あとご都合主義ヤバイっす
「いらっしゃいませー」
店員の声が店に響く。
某ファミリーレストランに入店してきたのは四人の男。
それぞれ特徴的な、悪くいえば変人のような格好をしている。
だが、店員たちはあえて見ないふりをする。
藪をつついて蛇を出すような真似をしたくないから。
四人は一番奥のテーブル席に座る。
「で、ゼロよ、なんの用だ」
男ーーロード・ガンが喋る。
「いや、玉には一緒に食事でもどうかなーって」
「野郎だけで食事会とかやだよ」
ゼロの食事という言葉に真っ先に反応したのはデスペアーー氷霧ひ憑依し、妖王を消滅させた張本人だ。
「いや、それもそーだけども」
デスペアの主張を肯定するゼロ。
三人の目が「肯定すんな」という目になる。
「あー、とりあえず食事に来たのだから、飯を頼んだらどうだ?」
老人ーー神威が提案をだす。
神威の声に、「それもそうか」とメニューを見る四人。
三分後、店員を呼び出し注文。
ゼロは『リブステーキ』を、デスペアは『ペペロンチーノ』を、ロードは『マルゲリータピザ』を、神威は『地中海風ピラフのオーブン焼き』を。
どうでもいいが全員まるで違う料理を頼んでいる。
料理がくるまでの間、雑談をする。
内容は部下が変なことするだの、この前国消したとか、ゲームクリア一時間でしただの。
何処にでもある他愛ない会話。
「ところでゼロよ、そろそろアレ、限界だぞ」
「あー、そっかー」
「つーかこの前異世界召喚あったけどなに?」
「あー、あれ念のためにだしたやつね」
「お前本当に用心深いな」
「そーでもないよ」
「そーいやそろそろヤバくね?千人もやったんだからいいっしょ」
「あーあれね、あれ転生した英雄持っていっただけだから」
「マジか」
「マジ」
そんな何処にでもある、普通の会話。
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「ーーなんたることか!」
王が怒鳴る。
宰相が持ってきた報告は、王を怒らせるに十二分なものだった。
内容は『勇者、紅魔館の吸血鬼一匹に敗北』というものだ。
まずい、凄くまずい。
何がまずいかと言うと、勇者の存在を恐れてなにもしてこなかった件の化け物が手をだし始める可能性がある。
化け物だけじゃない、勇者のことをよく思っていない貴族等が「勇者たいしたことないじゃん」と王を責め、勇者を処分しようとすることもあり得る。
勇者側に死亡者が出なかったのが救いか、て王は思う。
「宰相よ、連れた冒険者はどうなった?」
「はっ、一名を除き全員死亡しております」
「……その人物の名は?」
「確か、氷霧零と」