赤蜥蜴と黒髪姫   作:夏期の種

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第一章 少女と悪魔の晩餐会
第01話「武闘派の幼馴染」


 私の名前は香千屋 爰乃(こちや ここの )

 家業は神社で、お爺ちゃんと二人暮らしの高校二年生。

 容姿は自画自賛になるけど、割と可愛い方だと思う。

 幼馴染曰く、私が通う駒王学園非公式美少女ランキングでも上位にランクインとのこと。

 アイドル顔負けの異常な美少女が揃うこの学園でこの結果は大健闘じゃないかな。

 あまり社交的じゃないのはともかく、まあまあ幸せに青春を謳歌しています。

 特技は家が道場を兼ねている事もあって格闘技。

 大好きなお爺ちゃんに教わった柔と、頑張って手入れを欠かさない長髪がチャームポイントです。

 

「夕麻ちゃんだよ、おっぱいもデカい超絶美少女の夕麻ちゃん! 神様の気まぐれで俺に告白してきたマイエンジェルをマジで覚えてないのか?」

「あのさ、いくら幼馴染でも女の子に向かっておっぱい叫ぶのはどうなのかな……」

「わ、わりぃ」

「そもそもイッセー君が告白された日って、丁度風邪で休んでた時なんだけどね。おまけに夕麻ちゃんとやらは他校生なんでしょ? 私が知りえるチャンスは無いと思う」

「……考えてみれば、お前に報告してないような」

「はぁ、馬鹿は馬鹿なりに考えて行動なさい。君は変態ズの一員として、脳内妄想を現実に持ち込まずニヤニヤするに留めるべき」

「ううう、マジで病院行かないとダメか……」

 

 バッサリと切り捨てられ、すごすごと下がっていく彼の姿は哀愁を誘う。

 呪われているような確立で今日まで学校はおろかクラスが同じな幼馴染は、昔から変わらない変態だ。

 彼、兵藤一誠と言えば校内の誰もが知るエロの権化。もしもイケメンと名高い木場君並みの容姿ならまた違ったかもしれないけど、イッセー君は並よりちょっと良いくらいの三枚目。おかげで女子からは蛇蝎の如く嫌われている。

 そんな彼に美少女の彼女? ないない、それはない。

 エロゲーか何かの夢でも見たのでしょう。

 私としては思春期の男の子なんて大なり小なりこんな物だと思っているので、他の女子の様に特に思う所が無い。

 だから変わらない友達関係を続けていられるんだよ?

 イッセー君はこの有り難味を理解しているのかな?

 

「グフフ、最後の拠り所にも否定されたな。素直に俺達と秘蔵コレクションを鑑賞しようぜ!」

「わーったよ、今日は無礼講だ! コンビニ寄って餌を仕入れたらエロDVDで祝杯!」

「おお、それでこそイッセー。青春をエンジョイしようじゃないか!」

 

 陵辱だの脳内で犯すだの、連呼を続けるのは松田君と元浜君。

 これにイッセー君を加えた三人は、クラスが、学園が誇るチーム変態さんだったり。

 偉い人の言葉を借りるなら”ダメだこいつ早く何とかしないと”級の。

 何だかんだと口だけで害は無いけど、いつお縄になっても驚かない。

 ついつい幼馴染との縁を切るべきか考えてしまう私だった。

 

 

 

 

 

 第一話 「武闘派の幼馴染」

 

 

 

 

 

 月明かりの下で日課のランニング途中、ふと気配を感じて立ち寄った公園。

 そこで私の目に飛び込んできたのは、血溜まりの中で呻く幼馴染の姿だった。

 傍らには黒い翼を生やしたスーツ姿の男が立っていて、何とも分かりやすいピンチの図式。

 よく分からないけど、見なかった事には出来ない。

 そう考えた瞬間、もう私の体は行動に移っていた。

 

「ん、何だ貴様」

 

 ライトセイバー的な光を手に宿したスーツ姿の男は、駆け出した私に気づいたにも関わらず警戒の色を見せない。

 甘い、実に甘い。先手を取らせてくれる慢心に感謝した私は、躊躇せずに男の手首を掴んで呼気を吐き出し柔を仕掛ける。

 肘を逆に極めて関節を砕きながら一本背負いでぶん投げつつ、逆さになって落下してきた頭を全力で蹴りぬいた。

 お爺ちゃん直伝、香千屋流”雷神落とし”ここに完成。

 嗚呼、正当防衛って素晴らしい。合法的に試し斬りを経験できるって素敵。

 ちなみに遊びのない殺し技なので、みんなは真似しちゃダメだぞ☆

 

「大丈夫ですか、イッセー君」

「う……ぁ」

「ぶっちゃけ助からない傷だとは思いますが、駄目元で救急車呼びましょ―――はい? 何か言い残す事でも?」

「う……ろ」

「あはは、アレを貰って立ち上がれるわけ無いって、マジですか!?」

 

 背筋に走る冷たい何かに慌てて振り向いた。

 すると在り得ない事に、よろよろと弱りながらも二本の足で立ち上がる男の姿が!

 少なからず手加減したにしろ、さすがにこのタフネスは想定外。

 完璧に技が成立してにも関わらず、耐えるとか予想してませんって!?

