せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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何とか今日中投稿


第十一話 有限地獄連続組手 最終日

 川神を飛び出てこんにちは。

 いやぁ、どこ行っても九鬼九鬼九鬼だね今の日本は、出先のビジネスホテルでまでこの名を見るなんてあの一族は色々と可笑しいと思う。

 さて、やってまいりましたのは北陸、剣聖のいる黛家。

 普通そう簡単に挑戦できない相手だが、流石は鉄、流石は橘、やはり化け物たちにもネットワークと言うものはあるようです。

 そう考えると僕の人脈って大変だな。

 国くらい平気で傾けそうなメンツが知り合いだよ。

 ああ、怖い怖い。

 

 「たのもう!!」

 

 うん、道場破りみたいだが仕方がない。

 インターフォンがないんだもん。

 あとで聞いた話だと、本宅はともかく道場関連の方は大成さんの機械音痴から、極端に機械類が少ないそうだ。

 

 「いらっしゃい、遠方からはるばるよく来たね。まずは少し休むといい」

 

 なにこの人、すごく優しい。

 たいていの化け物たちって挑みに行ったら即戦闘が当たり前だったのに、流石剣聖、人間できてる。

 

 「はい、それではお言葉に甘えて」

 

 昨日までだったら即戦闘即移動の精神だったが、あいにく明日から学校なので今日はこれ以上戦えないし、お誘いに乗るとする。

 僕の言葉を聞くと少し嬉しそうに道場の縁側に案内してくれ、お茶を用意するように指示してくれた。

 

 「うん、それで高坂君は川神学園に通っているんだよね? 少し聞きたいことがあるんだが……」

 

 なんでも、娘さんが川神学園に通っているそうで、そのことを僕に聞きたかったようだ。

 正直心当たりがなかったが、ふと、妙に姿勢の良かったこのことと、椎名からのメールの内容を思い出した。

 共通して、刀を持った一年生。

 うん、これは間違いない、黛さんの家の子だね。

 なんでも、その子、名前を由紀江と言うらしく、言葉は選んでいたがいわゆるコミュ障と言うやつで大層心配しているらしい。

 それに対し、椎名から聞いていたファミリー入りがあったので、友達がいるようだと教えてあげると、大層嬉しそうにしていた。

 

 「さて、それでははじめようか」

 

 会話に一段落が付くと、そういわれた。

 てか、明らかに雰囲気変わってるヨ? 人格者でも所詮はあっち側の人間でしたかそうですか。

 けどまあ、気にすることでもない。

 

 「よろしくお願いします」

 

 さて、剣聖、と言われるくらいであるからして、まあ当然剣を使ってくる。

 因みに、僕は武器を専門に使った化け物と戦うのは初めてだったりする。

 一応鉄さんのとこは、申し訳程度に武器も使うが、基本ガチンコである。

 とはいえ、別段緊張するといったこともない。

 何せ、当たったらお終いであるのは全く変わらないのだ。

 間合いにしたって、連中普通に大規模だ。

 とはいえ、別に脅威に感じないわけでもない。

 さっきも言った通り当たったらお終いなのだから。

 

 ――ブン

 

 うん、音が遅れて聞こえてくる剣速っておかしい。

 そして別に普通のことだと割り切っている僕も最近どうかと思う。

 

 「ふむ、すごいな。ワタシの剣速でとらえきれないというのは。その身のこなし、落ち葉であろうが切れるはずなんだが、それよりも難しいとは……」

 

 うん、避けるだけならば避けられる。

 相手より速く動いて避けるのは化け物の技、僕が得ることができたのは相手より早く動く技だ。

 しかし相性が悪い。

 この速度で刃物となると、自分の体に当ててから流すことができない。

 衝撃を調整とかしている間にバッサリなのである。

 これは困った。

 

 「ふむ、仕方がない。死なないでくれよ?」

 

 !!? これはまずい!! 

