せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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どうも、最新話です。
連続仕合後の高坂君です。
それではよろしくお願いいたします。


第十二話  地獄の傷跡

 地獄の底から戻ってきました高坂です。

 よくこの長期休暇を生き残れたと本気で思う。

 実際今も行動に支障がないようにして居るがぼろぼろだ。

 と言うわけで、体が治り次第武神と戦えるように鉄心さんに申し込みに行っておこう。

 

 「おはよう」

 

 我らがS組、あんまり愛想がいいクラスではないが、あいさつは大切である。

 何人かは普通にあいさつ返してくれるしね。

 

 「ああ、おはようさん……、若! 今すぐうちの病院で場所を取ってくれるように連絡しよう!!」

 

 「おやおや、これは大変ですね。 大丈夫なんですか?」

 

 「うわーい! お化け―お化け―、準~、お経の準備だ~」

 

 「にょわ~、化け物なのじゃ!!」

 

 とても失礼なことを言われてしまった。

 不死川なんか涙目で逃げて行ってしまった。

 ついでに井上がユキの言葉に突っ込まないくらいには慌てている。

 

 「朝一でそれは流石に傷つくよ?」

 

 「傷つくも何もすでに傷だらけだろーが! 何があったんだよ? てかなんで学校来てるんだよ!」

 

 「?」

 

 「おやおや、ご自分の状態が分かっていますか?」

 

 自分の状態って……、まず、全身に打ち身がたくさんあって黒くなってるな。

 特に受けの起点となる腕なんてひどく腫れている。

 切り傷も多いな、もう血は止まっているが結構な範囲に広がっている。

 ついでに何回か外れた間接も入れなおしてるからその付近の内出血はひどいかもしれない。

 あとはあえて言うなら全身筋肉痛と疲労で大変なことになっているな。

 うん、なんでそんなことを言われているのかわからないよ。

 

 「不思議そうに首を傾げるな!! それもう完全に大怪我じゃないか、いいから家の病院に行くぞ!」

 

 「いやいや、そんな病院に行くほどの怪我なんてしてないよ? 動きに支障ないし」

 

 「なんで支障ないんだよ!」

 

 「いいですか? 高坂君、医者の息子として言わせていただければ、打ち身やら擦り傷だとしてもそれだけ全身に及んで入れば普通入院していただきますよ? と言うより動けないはずなのですが……」

 

 うん、武人じゃない人にはわかってもらえないようである。

 骨も折れていないのに入院って大げさな。

 

 「おはよーさん、HR始めるから席に着け……、よし、高坂、お前は今日はもう帰れ」

 

 何……だ…と……、教師にまで帰宅を促されてしまった。

 そうまで言われては仕方がないので、仕方がないからとりあえず鉄心さんに会いに行こうと思う。

 用事もあるしあの武人の中の武人ならわかってくれるはずだ!!

 

 「ふむ、とりあえずはれが引くまで欠席にしておこうかの。なに、回復に専念すれば内功かじっとる人間なら一週間やそこらで回復するわい」

 

 駄目でした。

 なんでも、武人としては理解するが、教育者として了承するわけにはいかない、てか他の生徒が怖がってあまりにも悪影響になるらしい。

 通りで登校中避けられていたわけだ

 

 「はあ、わかりました。つまり学校に居なければいいんですね?」

 

 うん、堀の外ででも遊んでよう。

 

 「その顔、大人しくしているつもりは無いようじゃの……、まあええじゃろう。さっきも言った通り武人としては理解できるからのう。そのかわり、絶対に制服でうろつくんでないぞ?」

 

 「わかりました。それで、とりあえずこの怪我治ったらモモ先輩と戦いたいのでセッティングお願いしたいのですが」

 

 「!! そうか、やる気になってくれたか。よかろう。この連休の活躍も聞いておるし予定に入れておこう。前日までには連絡くれりゃあ準備しよう」

 

 「ありがとうございます」

 

 よし、目的の一つは達成した。

 てかやっぱり実在するんだね、ネットワーク。

 そうしてとりあえず着替えに学校を出ることにする。

 校門までの間は阿鼻叫喚だったとだけ言っておこう。

 

 

  ◆◇◆◇

 

 

 「へへ、今日は早いじゃねえか……、って化け物か!?」

 

 うん竜兵にまで言われてしまった。

 

 「いや、少し怪我しただけだよ。さて今日もやる?」

 

 「おいおい、俺は人でなしだとは自覚してるがそんな相手に戦いたいとは思えないぜ。ヤっても楽しそうじゃねえしな。と言うより、大丈夫なのか?」

 

 なんということだろう、不良まで心配そうにこちらを見ているではないか。

 解せぬ。

 

 「えーと、かかってこないの?」

 

 「バカなこと言ってねえで怪我直せよ、いや真剣で」

 

 おお、僕の居場所はないのか、そういえば両親も泣きそうになってたっけ。

 

 「えー、動けるのに休んでたら腕がなまっちゃうよ」

 

 「帰れ!」

 

 駄目でした。

 しかし僕はあきらめない。

 不屈の意志を持っているのだから!