 

「に、人間如きがこの私に逆らうかぁ!?」

「ふう、ジェダイの騎士(仮)はさすがですね。フォースとやらの加護でしょうか」

「上位種たる堕天使に何をわけの分からんことを……そもそも貴様、何処の手のものだ?」

「通りすがりの女子高生です。強いて言うならストリートファイター的な」

「よく分からんが死―――」

「だから敵を目の前にしてペラペラ喋るなと」

 

 お爺様にも褒められたことだけど、どうも私には投げ技に適正があるらしい。

 ぐいっと踏み込み足払い一つで男を中に浮かせ、側頭部に手を当て押し込むように回転を加速。そのままコンクリートの地面と言う無双の凶器に全力で叩きつけても安心できない。

 女の子なので体重は足りないが、地に伏せる男の首を全力で踏み抜いてようやく一安心。

 正確に言うと、これ以上の追撃パターンが私には無い。

 だって普通、ここまでコンボを繋げれば人は死ぬ。

 多分、どんな流派でもここから先はオーバーキル扱いなんじゃないかな。

 とは言ったものの、お相手は堕天使とやら。

 果たしてどこまで通じ……あれ、虫の息? 以外にいける?

 

「ひゅーひゅー言ってますし、肉体の構造も翼を除けば大差が無いようで何よりです。脳をここまで掻き混ぜれば平衡感覚ありませんよね?」

 

 起き上がろうとしては地に倒れ、翼をはためかせても空を舞うことも出来ないその姿。

 今は脳がシェイクされて天と地の区別がついていないけど、回復され空にでも逃げられたら手の打ちようが無い。

 だからツチノコ生け捕りなんて甘い考えは捨てる。

 即座に死ぬまでフルボッコと決断するも、黒い翼は伊達じゃなかった。

 まともに頭が回っていないのに、選ばれたのは最善手。

 男の手に再度宿った光が無鉄砲に打ち出されてびっくり。

 コレはアレですか、俗に言うビームライフル。

 連射速度は決して速くないけど、消し飛ぶ街灯を見て分かる通りかすったら終わり。

 さすがにアレだけやれば回復まで時間もかかると思うし、急がないとイッセー君の命も風前の灯。逃げよう、それしか道は無い。

 投げキャラは飛び道具持ちの、ガン待ち戦術に勝てないのが常。

 ザンギエフ先輩も、波動昇竜の力には無力なのです。

 

「イッセー君、まだ意識あります? 無いね、うん、分かってた」

 

 返事が無い、ただの屍のようだ。いや、まだ死んでないけど。

 さすが男の子、重たいなとか考えながら背負いかけた瞬間だった。

 男と目が合い、照準となる腕もこちらを向いている。

 これは詰みかな、と諦め掛けた私を攻められる人は居ないと思う。

 そんな絶望を迎えたその時だった。

 

「私の管轄で好き勝手しないで欲しいわ」

 

 風きり音と、その直後に起きる爆発。見れば男の片腕は消失し、窮地は逸していた。

 都合よく現れた正義の味方を見やれば、その身を包むのは私も毎日着ている駒王学園の制服。しかもあの容姿……話した事こそ無いけど、あれは上級生のグレモリー先輩?

 

「その髪……グレモリー家の者か」

「リアス・グレモリーよ。私の眷属だけなら百歩譲るにしも、一般人に手を出すとは呆れて何も言えないわ。この場で滅びなさい」

「なっ、俺に手を出せば協定が―――」

「先に違反したのは貴方でしょう、さようなら」

 

 交渉の余地無しに先輩の手から放たれたのは何らかの力の塊。

 例えるならドラゴンがボールな感じのアレに近いっぽい。

 それは獲物を一飲みすると、私じゃ倒しきれなかった男を跡形も無く消滅させてしまった。

 

「土壇場で逃がしてしまったわね……」

「ええと、三年のリアス先輩ですよね?」

「そうよ。聞きたい事は山ほどあるでしょうけど、今はその子が優先よ。後日、迎えを出すから今は何も聞かないでお帰りなさい」

「そうですね、取りあえず救急車でも―――」

「その必要は無いわ」

「確かにご臨終間近とは思いますが、警察の調書を考えると色々まずいのでは」

「いいえ、私が何とかするから助かるわよ?」

「いやいやいや、ここから復活って神か悪魔でもないと無理です。先輩も軽くファンタジーな系統っぽく見えますが、現実見ませんか」

「だって悪魔よ、私」

「はい?」

「こうすれば分かりやすいかしら?」

 

 そう告げると、先輩は背から蝙蝠の翼を伸ばして空へ浮き上がった。

 その手には幼馴染が抱かれ、地獄に連れて行かれる雰囲気が全力すぎる。

 あれですか、魂を引っこ抜いてどうにかするんですね。分かります。

 だって月明かりを背にした先輩は幻想的で人間とは思えない。

 悪魔かどうかはともかく、人じゃないんだなぁと納得せざるを得ない私だった。

 

「……イッセー君も巨乳美人の贄なら本望でしょう。スケベな所はともかく、友達としては好きでしたよ」

「五体満足で返してあげるから安心なさい。っと、これ以上弱られたら厳しいわね。また会いましょう、後輩さん」

 

 ヤバイ、確実に目をつけられた。

 飛び去っていく悪魔をぼんやりと見送る私は、死亡フラグが成立した事を悟る。

 

「……お爺様、天使や悪魔に通用する奥義とか知らないかな」

 

 乾いた笑いを零す私の言葉を聞くものは誰も居ないのだった。




爰乃近影

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