赤蜥蜴と黒髪姫   作:夏期の種

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フェニックスさんちのメイドは古式ゆかしい上品なロングスカートタイプ。
子安の担当だけ特殊っぽいのは仕様です(


第36話「フェニックスさんちの新人メイド」

 俺の日常は、あの日を境に一変した。

 グレモリーとフェニックスを結びつける華々しい結婚式、あれを赤龍帝と小娘に掻き回された時から大切な歯車が欠けてしまったとしか思えない。

 例えばレーティングゲームの公式戦は連戦連敗、それも可愛い奴隷達ではなく俺が原因で。

 第一にドラゴンが怖い。

 龍種を見るだけで体が竦み、生命線の炎が見る影もなく鎮火してしまう無様さ。

 しかし、これはまだ格下相手なら恐怖を押さえ込めるからまだ良い。

 致命的なのは黒だ。

 転生悪魔に少なくない黒髪長髪の女、アレを視認した瞬間俺は駄目になる。

 フラッシュバックするのは、瀕死の体で心底嬉しそうに嗤う少女の笑顔。

 泣いても叫んでも脳に直接流し込まれた激痛と、曝け出した無様な姿を見て落胆する父上と魔王様の目が忘れられない。忘れたいのに鮮明なハイビジョン画質でのリピート再生が止まらない。

 気が付くと、いつもゲームを終わらせるのは俺が発するリザインの一言。

 俺はもう堕ちるところまで堕ちたのだろう。

 外に出て奴らの面影を持つ悪魔に出会ってしまえば錯乱間違いなし。

 屋敷から、自分の部屋から一歩も出られない一生を過ごすのだろうか……

 そんな風に考えた時期が俺にもありました。

 しかし―――

 

「今期も豊作だな……初回版を予約してと」

 

 部屋の隅に移動したベッドの上で、布団を被りながらアニメを見る日々は最高です。

 大枚叩いて時空AMAZENNから入手した4Kテレビと各種ゲーム機にBDの山。

 時間と金は腐るほど有るライザー様だ。

 どうせ家は兄貴が継ぐし、このまま引き篭もり生活を続けても困る奴は居ない。

 しかし、人間界のサブカルチャーがこうも肌に合うとは思わなかったな。

 ギャルゲーはリアスの様に裏切らないし、黒髪を避けてもカラフルな色合いのヒロインは文句一つ言わずに可憐な笑顔を振りまいてくれる。

 RPGのボス戦闘も理不尽な横槍が入る事も無い。

 酷い目に遭うのは虚○脚本の魔法少女やら、変身ヒーローだけで十分だろう。

 そんな訳で一週回り、充実した日々と心の平穏を取り戻した俺。

 たまに顔を合わせる家族、特に蛆虫を見るような目を向けてくる妹が怖い事さえ除けば概ね幸せだった。

 

「ライザー様、お食事のお時間です」

 

 そんなある日、扉をノックされると共に聞えてくる女の声。

 時計を見てもまだ夕方、とても夕食の時間ではない。

 腹も減っていないし別に一食や二食抜いても困らないが、追い返すとレイヴェルがネチネチと五月蝿い小言を垂れ流しに怒鳴り込んでくる。

 面倒毎を避けたい俺は、入れと促すも目線はテレビから外さない。

 さっさと何時も通り台車ごと置いて帰れ、そして俺の王国に静寂を。

 しかし、メイドが立ち去る気配は無い。むしろ許可も無く奥までズカズカ入ってきて、究極防具たる羽毛布団を引き剥がしにかかりやがる!

 

「お嬢様より客人が来ているのだから、さっさと出て来い。と言付かって居ります。余計な手間をかけさせないで頂けませんか」

「メイドの分際で俺に意見するか!」

「へたれ鳥の言葉に耳を傾ける気はありません」

「貴様ぁっ!」

 

 大事なコレクションの為にも炎は使えん。

 だが舐めるなよ、痩せても枯れてもフェニックスが使用人風情―――あるぇ、今の声?

