赤蜥蜴と黒髪姫   作:夏期の種

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第57話「魔を滅ぼす銀の剣」

 二階の駐車場から通路を挟んだ、一階の駐車場へ足を踏み入れた瞬間だった。

 

『リアス・グレモリー様の兵士一名、リタイヤ』

 

 聞えてきたのは、耳を疑うような敗北コール。

 あのイッセー君がやられた? そんな馬鹿な話があってたまるものか。

 彼は瞬殺されるのが規定路線のギャスパー君と違い、この僕の全力を持ってしても倒すのが厄介なタフで粘り強い戦士だ。

 警戒すべき奇襲も策敵特化な小猫ちゃんが居る限り防げる筈だし、何がこのフィールドで起きているのか皆目見当もつかない。

 強いて懸念事項を述べるなら、シトリー眷属は女の子ばかりのチームと言うこと。

 まさかと思いたいけど、何らかのハニートラップに引っかかったってオチかな?

 ははは、さすがに……無い……無いよね?

 うん、これ以上考えるのは止めよう。どんな手段でイッセー君が無効化されたのであれ、ゲーム中に彼が復活する事はありえないし。

 今は只でさえ少ない自軍の駒が減った難局を乗り切る事に集中すべきだ。

 だってほら、お客様がお出ましさ。

 前方に人影を見つけた僕は、靴底から白煙を上げて急制動。愛用の聖魔剣を生み出しながら柱の影に身を隠し、用心深く周囲を警戒する。

 

「ごきげんよう、木場祐斗君。眷属を束ねる女王として歓迎致しましょう」

「おや、女王自らのもてなしですか。これは楽しみですね」

「ご期待に沿えるよう、精一杯頑張らせて頂きますわ」

 

 逆光でよく見えないけど、声の主は副会長で女王な森羅先輩で間違いないと思う。

 一騎打ちならさして怖くない相手だが、問題は後何人潜んでいるか。不本意な事に僕の行動は予測されていたらしく、虎口に踏み込んでしまった雰囲気が尋常じゃない。

 

「幾多の魔剣を自在に操り、今や赤龍帝と並ぶ若手転生悪魔の有力株と名高い最優の騎士。スピードを最大の武器とするテクニック型で、分身、オープンゲット、普通に高回避の三拍子を備えたデビルゲッター2の異名を―――」

「え、なにその二つ名! 初耳ですよ!?」

「確かな筋の情報でしたが……誤りでしょうか?」

「その言い回し、さては香千屋さんが情報源か!?」

「さて、どうでしょう」

「せっかく顔を合わせない期間が続いて安心してたのに、予想外のところで関わって来たよ! 君の担当はイッセー君で、僕は無関係だろ!?」

 

 確かアレイさんがやっていたゲームを眺めていた諸悪の権化が”最大攻撃力も頭打ちだし、性能的に木場君っぽい”と漏らしていたよね!

 って、香千屋さんが犯人ってことは、僕のスペックを詳細に把握されてるんじゃ?

 下手をしなくても、彼女は僕、イッセー君、小猫ちゃん、ギャスパー君の詳細なデータを持っている。それが敵方に渡るとか、冗談でも止めて欲しい。

 この情報は重要だ。一刻も早く部長に報告しなければ手遅れになる。

 こちらの予想外は、向こうの想定通り。

 この図式を書き換えない限り、僕達に勝機は無い!

 

「おや、何故か錯乱した今がチャンス」

 

 森羅先輩の武器は薙刀。射程は長く、槍と同じで剣に対する優位性を持っている。

 槍道五倍段の言葉からも分かるとおり、単純な技量を超えた相性は見過ごせない。

 さあ、来い。それでも僕は負けない。

 生涯の相棒と決めた聖魔剣を構え、先輩の正面へと注意深く移動する。

 大丈夫、今のところ先輩以外の殺気は感じない。

 これなら多少のリスクを覚悟して、僕から打って出ても大丈夫かな。

 そんな覚悟を決めていると、副会長は眼鏡を人差し指で持ち上げてから言った。

 