 構えを少し変えた大成さんであるが、長年鍛え上げた警報がビンビン反応している。

 

 ――一か八か!!

 

 呼吸の合間を縫って一気に距離を詰める。

 

 「黛流 那由多」

 

 今までの比ではない速度の剣速であった。

 ――しかし

 

 「掴んだ!!」

 

 特攻が功を奏したのか、刀のの間合いの内側に入り、掴む。

 

 が、

 

 「驚いた、呼吸を読むのもここまで来ると神速を極めたものと変わらないとは……」

 

 そう言いながら、腰にあったはずの脇差が僕の首に添えられていた。

 

 「……参りました」

 

 なるほど、剣速が早いってことは次弾も早いってことか……。

 大成さんの手より放たれた刀は、その時やっと地面に落ちたのであった。

 

 

 第九戦目 黛大成戦 黒星

 

 

  ◆◇◆◇

 

 

 珍しく無傷で負けることができた高坂です。

 あの後、由紀江のことを気にかけてほしいというお言葉をいただき黛家を後にし、川神につきました。

 お昼前に出てももう夕方。

 流石にこれ以上相手に心当たりはない。

 と言うことで、この企画はここで終了。

 五勝四敗と言うことで見事勝ち越しである。

 自分の進歩に満足しながら自宅の門をくぐると、

 

 「エクストラステージ突入だ小僧」

 

 「フハハハハ!! 裏ボス登場である!!!」

 

 新しいプロダクションとやらで忙しいはずであるお二方が待っていた。

 うん、一度締めたつもりの決算覆す案件っていやになるなぁ……。

 

 

    ◆◇◆◇

 

 結局拉致られて、九鬼本社の訓練場に連行されました。

 

 「いや、あなた達忙しいって聞いてたからスルーしてたんですけどこんなところにいていいんですか?」

 

 こんな普通じゃない場所を用意できる二人、九鬼家長女である九鬼 揚羽とその師にして九鬼家従者部隊第0位に君臨する男ヒューム・ヘルシングに問いかける。

 

 「なに、貴様が面白いことをしているときいてな! 多忙な中時間を空けてやったのだ!」

 

 「達人たち相手に腕試しを繰り返すとは、なかなかいいお遊びではないか、俺たちも混ぜろ」

 

 ああ、出たよ化け物ネットワーク。

 世界滅ぼす前に僕を滅ぼしに来たようだ。

 

 「はは、終わったと思ったのにな……、どちらからやります?」

 

 「当然我だ!!」

 

 まあそうなるよね、やっぱりラスボスは一番最後に来るものだからラスボスらしい。

 ここ取らないと後がない。

 

 「準備はできているな。始めろ」

 

 促しているようでただの命令によって揚羽さんとの戦いは始まるのだった。

 

 

 

    EXTRA STAGE突入

 

 

 「フハハハ!! 最初から全力で行くぞ!!」

 

 うん、この人は小手調べ何てしてたら容赦なく骨を外されることを知っているからもう最初から全力である。

 

 「ホレホレホレホレ!!」

 

 捕られないように引手に意識を置いた連撃をただひたすら透かし続ける。

 

 「っく!」

 

 これが僕の弱点の一つである。

 どうしても受け身に偏る故に、捕られないことを念頭に置かれるとなかなか手を出せなくなってしまうのだ。

 けどまあ、

 

 「捕まえた!!」

 

 透かし続けている間だって微調整しながら近づいていくことだってできる。

 

 「甘いわ!!」

 

 そう言って繰り出されるのは大振りの蹴り上げ。

 警戒はしているようだが力の流れを出してしまえばやれることが増える!!

