赤蜥蜴と黒髪姫   作:夏期の種

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第45話「ひとのちから」

 空間から染み出すように現れた禍の団の手際は見事の一言。

 組織だった動きでどろどろの乱戦を作り上げ、次々と防衛戦力を削っている。

 他勢力と事実上の休戦を始めて十数世紀の時が流れた今、世代交代した現役悪魔に大規模戦闘の経験は皆無。全体を見ず勝手気ままな場当たり対応をしても意味は無く、少数の頑張りで局所的な優勢を取ろうと大勢を変えるには至らないのが現実だ。

 つーか、悪魔ってのは元々個人主義の生き物な訳よ。

 しかもパーティーの参加者は他人に従う事を良しとし無いセレブばっかだぜ?

 必死に魔王娘が音頭を取ろうと頑張ってるが、力が強いだけで今の地位についている小娘の言葉が届く筈がねぇわな。

 避難誘導に陣頭指揮。幾ら手があっても足りない状況下、ある意味で最も危険な事態がホテルの最下層にて起きていた。

 妹の心象を少しでも改善しようとセラフォルーが主催したパーティーはぶっちゃけダミー。本命として駒王協定に続く第二回三大勢力トップ会談が行われて居たのだが、前回に引き続きまーた襲われた事でホストの立場はリカバリー不能な所まで落ち込んでいたりする。

 

「騙まし討ち、そう考えて宜しいか」

 

 ウチの副総督がメンチを切りながらテーブルを叩けば―――

 

「我々としても度重なる失態に堪忍袋の緒が切れそうです。いっそ高らかにラッパを吹き鳴らし、第二次最終戦争の開始を宣言しましょうか?」

 

 普段はおっとり、怒りとは無縁なガブリエルまでもが物騒な事を言い出す始末。

 この場に居合わせるのは堕天使から俺とシュムハザ。天使からはミカエルとガブリエル。悪魔からは妙な汗を流すサーゼクスの恒例ガチトップ組だ。

 サーゼクスに唯一追い風なのは、ご立腹してんのが各副官だけなこと。

 ミカエルはガブリエルを落ち着かせようとしているし、俺も形だけの不信感しか見せてねぇからかろうじて会議の形を取り繕えていたりする訳よ。

 

「なぁ、連中の中に量産型聖剣ブン回してるのゴッソリ居るのは気のせいか」

「……身内の恥を晒したくはありませんが、あえて言わせて貰いましょう。そちらから供給された量産型エクスカリバーは人間界の一時貯蔵庫へ保管中に何者かの手により強奪。調査の結果、禍の団所属の悪魔が主犯であるとの確証を得ています。つまり―――言わずともわかりますね?」

「まぁ、俺に難癖をつけないならどうでもいいさ。それにもしも聖剣に意思があるのなら、下手に研究素材として余生を過ごすよりも本分を果たせる今のが本望とも思う」

「私としても飼い犬に手を噛まれる姿を見て溜飲が下がりました。いやはや、自分達で引き込んだ天敵に力を与えつつも放し飼いのブリーディングとは恐れ入ります。こんなに愉快なのはアザゼルの”僕の考えた最強シリーズ”を拝見して以来の痛快さですとも」

「はっはっは、殺すぞ」

 

 そう、所詮エクスカリバーの聖なる波動は天使は勿論、光を武器とする堕天使にも効果は薄い。まして量産型の低スペックとくれば子供の玩具程度の認識でしかない。

 天界としては目処のついた量産型聖剣使いに与える事で教会戦力の底上げを狙った様だが、例えご破算になっても悪魔に対して貸しを作れるなら十分に元は取ったと思われる。

 むしろ悪魔が悪魔を狩るのなら”いいぞ、もっとやれ”と喝采を送る立場だからなぁ。

 つまり、奴らの怒りは表向きだけのポーズでしかない。

 嗚呼、久々に政治をやってる俺様超かっけぇ……静まれ俺の右腕!

