せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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ギリギリアウトーーーー
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第九話 有限地獄連続組手 二日目~強気娘編~

 目を覚ますと体の自由が利かなかった。

 いや、大けがとかそういうのではないが、とにかく動きづらい。

 

 「う~ん……むにゃぁ」

 

 理由ははっきりとしていて、辰子さんに全身で拘束されていた。

 うん、大分けしからんが、本気で動けないのはまさに化け物と言ったところだろうか。

 と言うよりなんだ? この状況は?

 いや、本当にけしからん。

 

 「おや? 起きたかい。それでいつまでそうしてるんだい?」

 

 「? 亜巳さん? いやとりあえず辰子さんどかしてください。真剣で動けないんで」

 

 「ああ、なんだい、辰の胸に夢中だったんじゃなくて動けなかったんだね。ほら、辰! 起きな!!」

 

 そう言い、辰子さんの頭を思いっきり殴りつける長女、バイオレンスだがこのくらいしないと起きないのは流石と言ったところだろう。

 うん、名残惜しくなんてないさ。

 というより、

 

 「えっと、どういう状況でしょうか?」

 

 後ろで、痛いよ~、などと呑気に言っているのは恐ろしいからおいておこう。

 僕ならあれ喰らったら違う意味で寝てるってばよ。

 ついでに昨日あれだけやったのにぴんぴんしているのも触れないでおこう。

 理不尽理不尽。

 

 「ああ、師匠に頼まれてね。俺に勝ったご褒美に看病してやれ。ってさ。」

 

 「それはお世話になりました。でもなんで抱き枕?」

 

 「いいよ、宿泊料は十分もらってたしね。辰については、部屋が狭いからね。寝る時にくっついちまったんだろうさ。昨日はあたしと辰で挟んでいたからね」

 

 なんだその状況。

 目覚めてから味わいたかっ……、寝起きで頭が働いてないな、そうに違いない。

 

 「いやなんでそんな配置に?」

 

 さすがにそんなサービスがある店でもないだろうし。

 

 「あん? リュウに掘られたかったのかい?」

 

 「お世話になり、心より感謝いたします!」

 

  納得の理由だ。

  まさに天国か地獄の二択である。

 

 「だからいいって、流石にそれはアタシたちも勘弁してもらいたいしね」

 

 「それで、もう一度これはがしてもらえませんか?」

 

 「すぴ~……、んんぅ~」

 

 このわずかな会話のうちにまたくっついている。

 相変わらず素晴らしい寝付きだ。

 

 「っはぁ、起きろってんだよ! 辰!」

 

 おいおい、今度は武器まで持ち出したぞこの女王様。

 昨日の店ではこんなのが日常なのか、くわばらくわばら。

 で、ふと時間を確かめると、もう11時を回っていた。

 

 「うわ、寝すぎたなぁ。それじゃあそろそろお暇しますんで、あと辰子さん、関節に違和感があるようだったら連絡くれれば入れなおしますんで」

 

 そう、いつもならともかく、このゴールデンウィークは時間がないのだ。

 もう折り返しているからして、次の相手のところに行かなくては。 

 んで、なんでそんな驚いた顔で見られているんだろうか。

 

 「呆れたね、師匠にあれだけやられといてもう動けるのかい……」

 

 ああ、なるほど。

 

 「いや、ダメージは残ってますけど動かせますよ。そもそも自分の動きをコントロールするのが専門みたいなものですから」

 

 そう、相手の動きを制するために一番初めにやらなくてはいけないのはそれである。

 そもそもそれができなければ、実力の離れた相手を制するなんてできないだろう。

 これに関しては足一本動かなくなろうと普段通りに戦える自信があるぞ。

 

 「辰と師匠に勝つなんてまともじゃないと思ったが、アンタもつくづく化けもんだねぇ」

 

 しつれいな、これでも本当に動くのに必要な部分は問題ないんだから言うほどではない寧ろ、

 

 「いや、僕からしてみれば昨日の今日でもうこうしている辰子さんには絶対に及ばないと思いますよ?」

 

 「う~……スヤスヤ……」

 

 教訓、二度あることは三度ある。

 

 

 

      ◆◇◆◇

 

