赤蜥蜴と黒髪姫   作:夏期の種

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これにて決着、意外とヴァーリは奇人になりませんでした(私見


第25話「聖剣伝説 -エピローグ-」

 木場が剣を構え直し、部長が残りの魔力をその手に宿した瞬間だった。

 不意に小猫ちゃんが空を見上げ、小さな目を大きく広げる。

 

「茶番は茶番なりに楽しませて貰った。しかし、もう十分だろう?」

 

 空から聞えてきたのは、始めて聞く声。

 他の皆は困惑するだけなのに、俺だけは違う。

 全身を駆け巡る緊張感と恐怖。

 何者だと問う前に、相容れない敵だと本能が警鐘を鳴らしてくる。

 嫌がる体を奮い立たせて首を動かせば、それは向こうからやって来た。

 闇を切り裂く白い閃光が舞い降り、威風堂々と表わすその姿。

 顔をも覆う純白の全身鎧の各所には宝玉が埋め込まれ、背には光の八翼。

 色と形は違うが、俺はこの甲冑を良く知っている。

 

「貴様、何を!」

「アザゼルに、やんちゃする部下を止める様に頼まれてね」

「ええい、邪魔立てすると言うのなら―――」

 

 あのコカビエルさんが反応出来なかった。言葉を言い切る前に、幾多の魔剣を弾き返して来た黒翼が千切れあっさりと宙を舞う。

 

「一度戦いたいと思っていたが、堕天使の幹部というのも大した事が無い。大戦を生き残った大幹部様とやらはこの程度なのか?」

「おのれ白龍皇、アザゼルの飼い犬如きがっ!」

 

 やはりドライグが前に忠告して来た俺の宿敵、赤の対たる白がこいつか。

 そりゃ鎧の色も形も違うのに既視感覚えるわ。

 そして俺が禁手に目覚めたなら、当然こっちも至っていると。

 しかし、本当に何もかもが鏡合せだ。

 赤と白。

 強者と弱者。

 悪魔と堕天使。

 嫌になるくらい因縁めいてやがる。

 

「もっと怒れ、何なら本気を出してくれて構わないぞ?」

「望み通りの一撃をくれてやるわっ!」

 

 余裕を隠さず挑発を続ける白龍皇に、コカビエルさんがブチ切れた。

 俺達には使う素振りすら見せなかった巨大魔法陣を描けば、夜空に浮かぶ星に等しい無数の光槍が出現。

 標的は俺達を眼中に入れない唯一人。幾ら何でもこれは無理じゃないか!?

 しかし、奴は俺に余所見をしながら涼しい声でこう言った。

 

「赤龍帝君、どうせ君は俺の能力を知らないのだろう?」

「……おう」

「赤の能力が所有者の力を倍加するなら、白の能力は相手の力を半減させる」

 

『DIVIDE!』

 

 その音声が響いた瞬間、コカビエルのオーラが激減。

 放たれる寸前だった光の槍も数を半減させていた。

 

「赤の倍加が白の半減で相殺される以上、二天龍の戦いは常に使い手の力が全て。そして、これが君が倒さなければならない敵の力だ」

 

 木場の最速に勝るとも劣らない速度で俺の視界から消え去り、慣性を無視した複雑な機動で奴は飛ぶ。向かう先は当然コカビエルさん。

 

『DIVIDE!』

 

 さらなる半減能力が発動するのと時を同じく、拳が堕天使へと突き刺さる。

 たったの一撃。それだけで俺の全力が届かない伝説の存在が、膝を付いてしまった。

 くの字に折れた腹を押さえて吐しゃ物を撒き散らす姿からは最早脅威を感じない。

 冗談だろ、俺はこんなのを超えなきゃなんねえのか!?

 

「おまっ、もう少し加減を―――」

「打合せを怠ったお前が悪い。俺は指示通りに圧倒するだけだ」

「おのれ、鳥と蛇はここでも邪魔をするのか! はらぺこ共めっ!」

「と言うかチェスで負けていささか機嫌が悪い。これで終わりにしよう」

「それが本音かよっ!?」

 

 最後の会話は良く分からんかったが、白の拳が顔面を打ち抜いてゲームセット。

 ついにラスボス様は、乱入者に敗北を喫してしまう。

 