 

「……重ね重ね同胞が申し訳無い事を」

「それはどの件についてだよ」

「……全ての事象だ」

 

 せめて敵の正体が曖昧なら良かったんだが、モニターの向こうで馬鹿正直に名乗り上げをしやがった自称トップが割と有名な悪魔だったから手に負えない。

 襲撃者の首魁は前魔王の正当なる血縁、クルゼレイ・アスモデウス。声明も生ぬるい現魔王派がうんたらかんたらと、禍の団関係ない内部闘争を語る始末だぜ?

 しかも他に何かを主張する異種族の姿も無し。

 何処を見ても悪魔、悪魔。各勢力の混成部隊とは何だったのか。

 見えない場所で戦っている可能性は微粒子レベルで存在するにしても、微妙に合流しているはずの堕天使すら居ないってなんだよ。

 これじゃ俺ら、外様を通り越して完全なる傍観者なんだが……

 

「とりあえず、身の安全が保証される限り堕天使的には対岸の火事だから手出しはしねぇ。まぁ、降りかかる火の粉は排除するがな」

「天使側も内政不干渉の原則に従い傍観致しましょう。但し事件が収束次第、悪魔側は我々に譲歩する形で責任を取って頂けますよね?」

「……善処しましょう」

「確約を要求致します」

「……」

「おや、二度と交渉の場を設けたくないのですか?」

「分かり…ました」

「ウチも同じ条件で頼むわ」

「好きにしろ……」

 

 一気に老け込んだサーゼクスを見て俺は昔の同僚とハイタッチ。

 ガブリエルなんてビックリマークを浮かべて困惑してるっつーのに、これだけ腹黒い事に手を染めながら堕ちる気配を微塵も感じさせないミカエルはマジでヤベェ。

 しかーし、火遊びに関しちゃ俺の方が一枚上手。

 お前はイニシアチブを握ったとほくそ笑んでいるかもだが、全ては計画通り。

 堕天使は鳥さんとも獣さんとも仲の良い蝙蝠であるべきと言う理念の下、あえて華を持たせてやった事に気づいていないのが甘さよ。

 こっちは最初から襲撃がある事を把握済み。

 むしろ会議の日時と場所をリークしたのは俺! 曹操とツーカーだぜ!

 クルゼレイはお飾りで、今回の一件は英雄派こそが本当の主役。分かりやすい隠れ蓑を纏った曹操が何を画策してるか知ってるか?

 俺も知らん。本人がサプライズだからと教えてくれなかったからな……

 ただ、愉快な事になると言い切った奴の目は信用に値する。

 ならばチケットを買った客は黙って緞帳が上がるのを待つもの。

 だから俺はコーラとポップコーンを準備して絶対に動かない。

 但し曹操よ、コカビエルの三文芝居と同レベルなら覚悟しとけよ?

 つまらんシナリオなら野次の変わりに爆弾をぶつけてやる。

 それもお前達英雄の根幹を揺るがしかねない最大威力の奴をな!

 

「……さあ、開演のお時間だ」

 

 漂いだした白い霧の中から現れた人物は今宵の主役だ。

 絶霧の使い手を従え、最強の槍を担ぐ堂々たるその姿。

 身構える一同の圧力を物ともせず、不敵な笑みを浮かべた余裕は王者の証か。

 

「ご高名な皆様のご尊顔を、許可無く拝謁する無礼をお許し下さい」

「何者!?」

「名乗りが遅れて申し訳ない。我が名は曹操、禍の団にて人の系譜を束ねる自称”人類の代表”と言ったところでしょうか」

「……我々の首をお望みか?」

「いやいや、この”黄昏の聖槍”を持ってしても相打ち覚悟で何方かお一人が限界。私は天と地の代表が揃うと聞き、除け者にされては適わぬと馳せ参じた次第。当然争うつもりは毛頭ありません」

「……クルゼレイとは趣が違うようですが、どうするべきだと思いますか?」

 

 膝を付き中華式の礼を示す曹操に、ミカエルは困惑している様だった。

 何せ見せ付けられた槍は砕魔無双の名を冠した最強の神器。この狭い会議室は全て射程内である事は確実であり、一撃を貰う可能性は極めて高い。

 万が一にも誰かが倒されたなら、危ういバランスで保たれている三大勢力のバランスは崩れ一心不乱の大戦争が鉄板開催。そう思わせた時点で曹操の勝ちだ。

 もう、奴を誰も止められやしない。

 誰もが簡単に命を奪える最弱の人間風情が天と冥を圧倒していやがる!

