赤蜥蜴と黒髪姫   作:夏期の種

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概ね原作と同じ事をやっているイッセー達の活躍は省略。
ちなみに木場が追加されているので、さらに楽になっている模様です。


第30話「破綻する未来絵図」

「手間を取らせて悪かったね」

「気にするなと言いたい所だが、仮にも英雄を束ねる男が女にうつつをぬかすのは如何なものか。唯でさえヘラクレスを筆頭に、お前を侮る配下も多い。わざわざ弱みを見せるのはやめてくれないか……」

「いやいや、公私を付けた上での行動さ。彼女は強い。仲間に加わってくれたなら、組織とってこの上の無い成果となるだろう。それに英雄のスカウトは、俺の仕事でもある」

「それはそうかもしれないが」

「悪魔や堕天使の寵愛を受けつつも、力の誘惑に負けず人である事を貫く姿勢は俺達の理念の体現だと思う。これで納得できないなら、惚れた弱みと笑ってくれて構わない」

「分かった、分かったから早く退こう。私達は禍の団でも肩身の狭い英雄派。主流の旧魔王派の邪魔をして、難癖を付けられたらたまった物じゃない」

 

 眼鏡を押し上げ、降参のジェスチャーを見せる一の部下に俺は笑みを持って答える。

 

「怪獣大決戦は記録映像で我慢するか。時に我が姫の解放は?」

「安心しろ、遠からず自動で結界が解除されるように仕込んである」

「ならば結構。帰りも頼―――」

 

 かの偉大な魔術師ファウストの子孫にして、神滅具”絶霧”を所有するゲオルク。

 基本的に戦う事しか出来ない俺は、いつもこいつに頼りきり。

 彼が居なければ、俺の行動は成り立たないと断言しても構わないだろう。

 多用な魔術に神器による空間操作。裏切らないと確信を持てる忠誠心。

 その価値は右腕を超えて半身に相応しい。

 そんな彼の肩に手を置こうとした瞬間だった。

 空間が軋み、そこから伸びてきた黄金の腕が友の首根っこを掴んだのは。

 

「ゲオルク!?」

 

 恥かしい事に油断していた俺が反応するよりも早く、腕はゲオルクを歪の中に引きずり込んで姿を消してしまう。

 何者の仕業か全く分からない。

 アレは鎧……そう、ヴァーリと兵藤が纏う物と同じ属性を感じた。

 しかし、彼らの色は白と赤。金はどちらにも属さない色合いだ。

 

「……探そうにも、何から手を付ければいいんだ?」

 

 まさか外で戦闘中のカテレアに泣きつく訳にも行かず、仲間を頼ろうにも魔王と天使長が手を加えたらしい強固な結界を超えて通信できる手段も持っていない。

 困った、大変に困った。

 

「まぁ、ゲオルクなら何とかなるだろう」

 

 さすがの俺も、人外のトップを相手にした連戦をこなせる自信が無い。

 良くて一人、悪ければ何も出来ずに倒される危険性が付き纏う。

 奴らは俺の槍を見た瞬間、確実に死に物狂いで襲ってくるだろう。

 よって、何処の勢力にも発見されない事が第一となるわけだ。

 今は静観し、結界に何らかの綻びが見つかり次第の撤退がベター。

 赤龍帝ならば何も考えずに仲間を助けに走ったかもしれないが、派閥を束ねる身で軽挙妄動は許されない。ゲオルクもそれを分かってくれると確信している。

 だが安心しろ、万が一捕まったなら必ず助けに向かう。

 信じているぞ、我が朋友。

 

 

 

 

 

 第三十話「破綻する未来絵図」

 

 

 

 

 

 歩くだけ歩いて、それでも景色は変わらない。

 心持ち霧が薄くなってきた気もするけど、他に変化を見つけられる事はなかった。

 これはあれですか、無限ループの閉鎖空間。

 脱出の為には、別方向からのアプローチが必要かも。

 

「先生の授業を信じれば、無限とゼロは本質的に同じ筈。つまり何処にも繋がっていないは、何処でも出口に成り得るってこと?」

 