「これで分かったかな? 今の君では暇つぶしにもならない事を」

「見栄を張るつもりはねぇよ。今は足元にも及ばないって実感中だ」

「ならば強くなってくれ。宿敵が弱いと、対の俺まで評価を下げてしまうのでな」

「見逃してくれんの」

「君は蟻を踏み潰して楽しいか?」

「ちくしょう、軍隊蟻になってやるから首洗って待っていやがれ!」

 

 悔しいが、今の俺に反論材料は一つもない。

 同じスペックの神滅具使いなのに、開いた差がでか過ぎる。

 言いたい事を言える白と、何も言い返せない赤。

 会話の空隙が生まれるが、それを埋める様にして音が紡がれる。

 

『聞いての通りだドライグ。久方ぶりの再会だが、今回はお預けにしよう』

『いいさ、いずれは戦う運命だ。たまにはこんな出会いも悪くない』

『お前にしては大人しい。以前の様な敵意はどうした?』

『アルビオン、そっちこそ敵意が伝わって来ないじゃないか。何があった?」

『宿主が天龍対決よりも他に興味があるのでな」

『こちらも似たような物。執着対象が女と言うのも辛いが……」

『まぁ、決着は未来に持ち越しだ』

『それも一興、今回も勝たせてもらうぞ』

『ぬかせ』

 

 旧知の友人が交わすような気軽さで会話するのは、互いに宿る龍だった。

 認め合っているのが言葉の節々から感じ取れて、完全に格付けの終わっている俺達と関係があまりにも違いすぎる。

 これぞライバルの在るべき姿、本気で羨ましい。

 

「……おっと、一つ忘れていた」

「まだ何かあるのかよ」

「君は女の胸が大層好きらしいじゃないか」

「俺に限らずおっぱいが嫌いな男なんていないんじゃね」

「成る程、確かに胸は母性の象徴だろう。しかし俺は、腰から尻にかけてのラインこそが女性の持つ美だと思う。それについてはどう考える?」

「おっぱいは偉大だが、尻も太ももも素晴らしい。お前は水と空気のどちらが大切か選べるのか?」

「そう来たか」

 

 ……あれ、思ってたキャラと違う?

 

「ラインとか言うなら、脚線美を認める所から初めてみんのはどうよ」

「成る程、深い……足か。そこに注目した事は確かに無かった」

『ヴ、ヴァーリ!?』

「何だアルビオン、俺は今思案に忙しい」

『まさかコカビエルの攻撃で脳を!』

「無傷だが?」

『より深刻じゃないか!?』

 

 何故か白の龍が発狂しそうな声を出している。

 鎧姿で性癖を語り合うとか絵面はヤバイかもしれんが、根本的な部分でコイツが何を問題にしているのか分からん。

 

『ふははは、精神をゴリゴリ削られる世界へようこそ! 歓迎するぞ!』

『!?』

『宿主が知っているならば、お前も俺の使い手の人間性を理解しているな?』

『う、うむ。真剣勝負の途中でおっぱい叫びだす狂人と聞いている』

『ソレと意気投合して女体を語る以上、お前の使い手とて同類だ』

『ぐっはぁ!?』

 

 使い手と違って神器対決は形勢逆転。赤が白を圧倒していた。

 ドライグとアルビオン、二匹の関係性が分からなくなって来た俺です。

 

「最後の最後で益のある話が聞けて良かった」

「俺の方こそ、新しい切り口に新境地が見えて大助かり」

「では、これで失礼する。とにかく強くなってくれよ宿敵君」

 

 最後だけはきっちり締めて、尻の男…ヴァーリだったか? は飛び立って行った。

 コカビエルの身柄は持ち去られてしまったが、割とどうでもいい。

 って、ついつい夢中になったが爰乃はどうなった!?

 

「……遅くなってすみません」

「小猫ちゃんは、馬鹿な事を言い合う誰かさんとは違うね」

「……会長に啖呵を切った時は格好良かったんですけど、いつの間にかこの様です」

「こ、香千屋さん。こんな有様でも、君を助ける為にイッセー君は頑張ったんだよ? 僅かなりとも評価してくれないか?」

「それはそれ、これはこれ。殺されそうになる理由にはなりません」

「その話については、コカビエルを下手に誘導した僕と小猫ちゃんにも責任がある。イッセー君を攻めるなら、僕らにも一部を肩代わりさせて欲しい」

「冗談です、助けて貰ったことでチャラにしますとも」

「それは助かる」

 

 げぇっ、俺だけ蚊帳の外!。

 介抱してるのは小猫ちゃんだし、木場も隣で苦笑い。

 アーシアなんて頭痛に耐えながら、爰乃の無事に感謝して祈ってるよ!

