せめて、せめて一勝を   作:冬月 道斗

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はい、ぎりぎり日付過ぎです。
その上今回は短いです。
申し訳ないですがここで切ることにしました。


第十四話 決戦前日、侍娘

 心が昂って仕様がありません高坂です。

 昨日本人にではないが、宣戦布告をしてやったお蔭で落ち着かない。

 学校では武術をやっているような人には少しばかり感じ取られていたようで、特に心なんかは怖気づいていた。

 んで、放課後、僕は昨日に引き続き絡まれていた。

 

 「あ、ああああの、高坂先輩ですよね!?」

 

 「落ち着けまゆっち~、オラの見たところ少し先輩引いてるぞ?」

 

 うん、流石KAWAKAMI刀もった変人にガンつけられるなんて貴重な体験だ。

 しかも顔が超こわばっている。

 正直、真剣怖い。

 素性に心当たりなければBダッシュかもしくは臨戦態勢を取っていた。

 

 「えっと、黛さんであってるよね? 初めまして。高坂虎綱です。大成さんには月あたまにお世話になりました」

 

 うん、心当たりあってもついつい敬語のなってしまった。

 いや、じっさい顔が整ってる分崩されると大迫力である。

 

 「えええっと、そうです! 黛 由紀江と申します! ここ、高坂先輩のことは父から聞きまして! あの、ご挨拶をと思いまして!」

 

 「そうだぜー、パピーがすっげー褒めてたんだぜ。んで、少年何故敬語よ?」

 

 ああ、こんな時どういう顔していいかわからないんだ。

 おそらく腹話術だろうけどこれだけ性格違うとどっちに対応していいかわからない。

 

 「いや、うんまあ、大成さんになんて言われたかは興味あるけど。どうしたの? そんなにこわばった顔ってことは決闘でも申し込みに来たの?」

 

 敵意は感じないけどこれだけガンつけられればそうなのかも知れない。

 達人は意を消して人を斬れるという。

 特に僕なんかはそれができるってことはよくわかる。

 達人って言える力してないけどね。

 

 「い、いえ! そんな私なんかが決闘なんてそんな! ただ父がおっしゃっていた方がどんな方かと思いまして!」

 

 「そうだぜー、まゆっちはそんなに喧嘩っ早くないんだぜー。パピーから連絡あったから友達GETのチャンスだと意気込んでるだけだぜ」

 

 そろそろ突っ込んであげた方がいいんだろうか?

 さりげなく僕の目線に入れているストラップについて……。

 

 「そうなんだ、で、その腹話術? どう反応してあげればいいのかな? テンションにギャップありすぎて……」

 

 「いえ、松風は付喪神ですので腹話術とは何のことか」

 

 「そうだぜ、オラTSUKUMO神の松風! シクヨロな」

 

 あ、別勘定にしといたほうがいいんだ。

 まあそれならそうしよう。

 大人の反応ってやつだ。

 

 「ああ、そうなんだ。よろしくね、松風。で、戦う気がないなら刀から手を放してくれると嬉しいんだけど。正直君ほどの使い手に、いつでも斬りかかれる雰囲気でいられると怖いです。真剣で」

 

 「い、いえ。そんな私などまだまだで……」

 

 「いや、無理あるって。姿勢と目線、あとは僕に呼吸合わせてるし自分の対応できる範囲完全に把握してるでしょ。わかる人なら一発だよ」

 

 「おお! バレテーラ! まゆっちこれは観念した方がよさそうだぜ?」

 

 「うぅ、そんなにわかりやすいでしょうか? 他の方々はあまり気にして無いようなのですが……」

 

 刀は背にしょってくれた。

 少し安心できるな。

 それにしても結構気付かないもんなんだね。

 

 「うーん、大成さんに聞いているならわかると思うけど、僕って敏感じゃないと瞬殺だからね。おんなじように自分の間合いに常に気を張ってるからさ。いうならば弱者の勘ってやつかな」

 

 そう、勝ち負けは別として、僕に致命傷与え得る実力者なんて結構いるんだ。

 そんなの相手に対抗できるようになるには、相手の動きを精密に分析できる目がないとやってられない。

 それをできるようになるまで只管実践を重ねてきたんだ、わからないはずがない。

 

 「そうですか……、実際に見て父に迫ったというのは少し信じられませんでしたが、やっぱり本当なんですね」

 

 「へー、そんな強そうじゃないのにそんなことまでわかるなんてやるじゃねーか」

 

 何だろう?