 私が欲しいと曹操は言っていたのだから、このまま日干しにするとは思えない。

 どうせ何処かで見ている筈だけど、出してと頼むのも癪に障る。

 ここは自力で脱出して、嫌味の一つも言ってやらねば気が済まない。

 さて、前段階として他に誰も居ないことは確認済み。

 これなら全ての神経を探知に向けることが出来る。

 目を閉じて意識を外に全て向けて集中。平行して気を最大出力で放ちソナーとして活用を試みた所、意外とあっさり違和感を見つけた。

 手始めに力押しを試しますか。

 結界を風船の一種と捕らえれば、一箇所穴を開けるだけで破裂するよね。

 と言うことで、イメージしよう。

 この右手は、時間も空間も世界さえ貫く万象の矛。

 そう自分を騙しきれ。

 

「ダメ、か」

 

 しかし、そう上手くもいかない。

 手刀は空しく空を裂き、何の手ごたえも返してこなかった。

 だけど完全に無駄って訳でもないっぽい。

 おそらく、足りないのは出力。

 指先にファジーな差異を捕らえたことで、私は確信を得る。

 

「……これも先生の思惑の内ですか。想定しているなら、教えてくれれば良いのに」

 

 実は会議に参加するに当たり、自分の力だけで対処できない事態に陥った場合の保険として一本の短剣をアザゼル先生より渡されている。

 発動すれば莫大な力を得られると聞いているので、正に今の状況下に最適。むしろ、こうなると予測されていたとしか思えないピンポイントさ。

 

「今回はお遊びで攫われてあげた、とは状況が違う。こうしている間にも外がどうなっているか分かりませんし、皆に心配をかけない為にも使っちゃいましょう」

 

 問題は何が起きるのか予測できないこと。

 使えば分かるとドヤ顔ばかりで、一切の説明を拒否しやがりましたから。

 

「結果オーライ上等。お爺様も認める技術者の誇りに期待です」

 

 腰の後ろに納めていた短剣を引き抜き眼前に掲げると、ソレは形を変えていく。

 パーツが分かれ、間から噴出すのは黄金の光。

 ここだ、そんな何かを掴んだ私は力を込めてキーワードを叫ぶ。

 

変身(バランスブレイク)!」

 

 一瞬の閃光が周囲の霧を消し去り、再び薄暗闇が戻ると体が妙に軽い。

 手の中は空。しかし、全身を黄金の鎧が覆っている。

 薄々感づいてはいたけど、先生はやはり厨二病を全力で発症中だと思う。

 デザインは日朝の特撮ヒーロー上位形態。鏡が無いので詳細は不明ですが、バン○イ辺りが商品化すると爆売れしそうな格好良さじゃないかな。

 おそらくモチーフは赤白の鎧。オマージュして改良した”ぼくのかんがえた最強の鎧”って主張をひしひしと感じるのも……まぁ、仕方が無い。

 さて、全ステータスに莫大な補正がかかっているっぽい今ならいけそう。

 さっきと違って、ガラスの引っかき傷の様な歪を視認出来るしね。

 

「香千屋流拳技”鎧貫拳”」

 

 何となく、技名を叫ばなければならない気がした私です。

 穿心掌と基本的には同じでも、掌を閉じて拳を作り使用する関節を一つだけ減らす。

 鎧武者を拳で打ち抜く事を目指したこの技なら、きっと貫けると思う。

 これはイメージじゃなく確信。さあ、行きますか!

