赤蜥蜴と黒髪姫   作:夏期の種

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第77話「勝利者の挽歌」

 第七十七話「勝利者の挽歌」

 

「流れぶった切り、エクスカリバァァァァッッツ!」

「見え見えの大技に頼る辺り、追い詰められている証拠だぞ?」

 

 小細工を捨て本道に戻った曹操は、速く、鋭く、効率だけを追求する正統な王者。

 しなりを利用した予測の難しい穂先が、頭上、足元、正面、側面と、バリエーションに富んだ軌道を描く通常攻撃だけでもキツイのに、基本に立ち返ったことで生まれた余裕が鉄壁の防御を同時に達成するインチキっぷり。

 ほらまた、掠れば蒸発する必殺ビームを余裕綽々に真っ二つ。

 適正レベルの概念を無視するレベルMAXの勇者に襲われたボスの気分がよーく分かる。

 

「目に見えて聖剣の出力が落ちたな。これで次弾は撃てまい」

「それはどうかなー? 実はカートリッジ式で連射可能かもよ?」

「ま、もう一発ある前提で進めるさ」

「キャッチボールが綺麗に決まり過ぎるのも考え物だっ!?」

 

 せっかく用意した最強クラスの鎧も、穂先に力を集中した聖槍にとってはダンボール鎧と同じ扱い。

 丁寧に削ってくる几帳面さんに腰アーマーを持っていかれ、いよいよ防波堤が気休め程度にしかならないと認めるしかないなーと諦める。

 よし脱ごう。キャストオフして、チェンジビートルしよう。

 そう決めたジャンヌちゃんは、曹操が槍を引いた瞬間を見計らって行動開始。

 右手の掌をビシっと開きながら突き出す意味不明な行動で警戒を煽り、攻め気を削ぐことでお見合いを演出。罠か誘いかと悩む隙を突き、楔を打ち込むことに成功する。

 

「タイム、少しだけ戦闘中断!」

「俺に付き合う義理があるとでも?」

「別に嫌なら嫌でいいよ。可憐で、儚く、世界を照らす太陽のような女の子が武器も手放した状況で、一方的にズンバラしたいならどーぞどーぞ」

「……何を、企んでいる」

 

 エクスカリバーをポイっと放り捨て、両手を腰に当てたポーズは隙だらけ。

 くっくっく、正義の英雄様が人の目が在る場所で正道を外れた真似は出来ないよねぇ。

 さーて、交渉の椅子に座って貰いましょうか!

 

「やだなー、企むとか人聞きの悪い」

「謀は君の代名詞だと思うんだが」

「裏表のない清純派アイドルです♪」

「もう、何も言うまい……」

「納得したなら話を進めるよん。えっとね、この試合って一応はスポーツ感覚のゲームだと思うの。なら、この汗で蒸れて来た鎧を脱がせて欲しいなーって」

「反応速度で一歩遅れる対応策として、軽量化を試したいと言う話だな?」

「き、気づいていても指摘しないのがマナーだと思うなっ」

「ふむ」

 

 屁理屈を言わせれば、パパにだって負けないジャンヌちゃん。

 つまり、悩んだ時点で君の負けなのだよワトソン君。

 

「あ、ひょっとして曹操さんはアレですか? 半壊した鎧を着た美少女を追い詰めて ”くっ殺せ” なプレイがお望みみたいな? つまり、まさかのコスプレ派ってことですよね!」

「無条件で三分だけ待つから、冤罪を擦り付けるの止めような!?」

「見て見て、爰乃ちゃんが ”あ、お前もか” 的な諦め顔を浮かべてるよ! やったね曹操様、軽くイッセー君系にジャンル分けされたかも!」

「大丈夫。半信半疑さ、そう、半信……半疑」

「ほらほら、落ち込むチェリーボーイに特別企画。悪魔すら魅了する究極完全アイドルが、史上初の生着替えを披露しちゃうぞー」

「結構です」

「小学生じゃないんだし、照れない照れない」

「死ねばいいのに」

 

 無駄口引き伸ばしも含めて、まずまずの成果。

 まー三分といいつつ終るまでは仕掛けてこないだろうし、回復がてらギリギリまで引っ張ろっと。

 と言うことで、先ずは無駄にポーズを取りながら肩当から。

 歌を口ずさみながら手を変え品を変え、露骨な引き伸ばしで鎧を外していく。

 

