ(遠坂パワーイズマネーシステムガチャガチャVer)を回せばお金が尽きてしまうでしょう。分かりました、貸しましょう」

 

 ありがとうございます、お優しいレオ様!

 

「では女装して『お兄ちゃん、私のこと独り占めしてっ』と言ってもらいましょうか」

「お待ちくださいレオ、どうせなら『私、今でも将来の夢はお兄ちゃんのお嫁さんだから!』のほうがいいですよ」

 

 今まで見たことない位いい笑顔のレオに、ノリノリで女性用学生服を突き出してくる従者のガウェイン。こいつらのネタに対する食い付き甘く見ていたかもしれん。というか、お前らそんなキャラだったっけ?

 

「いえ、僕には弟や妹が一人もいませんから、一度でいいから兄という立場になってみたいんですよ」

「妹は確実に年下になりますからね。私も何度、弟が妹であればいいと思ったことやら……。せめて、一人でも妹であれば……」

 

 しみじみと呟くレオはまだいいだろう。しかしガウェイン、そこまで妹が欲しかったのか。噛み締めすぎて歯が折れそうだぞ。

 

 

 ※※※

 

 

 ついに三層。凛の攻略も最後になる層だ。一層ではガウェインが、二層ではランサーが自分のサーヴァントとして戦ってくれた。となると、次のサーヴァントは誰なのだろうか。やや不謹慎かもしれないが、やはり英雄と語らいながら共に戦うのは心が躍るというものだ。

 

 次の相棒に、胸を躍らせながら生徒会室の扉を開き――一気に心臓が止まる。視界を占めるのはありきたりなカソック。それだけですべてが理解できてしまうことが悲しかった。そしてそんな自分を尻目に、眼前に立つ神父はおもむろに口を開いた。

 

「次のサーヴァントは、私だ」

 ――おまえだったのか。

「暇を持て余した」「我々の」「あ、あそ、び……」

 生徒会の会長(バカ)たちは自分以上に不謹慎だった。

 

 

 ※※※

 

 

「まず、皆さん。これを見てください」

 

 レオの指示と共にスクリーンに新たな映像が現れる。それはつい昨日、ランサーが攻撃してきたシーンで、尾を大きく振り上げている部分だった。

 

 それだけで、自分たちはレオが自分たちを集めた理由を完全に理解した。普段生徒会の活動に関して不真面目なギルガメッシュにアンデルセン、慎二までもが佇まいを直してこれからの議題に真剣に取り組もうという気持ちが分かる。

 

 レオは皆のその様に満足そうに一度頷き、スクリーンの映像をある場面で止めた。

 

「では、これから話し合いましょう」

 

 キリッとした顔立ちで、レオが会議の音頭を取る。それに異論を挟む者はいない。何しろ、皆は己の中の答えを示すために言葉や知恵を絞っている最中で、そんな余裕はない。

 

 そう、これから話し合うのは――

 

「すなわち、何色の縞パンがジャスティスなのかを」

 

 ――縞パンの色(おのれのロマン)である。




違法な金稼ぎ云々で、慎二のことですがあれは気にしない方向で。
強いて理由をつけるなら強化>弱化だったので結果的にはプラスだったということで。

ちなみにわかりにくいネタ
・『お兄ちゃん、私のこと独り占めしてっ』と『私、今でも将来の夢はお兄ちゃんのお嫁さんだから!』に関しては『衣遠兄様の華麗なる一日』で検索しましょう。ネタバレがあるので、件の部分だけ見たいというお方は2525動画のpart5だけ見るとよろしいかと。
・『何色の縞パンがジャスティス』神咒神威神楽の特典CDにおける某陰陽術師の発言。これに腹を抱えて笑ったのは私だけではないはず。

感想・評価お気軽にどうぞ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。