 果たして放った拳は虚空に消えた。

 手応えあり。そして次元の向こうに居た誰かをフィッシュ!。

 出来る出来ないじゃなく、無理やり引っ張り込んでみた。

 

「な、何事!?」

「これから幾つかの質問をします。素直に答えて下さい」

「そのまえに状況を―――首がっ、首がっ!?」

「この私が、曹操の仲間を殺すことに躊躇するとでも?」

「違ったらどうする! 三大勢力が勢揃いの状況下だぞ!?」

「証拠隠滅って便利な言葉が」

「待てーっ、そもそもお前は何処の誰だよ!」

「通りすがりの魔戒騎士、もしくは黄金闘士」

「分かる言葉で話せぇっ!」

「ちょっとくすぐったいぞ」

「ギャーッ!?」

 

 拉致った眼鏡の男を相手に、誠意ある交渉が始まる。

 そして五分後。大変素直になった男から得た情報は、満足に足る内容でした。

 眼鏡の名はゲオルク。やはり曹操の部下で、私をここに閉じ込めた張本人とのこと。

 上司にLOVEしちゃった女へ告りに行くから、送迎頼むと言われたらしい。

 まぁ、その辺りの事情はどうでも良いので割愛。

 

「さーて、ぼちぼち出ますか。自分で張った結界なら、放置してもOKですよね?」

「……疑問が一つ。設定が甘かったにしろ、何故に神滅具の能力を力技で突破出来たのでしょう」

「人間、やってやれない事が無い証明かと」

「根性論!?」

「超常現象対策で一番大切なのは、イメージであると私は学びました。神滅具だから無理、そう思っている内は超えられないと思う私です。大事なのは心の有り様、異論は認めません」

「……もういいです。せめて最後に名を教えて頂きたい」

「方々で名乗ると、面倒事が増えそうだから嫌」

「そこを何とか。曹操に”通りすがりのダークヒーローにボコられました”と報告する身にもなってくれ。正気を疑われるとか避けたいんだ!」

「なら、何時か必ず取り立てる貸し一つ」

「鬼か!」

「色々と捻じ切って欲しいなら、最初からそう言ってくれれば……」

「格好良くて女神の如き寛大なお心の人、私の失言を見逃して頂きたい!」

 

 見せたのは、地に頭をこすり付ける平伏っぷり。

 ある意味で大変潔い芸風、嫌いじゃありませんよ。

 

「……曹操にストーキングされる未来に戦慄中の娘、それが私です」

「げぇっ、関羽!?」

「と言うか、一人で閉じ込めた空間に他の誰が居ると」

「いやその、助け出された後に残った方だとばかり」

「納得したならもう十分でしょう? こちらにも都合がですね」

「あ、はい」

「それでは再見」

「待ったぁっ!」

「あ?」

「無理やりこじ開けられたなら、どんなリバウンドが来るか分からん! やられる前に私が解除するわぁぁっ!」

 

 眼鏡が歯を打ち鳴らした瞬間、ぐにゃりと景色が歪んだ。

 何とも言えない感覚に襲われて、ほんの一瞬だけ目を閉じてしまう。

 再び目を開けると、そこは色を取り戻した勝手知ったる学び舎。

 但し、玄関ホール上空と高度が少しばかり高い。

 普段なら楽に着地できるのに、今は不慣れな重量バランスが災いする。

 着地地点を確認する余裕も無く自由落下。結果的に真下の何かを踏み潰してしまった。

 

「ぐっはっ!?」

「ああああ、沖田が沖田が怪しい鎧にっ!?」

「え、弦さん」

「その声は姫様っ!?」

「はい、爰乃です。この姿はアザゼル先生に貰った、神器っぽい何かの効果。先を急ぐので細かい話は後にしましょう。とりあえず敵が来た、この認識でどうです?」

「問題ありません」

「時に、かなり大ダメージなこの人は……?」

「……お気になさらず結構です。こちらで対応致します」

「味方なら謝罪を頼みました」

「敵……ですので…大丈夫かと」

 

 気配を消していたのもまずかった。

 人の死角である真上から全体重を乗せた意図しない飛び蹴りは、新撰組コスな男の背骨を致命的に粉砕。白目を向いて気を失わせてしまう結果を生んでいる。

 で、でも、敵なら大丈夫。

 どうせ曹操関連ですよ。うん、そう決めた。全力で逃げ出す私が最後に聞いた”また決着が付かなかった!”とのマジ泣きは風の音だからっ。

 ゴメン弦さん、獲物を奪って大変申し訳ない。悪気は無かったんだよ……。

 心中で手を合わせながら、向かうのは校庭。

 本当は一番心配しているであろうイッセー君に無事な姿を見せたかったけど、先生が大暴れしている様子が見えたので優先順位を変更している。

 だって鎧の解除方法が分からない。

 快適で不便は感じませんが、感覚が微妙に狂うから早く脱ぎ捨てたいんだよね。

 