 

「……禍の団は旧魔王派を中核とした寄せ合い所帯であり、一枚岩じゃ無いってのは周知の事実だ。敵の敵は味方の格言に従い話を聞いてみる価値はあるんじゃね」

「一理ありますね。サーゼクス、貴方もそれで構いませんか?」

「私は君達に頭の上がらない立場だ。好きにすると良い」

「うし、じゃあニュートラルな立場に居る俺が交渉相手になろう。外は外、内は内、交わすのは言葉の刃に留めような?」

「当然ですとも総督殿」

 

 掴みは上々。このまま楽しませてくれよ!

 

 

 

 

 

 第四十五話「ひとのちから」

 

 

 

 

 

 俺の考えうる最悪のシナリオは、有無を言わさぬ飽和攻撃を受ける事だった。

 悔しい事に地力が違う以上、運を味方につけたとしても副官クラスを倒すのがやっと。人類最大の武器である知恵が通用しなければ無駄死にの結末まであったのだから、こうして同じテーブルに着けた時点で第一ステージはクリアした様なもの。

 今のところ裏で手を組んだ総督殿が裏切る気配を見せないのもあり難い。

 つまらない真似をして捨てられぬよう、道化の立場を弁えて交渉に望むとしよう。

 

「最初に俺が盟主を勤める禍の団”英雄派”についてご説明致しましょう。英雄派とは神話の英雄、英傑の力を受け継ぐ者を頂点とした”人間”の集まりです。主力は無理やり悪魔の下僕に落とされた元人間や、主の非道に耐えかねて逃げ出したはぐれ悪魔達」

「目的はそいつらの復讐代行か?」

「半分はその通り。残りは少し違いますよ」

 

 さて、ここからが第二ステージ。

 あえて一呼吸置く事で注目を集め、俺は手札のカードをオープンした。

 

「そもそも禍の団に籍を置いている理由は同志を集める為であり、別に他の世界が繁栄しようが滅びようが興味はありません」

「世界を掻き回す側がそれを言うのかね」

 

 さすがこの中で唯一被害を被っている悪魔の代表。

 釣り針に躊躇無く飛びついてくれて助かるよ。

 

「それはお互い様でしょうサーゼクス様」

「何?」

「例えば好き勝手に人間を玩具にする悪魔を貴方は罰しない。俺が把握しているだけでもどれだけの人間が犠牲になったか教えてあげましょうか? 現時点で生存を確認している強制転生の下僕悪魔だけで三桁、死亡者は倍以上と推測されるのですよ?」

「対策は始めている」

「しかし注意喚起に留め、罰則は設けなかった」

「……」

「悪魔は人と比べ、圧倒的な寿命や莫大な魔力を持ち合わせた上位の種族であることは認めましょう。しかし、劣ってるからと言って永遠にやられっぱなしでも居られません」

「その為の禍の団加入、そう君は言いたいのか」

「ええ、脅威と見なされるだけの力が無ければ相手にされません。象が足元の蟻に気を使うとすれば、それは蟻が毒を持っている場合だけだと思いませんか?」

「否定はしない」

「であるならば話を一歩進めさせて頂く。我々が悪魔に要求する物は至ってシンプルです。もしも受け入れて頂けるなら悩みの種である禍の団、俺がこの手で潰す事をお約束致しましょう」

「……聞かせて貰おう」

 

 さて、本命の第三ステージ開始だ。

 

「第一に悪魔の人間に対する犯罪―――拉致、殺害等の、誰が考えても悪と判断するであろう行為の全面禁止。違反者には重罪を課し、被害者には相応の保障を徹底する事を魔王の名の下で徹底して頂きたい」

