赤蜥蜴と黒髪姫   作:夏期の種

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これにて停止教室編終了。
タイトルに居た筈のヴァンパイアとは何だったのか……


第33話「純粋で単純なたった一つのこと」

 俺は、絶大な力を手に入れた。

 代償は初恋で、いつか告ると決めていた幼馴染の命。

 見ろよドライグ、蜥蜴が龍を追い詰めているぞ。

 最初からコレが出来ていれば。

 もっと以前からこの力を得ていれば。

 ギャー介に言った事は、やはり間違っていない。

 力が足りなかった俺は、跳ね返って来た現実に打ちのめされているのだから。

 

『……気にも留めていないようだが、今の無茶で寿命が千年単位でゴッソリ削れている。いくら悪魔が永遠に近い時間を生き―――』

 

 最低保障が一万年の命だとしても、ほんの一割じゃないか。

 人間換算でたったの十年と少し。

 それを捨てるだけで復讐が果たせるなら安い安い。

 

『さらに言えばこの状態も長くは続かん。赤翼は遠からず消失し、また元の木阿弥だ。驕っている暇は無い、遊ばずに追い詰めて迅速に倒せ!』

 

 任せろ。夢を失った俺に残された最後の望み……果たさずに終われるか!

 それにこいつを棺桶に突っ込んだ後は、金ぴかを始末する大仕事も待っている。

 今やあらゆる点で白を上回った赤だ。終わりにするのも簡単な事だとも。

 蹴り飛ばしたヴァーリが起き上がるよりも早く右手を奴に向け、翼と篭手へと命じる。

 二つの神器が合唱して形作る単語は、魔王の血筋すら圧倒する二天龍最強の言霊だ。

 

『Booster Divide!』

 

 ヴァーリも黙って見ている訳ではない。同じく俺へと手を伸ばし半減の力で相殺を狙うが、赤と白の複合能力は単体の力を遥かに凌駕する。

 ドライグの力でアルビオンの半減が”倍加”。

 つまり、一発で四分の一に落す力を持っている。

 そして俺に届く半減は―――

 

『Divider Boost!』

 

 維持コストと増幅間隔を”半減”した赤龍帝本来の力を止められない。

 

「いつだって皇帝を倒すのはジョーカーの仕事。そして何も出来ない笑われるだけの道化ってのは、ジョーカーと同じ意味。それを忘れて俺を侮ったお前の性根が敗因だ」

「……今日は驚くことばかりだ。まさかこの俺がこうも一方的にっ!」

「この状態になってやっと分かったよ。象が蟻を踏み潰す、強者が弱者を踏み躙る感覚って奴をな! 俺はお前と違って余裕ねぇから覚悟しろ!」

 

『Booster Divide!』

 

 さらなる力の発動で、奴を覆うオーラはさらに激減。

 動きが鈍った所を見計らって、サッカーボールキック。ヴァーリに砂を食ませておく。

 

「今のは仲間の悲しみの分」

 

 ご自慢の翼をアスカロンで引き裂き空中へと打ち上げ、同時に俺も空へと上る。

 狙うのはゲームでお馴染みの両手を組んで放つハンマーナックル。無抵抗のまま地面に叩きつけられ、クレーターを作り上げた仇敵の顔を踏み躙って続けた。

 

「これは失意の内に純潔を散らせた爰乃の分」

「待て、それについては否定を―――」

 

 何か言っているが、ガン無視に決まってんだろ!

 ああくそ、怒りが収まらん。

 蓄積されたダメージも半減させちゃ居るが、怪我そのものを回復出来た訳じゃない。それにクズを殴る度に発生する反作用と、ツインドライブ効果を使う度に失われて行く生命力の損失により半死半生な俺です。

 多分、鎧の下は血と油汗で満ち溢れていると思う。

 結局、自身が強くなっていないからこうなっちまう。

 上げ底、借り物の力は、何時だって使い手をも滅ぼす諸刃の剣。

 今の俺は、細い蝋燭に油をぶちまけて大火を形作っているだけの虚栄だ。

 相棒に言われるまでも無く、タイムリミットが迫っているのことも重々承知さ。

 だが、ボチボチ弱体化も十分。

 その弱った体で、俺の最強必殺を耐えられるか?