「それで終わりだな? 剣も拾ったな?」

「いえすあいどぅー」

「一刻も早く再開―――」

「見て見て、ちゃんとインナーも可愛いデザインでしょ?」

「黙って死ねぇぇぇっ!」

 

 最後の胸当てがガシャリと落ちる頃には、予定時間の三倍が経過していた。

 代償は頬を掠めて吹き抜けた銀の槍に込められた怒り。

 しっかーし、収支は超絶黒字のおーるおーけー。

 色々苦労もさせられたけど、これで布石は全て打ち終えた。

 後は最後のピースを自分の手で埋めるだけってね。

 よーし、ここからはチキンレースだぞぅ。

 エクスカリバー始動。 ”天閃” 、 ”祝福” 、 ”支配” 全っ開っ。

 ここに至ってスタミナ配分なんて考えない。

 勝つ為の片道トランザムで、中華大帝を駆逐するっ!。

 

「鎧を脱ぎ捨てた程度でこの変化。 凄いな、これは驚きだ!」

 

 普段なら即レスのジャンヌちゃんが口を噤むのも当たり前。

 だって今は、それどころじゃないんだよ!

 一度でも足を止まれば曹操にターンが回る以上、攻めて、攻めて、攻め続けないと。

 あ、ジャンプ斬りの着地地点が右にちょっとずれた。ええい、修正っ!

 半歩足を移動させつつ右袈裟斬りを左に跳ね上げ、Vの字を描く二連斬……と見せかけコンボ継続。左手だけを柄から離し、曲げる勢いを利用した唐突の肘を叩き込むも防御の上でダメージは殆どゼロ。

 しかーし、まだまだこれから。

 再び両手持ちに戻しながら、その場で半回転。ダンスで鍛えた美しく、無駄のない足運びが産んだ遠心力を余さず乗せた水平斬りならどーさ!

 

「このペースを維持されると少々マズイが、早くも息が上がってきたと見た。自滅するなら大歓迎、最後の悪あがきを存分に楽しめ似非聖女」

 

 仰るとおり、この選択は命を削る大暴走ですよ。

 壊れた片腕を含む全身を ”支配” で強制的に制御。負荷を無視した ”天閃” による最大稼動は、一秒ごとに体が悲鳴を上げる最低最悪の自殺行為だと思う。

 今はまだ ”祝福” で引き上げた幸運値の加護で運よく大きな怪我には発展していないけど、ガス欠含めて残り時間は僅か。

くーっ、ギリギリの綱渡り感が堪らない!

 

「楽しい舞踏会も、そろそろ終わりだな」

 

 動き続けて数分。蟻の一穴を目指して頑張ったジャンヌちゃん。

 けど、努力は成果を生むとは限らないんだよね。

 単発威力重視も、手数を増やした連激も、混ぜ込んだ体術も、ありとあらゆるバリエーションが一歩届かない。

 ま、この辺は本職と兼業の差だから織り込み済み。

 大切なことは、人類最速で動き続けるジャンヌちゃんに追従させること。

 さーて、根競べ続行。悪手が妙手に化けるまで、死んでも止まらないぞぅ。

 

「見えているのに体が動かない? 呼吸が……心臓が、おかしい…?」

 

 剣の重みに体が流され、ついに精度が落ちてしまった中途半端な突き。

 平凡以下のソレが曹操の脇を抉った瞬間、来るべき時がついに来たと悟った。

 唐突によろよろと膝を着いて呼吸を荒げ始めた敵に対し、ジャンヌちゃんは神器と聖剣の電源を即座に落としながら後退。

 こちらもリバウンドで絶え絶えな息を必死に整え、杖代わりについたエクスカリバーへ体重を預けることで倒れこむことを回避する。

 

「ふふふふふ、我が策成れり」

「当然、君の仕業だよな。どんな小細工を使った? 聖槍の加護をすり抜ける小細工の正体を、立ち上がれもしない俺にご教授願えないか?」

 

 酸欠寸前でクラクラするけど、解説パートは物語の華だからにゃー。

 お望み通りのネタ晴らし、いってみよー!