 この子煽ってるのか?

 いやいや、そんな感じではないってことは天然か。

 

 「はは、負けちゃったけどね。それで? さっき松風が友達って言ってたけど何かのお誘い?」

 

 「え、えええええええと!!」

 

 「落ち着けまゆっち! せっかく先輩からこの話題出してくれたんだ、何としてもこの機を生かすぞ!」

 

 おお、武術関係のこと話したら少し落ち着いてたけどまたテンパった。

 どうしよう、少し楽しくなってきた。

 

 「あ、あああの! 私と、と、友達になってくれませんか!!」

 

 見事な九十度、最敬礼である。

 

 「うん、いいよ」

 

 「そ、即答? 私の緊張の意味は!? けどやりましたよ! 松風! これで友達九人目です!」

 

 「やったねまゆっち! 百人まであと九十一人だ!」

 

 うわ、かわいそうな子だったのか?

 まあ、刀もってガンつける子だからわからなくもないか。

 即死技で蹴りつけてくる執事が知り合いにいる僕には隙はなかった。

 

 「それで、どうするの? 友達って言っても宗教とか政治団体とかに入る気はないんだけど……」

 

 「えっと……、それじゃあ、こ、この後お時間あるでしょうか?」

 

 あ、特に何も考えてなかったようだ。

 悩みながらおそらく遊びに誘っているんだろう言葉をいただいた。

 

 「うーん、予定は決まってるけど、なんなら僕の予定についてくる?」

 

 「は、はい! 是非!!」

 

 おお、また顔が怖くなったよ。

 

 「それじゃあ、行こうか」

 

 「え、と、何をなさるんでしょうか?」

 

 「組手」

 

 ああ、降ってわいたようにいい相手が見つかったもんだ。

 これで明日に備えられるね。

 

 

 

 

 ―――――

 

 金曜集会が始まる前に今日のノルマを終わらせた私は時間まで暇を持て余していた。

 

 

 「これ、モモよ、ちょっと来なさい」

 

 げ、爺からの呼び出しだ。

 長いと面倒なんだよなー。

 

 「んー? なんだぁ、じじい。説教なら間に合っているぞ~」

 

 「違うわ。明日、挑戦者が来るぞい」

 

 その言葉を聞いた瞬間、私は態度が一変しただろう。

 そう自覚できるくらい心が躍った。

 

 「ほう、相手は誰なんだ? 強いのか?」

 

 「ふむ、今回は明日になってからのお楽しみじゃな」

 

 当然の疑問をぶつける私に、爺は答えを濁してウインクをしてくる。

 ムカつく。

 

 「おい、じじい、それはないだろう。せめて強いかどうかだけでも教えろよ~。最近期待はずれなのが多くて欲求不満なんだ」

 

 「こりゃ、対戦者にそういうことを言うもんではないぞ! 全く、まあ気持ちはわかるがのう」

 

 む、結局教える気はないようだ。

 また今回も期待はずれなのであろうか……。

 私は爺から対戦相手のことを聞き出すのをあきらめ、その相手が私の飢えを満たせる実力者であることを願いながら、仲間の元へ向かう。

 

 いつも通りがっかりする結果に終わるであろうと思いながらも、やはり少し楽しみで私の足取りは軽いものであった。




決戦前日。
まゆっちが訪ねてきました。
実は主人公休みの間に何度か尋ねてきていました。
この間の悪さもまゆっちさんだぜw

それではまた次回。

この作品は一人称の練習も兼ねているのでよろしければ批評をお願いします。

三人称での練習としてなろうで「妖怪って厨二病の華だと思うんだ。」という作品も連載しているのでよろしければそちらの批評もよろしくお願いします。

ご意見ご感想お待ちしております

※頑張りますが次回は納得がいかなかったら時間がかかるかもしれません。
 山場ですので筆が乗ればすぐと言う可能性もなくはありませんが。

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