「先に謝罪しておきましょう」

「謝罪、ですか?」

「私は対魔師の家系に生まれ、義務としての薙刀を学びました。だから剣は所詮道具。手段の一つとしてしか認識していません」

「価値観の違いですね」

「ですから、剣術に拘泥して来た木場君と比べて腕前は未熟。避けられる分の悪い勝負はしない主義です」

 

 嫌な予感がした。

 

「ほんの少しだけ会長の予測を上回る進行速度を見せた木場君に賛辞を。しかし、無駄口を叩いている間に準備は完了しました。やりなさい、翼紗」

「ぽちっとな」

「神器”追憶の鏡”展開」

 

 森羅先輩の前に装飾された大鏡が出現した瞬間、第三者の声が聞えたような気がした。

 直進すれば露骨に罠がありますよ、と主張する神器。見え透いた罠に飛び込むくらいなら戦略的撤退でも構わない、そう判断して後退を決断する。

 しかし、この一瞬の思考時間さえも罠だった。

 進むか退くか躊躇した間隙を突き、駐車場の閉鎖空間に鼓膜が破裂しそうな爆音が鳴り響く。続いて飛び散った無数の何かは、反射的に体を守るように展開した聖魔剣の檻を容赦なく粉砕。体のあちこちに焼けた鉄串をねじ込むような痛みを発生させる。

 何が起きているのかは分からない。が、座していれば命が危うい。

 そこで僕は―――

 

 

 

 

 

 第五十七話「魔を滅ぼす銀の剣」

 

 

 

 

 

 グレモリー眷属の中で、最も脅威と認定されたのは木場君だった。

 奇を衒わない王道の騎士はどんな修練を積んだのやら、人の殺気を容易に見抜き、魔法の雨も、剣戟も容易く回避する技術を有している。

 客観的に見て、彼を正攻法で倒す為には相当の犠牲が必要でしょう。

 そう、正攻法では。

 

「気配も持たず、特定対象を狙わない、機械装置による面攻撃。聖女自ら聖別を施した対悪魔用法儀礼済みベアリング式クレイモア地雷の50連一斉点火のお味はいかが?」

 

 ルールブックを読み返し、その上で運営本部に確認をしたところ、ゲームへの持ち込み制限はゼロ。なら、どうせ私達は悪役。暗黙のルールを破ったところで怖いものは無い、と死の商人お勧めの現代武器を大量に仕入れてみました。

 そしてカタログスペックを信じれば、実地検証で白龍皇の鎧をも穿つこの兵器を駐車場の殺し間に満遍なく設置。何処に逃げようと必殺のキルゾーンを構築し、獲物が網にかかるのを待つ、と言うのが会長の選んだ対騎士戦術。

 想定外の進行速度に起爆装置の準備が間に合わず失敗に終わる所でしたが、幸いにも話術が功を奏して時間を稼げたのが嬉しい誤算。

 これならば作戦のフェーズ1はクリア。願わくばこれで終わって欲しい。

 以降のフェーズは最悪の事態を想定したもので、使わないに越した事は無いのだから。

 

「やったか!?」

「翼紗、今貴方は盛大にフラグを立てましたよね」

「何を仰いますか。通常の爆発に加え、副会長の神器で倍返しのベアリング弾を正面から浴びたんですよ? 耐えられる訳がありません」

 

 ちなみに私の神器は、展開した鏡を壊した攻撃を二倍に増幅して反射するカウンター系。

 今回は自身を攻撃範囲に収め、神器を用いた究極の散弾を撒き散らしてみました。

 

「と言うか気付かないの?」

「何をですか?」

「撃墜のアナウンスが無い事に」

「おお、さすが副会長。賢いですね」

「だめだこの子……」

 

 長身で体術に優れた本能型、それが二年で戦車の由良翼紗。

 ポテンシャルは悪くないのに考えが足りないのが玉に傷な後輩の頭をぺしっと叩き、やはり倒しきれなかった騎士の行方を慎重に探る。

 粉塵が舞い上がったせいで視界は悪く、彼が何処に姿を眩ませたのか分からない。

 資料に寄ればああ見えて直情型らしいので、おそらく撤退は選ばないと思う。

 すると、聞えたのは足音。しかも背後から。

 ありえないと思いつつ振り返れば、現れたのは知った顔だった。

 