 

「先ず勘違いを正そっか。ジャンヌちゃんが曹操に付与したのって、何の変哲もないバフだからね? 呪いとか呪詛の類じゃないよ?」

「頭すら回らないコンディションを招くバフがあるか!」

「あー、こっちの神器の効果説明を覚えてない?」

「話がいまいち繋がらないんだが」

「察しの悪いお客様にヒント。エクスカリバーの ”天閃” は、上級悪魔が目で追えないグレモリーの騎士さえも上回る速度を出せる機能です」

「……まさか手放で神器を稼動させ、俺への干渉を続けていたと?」

「いえす、英雄だろうと所詮は人間。本来なら反応出来る筈がないのです」

 

 対象に悪影響を与えず、むしろ益に適う効果を世間では祝福と言う。

 そんな善意を、神様の意思が宿ると噂される聖槍が排除すると思う?

 答えはNO。体力以外のパラメータを全て引き上げたジャンヌちゃんの心づけは、ひっそりと誰にも邪魔されること無くずーっと曹操を超強化し続けていたのでした。ぱちぱちー。

 いやー、神器の発動状態を維持しながら聖剣を振るうのは本当に疲れた。

 頭を使い過ぎて吐きそうですよ。てへっ♪

 

「……異常に調子が良過ぎて、おかしいとは思っていたんだ。自分の限界を超えた力を引き出され、しかも全開で動かされ続けた結果の自滅が答えだろ?」

「大正解。曹操の容態はエネルギー枯渇のハンガーノックですねー」

 

 エンジンの排気量は上がり、しかし燃料タンクの中身だけが小型車のまま。

 燃費の悪くなった状態で暖機運転を延々と行い、その後はゼロヨン仕様の車と併走を続けた結果はお察しの通り。

 意識に反して体は動かず、糖質を補給しない限り復活の見込みゼロ。

 自転車競技の選手が陥りやすいこの状態になれば、最強の英雄でさえまな板の上の鯉も同じなのさっ!

 

「ペース配分を考えない猛攻さえ囮……くそ、一杯食わされた。試合運びは君の完全勝利だと認めざるを得ない」

「その調子で負けを認めるなら、命までは取らないよん。どする?」

「残念。投了して綺麗な棋譜を残すより、泥臭く足掻いて僅かな光明に縋るのが俺の美学。五体満足で愛槍が折れていない以上、投了は有得ないさ」

「そっか。じゃ、曹操の命運もここまでってことで」

 

 芸能世界も裏社会も、舐められたら終わり。

 口だけと侮られれば今後の活動にも響く以上、命を奪うことに躊躇いナッシング。

 殆ど残っていない握力でエクスカリバーを握り締め、これが〆と ”破壊” を起動。

 曹操なら、気力を振り絞った最後の抵抗は十分考えられる。

 だから絶対に間合いには入らない。

 万全を期して、アウトレンジからの必殺技で止めを刺すよーっ!

 

「先に謝罪しよう」

「アイドルの手を汚させてしまうことを?」

「死ぬのは君だ」

「あ、ヤバい雰囲気」

「最早手段を選べる状況じゃない。過去の先輩達も超越者にしか使用しなかった ”覇輝” を、史上初めて普通の人間を対象として発動する踏ん切りもついた。果たして憔悴したこの体が耐えられるのか、それは俺にもわからん。だが、最悪でも相打ちなら御の字さ。俺が転がす最後のサイコロ博打、付き合ってくれよ!」

「追い詰め過ぎたぁぁぁあっ!?」

 

 何か凄い光に包まれ始めた核爆弾へ、本日二度目のエクスカリバァァアッ!

 あ、やっぱり届かず霧散した。

 聖属性の親玉に、同属性下位の攻撃が通じるわけないよにゃー。

 さて、最大火力が通じない時点で手詰まり感がヤバイぞぅ。

 普段なら形振り構わず逃げるけど、爰乃ちゃんを見捨てれば一門に殺される。

 速く死ぬか、遅く死ぬか。どっちも選びたくないなぁ。

 今こそ脳裏に電流走る時。考えるんだ、天才美少女ジャンヌちゃん!