 やはりアレですか、白熱したトークに突入したから放置されたと。

 内容はともかく、伝説のドラゴンが対峙する大事なシーンを無視しないで!

 

「ええと、怪我は無いのね?」

「お陰様でピンピンしてます。証拠として、皆さんこの場で葬りましょうかね」

「本気に聞えるから止めて」

「木場君が何やら強くなってますし、少しばかり梃子摺るかもですけどね」

「……元気で何よりよ。こっちも朱乃が情緒不安定な位で誰も失っていないわ。漁夫の利にしろ奇跡的大勝利ね」

「そうですか。時に部長」

「何かしら?」

「私には攫われた瞬間から、砂を食むまでの記憶がありません」

「つまり?」

「事情は良く分かりませんけど、早くここから逃げる事を推奨します」

「ど、どうしてなのかしら?」

「この音が全ての答えです」

 

 耳を澄ませれば、遠くからお馴染みの音が近づいて来るのが分かる。

 これはまさか……やらかしたか!?

 

「……部長、これはパトカーのサイレンです。イッセー先輩が結界を破壊したせいで、途中から外に丸聞こえ。面倒毎に巻き込まれる前に撤退しましょう」

「そ、そういえばそうだったわね。撤収よ、撤収!」

「ええと、乗り遅れた感が半端無いんすけど―――」

「何時までぼやっとしているの! 行くわよ、イッセー!」

「は、はい。爰乃、言いたい事はあるだろうがとり―――」

「迎えが来たので私も帰ります。イッセー君、後で誠意を持ったOHANASHIをしましょう。どんな言い訳をするか楽しみにしています」

「げぇっ!?」

 

 誰も話を最後まで聞いてくれない悲しさ。

 って、迎え? 爰乃を連れ帰るのは俺の仕事ですよ?

 

「姫さま姫さまー、おなか減ったからかえろ?」

 

 旧校舎の窓を破って爰乃の背に引っ付いたのは、天使の翼を持つ少女。

 一歩間違えれば俺達を絶望のどん底に落していた大魔王だった。

 

「とまあ、この子の世話をしなければなりません。部長、細かな話は日を改めてと言うことで」

「それなら明日の放課後、部室で事情を説明するわ」

「了解です。さあ、大空合体スーパー爰乃発進!」

「いっきまーす! ぎゅーん!」

「ちょ、ゆっく―――」

 

 これからアンの事を、ブレーキの壊れたダンプカーと呼ぼう。

 爰乃に合体した飛行パーツは完璧にスーパー系。ヴァーリのゲッター飛びに負けない勢いで空へと消えてしまった素体少女は大丈夫なのだろうか。

 まぁアイツは頑丈だから、ジェットコースターの一環として楽しむに違いない。

 

「部長、僕は残って野暮用を片付けます。先にお戻りください」

「祐斗?」

「大丈夫、本当にやり残しです。具体的には神父をばらばらに刻む後始末。死体が残っていると面倒でしょう?」

「そ、そう、それは確かに必要なこと……なの?」

「ついでにエクスカリバーも処分を。それでは失礼」

 

 爽やかな笑顔で怖いことを言うもんだ。

 全部片付いたって割りに、まだ恨み辛み残ってるじゃん……

 

「残りのメンバーは私に続きなさい、家に帰るまでが遠征よ?」

 

 それは遠足です。

 そんなツッコミを抑え、俺は朱乃さんが展開した魔法陣へと飛び込む事にする。

 最後の最後で美味しいところを全部持ってかれたけど、全員無事ならそれでいい。

 王子様にはなり損ねたが、それも俺らしいよ。

 明日、朝一番で会いに行こう。

 本当は直ぐにでも向かいたいが、明らかに恥かしさで逃げたんだ。

 空気を読まずに追いかけるのも野暮ってもんよ。

 爰乃は気付いてるっぽいが、これだけ校舎が破損すりゃ学校は休み。

 焦る必要は無い。

 例の件で投げられても、説教されても、それは何時もの日常だ。

 何一つ失わなかったからこそ取り戻すことの出来た、大切な明日を楽しみたい。

 

「イッセーさん、よかったですね」

「これはこれでハッピーエンド。もしもアーシアが同じ目に遭ったなら、必ず助けて同じ結果を掴み取ってみせる。美少女の笑顔の為なら俺は無敵だぜ!」

「ふふふ、頼りにしてます」

 

 ぎゅっと服の裾を掴んではにかむアーシアは大変可愛らしい。

 誰に言われたからじゃないが、もっともっと強くなろう。

 特訓に特訓を重ねて、大事な物全てを守り切れる力を手に入れてみせる。

 立ちはだかるのが白龍皇ってなら、ぶっとばすだけだ。

 千年以内に赤龍帝の名を取り戻すぞドライグ!