「また派手にやりましたね。ボクの出番、まだ残ってます?」

「むしろ、ここからが本番です」

「そですか。なら、仕方が無い。翼紗さんや、会長の為に頑張ろう」

「おうよ、超必死にやったるわ!」

「「いえーい」」

 

 私と同じく対魔を生業とする一族出身。遠い親戚で後輩の巡巴柄は、木場君とタイプの似たテクニック型の騎士です。

 少し前は無名の日本刀を武器にする特徴の無いB級騎士でしたが、プロフェッサーAZSLより供与された人工神器”閃光と暗黒の龍絶刀”を得た事で火力の増強に成功。

 光と闇の混濁した力を宿した刀を自在に使いこなす巴柄は、同属性(?)の剣を振るう木場君と悪くない相性の筈。

 私は他にやる事があるので、二人には是非とも頑張って欲しい。

 

「相手は手負いの獣です。万全の状態よりも危険だと理解した上で対応を」

「「はいっ!」」

 

 さすがの木場君も無傷で乗り切れては居まい。怪我の具合がどうであれ万全のシトリー最強前衛コンビに勝てるとは思いませんが、念には念を。石橋を叩いて壊して引き返すのがチームの流儀です。

 99%では駄目、求められるのは100%の成功率。

 どんな奇跡が起きても、不確定要素を先に行かせる訳には行かない。

 

「剣技でオーラを飛ばせるボクが二番手。先導は翼紗に任せてもいいよね?」

「あいさ」

 

 軽い言動とは裏腹に慎重に歩を進める後輩達は、あれで中々仕事熱心。

 必要なら捨て駒も喜んで引き受けるし、やるべき事をしっかりこなす子なのですよ。

 これなら眼を離しても大丈夫。万が一に備えて神器を防壁として配置しつつ、コンクリートの床に手を這わせ調査を開始。

 会長の予想したものを見つけた私は、奥の手を仕込むべく魔力を放出する。

 これなら上手くいきそうです、と声をかけようとした瞬間だった。

 

「……あ、れ?」

 

 瓦礫を突き破って咲いた剣花を巴柄が切り払い、それに気を取られた翼紗の真下から透明なガラスの刃が生える。

 気付いた時にはもう遅かった。股の間から斜めに脇腹までをを貫かれ、口から零れ落ちる鮮血は致命傷の証だ。

 

「先ず、一人」

 

 五体満足ですらない満身創痍な木場君の姿を視認した私は、ギラギラとした彼の目つきに怖気づいてしまう。

 

『ソーナ・シトリー様の戦車一名、リタイヤ』

 

 そんな私を正気に戻したのはアナウンスの声。

 そうだ、今は行動あるのみ。挽回のチャンスはまだ残されている!

 

「フェーズ2の中間ステップを全て破棄! 最終段階を即時開始します!」

「やっぱり、そうなりますよね!」

 

 ここに至り、本性を現した木場君に出し惜しみは無意味。

 巴柄とアイコンタクトを交わし、私は躊躇いを捨てる。

 勝つのは私達だ。そう、どんな手を使ってでも。

 

 

 

 

 

「さすがは聖魔剣。よくもその体で動ける」

「人体は意外に頑丈でね。僕を止めたければ、頭か心臓を潰す事だ」

 

 刀を受けただけで壊れそうな右手を根性で支え、気力を振り絞り淡々と剣を振るう。

 客観的に見て今の僕は半死人。一度立ち止まれば二度と立ち上がれないから。

 体に潜り込んだ異物が継続ダメージを生もうが、体を捻る度に臓器に突き刺さった骨が出血を強要しようが、全て精神力で捻じ伏せる。

 なに、主観では副会長を倒し、アルジェントさんの元に辿りつく程度の気力は残っているつもりだ。何も問題は無い。

 しかし、ゲームの判定システムがどこまでダメージを許容するか分からない。

 外見的には腕が一本千切れて、片足の膝から下が無くなっただけ。強いて言えば左目と腹の肉も削り取られたけど、傷口は全て炎の魔剣で焼いてあるから大丈夫。

 まぁ、何にせよ砂時計の中身が落ち切るまでの時間は少ない。

 たかがゲームと遊ぶのはやめて、楽しい命の奪い合いを始めようか。

 