 

『Divider BoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』

 

 とっくに超えた限界を無視して、さらに倍倍プッシュ。

 全身の筋肉が断裂し、毛細血管が破裂するのも構うものか。

 鎧が外殻として機能する限り、俺の体は精神力で動かせる。

 かつてライザーを潰した拳技で葬るべくヴァーリを無理やり起こ―――せない。

 

「これほどの愉悦を得られたのは、人生で初めてだよ」

 

 どこに体力が残っていたのか、魔力弾をゼロ距離で撃たれて後退する羽目に!。

 さすが痩せても枯れても白龍皇。底力は侮れない。

 こうなるのが嫌だからネチネチ削ったんだが、まだ足りなかったらしい。

 

「アルビオン、今の兵藤一誠相手ならば禁を破っても文句を言われないだろう。勝つ為に覇龍を見せるしかあるまい」

『それはあまり良い選択ではないな。魔力のほぼ全てを失った今の状態で使えば、お前とて死ぬ。何よりもこの瞬間でさえ手に負えない進化を遂げたドライグの覇龍が誘発したなら、問題どころの騒ぎではないぞ』

「俺の最善を超える化け物の登場は、願ったり叶ったりだ。兵藤とて隠し芸を見せたのだから、俺も応じなければ失礼に当たる。思い残しは身から出た錆にしても、宿命のライバルに軽蔑されたまま逝く事のみ。腹を括れアルビオン」

『……共に道を進むと決めた時より覚悟はしていた。せめて末期の唄は私が』

「済まない」

『我、目覚めるは覇の理に―――』

 

 悪魔が念仏を唱え始めた、そう楽観していると相棒の顔色が変わった。

 

『止めろ、何としても覇龍を使わせるな! いくらお前がインチキを重ねても、アレを先に使われれば形勢が引っくり返る! 手段は問わんから決めてしまえ!』

 

 ドライグの声色に余裕はゼロ。俺は引き上げた力を必死に生み出した掌サイズの魔力弾に譲渡し、言葉の意味を確かめる時間も惜しいと全力投球を行う。

 かつては豆粒サイズで山が形を変えた。

 まして今回は、あの時を遥かに上回る増幅をサイズアップした物に与えてある。

 予想される破壊力は未知数。仮に一帯が吹っ飛んでもおかしくない。

 お前を殺した所で日常は元に戻らないが、せめて跡形も無く消滅しろ。

 

『……なぁ、相棒』

 

 どうした?

 

『煽った俺が言うのもアレではあるが、お嬢ちゃんの監禁場所を聞きだす前に消し炭にしても問題はないのか? 巻き込んでお前が殺す羽目にはならんよな?』

 

 ……へ?

 

『まさか、知らん間にお前の中で死んだ扱いになってたり?』

 

 ……陵辱されて息を引き取ったんじゃないっけか

 

『どんな姿であれ勝てたなら返す、奴はそう言ったぞ』

 

 あるぇ?

 

『……異空間にでも閉じ込められて居る事を祈れ。そこいらならアウトだ』

 

 やばっと思うも時既に遅し。

 呪文を唱え始めたヴァーリは、集中しているのか防御の素振りもしやしない。

 殺った、その確信が現実に置き換わるかと思った瞬間だった。

 

「先生との約束で覇龍は禁止。貴方も男なら、死んでも約束事は守りなさい」

 

 突如飛び込んで来たもう一人の敵が、短距離ワープの速さで射線上に割り込んで来る。

 そしてそのまま何処かで見た動きで俺渾身の魔力弾を回転軸に巻き込む形で絡め取り、小脇に抱えていた剣を用いたティーバッティングでホームラン!。

 反発力に耐え切れず剣は半ばからへし折れ、バッターも腕を痛めたっぽいがな。

 大空の彼方で上がった極大の花火を見ながら思う。

 なんつー非常識な奴。親の顔を見てやりたい……と。

 