「……続けたまえ」

「これには悪魔と人間が合意の下で交わす契約は該当しないと補足しておきますか。好んで欲望の為に魂を差し出す馬鹿も、職業柄悪魔との交流が不可欠な魔術師も居るのだから当然の措置と俺は考えている」

「ふむ」

「第二に違反者へ課す処分はこちらへ一任」

「同族への温情をかけられては困る……か」

「頭の回転が速くて助かりますよ魔王様。人の守護者が英雄の存在理由であり、現世の終着点。曖昧さを排除した適切な判例を用意致しましょう」

「……人の血を入れなければ悪魔が持たない以上、敵愾心を持った転生悪魔が増える事への歯止めは必要だった。君の提案は実に正論だと私も思う」

「元人間と親の憎しみを植え付けられた次世代の増加を見過ごせば、第二、第三の禍の団が生まれる必然……理解して頂けているなら話が早い。検討していただけますね?」

「君の要求がこれで終わりならば、の話だがね」

 

 最初に俺が暴力に訴えなかった事もあり、元々転生悪魔を厚遇する政策を打ち出していたサーゼクスは警戒の度合いを落としたように感じられる。

 彼の中では話し合いで解決する光明が見えたのかもしれないが、穏便に済む話ならもっと別のアプローチを行うと思わなかったのか? 甘い、蜂蜜よりも甘いぞ魔王。

 

「では最後にもう一つだけ―――」

 

 そろそろ”承”から”転”へ移らなければ、欠伸を隠そうともしない総督殿が飽きて席を立ちかねない。彼の眠気を吹き飛ばし、俺の書いたシナリオの行く末を見てみたいと思わせるイベントを起こす頃合でもある。

 

「時効は一切認めない」

「……は?」

「罪を犯した本人が現存するならば、約定を定める以前に遡り如何なる方法を持ってしても罪を償って頂く。当然、保障についても同条件であるとしましょう」

 

 サーゼクスの笑顔が凍りつき、アザゼルがすっと目を細める。

 天使共は我関せずと微笑を崩す気配は無かった。

 

「その条件を私が飲めると本気で思っているのか!?」

「逆に尋ねますが、仮に貴方が溺愛されていると聞く妹が陵辱され命を奪われたなら”ルールが無い頃の話だから無罪”と言われて納得出来ますか?」

「……」

「沈黙は否定と受け止めましょう。つまりそう言う事です」

「私は……人との融和を……」

「どの道この問題をどうにかし無い限り、悪魔と人間は千年持たずに種族間で争う事になる。今は質の差で我々が滅ぶでしょうが、悪魔も種の維持が出来ないだけのダメージを負うことも規定路線でしょうね」

 

 人は貧弱な魔術しか持ち得ない代わりに科学と言う名の剣を磨いてきた。

 人外世界で最強クラスの我が槍も携帯性以外のあらゆる能力で核の炎に及ばず、一部の特殊な力を除けば魔法とて物理現象として再現する事も可能なのだ。

 もしも後千年時が流れれば、人は更なる力を得るだろう。

 行き過ぎた科学は魔法と同等と聞く。真空を、深海を、星の世界すらも手中に収めた魔法使いが悪魔を駆逐する未来も夢物語ではない。

 閑話休題。

 結論から言えば、俺の提案をサーゼクスが呑める筈が無いと最初から分かっていた。

 何せ人を家畜としか思っていない旧魔王系は概ね粛清対象。

 この時点で無理だと言うのに、情の深さで有名なグレモリーはともかくとして親魔王派の中にも断罪しなければならない貴族は少なくないと思われる。

 これは政権の屋台骨が揺れるを通り越して、社会秩序が崩壊するレベルの問題だ。

 

 

「しかしながらこの場で即決しろと言うのも余りに酷。そうですね、京の紅葉が色づく頃に再度伺います。回答はその時で構いません」

「……」

「決して争いを望んでいない証明として次にお会いになる迄の期間、俺の一党は大人することを誓いましょう。是非とも色よい回答をお待ちしております」

「……分かった」

 