 あっけなく床に転がされた俺は、仁王立ちするメイドを足元からゆっくりと見上げた。

 すらりとした足を黒いストッキングで覆い隠し、紺色のロングスカートが続く。

 黒は不吉だからと、俺付きには白のニーソックスを義務付けていた筈では?

 既に嫌な予感しかしなかった。

 

「ききき、聞かない声だが新入りか……?」

「おやおや、顔を合わせるのは二度目ですよお坊ちゃま」

「初対面じゃないだと?」

 

 続く汚れないエプロンの純白にホッとしつつ、ついに俺は見つけてしまった。

 トラウマスイッチとして機能する体の動きに合せて揺れるアレを。

 

「黒髪……だと」

「ええ、手入れを欠かさない自慢のチャームポイントです」

「レイヴェルの嫌がらせもここまで来たか……」

 

 何かもう詰んだ感しかなかったが、俺は二次元に生きると決めた男よ。

 現実から目を背け、結論を先延ばしにすべくペースを落としつつ確認を再開する。

 手折れそうに細い腰を越えて、それなりに実った胸元を通過。

 体つきは悪くない、望むなら抱いてやらん事も無いな。

 さて、最後に顔の美醜でも……見る…か。

 

「お久しぶり」

「あ、はい」

 

 頭にはカチューシャ、記憶と同じ意志の強そうな瞳。凛とした睫。

 何も知らなければ手を出しそうな美人メイドがそこに居た。

 

「メイドさん」

「何でしょう」

「どうしてメイドさんは汚物を見るかのように俺を見下すのでしょう」

「一度は敗れた相手の落ちぶれっぷりに落胆しているからです」

「どうしてメイドさんは妙なオーラを振りまいているのでしょう」

「体質です」

「どうしてメイドさんは拳を握り締めているのでしょう」

「それは貴方を修正する為です」

「女の名前と馬鹿にされるビダンの人の如くですか?」

「はい」

 

 薄々感づいちゃいたが、やっぱり奴だ!。

 今の俺は蛇に睨まれた蛙。自然と正座(アニメで学んだ)を取るのも服従の証。

 テンションがそのまま能力に直結するフェニックスの弱点を突かれた格好だ。

 

「さて問題、私の名前は?」

「こ―――」

「正式名称で略称は不可。間違えるともれなく鞭打を進呈」

「香千屋爰乃様です。マジであの痛い奴は勘弁して下さい」

「ちっ」

「笑顔で舌打ちしやがった!?」

「あ?」

「何でもありません」

 

 もうやだこの娘。

 

「時に爰乃様は、どのようなご用件で当家へ?」

「友達の家に遊びに来ただけですが」

「俺は友達じゃないかと……」

「会いに来たのはレイヴェルですよ。ちなみに暫くお世話になるので宜しく」

「ちょ」

「宿賃として貴方の更正を頼まれた爰乃さん。想像以上のクズっぷりに腕が鳴ります」

「MAZIDE?」

「いぐざくとりー」

 

 やはり三次元は辛い事ばかりだ。

 放心する俺の首根っこを掴んだ爰乃は、俺を引き摺りながら言う。

 

「風紀の乱れは心の乱れ。手始めに身嗜みを整えなさい」

 

 誰にも会わないからと髪はボサボサ、無精髭がお気に召さないご様子。

 爰乃と揃いのメイド服に身を包んだ俺の下僕達に引き渡された俺は、されるがままに風呂へとドナドナ。忠誠心の高い双子が奴に従っている事実に驚かない自分が怖い。

 そういや、最近眷属と会話もしてなかったなぁ。

 さらば穏やかな日常。

 零れそうになる涙を必死に抑える俺は、降りかかる災厄に戦慄するのだった。

 

 

 

 

 

 第三十六話「フェニックスさんちの新人メイド」

 

 

 

 

 

「わたくしを僧侶に?」

「だめ?」

「人間がレーティングゲームに参加するなんて話は初耳ですわ。本気ですの?」

「後見人は魔王様で、私個人の参加資格も公式に取得済み。後は眷属込みのエキシビジョンで実力を示せば、晴れて委員会公認の王様になれる所まで話は進んでいます。ここまで来て辞退すると思う?」