 

「き、近隣一帯ふっ飛ばす勢いの溜めですが、お仲間は逃がさないの?」

「彼らは部下だ。王の手に掛かるなら本望だろうよ」

「好きな女の子を巻き込むのは如何な物か!」

「命の惜しい貴族様が守ってくれるさ。仮に手違いがあろうと、彼女だけは冥府の底から見つけ出して地上へ救い出す覚悟は在る」

「他の説得材料が思いつかない!?」

 

 いよいよ呪文を唱え始めた曹操の決意は固かった。

 言葉も、神器も、聖剣も、今のコレには届かない。

 眺めるだけで吸い込まれそうな光を前にして、進むのか下がるのか。

 

「どうしたものかにゃー」

 

 半ば諦めのポーズで空を仰ぎ見て思う。

 黄昏の聖槍の最大稼動データは、堕天使でさえ正確に把握していない。

 確実に断言出来る事は一つ。覇龍さえ上回る脅威だってことだけ。

 確か ”魔を滅ぼし、神を討ち、人の世の理を守るもの” だったかなぁ。

 素直に文献を信じれば、純人間ならノーダメージにワンチャン。

 いやいや、普段は無害な光も束ねればレーザーだから。

 安易な安心感は絶望の落差。泣くのは自分なのでやめ―――お?

 

「こっちだって、こっち! ハリハリーっ!」

 

 役に立たない聖剣を放り投げ、空に向かって旗をぶんぶん振り回す。

 冥界特有の昏い空に落ちた白い汚点こそ奇跡の証。

 ジャンヌちゃん、神様信じるよ! 間に合うと思ってなかった!

 

「見苦しい、騒ぐな」

「足掻くジャンヌちゃんが無様なら、それはブーメランになるけど?」

「これは失礼。侘びとして、残り時間をアナウンスしてやろう」

「お手数をかけます」

「過去にベストコンディションで試した際には、割とスムーズに覇輝へ至った。しかし、今回は大人気ない主人に槍がお冠でね。今暫くの猶予が君には残されている」

「そっか。なら、天に愛されなかった曹操の勝ちの目は消えちゃった」

「君に大逆転の目が?」

「そんな目が残っているなら、ドヤ顔で勝ち誇ってましたっ!」

「?」

「チェックメイト、王手詰み。盤面の決着が付いていても、無法者が乱入して対局者を殴り倒した挙句にちゃぶ台返し。果たして白星はどちらの手に?」

 

 ぴっと人差し指を天に伸ばせば、そこには真ゲッターを髣髴とさせる出鱈目な軌道で空を翔け抜けて来た白龍が光臨する真っ最中。

 敵意剥き出し。鎧を纏った臨戦態勢なバリ君の狙いは、何を隠そうこのジャンヌちゃん。

 

「状況を簡潔に説明しろ」

「そこで唖然とする曹操は、はるばる冥界まで爰乃ちゃんを追って来たストーカー」

「半端な情報で俺を釣り出した貴様の目論見は?」

「ふ、普段は斜に構えて余裕ぶる兄貴分を、本気で動じさせたかった可愛い妹のお茶目?」

 

 プールで爰乃ちゃんに頼まれ連絡を入れた先は、最近携帯を持ち出したバリ君。

 あえてアドラメレク氏を避けた理由は簡単ですよ。

 同じ義父に育てられた妹分には、兄の恋路をサポートする義務が在る。

 なら、悪い悪魔(冤罪)に囚われたお姫様(賓客)と言う絶好のシチェーションを、恋のステップアップに生かさずどーする。

 そう考え、吟味して伝えた内容は

 

 ”娘の身柄は確保した。無事に帰して欲しければ、一人で迎えに来い”(要約)

 

 と、言うもの。

 こうでもしないと、化鳥やら何やらが押しかけるでしょ?

 要求に従わざるを得なかった、って逃げ道を用意する為に悪役を買って出たジャンヌちゃんです。

 まぁ、深く考えないバリ君は悪質な嫌がらせって感じたかもね。

 余計なお節介って思われるもの嫌だから、あえて思惑は語らないよん。

 どうぞ煮るなり焼くなり好きにしなっ!