「上役も動き出し、抗争も終了へ秒読みを開始しています。双方禍根はあるでしょうが、もう子供の喧嘩は止めなさい」

「……しかし」

「割って入らなければ負けている人に、発言権はありません」

「ぐぬ」

「と言うことで、ヴァーリは了承しましたよ」

 

 突然乱入しときながら、勝手に仕切るコイツは何様か。

 これだけでもカチンとしたのに、次の一言でガソリンを注いできやがった。

 

「そちらの知人関係は、アーシアが直せる範囲の怪我人のみ。先生が政治で首脳会談を収めた様に、現場も貴重な実戦を想定した訓練と思って手打ちにしましょう」

「ざけんな! なら、爰乃はどうなる。尊い犠牲と割り切れとでも言うのかよ!」

「その件につきましては、その、なんと謝って良いのやら。悪ノリが過ぎたと反省しています」

「ゴメンで済んだら警察要らねぇよ。俺に拳を収めろと要求するなら、お前ら二人の首を寄越せ。悪魔に無料で願い事を出来るとでも思ったか?」

「……イッセー君、鈍感な君に忠告だよ。これ以上の感情の発露は、冷静になった時に辛くなるから止めた方が」

「馴れ馴れしく呼ぶな!」

「あああああ、ボイスチェンジャーの止め方が分かれば!?」

「兵藤が間抜けなだけだ。俺なら登場した時点で気付いているだろう」

 

 よりにもよってアイツの口調を真似するとか、宣戦布告と取ってもいいよな?

 そういや、他の仲間はどうなったのかと首を動かしておく。

 木場と小猫ちゃんは……いつの間にか居ない。

 残ってんのって、倒れた樹木の陰で震えながら丸まっているギャー介だけか。

 奴は本当に戦ったのだろうか。

 返答次第で許さんから、覚悟しておけ。

 

「言葉が通じないなら、行動で示します。これは不可抗力ですからね?」

 

 ほんの僅か、身内の事を考える意識の間隙を突かれた。

 ゆらりとした動きから肉薄され、伸ばされた手はパーを象っている。

 

『Booster Divide!』

 

 主と違い、しっかり反応したドライグの超半減が発動されて一安心。

 そう思っていたら、やけにゆったりとした拳には効果が無かった。

 当人が放つプレッシャーは激減したのに、優しく触れる動作に力は皆無。

 これ以上何も減らせない自然の動きは、神器との相性が悪いらしい。

 その直後だった。訓練で慣れ親しんだ、内臓をシェイクされる筆舌し難いダメージが俺の体に襲い掛かったのは。

 これはまさか、そう思う暇も無く次いで体が反転。反射的に翼の推進力を利用しての脱出を試みるも、アイツ得意のベクトル操作の前には無駄な抵抗にしかならない。

 反撃も忘れる混乱の中、背中から落されて大の字に青天井体制である。

 

「ヴァーリ、力が残っているから半減お願い」

「分かった、アルビオン!」

 

『Divide!』

 

 俺と合せて八分の一にまで力を削られた結果、黄金の鎧はついにその力を失った。

 金色の粒子となって各部が失われていくと、中から出てきたのは求めて止まなかった幼馴染の姿。ばつが悪そうな顔をしながら、腕を組んで俺を見ろしている。

 外見上何処にも怪我は見えず、着ている制服にも乱れは無い。

 

「じゃーん、爰乃さんでした」

「え、ちょ、おま?」

 

 これは夢か幻か。

 ふらふらと立ち上がり、ぺたぺたと少女に触れてみる。

 何時も大立ち回りを演じる癖に、怪我一つ無いきめ細かなな白い肌。

 ほのかに椿が香る髪は、絹糸の手触り。

 思わず揉んだおっぱいも、手のひらに余るサイズで記憶と合致する。

 