「白龍皇は何処で油を売っているのよ!?」

「女の尻でも追っかけてるんじゃね?」

 

 鎧効果であっという間に到着した私の耳に飛び込んで来たのは、凄まじい殺気を放つ扇情的な衣装のOL風悪魔と、何時も通りへらへらと軽い総督様が火花を散らす姿。

 

「本当に貴方は戯言ばかり。追い詰められている現状で、よくも口が立つものですわ」

「勝負事は大逆転で勝利してこそ面白い。もう少し遊びたかったが、教え子も到着しちまった。ここいらで真打登場と行こうじゃないか」

「蛇を飲んだ私に勝てると?」

「勝つさ。知らない奴が多すぎるから言うがな、戦にしろ博打にしろ始まる前に勝敗ってのは決まっている。お前はどれだけの仕込みを済ませた? 下準備にどれ程の時間を費やした? 俺は自信を持って言うぜ、出来る事は全てやったとな」

 

 そう言いながら先生が取り出したのは、意匠の施された一振りの剣。

 先日の授業で教材として見せられ、実際に手にもした世界で一番有名な聖剣だ。

 輝く刀身をゆっくりと晒して行く様は、物語を彷彿させる美しさ。 

 

「そ、その剣はまさか!?」

「そのまさかだ。苦労して集めた欠片を苦心して再結合した、対悪魔の一点ならば間違いなく世界最強、本邦初公開のエクスカリバー完全体。いざとなりゃ交渉材料にと持ち込んだ訳よ」

「……恐ろしい男」

「世界に聖剣は数あれど、悪魔が偏執的に破壊したのは歴史を振り返ってもコレだけだ。果たして魔王級にどこまで通じるのか試させてもらうぞ?」

 

 先生が超楽しそうです。

 てか試すとか言ってますけが、既に実験済みでは。

 お爺様相手に軽くテストした結果、掠っただけでゴリっと力が抜けると聞いてますよ?

 神棚拝めるお爺様が嫌がる波動を、常時だだ漏れの悪魔コロリ。魔王も同席する大切な会談に持ってくるとか、チャレンジャー過ぎませんかね……。

 そんな杞憂を証明するかの様に、OLさんが嫌な汗をかいているのが見える。

 

「わ、私は偉大なる真のレヴィアタンの血を引くカテレア・レヴィアタン! 堕天使如きがエクススカリバーを持ったとしても負けはしない!」

「御託は良いから来いよ」

「舐めるなっ!」

 

 かなりの魔力を纏って飛び出したカテレアさんは、応じるように加速した先生とXを描いて大空で交差。しかし、結果は天と地程に違った。

 先生の一撃が女性を断ち切るだけでは飽き足らず、遥か後方の地面までを抉っているのに対し、悪魔の成果は僅かに大気を震るわせるだけ。

 多分、先生なりの嫌がらせだね。”俺の方が優れているんだ、分かるか?”ってメッセージを込めて相殺したんだと思う。

 

「ウギャァァアァッツ!!!!」

「聞こえちゃいないだろうが。コイツのダメージは、インチキシスターでも手を焼く厄介さでな? 一寸した怪我ならまだしも、致命傷からは絶対に助からんよ」

「きさまきさまきさまきさまぁっ!」

「はははは、その状態からどれだけ生きるか楽しみだ。って夏休みの観察日記っつーの」

 