 

「そうか、お前達が俺の敵と言うことだけは理解した」

「待て、冤罪だ。俺の狙いはシャルバであって、君が思うような真似は―――」

「駒王学園で拉致紛いに及んだ前科者の言い分を信じろと? 俺はあの時言ったよな? アレには手を出すな。近づくな、と」

「……確約した覚えは無いがね」

「ちなみに曹操さんは、ステージ衣装でドレスアップした爰乃ちゃんを超意識してました。雰囲気的に適当な口実をでっち上げ、思いの丈を吐き出す流れだったと思いまーす」

「話がややこしくなるから、事実の曲解は止めろ!」

「ほう、事実なのか」

 

 よーし、良い流れ。

 

「と言うかジャンヌ。何時の間に呼び寄せたのかは知らないが、味方の加勢を禁じたルールを忘れるな。このまま彼の介入を認めると、反則に抵触した君の負けが確定するぞ?」

「はっはっは、何を仰いますか。聞いての通り今のジャンヌちゃんは、バリ君にとってふつーに敵ですよ。つまり、ルール違反にはならないのです!」

「さっきの戯言が、ここで繋るのか!?」

 

 兄貴分の高いヘイトは、試合と無関係の偶然。

 都合の良い状況で、都合の良いタイミングに現れたのも偶然。

 突如舞い降りた幸運は、日ごろの行いの成果ってことだよね!

 

「悪いが俺は半分悪魔だ。時世の句を読ませる温情を期待するな」

「こうなれば中途半端でも覇輝で―――」

「遅い」

『PINPOINT DIVIDE!』

 

 これぞ産まれ持った生物としての差ってやつ?

 最強の龍皇が全力で放った半減の力には、究極へ至る途中の曹操でさえ無力。

 神滅具のランクより、持ち主の質が重要だってよーく分かる。

 え、ジャンヌちゃん? そりゃ、防げませんって。

 気づけば曹操と仲良くKOされ、青天井ですが何か?

 

「……一撃で沈む? さすがに予定外だぞ?」

 

 バリ君的には小手調べかもしれないけど、こっちは瀕死だったの!

 定番の能力程度、万全なら対策してますよーだ。

 

「こいつらの優先順位は下の下。興も醒めたし、放置でいいか」

 

 それでこそ、雑魚に執着しない古今東西最強白龍皇。

 ダメ押しの魔力攻撃は死ぬって、実はビクビクしてましたぁぁぁっ!

 

「ま、待った」

「ん?」

「麗しの姫君は、テラスで優雅に勇者の助けを待っているぞよ」

「最初から素直に言え」

「天邪鬼のジャンヌちゃんには無理……がくっ」

 

 蓄積した乳酸と、ダメ押しの半減の効果でジャンヌちゃんのライフは皆無。

 頭を上げるのもしんどく、迫真の死んだフリでお見送り。

 本当は、このままスヤァしたいよ?

 でも、ここで白黒付けないと後々がめんどい。

 もう少しだけ頑張るとしますかねー。

 

「ううっ、出来損ないだろうと覇輝は覇輝。何故に奴は外部干渉を?」

「それはそれとして、試合はスコアレスドローでおーけー?」

「……賭けは無効だぞ」

「別にいいけど、騎士団は返さないよん」

「何も失わなかった君と比べ、損失を補填出来ない俺の実質的敗北じゃないか!?」

「また、お買い得な戦力が育ったらスカウトに行くねっ!」

「やめて!」

 

 ふぅ、これで招かざる客の応対も終りっと。

 プライドの高い曹操なら急かさなくても無言で帰るだろうし、そろそろ店仕舞いにしよっかな。

 今日は本当に疲れたよパトラッシュ。少しだけ休んでもいいよね……?

 所詮ここは冥界で、天使がお迎えに来る可能性もゼロ。

 お茶会に送り込んだ新顔が、面倒臭い事態を引き起こしても知ーらない。

 乾いた雑巾から、無理やり雫を搾り出されたジャンヌちゃん。

 もう、限界なのです。

 騒ぎで目を覚ました凸凹英雄が、ご主人様を介抱する声さえ子守唄。

 後は野と慣れ山となれ。そんな心境で、瞼を閉じるのでした。

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