 と言うわけで非常識の通じそうな人に連絡を入れるとしよう。

 

 「あ、もしもし、揚羽さん? 今時間大丈夫ですか?」

 

 『うむ、十分程度なら構わんぞ』

 

 「ちょいと学校追い出されたんで従者部隊の訓練で組手させてもらえませんかね?」

 

 『よかろう、連絡を入れておく。それだけならば切るぞ?』

 

 「はい、ありがとうございます」

 

 『うむ、ではまたな』

 

 流石非常識の巣窟だ、二つ返事だった。

 と言うわけで、昨日振りの九鬼本社に向かおうか。

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 「oh、クレイジーにもほどがあるだろう……」

 

 「すごいですね。今ならただ横になっているだけで私よりもリアルな死んだふりができそうです」

 

 元傭兵と暗殺者にまで言われてしまったが、もう慣れた(キリ

 と言うわけで、従者部隊15位と16位である、ステイシー・コナーさんと李 静初さんに連れられて九鬼本社を歩いている。

 お仕事でよく来ているが、やはりそれだけなので一人で歩かせてもらえるほどの信頼はまだないようだ。

 

 

 「ついたぜ、なんかあったらそこらの奴に言いな。全員従者部隊の奴だからよ。……てか、死ぬなよ?」

 

 「死にませんよ、と言うよりこの怪我、結構な割合でヒュームさんに着けられたものなのですが……」

 

 「ああー……」

 

 「納得です」

 

 そう言ってみると心底同情した目で見られてしまった。

 

 「んじゃ、アタシらは戻るけど強く生きろよ」

 

 「失礼します」

 

 なんか大げさな励まし方をして去って行ったが、まあ、もとより無茶をする気はない。

 とりあえず回復第一であるのだから。

 

 ――それじゃあ、やるとしようか。

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 さてさて、九鬼ってすごいな。

 飯は上手いし寝床は最高級、訓練相手も申し分ないときた。

 常に誰かしら訓練しているからひっきりなしに組手ができる。

 ついつい怪我が治るまでの10日ほど住み着いてしまったよ。

 ……まあ、たまにヒュームさんとかが来るのは勘弁してほしかった。

 

 「小僧、遊びに来たぞ。構えろ」

 

 ってなんだよ!

 あんたの相手なんかしてたら怪我治るどころか増えるっつーの!!

 何とか頼みに頼んで制限組み手にして貰えなかったらあの人をはるかに凌駕するまで怪我が治ることはなかっただろう……。

 

 「それではお世話になりました」

 

 「うむ、従者たちにもいい経験となっただろう。また何かあったら言うがよい」

 

 しかもなんか訓練相手としてバイト代までもらってしまった。

 これもう囲い込みに来てるんじゃね?

 まあ、武神倒すまでそんなこと考えてられないってのはわかっているみたいだからいいけど。

 

 ――昔こんなことがあった。

 

 

 「高坂よ、お前その腕を九鬼のために使う気はないか? それほど磨き上げた腕だ、我が高く買ってやるぞ?」

 

 「あー、考えたこともないですし、まだ考えられませんね、将来のことなんて」

 

 「何故だ? それほどまでに、まさに命を削って鍛え上げた腕だ、何か成し遂げようとしているのではないか? それなら九鬼に来れば最高の環境でそれをなせるぞ!」

 

 「いえ……、そんな、そうですね、ただ昔おられた意地をもう一度通したいだけです。それができないと多分他には何も考えられませんよ」

 

 

 

 

 と、納得はしてもらえたようであるが控えていたヒュームさんの目が怖すぎたのは嫌な思い出だ。

 何よりあの人が一番諦めていないと思う。 

 面白いおもちゃとして……。

 

 さて、そんなこんな長期連休が超長期連休になったが、また明日から学校である。

 怪我も治ったし武神との戦いももう少しだ、気を引き締めていこう。




はい、ぼろぼろとは言っていましたが実際こんなんでした。
流石紙装甲。
そして九鬼とのつながり、武人連中以外には使える外部協力者程度にしか思われていません。
この主人公は武人からの好感度、特に友好度に偏っては相当稼ぎます。
努力の跡が只管見える相手であれば戦うと好感持たずにはいられませんよね?

それではまた次回。

この作品は一人称の練習も兼ねているのでよろしければ批評をお願いします。

三人称での練習としてなろうで「妖怪って厨二病の華だと思うんだ。」という作品も連載しているのでよろしければそちらの批評もよろしくお願いします。

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