 サーゼクスが魔王の立場で検討した時点で冥界は割れる。

 混乱は弱体化に繋がり、そこに付け入るチャンスが生まれるだろう。

 打ち込んだ楔がどんな花を咲かせるのであれ、戦略レベルでの優位は揺るがない。

 これを切欠として真の目的を叶える為に必要な動乱、必ずや作り出してみせる。

 

「そして堕天使にも同様の条件を―――」

「構わんよ」

「即決ですか」

「お前が言いたいのは俺の神器研究の為に、下の連中がやんちゃしてた件がメインじゃね?」

「その通りです」

「一昔前は技術的な問題で無理やり神器を引っこ抜いて死なせる事も多かったが、今や穏便に機械でデータを取れる様になった訳よ。俺としても無駄に人を減らして、新たなレア神器が世に出る確立を下げたく無い。利害は一致してるだろ?」

「はぁ」

「それにウチの上層部は処罰の対象外だ。仮に罪に問われたとしても示談で済むレベルだろうし、さりとて問題にはならん。なにせ相思相愛で人間と結婚した奴、特撮大好きで日曜日を恋焦がれる馬鹿、人と仲良く汗水流して働く阿呆……こんなのしかいやしねぇ」

「総督殿ご自身も潔白と?」

「俺は理不尽に人を貶めた事はねぇし、神器コレクションも部下が気を利かせて献上して来た時点で無関係。”秘書が勝手にやりました”が通用する人間ルール基準に照らし合わせても、頑張ってグレーと思うんだがどうよ」

「……まぁ、確かに」

 

 漆黒の羽が漂白済みに見える腹黒さ。

 直接手を下さず、ワンクッション挟んで善意の第三者を主張する人間臭さは何だ。

 彼ならば各国の法を丸暗記した上で解釈の抜け道まで熟知している可能性も高いだろうし、仮に法廷で争えば単純な戦闘以上に厄介な相手となるに違いない。

 逆転できない裁判、そんな単語が脳裏をよぎるのも当然だと思う。

 

「お待たせして申し訳ない。次に天界の皆さんにですが……特にありません」

「拍子抜けですねぇ」

「悪い天使は全て堕天使へ堕ちる仕様が守られる限り、天は常に中立以上の存在であると認識しています。今まで通り、やり過ぎない程度の干渉に留めて頂きたい」

「アザゼルと同じく、私もその内容なら喜んで受け入れますよ」

「そうそう、一部では悪魔と手を組んだ天使へ不信を募らせては居ますが、本質の部分で水と油である事実を伝えれば黙る事でしょう。信じて構いませんね?」

「神に誓って」

 

 そう、天使と悪魔が表面上でも和解を達成できたのは堕天使の存在があったから。

 例えるなら天使が酢、悪魔が油、堕天使が卵。

 酢と油をいくら掻き混ぜても分離してしまうが、間に卵が入れば話は別

 マヨネーズという名の駒王協定は、アザゼルの賜物と言っても過言ではないのだ。

 

「では最後にちょっとした見世物を。果たして本当に我々が人の守護者足り得る力を持っているのか、その一端を皆様の目で確かめて頂ければ幸いです」

「……引き上げてはくれないのかね」

「残念な事に全体の指揮を取るクルゼレイは俺達の話を聞きませんし、口だけでないと証明するデモンストレーションは今後の関係の為にも必要不可欠かと」

「……分かった」

「それに悪魔側としても、ここでアスモデウスの血筋を断つ必要があるのでは?」

「……」

 

 よし、黙った。

 

「お見せ致しますのは灼熱の千年戦争を戦い抜いた聖女ジャンヌ・ダルクと、数々の偉業を為したギリシャ神話の英雄、ヘラクレスの勇姿。人が人のまま魔を滅ぼせる証明をご覧下さいませ」

 

 ゲオルクに合図を送ると同時、モニターの向こうで新たな動きが生まれる。

 一つは連鎖する爆発、もう一つは吹き抜ける暴風だ。

 英雄派でも最上位クラスの戦力、伊達では無い事を見せ付けてやれ。


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