 

『そうしてくれ。そして、可能ならもう少し真面目にだな……』

 

 無理だ。性欲を捨てる位なら、潔く死を選ぶのが兵藤一誠。

 あれ、そういやコカビエルってヴァーリが倒した扱いか?

 

『奴が来なければお前は死んでいたさ』

 

 つまり、部長のおっぱいを触ったり吸ったりする件はチャラ?

 

『……勝っていないことは確かだろう』

 

 チクショウ、この恨み忘れんからな。

 

『現実が辛い』

 

 サスペンスドラマの犯人を思わせる切実さで呟く相棒。

 悪いが諦めろ、俺はこの路線を変えるつもりは無い。

 そんなに辛いなら、発想を変えようぜ。

 お前もこっちの道に喜びを見出せばいいんだよ!

 赤龍の名を捨てて、おっぱい大好きドラゴンなっちまえ!

 

『わーわーなにもきこえないきこえないったらきこえない』

 

 やれやれ、素直になれない困ったちゃん過ぎる。

 

『お前にだけは言われたくない!』

 

 志はでっかく龍の王。

 が、歴代の赤龍帝を見てきたお前が太鼓判を押す最弱がこの俺だ。

 過去の継承者と同じ道を歩いても、同じ山は登り切れない。

 つまり、人と違う道を模索して行かにゃならん。ここに異論は無いな?

 

『それはそうかもしれん……』

 

 一応、結果は出してると思う。

 禁手ってのも扱える奴が少ないんだろ?

 神器に目覚めてから一年も経っていないのに、そこそこ使いこなしてるよな?

 

『むぅ』

 

 ドライグ的には目を背けたい理由でも、俺はエロじゃないと頑張れない。

 そもそも好きな女の為に強くなりたいって、そんなに変かね。

 

『格好良く言っても騙されんぞ! ぐへへと欲望丸出しじゃないか!』

 

 さーて、カラスが泣いたから帰るかー。

 

『危うくコロリと行く所だった! 天龍を騙そうとするなんて信じられん!』

 

 好きに言え。どうせ結局は力を貸してくれるのがお前だ。

 相棒、その芸風は嫌いじゃないぜ。

 

『くたばれーっ!』

 

 今日も俺達は仲良しです。

 

 

 

 

 

 第二十五話「聖剣伝説 -エピローグ-」

 

 

 

 

 

「えー、振り返ると色々と粗だらけの公演でしたが、皆様の頑張りで一応の幕引きを迎えられました。本当にお疲れ様です」

「本当に綱渡りの連続でした」

「鳥の暴挙がとにかく影響大きかったっす。アレのせいで戦力削り要因だった黒騎士の出番は消え、意味の無い伏線の末路。スタンバってくれた弦さんには申し訳ないことを……」

「いえいえ、姫様のお世話を出来ただけで満足ですとも。あっ、エクスカリバーの核は総督殿にお届け済み。早速本部に送って改修を始めるとの事でした」

「これはお手数を。まま、一杯注がせてくだせぇ」

「あらら、頂きます」

 

 お疲れ様の意味で、深夜ながら始まったささやかな宴。

 料理と飲み物は、コカビエルさんが事前に手配済み。

 そこに私が何品か追加したので、量が足りないことは無いと思う。

 アンは私のベットで熟睡だし、鬼灯も食べるより飲むことに集中している。

 特に食べる二人が大人しいので私としても一安心です。

 ヴァーリは気に入ったらしい肉じゃがをおかずに白飯をゴリっと消費してますが、この程度なら許容範囲内。ノープロブレムですとも。

 

「しかし白いの、お前さん中々やるではないか」

「俺の目標はグレートレッドの打倒だ。今の力ではまだまだ足りない。これでなかなかと評するのであれば、お前の志が低すぎる」

「確かに上を目指すに越した事は無い。己の限界が見えないのが若さの特権よ」

「成長の止まった老人の言いそうなことだ」

「おいおい、わしもまだまだ現役の伸び盛り。今も上を目指して精進中よ。まぁ、少なくともウリエルを討った当時より強くなっとると応じておくかね」

「そうか、それでこそ強者たるもの。実はコカビエルが不甲斐なかったせいで、昂ぶりを処理しきれていない。一戦願えるか?」

「よかろう。鬼灯や、酒を飲むだけなら結界を一つ張れ。条件は外部からのアクセスを完全に遮断、強度もそれに準じよ」

「承知」

 