「……本物?」

「何を基準にそう判断したのか、小一時間問い詰めたい今日この頃」

「手触りとか匂いとかのトータルです」

「イッセー君らしいと褒めるべきか、軽蔑するべきか。先に宣言しておきますが、洗脳もされてないし、誰かに操られてもいません。断るに断れない事情があって、茶番に付き合っています」

「え、そ、それじゃあ……今までの会話は筒抜け?」

「……聞かなかったことにする?」

「かはっ!?」

 

 真顔で目を逸らされた瞬間、俺の中で緊張の糸がぶちんと切れた。

 ここまで気力、根性、復讐心の合せ技で持たせてきた俺です。

 本人を前にして恥かしい真似を続けてきたと知った今、穴があったら入りたい。

 思い返せば、普通に愛を囁くより千倍のLOVEをアピールしてしまった。

 酷使に酷使を重ねた体が、自衛策として意識を落したのも仕方が無いと思う。

 

「過程はともかく、よく頑張ったね」

 

 維持出来なくなった鎧が消え去り、膝から崩れた所までは覚えている。

 記憶が定かではないが、確か優しい労いの声と柔らかな何かに抱き止められた気がした。

 

 

 

 

 

 第三十三話「純粋で単純なたった一つのこと」

 

 

 

 

 

 戦闘後の処理やら何やらは、オブザーバーである私の管轄外。都合よく現れた先生にヴァーリを含めて丸投げ……と言うか、部外者ですからね!?。

 さすがに仲間と顔を合せずらい事もあり、待機場所に選んだのは茶道部の部室。

 畳が使える落ち着いた空間は、外の喧騒を遮ってくれるので助かります。

 ここへ来る途中に、私とイッセー君の怪我は回復済み。

 癒し手は野戦病院化している保健室で、八面六臂の活躍をしていたアーシアです。

 拍手一つ怪我人を健康体に戻すとか、そろそろ本気で神の領域ですよね……。

 

『相棒が意識を取り戻した。後は任せるぞ』

「任せて下さい。また何れ、二人だけで話しましょう」

『楽しみにしている』

 

 もぞもぞと動いた頭を据わりの良い場所に戻し、ぼんやりと目を開いた彼が覚醒するのを少しだけ待つ。徐々に脳が立ち上がっていくのに比例して目の焦点が合い、数秒後には大きく目を開いたイッセー君。

 

「おはよう」

「……おう」

「ほら動かない。アーシアが治せたのは怪我だけ。失った体力や魔力、それに生命力は自然回復待ちだよ。先生曰く、どうして生きているのか分からない半死人は安静にしてないと」

「一つの夢が叶った感じなんだが、これは現実だよな?」

「現実の大サービスです」

 

 イッセー君を膝枕しながら、手持ち無沙汰なので髪を撫でる。

 

「ドライグから聞いたけど、寿命を代償にしちゃったんだ」

「気にすんな。何かを犠牲にしなけりゃ、蜥蜴が龍に噛み付ける筈が無い。例えるなら金の代わりに命を支払い武器を買っただけの事だからよ」

「……そんなに私を失ったことが悲しかった?」

「多分、部長やアーシアが同じ目に逢ったとしても、ここまでの喪失感は無いと思う」

「ふーん」

「水を挿された形だが、ヴァーリを倒せた今なら言っても許される……よな」

 

 言わんとしている事がもう分かった。

 だから指でおでこを弾き、言葉を遮りながら釘を指しておく。

 

「自分でも分かっていると思うけど、制御も出来ない力に支えられた強さを私は認めない。はっきり言って今日の君は無様だった。怒りで我を忘れたり力に溺れるだけならまだしも、周りをちゃんと見ていた? 視野が狭くなっていなかった?」