「もう引けませんわね。時に他の眷属はどうなってます?」

「外でバンダナ剣士さんと仲良く戦ってる聖剣使いが戦車」

「お兄様の騎士と同レベルなら及第点ですわね」

「騎士は、魔王様の騎士とライバル関係の弦さん」

「次は殺ります」

 

 弦さんは、主にだけ着させられないと本職顔負けの使用人姿で物騒なご挨拶。

 私もメイド服なので、メイドにメイドが奉仕する絵面が何とも不可解です。

 

「いきなり凶悪なのを……」

「続けるよ」

「どうぞ」

「後で合流予定だけど、女王に堕天使の総督がチートと言わしめた神鳥アンズーの子供。残る片割れの戦車には、中級天使をフライドチキンとしか見ていない日本最強龍種を配置しました」

「貴方の人脈おかしいですわっ!」

「自分でも異常だと思う」

「へ、兵士は? 兵士は普通ですわよね!?」

「ごめん」

「もう魔王が出てきても驚きませんけど、まさかの神滅具勢揃いとかですの?」

「それ半分正解。本物のルシファーの直系な白龍皇をスカウトしちゃった♪」

「どうしてそれだけのラインナップを揃えられますの!?」

 

 冷静になって考えると、単体性能狂ってますよねー。

 正しくワンマンアーミー。

 こいつ一人でいいんじゃないか、を地で行くメンツしか居ないのが異様です。

 

「爰乃」

「?」

「わたくしが加わっても、海に水滴を足す程度の意味合いしか無いのでは?」

「それを言い出すと、ゼノヴィアと私も同じですし」

「人間ですものね……」

 

 レイヴェルが加入しても、どのみち戦闘力ランキングは変動しない。

 自称アドラメレク眷属最弱の弦さんが壁となり、私とゼノヴィアで独占する下位トップ3の仲間入りを果たすだけなのは確かでしょう。

 

「そんな訳で強いだけの人材は最早不要。私が欲しいのは貴方の様に内面を評価出来る、安心して背中を預けられる朋友のみ」

「わたくしに対する高評価は何処から来たのかしら?」

「ふふふ、その問いはブーメランですよ」

「え?」

「どうしてレイヴェルは、一度戦っただけの私を友人と認めたの?」

「……愚問でしたわね」

「でしょ?」

 

 二人で顔を見合わせ苦笑。

 命を懸けた一戦で互いの本質は見えているのに、今更それを口にするのは恥かしい。

 趣味や嗜好の不一致があるにしても、根っこの部分で好ましい事は分かっている。

 私にすれば弱者を気遣い華を持たせた部分は甘いと言わざるを得ませんが、ノブレス・オブリージュを貫こうとする姿勢は美しいと思いました。

 彼女なら王を立て、最後まで支えてくれると確信しています。

 

「内実はどうであれ、愚か者として嘲笑されるのも得難い経験ですわよね」

「それでも、実の兄のハーレムに籍を置くより健全です」

「ですわね。幸い上は爰乃をきっちり評価している様ですし、器の大きさもこの目で確かめてあります。良いでしょう、この話お受けいたしますわ。宜しくお願い致します、マイロード」

「いずれこの選択が正しかった、と振り返る時が来ると約束します。トレード用の駒はライザーに渡せば良いの?」

「ええ、それで問題ありません。拒否するならお父様に言いつけますもの」

 

 最後に他と違って短い間ですけど、と付け加えて人のまま生涯を全うする事を伝える。

 僧侶相当、一般的な悪魔の眷属にはなれない事実を告げても彼女は態度を変えない。

 それでこそ我が王と、満足げに頷いてくれた事が本当に嬉しい。

 

「チーム爰乃の方針は堅苦しい事無し。最終決定権は私にありますが、盲目的に従わず自分の意見をしっかり述べて下さい」

「イエス、マイロード」

「後、公式の場等の不可避な状況を除いて友人としての立場を上位とします」

「TPOは弁えていますので安心……と言いたい所ですけど、そちらの騎士の目が笑って居ないのは何故!?」

「姫様が”始めて”、”能動的”に口説き落とした小娘の値踏みをしているだけですよ」

 