 鬼だ、鬼が居る……堕天使だけど。

 未だに何がどうなっているのか分からない私ですが、この女が先生に喧嘩を売った事だけは理解できる。私なら絶対に総督を遊び相手には選ばない、だって怖いから。

 そもそも先生は武人じゃなく学者。

 私達が勝利の為に日々の精進を繰り返すのに対し、この堕天使は過程を重視している。

 だから勝利はおまけ。

 エクスカリバー性能検証の結果、悪魔を倒してしまっただけ。

 きっと倒せなくても、それはそれで満足して逃げたに違いない。

 

「唯では死ぬものかっ! 一緒にあの世へお供なさいっ!」

 

 考え事をしている間に動きがあった。

 女悪魔が残った体に怪しげな文様を浮かび上がらせ、両腕を触手へと変化。

 先生に絡み付こうとグロいソレを伸ばすけど、観察対象から目を離す研究者は居ない。

 聖剣の一振りで薙ぎ払い、得意のニヒルな笑みを浮かべて言った。

 

「おいおい、自爆するなら先に言えよ。サンプル採取はまだなんだが?」

「おのれおのれおのれっ」

 

 今にも憤死しそうな形相も当然です。

 私が同じ立場なら何をしていたやら。

 

「さすがに魔王級のオーバーロードは俺も怖い。悪いがさよならだ」

「この私が―――」

 

 両手でしっかり破魔の刃を握り、振るわれたのは全力の縦一文字。

 左右対称に獲物を断ち切り、断面から一滴の血も流させる事すら無い。

 これぞ最強の対悪魔兵装の証明。

 刃が触れた先から肉体を消滅させる聖なる光は、恐ろしい事に伝播する。

 結果、後には何も残らなかった。彼女が生きた痕跡は、何処にも残っていない。

 

「とまあ、俺が本気になりゃこんなもんだ。どう思ったよ女生徒さん?」

 

 物陰からこっそり見守っていた私の元に舞い降りる先生は、顎に手を当て自信満々。

 気配を消していたのに、よくもアッサリ見つけてくれますね。

 小猫にも見破られるようになってきたし、腕が落ちてきたのかな?。

 

「口だけじゃなかったと知って、若干びっくりです」

「オブラートに包めよ」

「”素直”に答えろと、会議の前に釘を指したのは誰でしたか?」

「こりゃ一本取られた。それよりも大人しく見ていた所から察するに、何が起きているのか分かっていないな?」

「その通り……と言うか、こうなることを予測してたんじゃないかと疑っています」

「お前が攫われる確立は五分五分と踏んでいたよ。だから二重に保険をかけたんだ。そして結果的に爰乃は問題なく対応した。この結果に何の不満がある」

「文句はありませ―――二重? この変身アイテムだけじゃない?」

「間に合わなかったがな」

 

 ぶっちゃけ、先生が私に一から十までを説明する責任無いんですよね。

 お爺様に約束したのは身の安全だけ。

 そこを守っているなら、文句を言う筋合いはありません。

 

「とまあ、それは一先ず忘れろ」

「はい」

「んで、説明の前に実績のある監督兼役者にお仕事の依頼だ」

「聞きたくない……」

 

 私の肩に手を乗せ、逃げる事を封じた堕天使は言う。

 

「俺の書いた台本で、即興劇やろうぜ」

「また茶番のお時間ですか!?」

「そう言うなよ。今回は戦争回避とヴァーリの離反を封じる為に、致し方なく不本意ながら演じざるを得ないんだ。なぁに前回より余程簡単、爰乃なら出来る」

「……断ると?」

「ちょっと和平がぽしゃって、疑心暗鬼のホットな戦争が始まる程度かね」

「やります、やらせて下さい!」

「いい子だ」

 

 私は一生この人外に頭が上がらない気が。

 

「その代わり、何かご褒美下さい」

「おうよ」

「それと鎧を―――」

「ああ、鎧は必要だから解除しない。利用期限ギリまで纏ってろ」

「脱ぎた……はい」

 

 何らかの要因が取り除かれたのか、警備の人外が動き出した黒天の空は騒がしい。

 今、何が起きているのか。

 また、これから何をすべきか。

 何も知らない私は、悪い大人の片棒を担ぐ羽目になるのでした……。


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