 そして、密着できる距離は僕の距離だ。

 蹴り足の勢いそのままにわざと蹴り上げられてやる。

 この行動には、僕の紙装甲を知っている揚羽さんは驚いていたが、これは今までやっていた組手ではなく仕合だ。

 甘さを廃した初めて見せる技だってある。

 蹴りあげられた僕は宙に浮くこととなる。

 

 ――揚羽さんの顔を掴んで、

 

 「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 勢いが強すぎて離さないように結構必死であるが、その甲斐あって、僕は揚羽さんの顔を支点に背後に向かっての円を描いた起動で持ちこたえる。

 揚羽さんの首に衝撃のほとんどが言った状況でだ。

 

 さらに、素晴らしい流れを得たようで、数少ない僕の名のある技、それだけ自信を持った技の形に持って行けた。

 

 「――首折り逆背負い!!!」

 

 「――カハッ!」

 

 揚羽さんは体の全面を打ち付けられ、そのまま気を失ったようだ。

 

 ――首折り逆背負いは柔道の技として危険とされている背と背を合わせた形の逆背負い、この技でさえも受け身のとれないことや、脊椎の損傷の危険があり禁止技とされているのだが、それの投げ手を首に変えることにより対化け物用に改悪した技だ。

 この技は頸動脈締め、脳揺らし、首折り、受け身不能、脊椎折りと凶悪な仕様となっている。

 が、やはり化け物に効果があったのは前者二つだけであった。

 怪我と言う面では大したものは負わせられていない。

 が、

 

 「そこまでだ」

 

 「しゃぁ!!」

 

 勝ちは勝ちである。

 基本故に引き出しが多かったおかげでいわゆる殺し技をほとんど見せていないおかげで、こちらの不利な形になる前に倒すことができた。

 

   第十戦目 九鬼揚羽戦 白星

 

 そして、

 

 「見事だ、無傷でラスボスとは理想的な展開ではないか、小僧」

 

 この男が後に控えてるから賭けのような接近をしたのだ。

 

 「ハハ……、お手柔らかに……」

 

 「却下だ。失望させてくれるなよ?」

 

 そう言って、現役最強と呼び名の高い老執事と合い見えることとなる。

 

  LAST STAGE開始

 

 

 「ジェノサイド・チェーンソー!」

 

 「いきなり!!?」

 

 化け物のガードの上からでもごっそりダメージを与える反則蹴りを開始早々に仕掛けてくる。

 

 

 「ふん、貴様相手に小技は自殺行為だからな。いくら俺でも舐めはしない」

 

 「僕の戦法ほぼ全否定の戦い方ですね!!」

 

 これは正直どうしようもない。

 いくらうまく流したところでダメージ確実であるのならば、ほぼ負けパターンである耐久戦に持ち込むしかないのだ。

 

 「ジェノサイド・チェーンソー、ジェノサイド・チェーンソー、ジェノサイド・チェーンソォォォ!!」

 

 「いや、ちょ、真剣でか!?」

 

 そして選択肢など無いようだった。

 実に楽しそうな顔で連発しやがっている。

 

 「クソがぁぁぁ!! やぁってやるぜぇぇぇぇ!!!」

 

 「クハハ! そうだ! それでこそ小僧と呼ぶにふさわしい!!!」

 

 ならばとただ只管に受けて反撃をしてやる。

 

 ――結果

 

   

    LAST STAGE ヒューム・ヘルシング戦 黒星

 

 関節の十ほどはずしてやったが、結局は根負けして意識を失うこととなる。

 

 

 

 

       GW戦乱、六勝五敗にて、見事勝ち越し。

 

 

 

 目を覚ますと夜中にもかかわらずお二方を交えた豪華な食事をいただき送ってもらえた。

 流石は九鬼である。




以上です。
祝!勝ち越し!
これで原作プロローグ部分も終わり、ストーリーが進むはずだ!
ただ少し悩んでいるのが、まだ少し先の話ですが無印路線で行くかS路線で行くか…。
ご意見いただけたら参考にします。

それではまた次回。

この作品は一人称の練習も兼ねているのでよろしければ批評をお願いします。

三人称での練習としてなろうで「妖怪って厨二病の華だと思うんだ。」という作品も連載しているのでよろしければそちらの批評もよろしくお願いします。

ご意見ご感想お待ちしております。

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