 刀の鍔先を指で上げては下げる仕草が、苛立ちを如実に語っていた。

 これまで自分以外に主の世話を焼こうと考える眷族は居なかったので、初の理知的な僧侶の登場に危機感を感じているのかもしれない。

 もしもそうなら一部正解。

 鳳には貴族の知識を生かして悪魔業界知識の足りないチーム爰乃の文官と言うか、ゲームのマッチングを含めたマネージャーポジションに収まって貰う予定なのです。

 

「ちょ、爰乃、わたくし何か気に障る事をしてしまったのかしら?」

「弦さんは忠誠心高すぎな人でして」

「まさかの嫉妬ですの!?」

「今までは貴方が好きなので入れて下さい、ってパターンしか無かったから……」

「まさか白龍皇も?」

「むしろヴァーリは一回断った現実が」

「つくづくマイロードは規格外ですわね。普通家を傾けてでも引き止めるでしょうに」

「本人にも言われました」

「強さを重視していない事を、こんな形で証明されるとは思いませんでしたわ」

「では私も一つ理論の実証を。聞けば不死鳥は首を落としても死なないとか」

「死にませんけど、止めてくださいませっ!」

 

 この後自分はお嬢様キャラでありメイドの役割を果たせ無い事を必死に説明するまで、弦さんが愛刀から手を離すことはなかったのはご愛嬌。

 某漫画によれば侍の生きた封建社会の完成形は、一人のサディストとその他大勢のマゾヒストにて構成される物らしい。

 弦さんは間違いなく後者。私が特に無理難題を言わないから、代替行為として身の回りの世話をすることで満足している節がある。

 仕事の少ない楽な環境を与えると、逆に弱る人種が居るから世界は広い。

 王様として、部下のケアもちゃんと考えないとだめですねー。

 

「レイヴェル様、紅茶をどうぞ」

「今度は一転して様付けとか……同じ眷属ではなくて?」

「お嬢様は生粋の大貴族のご息女。すなわち姫様よりランクが落ちても、同等に扱うべきと考えます。まぁ、半分は私の趣味ですのでお気になさらず」

「よく分かりませんが、お好きになさいませ。私は対等と考えて呼び捨てますわ」

「結構で御座います」

 

 自前のティーセットで茶会をセッティングした弦さんは、打って変わって上機嫌。

 自分の縄張りを侵さないと分かったらしく、身内として態度を一片させている。

 これでやっと一安心。そう考えた私は、ついつい後回しになっていた話を切り出した。

 

「ロリ双子に任せたライザーが遅いので勧誘を先にしちゃいましたが、本当に私の流儀で根性を叩きなおしても? 自慢じゃないけど手加減出来ませんよ?」

「結構ですわ。塞ぎこむだけならまだしも、ドラゴンが怖い、黒髪の女が怖いとレーティングゲームから逃げた挙句、部屋に引き篭もって夜な夜ないかがわしいゲームに現を抜かす! 負けを糧にしての再起も考えない! 領民から集めた税を無為に浪費するクズに口で言っても分かりませんの!」

「ストレス溜め込んでますね……」

「これが実の兄でなければとっくに見限っていますわ」

「宿代代わりに、責任を持って何とかしましょう」

「お願いします……」

 

 私がメイドに扮する前のお茶会で聞いたライザーの落日っぷり。

 現物も見て事情も概ね理解していましたが、一番近くで見守ってきた妹の情感たっぷりな告白を改めて聞くと、申し訳ない気持ちが湧き上がります。

 何せ魔王様公認の乱入だろうと、責任の一端を担っているのもまた事実。

 一宿一飯の恩義が無くても、力を貸すべき事件なのですから。

 

「おーい、爰乃。挙動不審に逃げようとした悪魔が居たから捕まえてきたぞ。カーラマインとシーリスは知らぬ存ぜぬでな、一応家主に確認を取って欲しい」

 

 さすがに遅いと思っていた矢先だった。

 体のあちこちから刃を突き出したボロ雑巾の足首を握り締め、子供が人形を引き摺る様な乱暴さで私達の元にやって来たのは我らがゼノヴィア。

 少し離れて西洋風の鎧を身に纏った少女と大剣を手にしたお姉さんが真っ青な顔で追従していますけど、二人ともライザーの眷属ですよね?