 え、何を言い出しているんですかこの二人。

 

「わしは小僧と遊んで来る。お前達はこのまま続けなさい」

「え、あの、その」

「赤は仲間の力を借りて一矢報いたが、白は一人でよいのかね?」

「群れるのは嫌いでね」

「その心意気に免じて、わしも全力で行くかね。死ぬなよ?」

「それは俺のセリフ。アザゼルの友人でも加減はしない、ぽっくり逝くなよ爺様」

 

 これだから戦闘狂は……と言いつつ、気持ち分かりますけど。

 いくらヴァーリが強くても、お爺様なら一捻りと孫兼弟子は信じています。

 さてさて、彼が私の知る最強相手にどれだけ善戦するのやら。

 お酒をご相伴中の身としては、良い肴が転がり込んで来たと喜ぶべきでしょう。

 

「姫様はどちらが勝つと思われます?」

「当然、お爺様」

「俺もアドラメレク様に一票で、弦さんは聞くまでも無し。揃って伝説のドラゴンの事を噛ませ犬程度にしか思っていないのが哀れ」

「ヴァーリ、私の十倍くらい強そうなんですけどね……」

「比較対象が悪いとしか。円熟の達人と伸び盛りの天才、経験地の差が絶望的っすよ」

「おまけにアドラメレク様も天才枠。ヴァーリが勝てるとすれば―――」

 

 コカビエルさんが人差し指を挙げ、何かを言いかける。

 しかし、話の当人達の会話がそれを遮った。

 

「念を押すが、これは遊び。覇龍は禁止じゃよ?」

「分かった」

「万が一にも使う素振りを見せたら、わしも街を吹っ飛ばす覚悟で殺しに行く。呪文を最後まで唱えられると思わぬ事だ」

「やってみなければ分からない、と言いたいが……今回は自重しよう。持って生まれた実力と通常稼働の神器のみで挑むのも面白い」

「宜しい。せっかくの機会を生かし、少しでも何かを得て帰るがよい。フェニックスの涙の貯蔵は十分、死ななければ必ず治そうではないか」

「ふん、御託はもう十分。早く結界深部へ連れて行け」

 

 ええと、これって確実にバトル漫画のワンシーンですよね。

 尻が良いと真顔で語っていた人物に、何が起きたのかな?。

 

「呼ばれて飛び出て中継班参上、とアレイは実況を担当すべく参上した事を皆様にお伝えします。テレビにご注目下さい。鬼灯に持たせた端末より取得した映像を、4Kを凌ぐ画質でかつリアルタイムにお届けする事をアレイはお伝えして悦に入る寸前です」

 

 未だにアレイのキャラが読めない、と爰乃は困惑顔で苦笑いです。

 やはり元が機械なのか、備えた機能を使う事に快楽を感じている節がって始まった!。

 

「さすがチームインチキ筆頭、半減を弾いてるっぽい」

「篭手の倍加も含め、所詮は状態異常のステータス変化。書き換えられる前に情報を破壊すれば理屈でなら対処は可能ですし、お屋形さまなら成し得る腕もお持ちかと」

「普通は出来ないっす。だって俺も無理ですよ?」

「お屋形さまは特別ですから」

「戦いたくないなぁ。戦争とかマジごめんですわ……」

「そうでっと、これは白の起死回生を狙った一手。発想は面白い」

「そこだヴァーリ、仮にもウチ陣営なんだから一矢報いやがれーっ!」

 

 テレビの向こうでは、格ゲーをCG無しで再現する男達が鎬を削っている。

 手に汗握る見応えのある展開ですが、今日は色々在りすぎて疲れが……。

 うつらうつら、コカビエルさんと弦さんの応援の声すら心地良い。

 時計は丑三つ時を回って、いつもなら寝ている時間なのも追い討ちに。

 皆さん元気だなと思いきや、私以外は人外でしたね。

 後片付けは起きてからでも遅くは無いし、睡魔に負けてしまおう。

 そう決めた私は、壁に寄りかかり瞼を落とす。

 お疲れ様……ぐぅ。

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