 

 結局あの後、さらに過激な家族愛を見せられ、戦々恐々としながら板垣家を後にし、首都東京に来ている。

 なんだこの路線の多さは、正気じゃねえぜ。

 連絡を取り、目的地に着く頃にはもうとっくに午後になっていた。

 さて、お次に参りますわ~柴又~柴又~化け物のもとをお尋ねになられる際は、鉄家の門をお叩きください、なお、その門のをくぐる際は、命を惜しまぬようお気を付けくださいっと。

 

 「失礼します」

 

 「ああ、待っていたぞ、それでは道場に案内しよう」

 

 流石は鉄一族、実直で遊びがない対応だね。

 ここで行うのはまた二連戦か、もしこれで乙女さんのご両親までいたらお陀仏だったかな?

 

 

 

    ◆◇◆◇

 

 

  四戦目、鉄 乙女、白星 五戦目、 鉄 陣内 黒星

 

 

 

 いやはや、やっぱりあの積み重ねた業は早々破れないか。

 そもそも乙女さんに勝てたものの、あれはまだ僕の対応できる範囲だったからだしね。

 力そのものは衰えているはずなのになぁ、鉄心さんとともに日本を守り戦ったってのは伊達じゃないね。

 時刻は夕方、もう一戦いけるくらいかと次は松笠へと向かう。

 

 「化け物ってのは学校運営するのが好きなんだろうか?」

 

 そういえば乙女さんも教師志望だっけか?

 向かうは竜鳴館、知らなければわからない高校の名前だ。

 そこに居わす化け物こそが、生まれるのが遅すぎた竜こと橘 平蔵である。

 それ言ったらもうモモ先輩なんてどうしてこの時代に生まれたんだって感じだけどね。

 窮屈で可哀想である。

 

 「おおぅ、来たかぁ、待っておったぞ」

 

 「はい、今日はよろしくお願いします」

 

 「うむ、元気があってよろしい、近頃は若者も元気がなく挑んでくるようなのがいなく寂しかったところよぉ」

 

 なんというか、声だけで無敵なんじゃないかな、この人は。

 

 

    ◆◇◆◇

 

 

 第六戦 橘 平蔵戦、黒星

 

 

 いや、遂に貯金を消された。

 と言うか、竜巻って理不尽だよな。

 あれのせいでうまく間合いを崩されて受けきれなくなったよ。

 経験できてよかった。

 あの精密さは才能だけじゃあ真似できないだろうが劣化版くらいは可能性はあるだろう。

 というか、 

 

 「すみません橘さん、運んでもらっちゃって」

 

 「なぁに、久しぶりに血の湧く思いをさせてもらったのだ、構わんよ」

 

 うん、やっぱり動けなくなっているわけだよね。

 そりゃあもう正直陣内さんの時点でいっぱいいっぱいだったさ。

 それでもこの男の最終形態引出、持久戦にまで持ち込めたのはもう嬉しい誤算だった。

 うん、何言ってるかわからないだろうが、この御仁、変身するのである。

 しかも二段階。

 てか昨日の三戦、と言うより師範代ペアで気に対する慣らしができていなかったら死んでたよ。

 

 「親御さんにはワシから言っておいてやろう。休むがいい」

 

 「ありがとうございます、お言葉に甘えますね」

 

 そうして軽く明日の予定を組み立てながら寝ることにする。

 あとはジャーキーのお姉さんと戦って、確かそこの上司がもっと強いとか前言ってたから頼んでみるか、あとは今日見たい……れば……ほくりくに……で……も……。

 

 そうして二日連続ぶっ倒れて三日日を迎えるのであった。

 




と言うわけで、二日目でした。
今回はかなり薄いかもしれませんが、こだわりとしてまじこい以外のキャラはあまり描写しないようにしています。

さてさて満身創痍の高坂君ですが、勝ち数以前に生き残れるのか心配になってきましたw

それではまた次回。

この作品は一人称の練習も兼ねているのでよろしければ批評をお願いします。

三人称での練習としてなろうで「妖怪って厨二病の華だと思うんだ。」という作品も連載しているのでよろしければそちらの批評もよろしくお願いします。

ご意見ご感想お待ちしております。


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