 橘さんじゃないんですから、見てるだけなのは如何な物か。

 

「お兄様っ!?」

「何故か妙に弱っていたから楽な仕事だった。自称フェニックスと言う事なので、この程度じゃ死なんだろ?」

「死にはしませんけど……熱っ! 何ですのこの剣!」

「こちらに来る途中でアザゼルに貰った、試作型エクスカリバーとやらだ。オリジナルに比べて特殊効果の大半は失われているが、悪魔が触ると怪我をするぞ」

「そんな物でお兄様を滅多刺しにしたんですの!?」

「ちゃんと生きている。どれ、面倒だが抜いてしまおう。さすがに投げすぎたか……」

 

 列車の中か、それとも私が試験を受けている最中か。

 さすが等価交換がモットーの総督さん。デュランダルのデータを得た代価に、中々良いものを与えてくれたものです。

 以前から聖剣を謎空間に収納していたゼノヴィアにとって数を所有する事は苦にもならない筈ですし、サイドアームズを手に入れて安定度が上がったのではないでしょうか。

 しかし、一体何本貰ったのやら。

 黒髭危機一髪末期なライザーから回収しただけでも8本。

 何となく、まだまだ有る様な気が……

 

「とまあ、こんな感じに無鉄砲なのが戦車のゼノヴィアです」

「よーく分かりましたわ……」

 

 武器を回収すると、次は戦車とやるかーとか言いながら立ち去っていくゼノヴィア。

 お爺様の好意で下手な鎧より強固な防御力を付与された制服を纏っているとは言え、露出した肌には掠り傷一つ負っていないのが凄い。

 自分に合う独自の剣術を会得しつつある今、成長速度は私を凌駕しているっぽい。

 仮にライザー眷属を総なめ出来たなら、本人がライバル設定している木場君を倒す事も可能だと思う。

 ま、相性的に私も無理な爆弾女王に負けると思うけど頑張って。

 

「私の眷属ってこんなのばかり。早く慣れて下さいね」

「わたくし、結論を早まった気がしてなりません」

「そんな事より、ライザーを放っておいても大丈夫なの?」

「フェニックスはこの程度で滅ぶ柔な種族ではありませんわ。でも、さすがに聖剣のダメージは治りが遅いですから……カーラマイン、シーリスと協力して医務室へ運び涙を使って兄を癒しなさい」

「は、はい!」

「分かりましたっ!」

 

 血で着衣が汚れる事も厭わず、王を連れて行く二人の忠義は本物に見える。

 その割にゼノヴィアの凶行を見逃した事を不思議に思っていると、表情から考えを察したのかレイヴェルが答えを教えてくれた。

 甘やかすと駄目人間っぷりを加速させるので、家族会議により手を貸すなと通達されていたとのこと。

 意外と家族円満なフェニックス家、歪みを正すべく私も頑張らないと。

 

「次に逃げればもっと酷い目に遭うと教え込んだ上で、明日から頑張らせますか」

「重ね重ね兄が申し訳ありません……」

「悪いと思うなら夕食を楽しみにしていますよ。地球じゃ食べられない、でもゲテモノとは違う未知の味を振舞って欲しいですね」

「両親が仕事で出張中の今、当主はこのわたくしです。その名に賭けて冥界最高のフルコースの提供をお約束しますわ。だから……兄を見捨てないで下さいませ」

「眷属のお願いの一つや二つ、貸しにも思わないから安心して大丈夫。へたれ吸血鬼もしっかりタフな男に育て上げた爰乃さんの手腕に乞うご期待!」

 

 偶然にも明日は誰とも約束の無い完全フリータイム。

 可能ならさくっと元以上に仕上げて、完全な形での再戦を受けさせますか。

 何処かの筋肉馬鹿とは違う真の上級悪魔の力、今度こそ捻じ伏せてみせる!


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