「なるほど、これが対魔の剣術。中々に興味深い」

「これぞ西洋剣術とは一味違う刃の理! ボクが継いだ先祖代々の力だ!」

 

 確かに脈々と受け継がれ、改良を続けてきた技術体系には眼を見張るものがある。

 かつてコカビエルと組んでいた黄金騎士が佩いていた剣と同質の刀も脅威だし、道具に振り回されない修練も見事。

 でもね、それでも君と僕の間に決定的な差があるんだよ。

 

「ボクの方が有利なのに、どうしてこうもっ!」

 

 彼女の刃が刻み込めるのは、皮一枚の浅い傷だけ。

 何故そうなるか、答えは簡単だ。

 巡さんの剣は大味過ぎる。例えるならお座敷剣術が妥当な評価かな?

 ぶっちゃけ同じ刀使いでも、弦さんや師匠と比べて手緩いんだよね。

 例えば手堅く肋骨を通して臓腑を抉る師匠の三連片手平突き。

 例えば剣速を限界まで高めつつ、鞘による二連撃を備えた弦さんの居合い。

 動乱の中で殺人技法を純化した人の世と違い、変化を良しとせず昔から変わらない力押しを続ける悪魔を相手取っていた事が原因の一つか。

 元々、人が悪魔を倒す為には堅い防御壁を抜く所から始まる。

 必要なのは火力であり、対人戦闘には余る破壊力が優先された筈。

 しかし、近年増加した転生悪魔は精神構造が人間だ。

 臆病だから無謀に攻めず、相手の弱点を突いてくる狙うタイプが少なくない。

 そんな相手に大技をメインに据えた技術は相性が悪い。

 これは師匠にも言われた事だけど、どんな生き物も首を落とせば死ぬんだ。

 無駄な力は省き、必要な力だけを最速で用いる術が今後の主流になると僕は思う。

 悪いけど火力偏重の巡さんは古く、次代に即した僕には通用しない。

 ……と、言い切れれば格好良かった。

 恐ろしい破壊力を秘めた剣閃が鼻先を掠め、しかも小回りの利かない今のコンディションでは付け入る隙が見当たらない。

 救いは一つ。何をやっているのやら、森羅先輩が介入してこないこと。

 本当に不気味だ。何を考えているのかさっぱり分からない。

 

「仕方が無い、身を切るとするよ……」

「肉を切らせて骨を断つ、それを許すほどボクの剣は甘くない。一撃で骨ごと貰う!」

「いいよ。そら、持って行くと良い」

 

 逆手に聖魔剣を持ち篭手の様に防御を固め、右手を盾に跳躍。

 これを好機と見た巡さんは、刀を大きく振りかぶって必殺の構えを見せた。

 裂帛の気勢を上げながら振り下ろされた刀は混沌の力を纏っていて、直撃すればイッセー君の鎧すらも寸断する事がありありと分かる。

 が、死神の鎌に首を差し出すような行為と分かっていても、僕は決して止まらない。

 脳の血管よ切れてしまえ、と集中に集中を重ね、斬首の刃が腕に触れた瞬間を見計らって刃筋をほんの少しだけずらす。

 刀は剣と比べて切れ味で勝るが、それは正しく運用されてこその特徴だ。

 対象に触れて引かねば斬れず、入射角が変わるだけで威力を半減させられるデリケートなこの武器は、それでも僕の腕を肘の先から斬り飛ばす恐ろしさ。

 だけど、為すべきことは為した。

 本当は僕を両断するつもりで居た巡さんは驚きで眼を見開き、次の一手をどうすべきか迷いの色を浮べている。

 しかし、次があると思っているなら甘い。両手を失った僕には近接攻撃が無理と安堵したのを見切って中空に短剣を作成。必殺の切り札を口で咥え、首の捻りを使い彼女の細首へと全力で突き立てた。