「えっ」

「例えば最初に魔力弾をばら撒いていた時、危うく小猫に当たりそうに何度なったか知ってる? 最後の大きいのなんて、街ごと焦土になる威力だったよね?」

「……そう、かもな」

「私が空に打ち上げなかったら、両親に友達、ありとあらゆる大切な物をその手で壊していた。そんな事も指摘されるまで気付けない状態を誇っちゃダメ」

「……マジかよ」

「強さは武力。武力は暴力を意のままに操るもの。使えば使うほど滅びへと進む力は本末転倒です。だって、死ななければ負けじゃない。無様を晒しても、最後に生き残った方が勝者なんだから」

「……確か、似たような事をライザーん時にも言われたっけな」

「そんな事もあったね」

 

 意気消沈、イッセー君は今の立ち位置を理解したっぽい。

 目を逸らすように顔の向きを変え、泣き出す寸前だった。

 

「千年を捨てて目先の勝利を掴むより、同じ時間をかけて同様の高みに至ろう。それが仮に復讐だとしても、自暴自棄の勝利を死者は喜ばないと思う」

「……肝に銘じるわ」

「大丈夫、ステップアップは私が保証します。例えば最近の組み手、遊びのない掛け値なしの本気で相手している事を知らないでしょ」

「え、まじで? 手を抜いてたんじゃねえの?」

「か弱い女の子を何だと……一発当たればKOされる身にもなって欲しい」

「そかー、強くなってるんだな。ちなみにどの程度追いついたよ?」

「ふふふ、彼我の戦力差を理解するのもお勉強。自分で察してくださいな」

「ケチ!」

「家計を預かる身には褒め言葉です」

「おのれ主婦!」

 

 元気を取り戻したのを見計らって、今回のあらましを語る事にする。

 どうせヴァーリを満足させる為だけの嘘。隠すことは一つも無い。

 

「……俺も、無茶な要求を呑んでまで引き止められる人材になれっかな」

「これからの頑張り次第」

「木場よりも強く……なれ、るかな」

「既に強い可能性が」

「惚れ…た女を振り、向かせ……る……」

「好きの反対は嫌いじゃなくて無関心。嫌だったら一緒に居ないよ」

 

 いつの間にか遠くで雀が鳴き出す時間になっていた。

 比喩抜きで全てを吐き出したイッセー君は限界。ついに寝息を立て始めてしまう。

 

「これからの事は遊びに命を支払ったお詫び、ご主人様には内緒だからね?」

『そこまで無粋ではないさ』

 

 私は命まで取らないと言う言葉を信じ、体の良いイベントとしか捕らえていなかった。

 確かに結果だけ見ればイッセー君は禁手完全開眼を初めとするパワーアップを果たし、私としても前衛ズとの正確な差を体感することが出来ている。

 でも、現実はどうだろう。

 イッセー君は寿命を失い、暫くは戦う所か日常生活がやっとの体。

 全ては何処かでアーシアさえ居れば大丈夫、そう甘く考えていた私が全部悪い。

 こんな事で償いになるとは思わないけど、せめて形として示したい。

 だから彼の欲しがっていた物、その一部を差し出す事を最初から決めていた。

 そっと手を添えて顔を近づけ、唇を合わせてからゆっくりと離す。

 

「私が誰と結ばれるにしろ、女を自覚してからの初めては君の物。意識が無い状態じゃないと捧げられない、根性なしの女でごめん」

『今回のは半分自己満足だからノーカンとしても、相棒は有力株かい?』

「……さーて?」

『まぁ、お互い特別ってだけでも一歩リードと思いたい』

「飼い主思いのドラゴンな事で」

 

 イッセー君の嫁二人に先駆けて唇を捧げてしまった後ろめたさを感じつつ、私は膝からそっと彼を下ろし窓を開けて外を見る。

 クレーターだらけ、校舎は偶然無事の部室棟を除いて全壊のこの状況。

 認識を阻害する結界とやらが、正常に作用してるのかとても不安です。

 さすがに今日は休みですよね?

 コカビエルさんの時とは違いますよね?

 疑問を解消すべく、アザゼル先生の居るであろう会議室に向かう私だった。


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