 

「これで二人」

 

 膝から崩れ落ちるのに合わせ、リタイヤを告げる魔法陣に包まれた好敵手を一瞥。

 確実に仕留めた事を確信した上で、最後の仕事をやり遂げようと会長の姿を探す。

 

「……まさか、あの状況から二人を片付けるとは」

「巡さんには梃子摺らされましたよ。惜しむべきは、経験地の不足。彼女達には命のやり取りを学習させるべきでしょう」

「肝に銘じておきます」

「では、決着を」

「そうね」

 

 さて、今度はどんな手でくるやら。

 転がっていた残骸から地雷による飽和攻撃を貰った事は理解した。

 魔剣の防御壁が意味を成さないと分かった瞬間、天井を切り抜いて二階に非難しなければ確実に落とされていあてであろうあの攻撃。

 さすがに小細工は使い切ったと思いたいけど、そう判断させられたとも言える。

 かと言って受身も選べないし……悩ましいところだよ。

 

「わが薙刀の錆になりなさい」

「残念、血を流しすぎて錆の元が足りません」

 

 片足ステップで膝は笑っている。一撃だ、一撃で仕留めないとボチボチ厳しい。

 

「と、思いましたが気が変わりました」

「え」

「さよなら、木場君」

 

 部長から聞いた話では、副会長に遠距離攻撃は無い。

 リーチを生かして中距離からチクチク来る。そう信じていただけに虚を突かれた格好だ。

 そして気付く。僕に背を向け逃げ出した先輩が何かを放り投げていった事を。

 それはオイルライター。

 回転しながら空を舞うソレを見て僕は悟った。

 やられた、道理で非常口の前に移動していた訳だ。

 僕の膝上の高さに落下した瞬間、発生した大爆発が巻き起こる。

 今度こそ逃げられない広域破壊に飲み込まれながら、僕は悔やむのだった。

 

 

 

 

 

「さ、さすがに、やりましたよね?」

 

 全力ダッシュで爆発から逃れた私は、やっと終わったと大きく息を吐いた。

 本館へ供給される天然ガスのパイプが地下を通っている事を利用した、駐車場丸ごと爆破計画は大成功。

 後輩達が時間を稼いでいる間に魔力で臭いを誤魔化したガスを室内に充満させ、結界魔法で擬似的な閉鎖空間を演出。ガスは空気よりも重い為、嗅覚さえ潰せば下から溜まって行く時限爆弾の存在を気付ける者はそう居ない。

 用心深い木場君もその例に漏れず、最後まで気付けなかったようですね。

 最初から捨て駒だった翼紗と巴柄には悪いけど、リアスの二枚看板を取れるなら安い買い物だ。

 さあ、テイクのアナウンスよ早―――く?

 刹那、ショッピングモール内部にまで流れ込んできた粉塵の中を銀光が走った。

 それは猟犬の意地。決して獲物は逃がさないと飛来した牙は、私の心臓を的確に打ち抜きやっと止まる。

 

「いや、はや、リタイヤまで残り二秒って、とこ、かな。これだ、け、がん、ばれば、十分、はたら」

 

『リアス・グレモリー様の騎士一名、リタイヤ』

 

 強制退場を示す魔法の光に包まれて、それでも転送の間隙を縫って現れた敵の姿。端正な顔は焼け爛れ、足代わりなのか魔剣を傷口に捻じ込んだ騎士がそこに居た。

 予感はしていたが、まさかここまでやるとは信じ難い。

 二度の飽和攻撃を全て防ぎきった手腕には尊敬の念すら覚えます。

 でも、まあ大丈夫。

 私は最終防壁で、最悪失う事もシナリオに組み込まれた存在です。

 申し訳在りませんが、後は任せました。御武運を祈ります……会長。

 

『ソーナ・シトリー様の女王、リタイヤ』

 

 心中で主に詫びつつ、私は敗北を受け入れるのだった。

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